スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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そろそろ友達との普通の会話させてよ……。



2-4 空飛ぶ車

二件の面接を終え、セラフィーナは元の姿に戻った。

最終面接とはいえ、実際にはセラフィーナとの相性を見ていた側面が大きい。セドリックとジェマの二人とも問題なく採用であった。

速攻で辞令を発行したガウェインはそれぞれ別室で待機していた二人を呼び出した。

 

二人は初めて顔を合わせる。同じホグワーツの生徒であることに少し驚いたが、自分がそうであるなら、それはそう、とすぐに納得。

ガウェインが口を開いた。

「お待たせしました。今回の面接結果について、結論をお伝えします。

諸君はこの場で採用が決定しました。魔法警察庁公安部の捜査官としての任務を開始してもらいます」

「「ありがとうございます!」」

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

辞令を読み上げて渡したあと、ガウェインは口調をガラリと変えた。そう、お客さん扱いはここで終わりである。

「──だが、これは単なる名誉ある任命ではない。公安部に属するということは、魔法界の最前線で危険な任務に従事する覚悟を意味する。諸君が直面するのは、単なる学問や訓練ではない。現場では、判断一つで命運が決まる状況が待っている──理解しているな?」

「はい」「覚悟はできています」

ジェマは短く、セドリックもまた同時に応え、頷いた。

 

「よろしい。では、これが諸君の最初の任務だ」

ガウェインは二人に封筒を手渡した。

「中には、初動の任務概要が書かれている。まずは任務を遂行するための基礎訓練や合意形成から始めるが、諸君が実際の捜査に加わる日もそう遠くないだろう」

任務概要書はセラフィーナが作ったものである。それを考えるのも上司となる彼女の仕事だった。というか、大抵の書類は彼女が書いている。休む暇なんてない。なかった。

「ありがとうございます」

「期待に応えられるよう、全力を尽くします」

「結構。魔法界の安全を守ることは容易なことではない。だが、諸君らにはそれを成し遂げる素質がある。これからの働きに期待する。

……では諸君らの上司を紹介しよう。驚くなよ?──ゴーント、入れ」

 

二人は目を見開いた。

「ご紹介に預かりました、セラフィーナ・ゴーントです。先輩方、よろしくお願いいたしますわ」

あの、ロバーズさん、なんかニチャってません?まあいいか。あたしもちょっとおもろい。

「──というわけだ。細かい指示は彼女から受けろ。ゴーント、あとは任せる。今日から諸君らがチームだ。では」

ガウェインは慌ただしそうに退出していった。

さすがに若干()気まずい沈黙が流れる。

「──そんなわけで、よろしく。年下の私が言うのもなんだけど、あまり年齢に囚われずうまくやるように。

……って理事官が仰ってたわ。

先に言うけど、公務で私がタメ口になるのは諦めて。気にしてたらスピード落ちるし。

まずは執務室を案内するわ。それから辞令と任務概要の読み合わせから始めましょ」

「「はい」」

さっきの最終面接で聞いた"年齢気にしない"は嘘じゃないわね。っていうか、大丈夫そう。うん。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

そんなこんなであっという間に夏休みは終わりを迎えた。

ホグワーツより忙しかった1ヶ月半を終え、セラフィーナはホグワーツ特急に乗車していた。コンパートメントには誰もいない。

昨日、学校が始まる前に終わらせてしまおうと徹夜で捜査計画書を仕上げ、朝イチで魔法省に寄ってから来ているのだ、眠くないわけがない。

ほのかな頭痛を感じながら彼女は眠りについた。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

ふと、ものすごく嫌な予感がしてセラフィーナは目を覚ました。

 

──そして窓の外を見ると古い車が宙に浮いて汽車に並走しているのが目に入った。

 

は!?!?!?

寝起きから一瞬で頭が冴え、裏ポケットに手を突っ込みながらセラフィーナは射出魔法(デパルソ)気味に窓に頭から突っ込んで体を客車から放り捨てた。ガラスが服や体に突き刺さっているのを無視して、飛び出した勢いのまま空中で引っ張り出した箒に跨ってフルスロットルで加速する。

強力なGに寝起きの体が悲鳴を上げるが無視(そんなんしらない)

車は逃げ出そうとする動きを見せたが、最高時速315km/h以上を記録(マーク)する市場最速の箒には到底敵わない。あっという間に追いつき、セラフィーナは抜きやすい方の黒檀の杖で呪文を唱えた。

イモビラス(Immobulus)

車はその瞬間に空中で完全に静止し、運転手と助手席の人間がフロントガラスに激突する。いやシートベルトしとけや。

それを横目で見ながらセラフィーナは一度追い越し、急旋回して静止したあと、

モヴェーレ(Movere)

