スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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1-4 ハットストール

ドラコはひとしきり質問攻めにされた後自分のコンパートメントに戻っていった。

ハーマイオニーは少し喋り疲れた様子でセラフィーナから借りた『基本呪文集:グレード2』を読んでいたが、徐々に汽車が速度を落としていることに気づき素早く制服に着替え、再び読書に戻る。セラフィーナは家を出るときから制服のローブを着ていたので問題ない。

 

汽車はさらに速度を落とし、やがて真っ暗なプラットフォームに入線した。もう夜である。

列車の通路は我先に降りようと押し合いへし合いする生徒で埋まっている。

そんな様子をジト目で見ながらセラフィーナはゆっくりと座ってギリギリまで本を開いて生徒が捌けるのを待つ。別にそんな焦ること無いでしょうが。

そして生徒があらかた降りてからドアを開けて優雅に歩き出し、そしてホームに一歩踏み出し……

 

「おーい、イッチ年生はこっち、イッチ年生はこっちだ!」

という大男のしゃがれ声に顔を顰めた。ってか、でかすぎない?何事??

これが教授だったら嫌だな、と思いつつ、その大男の後ろについて歩き出す。

 

道はお世辞にもいいとは言えなかった。真っ暗な道はほとんど登山道といった有様で周りの生徒たちは滑ったりつまづいたりしながら大股でずんずん歩く大男の後を必死についていく。暗い道でハーマイオニーとはいつの間にかはぐれてしまった。

セラフィーナは面倒になって途中から空中にふよふよと浮遊し、空中に浮かべた灯り(ルーモス)を頼りに最後尾をついていった。

(おろしたてのブーツ、汚したくないもの。

というか誰もルーモスを使わないのは何故かしら。忘れてる?

……使えない?まさかね。そんなことある?)

そもそも入学前に教科書を開こうと思った人数の方が少ないということを、セラフィーナは知らない。

 

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

 

鬱蒼とした道を進んでいくと急に開けて大きくて黒い湖のほとりに出た。

そこには壮大な城が聳え立っている。高い塔が立ち並び、後ろには山が広がり、空は美しい星空である。ホグワーツ城。話は聞いていたが、予想の倍は大きい。

思わず『おおー!』という声が何人もの新入生から上がった。セラフィーナ以外の生徒は苦労して道を登ってきたため、感動はひとしおだろう。セラフィーナ以外は。いや、綺麗だとは思うが。とっても。

 

湖のほとりにはたくさんのボートが停泊していた。

大男の指示で四人ずつ別れて乗船する。

セラフィーナも知らない男子二人と女子一人と一緒に船に乗りこみ、ボートは波のない湖を滑るように進み出した。残念。いつメン(パーティーでよく会う子)とは一緒にならなかった。

皆ホグワーツ城の威容に圧倒されて黙りこくったままである。それはセラフィーナもいちおう例外ではない。喋る相手がいないというのもあるが。グレンジャーさんはどこに行ったのやら。まあこの人数でこの暗闇なら仕方ないか。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

やがて船団はトンネルを潜り地下の船着き場に到着した。

ぞろぞろと集団は石の階段を登り、そして荘厳な扉の前に辿り着く。

大男が扉を叩くとそれはゆっくりと開いた。

……いいじゃん。なかなか期待通りのスケール。大男がムサいのだけが減点だが。

 

扉の向こうに立っていたのはエメラルド色のローブを着た黒髪の魔女である。

「マクゴナガル先生、イッチ年生の皆さんを連れてきましただ」

厳格そうなその魔女は威厳たっぷりに口を開いた。

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かります」

大男の名前はハグリッドと言うらしかった。

きちんとした教授らしき魔女にセラフィーナは少し安心。召使いかなんかだったのかな。ま、それならいっか。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

玄関ホールを横切り、さらに扉を越えた先は今まで見たどんな部屋よりも大きい大広間だった。大広間は上級生徒でがひそひそと一年生を見ながら喋る声で埋め尽くされている。千人弱といったところか。さすが英国でも屈指の名門私立学校。

 

また、横ではハーマイオニーが別の生徒に声は小さく、しかし怒涛の勢いで喋っていた。

「……あれは魔法で本当の空に見えるようにしているんだって、『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」

(うーん、友達いなかったのかな……。嫌味な印象は私は持たないけれど、あれ割と嫌われるでしょうね。しらんけど)

