スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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ようやく復帰です。よかったね



2-9 後見人

ハリーとロンは4日間拘留された。厳しい取調べが続き、一切の隠し事は許されなかった。

取調べの傍ら当局の担当官が面会し、説諭を行った。

マファルダ・ホップカークという魔法不適正使用取締局に勤める小柄でフワフワした髪の魔女は、長い長い説諭を終えたあと呆れて内心で呟いた。

(ウィーズリーの親はどんな教育をしていたの……?国際魔法使い機密保持法なんてまともな家庭なら物心着く頃から繰り返し話して聞かせる内容でしょう。曲がりなりにも純血名家なのに──あまり言いたくないけれど、『血を裏切る者』って陰口言われているのも納得してしまうわね。

まぁポッターに関しては……気の毒ね。マグルの里親に預けられてまともな教育を一切受けてこなかったのだから……。法律知識も全て初耳だった上に、車に乗るのも結構強引に押し切られたらしいし、道中もただ単に同乗していただけだったらしいし……)

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

供述調書が作成され、彼らは署名と捺印を求められた。

疲れ果てていた彼らは内容を読み飛ばしてサインをして拇印を押した。まあ、実際に調書に変な項目は一切なかったものの、それをきちんと読む気力など残っているはずもなかった。

 

そして引き取りという段になって当局の担当官は大いに困惑した。

父親が取り調べを受けているウィーズリーの方は母親がいる為問題はない。

問題はポッターだ。調べた結果、マグル生まれの両親を持つ未成年に必ず設定され魔法界での責任を負って導く役を担うはずの後見人が、魔法使いの家庭から突然孤児になった関係ですべて有耶無耶になっていた。彼はマグルの里親に育てられているので担当弁護士が付くべきなのに、当局で実態の把握すらされていなかったのだ。

省内で紙爆弾(書類の嵐)が飛び交った。大急ぎで全ての手続きが進められ、レジナルド・カーヴァスという大ベテランの弁護士が選出された。彼なら心配ない、と誰もが太鼓判を押す人物である。

 

──彼は本来受け継がれるべきポッター家の()()()()()の鍵や屋敷、ハウスエルフなどを含めた遺産の相続手続きという、真っ先に行われるべき手続きまでもが10年以上放置されていたことに珍しく悪態をつくことになるが、それは少し先の話。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

ハリーは当局から解放され、魔法法執行部ウィゼンガモット最高裁事務局未成年者保護課の小さな会議室に通された。

……と言っても、二日目からは事務室にて説諭担当から法律を教わってひたすら真面目におとなしく勉強していたのだが。

 

呼び出された壮年の弁護士・レジナルドは──彼にしては極めて珍しく──魔法省の廊下を全力疾走し、息を整えてから入室すると柔和な雰囲気をまとって握手を求めた。

「初めまして、ハリー君。弁護士のレジナルド・カーヴァスだよ。君が成人するまで後見人を務めることになった。よろしく」

「よ、よろしくお願いします」

「……今まで君に後見人が付けられていなかったのは何らかの手違いだ。当局を責めていい。

これからは私が、君の生活や法律周りのあれこれをサポートする。進路や人生相談、……なんなら恋愛相談なんかもね。いつでもなんでも相談してほしい。費用はかからない(当局持ちだ)から」

そう言ってニコッと笑った彼は存外に話せるタイプらしかった。

「あ、ありがとう、ございます……」

「今回の君の行動は──説諭はうんざりだろうから省略するよ。

弁護士という私の立場からすると、そういったことを教え導く者がいなかった事が一番の問題だ。もちろん反省はすべきだけど、通常それは親、親がいなければ私のような()()()()()()となる。つまり、まぁあまり自分を責めすぎることはないよ」

みるみるうちにハリーの目に涙が浮かんだ。

 

長い間堪えていたものが溢れ出し、泣きじゃくり、

 

──ようやく落ち着いたあと、彼は続けた。

「これから私の付き添いでホグワーツに向かおう。なに、心配することは無いよ。準備はできているかな?」

ハリーは頷いた。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

ハリーは罰則をかなり怯え、それを道中レジナルドは『そう悪いことにはならないよ』と温かい言葉を交わした。

しかし、その恐怖はそう簡単に拭えるものではない。もし退学になったらどうしよう。もしダーズリーに手紙が行ったらどうしよう。そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。