と呪文を唱え、地面にゆっくりと下ろした。

 

()()()()()()()対象が気絶しているのを確認し、セラフィーナは魔法通信機を起動した。座標を確認してから送話ボタンを押す。

「ゴリアテ02、こちらフェアリー01。応答願う」

訓練どおり、コールは即答だった。

「こちらゴリアテ02、現在位置A1。感度良好、送れ」

「了解。座標X453.13、Y189.22にて現行犯確認。違反()()、国際魔法使い機密保持法、マグル製品不正使用法、器物破損、魔法交通機関運行妨害罪、組織的犯罪(テロ)防止法──」

ちらりと車の方を見る。遠目だが学生に見える。

「──と、未成年魔法不適正使用法。現場到着までのETA(到着予定時刻)を報告せよ、送れ」

「了解。ETAは即時。状況、制圧状態維持中か?送れ」

「肯定。目標は気絶。ただし別の容疑者の可能性を排除できず、警戒態勢を維持中。到着次第、目標の連行と周辺調査を任ずる。準備はできているか。送れ」

「了解。通常装備にて向かう。現場到着後、直ちに確保プロトコルを実行する。指揮権の確認をお願いします。送れ」

「指揮権はこちらに保持。到着次第、対象の安全確認及び連行を指示。マグル製品の押収は許可済みとみなす、送れ」

「了解。指揮権フェアリー01保持、連行および押収確認済み。直ちに急行します。以上」

 

次の瞬間、バシン、と音を立てて()()()()メンバーが少し離れた位置に到着した。叫べば聴こえる距離だが、そのまま近距離通話に移行する。

「フェアリー01、聞こえますか」

「感度良好」

「ゴリアテ03から08到着。対象を確認。未成年者2名!!いずれも気絶。周囲にホグワーツ特急の生徒、目撃者多数確認」

セラフィーナは冷静に指示を出す。

「了解。直ちに拘束せよ。この場の目撃者は後日対応。現在は危険がないことを確認。まずは安全確保、続いて連行準備」

「了解。対象2名の安全を確認。気絶状態のまま連行準備に入ります。周囲の生徒については、目撃者の証言収集を後回しにして、まずは拘束作業を優先します──」

 

そしてしばらくして二人の生徒らしき姿が担ぎ上げられた。おそらく気絶したまま。

「──対象は無力化済み、拘束しました。連行作業に移ります」

セラフィーナは頷きかけてから、通話していることを思い出す。

「了解。当方より報告する」

 

それから改めて魔法通信機を起動する。

「ゴリアテ02、こちらフェアリー01。状況は進展した。次のステップとして対象の親宅を速やかに捜査せよ。特に違法改造のマグル製品や、飛行経路に関連する証拠を徹底的に探せ。送れ」

 

「了解、フェアリー01。対象の親族宅に関しては捜査準備を開始。空飛ぶ車の飛行経路は目撃証言や地上の証拠から分析を始めます。調査結果は即座に報告します。送れ」

「よし。飛行経路に関してはできる限り詳細な情報を集めろ。目撃証言も必要だ。特にマグルの目撃者については忘却術士本部への連絡を即座に行え。必要があれば忘却術の施行を依頼する。マグルを巻き込んだ事案は徹底的に処理しろ。送れ」

「了解、フェアリー01。マグルの目撃者に関しては忘却術士本部へ報告後、速やかに忘却術を実行。空飛ぶ車の飛行経路に関しては目撃証言を元に精査し、証拠を確保します。送れ」

「さらに魔法事故リセット部隊の介入が必要な場合には即座に対応を要請しろ。もし事故や異常があった場合、可及的速やかに手続きを進めろ。関係各所への連絡も怠るな。送れ」

「了解。魔法事故リセット部隊の確認も進め、必要があれば要請します。関係各所には状況を報告し対応を依頼します。送れ」

「いいか、今回の件は非常に敏感だ。注意深く、かつ迅速に行動しろ。報告は細かく、遅滞なく行え。送れ」

「了解、フェアリー01。報告を密に進行します。送れ」

「よし、実行せよ。あっ……、あー、フェアリー01は負傷あり。されども軽微。任務続行に支障なし。終わり」

通信を切ってセラフィーナは深々とため息をついた。

(新学期始まる前から何枚報告書書かせる気?)

それから彼女は身体の至る所に深々と突き刺さったガラスの痛みとドバドバ流れ出る血に今更気づいて顔を顰め、とりあえず目が合った破片を一つ腕から抜いて投げ捨てたあと、再びため息をついた。最悪。ほんとに。

 





……こうなる。はい。

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