スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
クリスマス休暇はあっという間に過ぎ去った。
休暇くらいゆっくりしたいと思わなくもなかったが、セラフィーナはなにかしていないと落ち着かない
ホグワーツ特急に揺られてホグワーツに戻ると大広間は蝋燭や氷で美しく飾られた樅の木が立ち並び、柊やヤドリギが飾り付けられていた。きれい。広いぶん飾り付けも本気である。
昼休み、美しい雪景色を見に多くの生徒が校庭を散歩していた。
そんな中セラフィーナは、
「しーっ」
周りに指を立てて、そして、
「えいっ」
ドラコの制服の襟にありったけの雪を突っ込んだ。
「うひゃぁ!?」
寮に囚われず、周りの生徒は皆大爆笑だった。
顔を真っ赤にしたドラコは足元の雪を掬い、
「っんにゃろ!」
とセラフィーナに投げつけた。
しかしセラフィーナは柔軟な体をフルに発揮し上体を後ろに反らしてドラコの雪を避け、さらに別の雪玉を投げつけた。
「そいっ」
あっという間に雪合戦になり、気づいたら各寮四つ巴の大戦争に発展していた。
魔法で雪を掘り返して塹壕を掘り、デパルソで打ち出す雪玉はマグルの暴徒鎮圧用のゴム弾のような威力。暗黙の了解として魔法はありだが撃ち合いには雪だけを使う。雪が当たったら負け
……そんなん初耳だって?今決めた。あたしが決めた。
「第1中隊!敵に注意しつつ前進!中央本隊は迫撃雪部隊による後方支援を密にして前衛は突撃!浸透突破よ!左翼は別命あるまで待機!」
どこかのちょび髭伍長や『東部戦線異常なし』といった映画の影響を受けたセラフィーナはノリノリである。
授業の時間になっても誰も現れず、教師陣が怒り狂って様子を見に来たが誰も耳を貸さなかった。
最終的に
◆ ◇ ◆
はぁ……はぁ……。
空が暗くなりかけた頃、校庭は死屍累々であった。
雪玉とはいえ、食らい続ければダメージは蓄積する。マグルの軟弱な雪合戦とは違い、魔法族は体の耐久力が高くクィディッチなどで荒事に慣れていることもあり、文字通り誰も動けなくなるまで戦った。
セラフィーナの卓越した指揮によって勝利したのはスリザリンだった。二個小隊ぶんくらいしか生き残らなかったが、一番人数が少ない寮にしてはなかなかの戦果だったと言える。
来年もやりたいなあ、これ。
芯まで冷えきった身体を暖めるべく、疲労困憊の生徒たちは寮で暖炉の前に転がっている。いや、折り重なっているレベルである。ばたんきゅー。
(ふふ、哀れな羊が一匹……二匹……)
元気なのはセラフィーナくらいである。
◆ ◇ ◆
暇なので、大広間の真下の部屋に向かった。果物の絵の梨の部分をくすぐると、それはドアの取っ手に変わる。
ドアを開くとそこには大勢の屋敷しもべ妖精たちがキビキビと動いていた。
「お嬢様!なにか御用でしょうか」
キーキーした声で近くにいたハウスエルフが問う。
「ちょっとね、スープをえーっと……」
スリザリンの人数いくつだっけ。120……もうちょい追加ほしいわね。
「……150人分ほど用意して貰えるかしら。私も手伝うから」
「お手伝いなど!!お嬢様の手を煩わせる訳には参りません!!」
そう言いながらあっという間にセラフィーナのための紅茶の準備が整う。
「あらそ?忙しいところ悪いわね」
「いえ!とんでも御座いません!お役に立てて光栄です!」
無理に手伝う気もない。紅茶にたっぷりとミルクを注ぎ、小指を立てていただく。
ウバかな?スリランカ特有の香気とどっしりとしつつも軽やかな余韻を感じる。
……うん、なかなか美味しいじゃん。合格あげちゃう。
◆ ◇ ◆
しばらくして大鍋いっぱいに美しいオニオンコンソメスープが出来上がった。
「じゃあこれをスリザリン寮まで運んで頂戴。配膳に何人か着いてきてくれると助かるんだけど」
「「「喜んで!!」」」
どこぞのブラック企業のようである。
ほぁ〜っ。神か?
食事も喉が通らないほど疲れ切っていた生徒たちは暖かいスープを飲んで人らしい心地を取り戻したようだった。
その日以降、セラフィーナは一部生徒──特に上級生から女神と呼ばれ、困惑することになる。
ああっ女神さまっ──小っちゃいって事は便利だねっ──
誰ですかそれは。ちっちゃくないもん!被弾面積が小さいだけだもん!
ほんっとにクソガキ。