スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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1-32 期末パーティー

テストも返却され、今日は学年度末のパーティーだった。

言うに及ばず、学年トップはセラフィーナ。ほとんど同点で二位のハーマイオニーが圧倒的な成績を収めた。テストの内容上その二人に大きな差はなかった。

寮の獲得点数はセラフィーナがちょこちょこ稼いだのも含め、スリザリンが1位だった。本来ならもっと加点されてもいいところだが授業態度を鑑みての緩やかな得点だった。そこに不満はない。授業中の内職を怒られないのと引き換えってやつだ。広間はスリザリンの横断幕で飾られている。

ダンブルドアが好々爺とした表情で立ち上がった。

「また一年が過ぎた!……

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

寮の点数の発表があったあと、ダンブルドアは続けた。

「よし、よし、スリザリン、よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

部屋全体が静まり返り、スリザリン生の表情が固まった。昨日の出来事は──概ね周知の事実である。どこから流布されたのかは不明だが、つまり、"とある冒険譚"は生徒の中で既に広がっている。

「エヘン、駆け込みの点数をいくつか与えよう。ええと、まず最初は──ロナルド・ウィーズリー!

この何年間か、ホグワーツで見ることが出来なかったような最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに50点を与える」

(え、マジで言ってますの?)

「そしてハリー・ポッター。その完璧な精神力と、並外れた勇気、論理的思考力を称えて100点を与える」

スリザリンと点数が並んだ。

(えっぐ、やる気無くなるなんてもんじゃないでしょう。もうこの寮杯制度辞めたら?マクゴナガル教授も入学式で『名誉ある寮杯』って……あ、だめだ、マクゴナガル教授まで喜んでら。だめだこれ。はーしらけるわぁ〜)

周りのスリザリン生は怒りで震え出しそうになっている。しかも爺の宣言はまだ終わらない様子。にこにこと笑いながらざわめきが収まるのを待っている。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

「続いて、セラフィーナ・ゴーント。独自の観点から敵を追い、わしが来るまで時間を稼いでくれた、その功績を称えたい。スリザリンに10点」

「は?」

思わず声が出た。きしょいきしょいきしょいきしょい!!!あたしをその"物語"に組み込むな。やめろ、ふざけんな死ね。

周りの寮生が何か言ってるが、全く入ってこない。

点数は再び逆転して10点差?知るか。やめろ。

──ダンブルドアと目が合う。それはキラキラとしたブルーの輝きを……

目を逸らした。というか、目を合わせたくない。目が腐りそう。ほんとに無理!!!

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

そして、頭が真っ白になりかけている、その耳に、その嫌悪の塊のような声が飛び込んできた。

「敵に立ち向かうには大きな勇気がいる。しかし味方の友人に立ち向かうのにも同じくらい勇気が必要じゃ。そこでネビル・ロングボトム君に10点を与えたい」

グリフィンドールのテーブルが湧いた。帽子を投げあげる者もいた。スリザリンのテーブルはお通夜状態もいいところである。

「以上じゃ。したがって、飾り付けをちょいと変更せねばなるまい」

緑が半分消え、赤の旗が翻った。同点、だから。

 

 

セラフィーナはテーブルを爆破して10点減点を獲得できないか本気で悩み、そしてそれを必死に我慢した。

個人的な気持ちとしては返上したい。いっそ加点無しで単独優勝された方がまだマシ。

しかし、寮生(ハウスメイト)からのなんとも言えない目線があまりにつらい。あたしはそんな殊勝なキャラでもなければ、あのストーリーに乗ったつもりもない。ないが、ああいうしか無かったし、ああ語ったらこうなるというのも、……そういう問題では無い。気持ち悪い。本当に爆破したい。でも、それやったら友人たちが泣く。だし、それやったら逆張りみたいであたしが悪者になる。わかっててやってるだろ!!!ああああもう!!!!