そんなことを思いながら立ち止まると、黒髪の魔女、マクゴナガル教授が大広間の奥の広くなっているスペース──教授たちが壁際に並んで座っているテーブルの前に椅子を置き、その上に古びた帽子を載せた。

 

「ホグワーツ入学、おめでとう」

マクゴナガル教授が話し始めた。

「これからあなた方は自分が入る寮を決める儀式を受けることになります。寮は学校にいる間常に共に過ごす仲間であり、家族のようなものでもあります。寮はグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリンの四つです。

また、皆さんは良い行いをすれば寮に得点が与えられ、悪い行いをすれば減点されます。学年末にはその総合得点で最も高かった寮が名誉ある寮杯を獲得します。皆さん、くれぐれも誇れる学生生活を送るのですよ」

(ああ、だから寮同士仲が悪いのかしら。なるほど)

マクゴナガル教授はそこで言葉を切り、帽子に注目する。

と、帽子が歌い出した。

 

「私は綺麗じゃないけど…

 

(この帽子、どんな魔法がかけられているのかしら。一度分解させてもらえないかしら?どこから声が出てるのかしら。どこまでバラしたら喋れなくなるのかな……拷問の呪文の類は効くのかしら?)

 

セラフィーナがあまりに不謹慎なことを考えている間に帽子は歌い終わった。皆は拍手喝采である。帽子が歌った寮の特徴は『ホグワーツの歴史』に書かれた通りだった。

(スリザリンだけ野心だの狡猾だのと悪く言われがちなのってこの帽子のせいなのかしら)

……それは間違っていないかもしれない。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

マクゴナガル教授が生徒の名前リストを読み上げていく。

それをぼんやりと眺めていると自分の名前が呼ばれた。

「ゴーント、セラフィーナ」

はい、と返事をして前に出るとマクゴナガル教授が帽子を持ち、セラフィーナは椅子に座り、帽子が近づき、頭に乗る──

 

──前に帽子が叫んだ。

「スリザリン!!」

(まぁ、でしょうね。よかった、"アズカバァァァン!"とか言われなくて)

 

大広間の一角からは盛大な拍手が上がった。グリフィンドールのテーブルからは拍手はほとんど聞こえない。

前を見ると教職員たちと目が合った。黒髪がねっとりした教授は身を乗り出してこちらを見ている。その隣のターバンを巻いた怪しげな教授もこちらを鋭い目つきで見ている。そして中央の髭の長い教授──は知っている。アルバス・ダンブルドアだ。ターバンを巻いた教授とは比べ物にならないくらい鋭く、険しい目つきをしていたように感じた──のは一瞬で、柔和な顔つきで小さく手を合わせて拍手をした。

(今一瞬殺気に近いものを感じた気がしたけれど…)

セラフィーナは内心で軽く首を傾げてからスリザリン生の集まるテーブルに向かった。

 

「ジェマ・ファーレイよ、歓迎するわ!」

スリザリンのテーブルでは全員が立ち上がってまるでアイドルに群がるファンのようにセラフィーナを迎えた。

「「「よろしく!」」」「「「ようこそ!」」」

セラフィーナはそこで初めて自分がスリザリンの末裔であることを自覚した。

「よろしくお願い致しますわ、先輩方」

猫被りは得意なほうである。被らなくていいやって思ったら割とすぐに(ソッコーで)剥がれるが。

 

 

騒ぎがある程度収まったのを見てマクゴナガル教授が次の名前を呼んだ。

「ゴイル、グレゴリー!」

彼はすぐにスリザリンに組み分けられた。

肥満気味の彼は巨体を揺らしながらスリザリンのテーブルに迎えられる。

 

そしてその次に呼ばれたのは、

「グレンジャー、ハーマイオニー!」

緊張で埋め尽くされたような様子で小走りにハーマイオニーが前へ出た。

セラフィーナと違って帽子はしばらく悩んでいる様子だった。

3分が経ち、4分、そしてとうとう5分が経過してもなお帽子は沈黙したまま。

「ハットストールだ!」

周囲で囁き声が上がり、大広間はざわめいた。

「50年に一度と言われているんだぞ」

誰かが言った。皆が注目する中、ハーマイオニーが軽く頷いたように見えた。

 

次の瞬間、

「レイブンクロー!」

と、帽子が叫んだ。

 





マクゴナガル以来ハットストール(5分以上)は出てないのは公式設定のはず。
そしてハーマイオニーは原作で4分かかってます。

JKR先生が明言してたけれど、もし機関車でハリロンと出会わなかったらレイブンクロー行ってたって。
……確か。
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