レジナルドはそれに対し、ただ単に気休めを言うのではなく、

「事情は分かっているよ、もし本当にそうなったら私からも直談判するから、心配だと思うけど到着するまでは別の話でもしようか。どのみちもう今ここで怖がっていても結果は変わらないし、なるようにしかならないからね」

と励まし、彼の背中をさすった。

 

そして学校に到着し、ハリーを引き取ったマクゴナガル教授は厳しい顔はしつつも、こう言った。

「ミスター・ポッター。減点も罰則もありませんよ。あくまで学期が始まる前のできごとですし、当局から指導を十分受けたでしょう。それよりも、休んだぶんの勉強をしっかりなさい」

萎縮はすぐに解けないながらも、ハリーは()()()()()()大人たちの温かさを胸に抱き、久々の学校に復帰できたことに心から安堵した。彼が何よりも恐れていた退学処分は、なかったのである。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

一方、レジナルドはハリーを見送ったあと、ついさっきまで彼に向けていた柔和な雰囲気を捨て、怒気を孕んで校長室に立っていた。

「アルバス・ダンブルドア校長、初めまして。私はハリー・ポッター()の後見人として、未成年者後見人制度の指名を受けた弁護士、レジナルド・カーヴァスと申します。本日は、あなたのこれまでの対応について直接お伺いしたく参りました。

彼はこれまで、いかなる理由で()()ダーズリー家に放置されていたのですか?彼の生活環境に関する証言を確認しましたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あなたはハリー・ポッター氏をあの家庭に置くことが彼の幸福と安全のためだとお考えだったのでしょうか?彼は11歳になるまで()()()暮らしていたのですよ!?

英雄が、などと言うつもりは毛頭ありません。ただの一人の子供として、ありえません。

──本当にあり得ません

 

一呼吸だけして、続ける。

「校長、あなたはハリーを『魔法界の英雄』として見ておられるのかもしれません。しかし、私は彼をただの一人の未成年として見ています。そしてその未成年者を保護し、成長を支えるべき立場にある()()()()、その責任を果たしているとは到底思えません。

あなたの監督責任について法的措置を講じる必要があるかどうかを判断するため、今後の対応に関しても厳密に記録させていただきます。ハリー・ポッター()の安全と福祉が最優先であることを、改めて強調させていただきます」

 

それに対し、ダンブルドアは飄々と答えた。

「ああ、これはこれは。お忙しい中わざわざお越しいただき、ありがとうございます。ハリーのことを気にかけてくださる方がいて、わしも非常に心強く思いますじゃ。どうぞ、まずはお座りください。お茶はいかがかの? レモンキャンデーもございますが、お好きですかな?

さて、ハリーの幼少期のこと、そしてホグワーツでの出来事について、いろいろとご意見をお持ちのようですの。それは当然じゃ。彼の立場は特別ですから、周囲の皆が彼のことを心配するのもよくわかる。

じゃが、人生というのは、時に試練を通じてこそ成長を遂げるものじゃ。彼が経験した出来事の数々は、確かに危険だったかもしれぬが、それが彼の成長にどれほど寄与したか、考えたことはありますかのう?

……ああ、若者というのは、どうしてもトラブルに巻き込まれるものじゃ。わしの若い頃も、似たようなことを経験したものじゃ。もちろん、学校としては安全を確保するために最善を尽くしておるが、完全に危険を排除するのは難しいものですのじゃ。それに、ハリーには他の生徒にはない特別な資質があるからの、彼が選ばれるべくして選ばれた試練も、きっとあったのじゃ。

とはいえ、あなたの懸念はよく理解しましたぞ。今後もハリーの安全と幸福が確保されるよう、私も引き続き注視して参ろうぞ。お力になれるよう最善を尽くしてゆこう。

……さて、レモンキャンデーをどうぞ。お気に召すといいのじゃが」

 

レジナルドは困惑と苛立ちを隠さずに言った。

「……話になりませんね、校長。危険の正当化や美化は構いませんが、法と制度は感傷では動きません。責任を果たす気がないのであれば、然るべき手続きを取らせていただきます。お時間を取らせて、失礼しました。

──ああ、レモンキャンデー?は結構です。甘い言葉で包装された薄汚い現実には、もううんざりですので」

 





いや、かわいそうだよ、ほんとに。
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