スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
今日はクィディッチの試合だ。対戦カードはグリフィンドール対ハッフルパフである。前回ポッターの箒に呪いが掛けられた事を踏まえたのか、スネイプ教授が審判を買って出ていた。
(ポッターのこと嫌いなのか好きなのかよく分からないわね?)
今回は同級生とはぐれることなく、セラフィーナは生徒用の観客席で試合を見守る。横にはドラコが座っている。近くにはグリフィンドールの赤毛達もいて、空気は最初からだいぶ悪い。
「この試合、ポッターはどのくらい箒に乗っていられるかな?誰か、賭けるかい?」
ドラコは無駄に煽り散らしていく。
「5分と保たないに1ガリオン」
セラフィーナはピッチから目を離さずにほぼ反射で答えた。適当というか、ほとんど無意識である。煽りには乗る。だっておもろいし。
「僕は3分に賭けよう」
「いいわ、乗った☆」
グリフィンドール生からの殺気が膨れ上がった。
しばらくして再びドラコが喋りだす。
「グリフィンドールの選手がどういうふうに選ばれたか知っているかい?気の毒な人が選ばれてるんだよ。ポッターは両親がいないしウィーズリー一家はお金が無いし……ロングボトム、君もチームに入るべきだね、脳みそがないから」
「ドラコ、それだとあんたも品性ないからグリフィンドールの選手行きよ。ダサい煽りやめな?家族弄りはイケてない。まして死ネタとかさ」
一瞬でしゅん、となった。だが、お構いなしに続ける。
「煽るならせめて本人の馬鹿さ加減にしなさいよ。まぁこいつら脳みそあるかたまに疑わしいからそこはぜんぜん分かるけど……」
ちゃんと伝わったようだ。ドラコは受け取りつつも、しかしニヤケ顔は復活。別に煽りやめろなんて言ってないしね。
そしてセラフィーナの発言で殺気が増えた。しらんがな。
ドラコが応える。
「ああ、確かに。申し訳ない、撤回するよ。君たちには
「
殺気がさらに増大した。ウケる。
そしてロングボトムがなにやら顔を真っ赤にして言い返してきた。
「マルフォイ、ぼ、僕、君が
「ぶっ」
セラフィーナは噴き出した。ドラコや取り巻きも爆笑。それは、反則。健気というか、ざこすぎるというか。
「そうだ、ネビル、もっと言ってやれよ」
赤毛が背中を押したのに対し、ドラコは即座に打ち返した。
「ロングボトム、君の知性をお金に換算するなら君はウィーズリーよりも貧乏だろうよ。それがどのくらいすごいことかわかるか?
……
セラフィーナは反射的に呟いた。
「買取に出したら逆に引き取り手数料取られるレベルね」
赤毛はブチギレ一歩手前だった。
「マルフォイ、ゴーント、これ以上一言でも言ってみろ、ただじゃ……」
その時、ポッターが急降下を始めた。
「運がいいぞウィーズリー!ポッターはきっと地面にお金が落ちているのを見つけたに違いない!」
とマルフォイが叫び、再びセラフィーナは噴き出した。上手いやん。
同時に赤毛はついにキレてドラコに殴りかかった。赤毛が馬乗りになったところでロングボトムも加勢し、取り巻きのクラッブとゴイルも加わって大乱闘になる。
しかし、
「これ、私も参加していいのかしら?」
セラフィーナがそう言った瞬間グリフィンドール生は固まった。
(ちぇ、つまんないの。ケナガイタチにでもしてやろうかと思ったのに)
そして懐から金貨を取り出す。
「あ、ドラコ、3分以内ね、あんたの勝ち。確かに"ポッターは箒に3分と乗っていられなかった"とは言えるもの。彼の勝ちだったけど……ねっ」
そう言って1ガリオンを放り投げ、ドラコはごく自然とキャッチしてそのまま懐にしまった。クィディッチ・ワールドカップとかでこの手の賭けは必ずやるので今に始まった話ではない。
グリフィンドールから再び引き気味の殺気が出かけたが、目を合わせてにっこりしたら目を逸らされた。ざぁこ。お金がないなら稼げばいいじゃない。
ハリーは試合が終わったあと森でスネイプがクィレルを脅している様子を立ち聞きしてしまった。
『もう一度よく考えて、
言葉がぐるぐると脳内を駆け巡っていた。
(やっぱりスネイプが賢者の石を狙っていてクィレルを脅しているんだ……ゴーントも仲間なのかもしれない)
◆ ◇ ◆
数日後、ハリーとロンは放課後にフードを目深に被って一人で小走りに校舎を出ていくゴーントの姿を見かけた。
「怪しいぜ、ついていこう」
「うん」
(あー、寒い。ロングマフラーが欲しいわ。フードでだいぶマシだけど……さっさと帰ってぬくぬくしましょ)
セラフィーナの行き先は3号温室、スプライト教授の好意で研究用に育てている魔法植物の様子を見にいくところである。
スネイプ教授と相談して進めている例の研究、植物同士の共生・競争関係の検証だ。
……といっても育つのはそう早いものではないため、日頃は大きな変化がないか軽く様子を見るだけで済む。
ざっと確認してメモをつけたらセラフィーナは小走りで温室を後にした。
(あーーー寒っ。もっと分厚いタイツ注文しようかしら。でも可愛いのがいいしなぁ……暖炉ちゃーん、今行くわぁ……)
「行ったな」
「うん、何か秘密があるに違いない。行こう」
彼らは『危険:立ち入り禁止』の文字を無視してそっと温室の中に入った。中は薄暗い。
「これ、なんだろう」
「なにかメモが置いてあるぜ」
ロンが鉢に近づき、ハリーも覗き込んだ。
「なんだ、拘束?刺激?反応……?」
すると、気づかずにそこに生えていた不気味な植物に触れてしまった。
植物は急に蠢き、二人をぐるぐる巻きに拘束し始めた。
「誰か!助けてくれ、ウワー!!」
ツタはどんどん増え、ギチギチと首を絞めあげた。
校舎に向かう途中でセラフィーナはしまった、と頭を叩いた。
温室にメモを忘れてしまったのである。
(あれ?なにか……)
急いで温室のドアを開くと誰かが『悪魔の罠』に拘束されているのが見えた。ツタは何重にも絡みつき、誰がどうなっているのかも分からない状態である。
「
セラフィーナは太陽光を放つ呪文を唱え、その生徒たちを救出した。
ツタがスルスルと解けたあと、そこに転がっていたのは何と例のグリフィンドールの二人組だった。なんでここに?生きてる?……生きてるわね。よかった。
「あら、助けるんじゃなかったわ」
そう嘯きながらセラフィーナは二人を無視してメモを回収した。
(全く、何してんのよ。たまたまメモ忘れてなかったらあんたたち死んでたわよ。はーあ。勘弁してよ、あたしの研究で生徒死んでましたとかシャレにならんわ。立ち入り禁止って書いてあるでしょーが。ったく手がかかるガキねぇ……)
目の前で1ガリオンを平気で受け渡すこの女がいちばん怖い。