スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
夜、セラフィーナは目くらまし呪文で姿を隠して四階の廊下にいた。先に着いてしまったようなので本を立ち読みしているとクィレル教授がやってきた。いつものオドオドした様子はなく鋭い目つきで、ハープを抱えている。
「あら教授、お待ちしていましたわ」
クィレルは少し驚いた様子で辺りを見回しながら答えた。
「いるのか、ミス・ゴーント」
「ええ、姿はくらましていますの」
「……そうか。では、行くぞ」
二人は扉を開いた。
◆ ◇ ◆
今回、セラフィーナは徹底的に傍観者になるつもりだった。
(そういえばそんな伝承もあったわね)
魔法をかけ、ハープが自動で演奏を始めると
クィレルは渾身の力を込めて足をずらし、隠し扉をこじ開ける。
「……ゆくぞ」
クィレルは意を決して飛び降りた。セラフィーナはしばらく
悪魔の罠に落ちたクィレルは抵抗することなくずるずると下の廊下に排出された。服が少し破れている。セラフィーナはそれを横目に優雅に降り立った。
次は鍵の間。
「箒は苦手ですの」
と適当なことを言い、観戦に回る。もちろん嘘だが。
正攻法で挑んで箒に跨って10分以上も追いかけっこを繰り広げ、やっとのことで掴んだそれを鍵穴にねじ込み、
◆ ◇ ◆
次はチェスの間である。クィレルはビショップ役をやり、一進一退の攻防を繰り広げた。焦りが見て取れる。セラフィーナはその間のんびり読書タイムである。何度も
「そこ!5手先にナイトが出てくるであろう!この馬鹿者!」
「も、申し訳ありません……」
「違う!ポーンを出せ!」
「は、はい!!」
「どこを見ておるのだ!!敵のクイーンが利いているのが分からんか!!」
「ああっ、申し訳ありません……!!」
何してんだか、まったく。
たまに"そこまずくないですか?"と盤面すら見ずに一言挟むだけで疑心暗鬼になる。ちょーおもろい。
……長い時間が過ぎ、ギリギリのところでクィレル、というより、
しかし先に進んだ彼を追ってセラフィーナも後に続こうとすると復活したチェスの駒が彼女を阻んだ。
(あら……参加してないからダメってこと?)
「
駒が文字通りバラバラに吹き飛び道が開いた。まあいいでしょ。一回勝ったし。
◆ ◇ ◆
そしてトロールの間に足を踏み入れると、怪物がノックアウトされたところだった。セラフィーナの
(ふーん、
そして続くは薬の謎解きである。うんうんと唸って何度も机の前を往復し、彼が選んだのはいちばん小さい小瓶である。はいはいそれ正解。
クィレルがそれを飲み干そうとすると、後頭部から声が響いた。
「先程より、何をしておる」
「はい……、こちらが、正解かと」
「そのような怪しい薬を素直に飲むなど、やはり貴様は馬鹿だ。罠である可能性を考慮しろ」
うん、それはそう。まあ暇だったからいま鑑定した感じだと問題ないっぽいけどね。前回は
クィレルは炎に全力で
セラフィーナは前回同様に炎凍結呪文を行使して後に続く。
◆ ◇ ◆
最後の間にあったのは鏡だった。
(あら……?こんなの無かったけれど)
クィレルは鏡を杖で叩き、調べ始めた。
「ふむ……私がご主人様に石を差し出していのが見える……」
「ゴーントの娘はどうだ」
試しにセラフィーナが鏡の前に立つと、自分が映った。監督生と首席のバッジを胸に着け、周りには同級生がいる。なんとハーマイオニーとドラコやその他のスリザリン生が仲良くお茶会をしており、ニコニコと話が盛り上がって楽しそうである。あ、父上と母上が顔を出した。何か言い、皆が笑った。なんか余裕そう。仕事に追われてない感じの顔。
それからその縁に何やら書かれた文字。……なにこれ。ああ、逆から読むのか。
(──そうか、この鏡は前に立った人の望みを映すのね)
「自分の姿と友人に囲まれているのが見えますわ」
「そうか、つまらぬ。……クィレル、早く石を献上するのだ」
「は、はい、ご主人様……」
鏡の裏に回り、クィレルはブツブツと独り言を言いながら何かを調べている。
その間にセラフィーナは無言で掛けられる範囲で最強の威力の
(なるほど。石は鏡の中にあるのね。それを使いたいと思う者ではなくただ手に入れたいと思う者のみが手に入れることができる、と。
──最強の威力でレダクトすれば出てくるかも?まぁそれでも出てくるのは私が作った偽物だけど。てか、欲しいかもーってうっかり考えたらあたしがついつい手に入れちゃう。ま、あたしが作った偽物なんて要らんけど。……面白いから見てましょ)
「そういえば
そう、これは前々からの疑問であった。答えによってはもしかしたらこの
雑な"便宜上じーちゃん"呼びにツッコミは入らなかった。
「ん……?ふむ、改めてそれを聞かれたのは初めてだな。うむ……
昔の話だ、俺様は学生の頃からダンブルドアに目をつけられておった。奴は我々スリザリンを徹底的に弾圧した。俺様はそれに対抗して学生の頃ナイト・オブ・ヴァルプルギスというグループを率いていたのだ。」
ふーん、名前ダッサ、とセラフィーナは内心でぶった斬りつつ黙って続きを聞く。
「争いは熾烈なものだった。何人もの親が原因不明の死を遂げたり、戦いの末に殺したり殺されたりした。
俺様は魔法省を目指し、奴のような純血主義に反対する者がいない世界を作ろうと考えたが、奴らの力が掛かったのか、就職活動は全て失敗に終わった。ホグワーツの教員採用も奴に落とされ、仕方なく場末の
全てはあの者たちが始めた物語なのだ。そして奴らを排除し魔法族がもっと住みやすい世にする為、立ち上がった、というわけだ」
(で、そのあんたが
「そしてハリー・ポッター……」
「あやつか、奴の両親は何か勘づいたようだった。おそらくダンブルドアかその手の者に消されたのだろう。予言を聞いて子供を消そうと思って家に行ったら奴の両親は既に殺されておった」
「──!?」
「俺様は遺された子供に杖を向けたが呪いが跳ね返り、このざまだ」
(聞いていた話と全然違う!?)
思わず黙って考え込んでいると、炎の向こうの隣の部屋から誰かの独り言らしき声が微かに聞こえてきた。
「瓶が……大きい方が……イラクサ酒……」
聞き取るのは難しかった。
「ポッターか?」
「私は隠れていますので」
「む?まぁよいか」
そこからブツブツと声が続く。かなり時間がかかって、解けたらしい。炎の中から黒髪の少年が現れた。
チェスを必死に頑張るヴォルかわいい(かわいくない)。