魔力が漏れそうなくらい腹が立つ。

 

そして腹が煮えくり返り脳の血管が切れそうになりながら、にこやかに友人に応える。

「そんなことしていたとは知らなかったよ」

「いえ、その、本当にたまたまですの」

本当に。それは本当に。いや、厳密にはたまたまではないから余計に腹が立つ。

「ポッターを助けたということ?」

「いえ、そんなつもりは。わたくしはただ、クィレル教授を追って杖を向けたただけで……」

だめだ、何を言っても削られていく。

最悪。これがあのクソ爺(ダンブルドア)のやり方ってわけか。思い知ったわ。絶対潰す。いつかあの鼻へし折ってやる。ついでに腫れ上がるまで殴りたい。素手で。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

セラフィーナはこの有様を見て本気でホグワーツの改革案を考えようと決意した。

森番のドラゴン事件によって内部の職員らが考えているよりホグワーツへの風あたりはずっと強い。管理体制に疑問を持った『良識のある』保護者を抱き込んで、来年度からは理事をごっそり入れ替える予定である。そして魔法法執行部の下に教育委員会を設置し、職員の採用なども含めて魔法省の管轄下に置くところまで進めていきたい。

古臭い魔法法により、魔法省は基本的にホグワーツに口出し出来ないようになっていて、それを変更するにはホグワーツ側からの同意が必要な仕組みになっている。しかし現状唯一、それを多少の口出しができる権限を持っているのが理事会なのである。

 

闇の印と訣別して大手を振って正道を歩み始めたマルフォイ氏は脅しなどではなく極めて穏便かつ精力的に法整備を進めている。文句を言われても腕を堂々とめくれるようになったのがどれほど大きいことか。それは父ギャレットも同様である。来年あたりには少しは風通しも良くなるだろう。

 

点数システムも改善したい。寮杯を無くすのはさすがに色々と物議を醸しそうだが、一回の加点を制限するとか、駆け込みの点数は来年に回すとか色々やりようはあるだろう。

 

また安全体制も根本的に見直さなければならない。ダンブルドアはおそらく強硬に反対するだろうから実現は難しいが、これほどの状況を考えると魔法警察の職員を一人くらい常駐させた方がいいかもしれない。

 

──なんてことを考えないとやっていられなかった。なんとか、大広間を爆破せずに、

 

乗り切った。耐えた。ギリギリ。テーブルは守られた。メンタルは守れなかった。クソが。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

「辞令?」

汽車に揺られ帰宅したセラフィーナを待っていたのは魔法省からの正式書類だった。

「そうだ。お前が起草し、私やルシウスを中心として新たに設置した魔法警察庁警備企画課情報担当、通称"公安部"からのものだ。年齢で難色を示されたが私の権限でねじ込んだ。私が選考を行ったことにして面接も免除だ。この制度で何人かの生徒がその組織に属することになる。守秘義務があるので名前は明かせないが、これで動きやすくなるだろう」

「謹んで拝命致します」

セラフィーナは胸に手を当てて言った。

 

 


 

 

魔法警察庁 公安部 辞令 第13号

 

対象者:ホグワーツ魔法魔術学校 第1学年 [セラフィーナ・ゴーント]

 

魔法界における治安維持および安全確保を目的とし、以下の条件に基づき、貴殿を魔法警察庁警備企画課情報担当特別監視官補(非正規)として任命する。

 

辞令内容

i) 役職および身分

・貴殿は魔法警察庁公安部における非正規職員として任命される。

・なお、活動中の身分は極秘とし、公にその立場を明かしてはならない。

ii) 任務の範囲

・魔法犯罪の監視および捜査補助。

・魔法界の治安に重大な影響を及ぼすと判断される対象への対処。

iii) 権限

・対象者に対する拘束および逮捕の権限を与える。

・必要に応じた許されざる呪文の限定的使用を認める。ただし、使用後は速やかに書面報告が義務付けられる。

・やむを得ない場合に限り、対象者に対して致命的な手段を行使する権限を付与する。ただし、事後に速やかな書面報告と司法審査が義務付けられる。

iv) 制約と責任

・任務中の行動は公安部の指示に従うものとし、独断専行は厳禁とする。

・すべての任務および活動記録は魔法警察庁に提出し、定期的な報告義務を果たすこと。

・任務中に発生した事態について、必要な場合には司法審査を受けること。

v) 待遇

・非正規任用のため、通常の給与は支給されない。ただし、任務遂行に必要な経費および補助金が支給される。

 

特記事項

 

貴殿の任務遂行に際しては、貴校の理事長に報告されるが、公安部の指導が優先される。

本辞令の発行日をもって、貴殿は魔法警察庁の指揮下に入ることを承知されたい。

 

発令日:1992年7月13日

魔法警察庁警備企画課情報担当理事官:ガウェイン・ロバーズ

 

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