スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
爺お前ほんまそういうとこやぞ
瞬く間に9月が過ぎ、10月も終わりに差し掛かっていた。
グリフィンドールのクィディッチチームと場所の取り合いで揉めてあわや乱闘騒ぎになり掛けた以外は大きな出来事もなく、平和な日々が続いた。ちなみにその時ナメクジの呪いを掛けようとした赤毛はセラフィーナの盾の呪いで跳ね返されて口からナメクジを撒き散らす羽目になったた挙句、身体中から謎の触手を生やされて逃げて行った。
……なお、ポッターはだいぶ赤毛に困惑していた様子で、あの、なんか、ごめんなさい、とか言っていた。
そして今日はハロウィーンである。
(去年は大騒ぎになって退学になりかけたわね……今年は何事もないといいけど)
──それはまさしくフラグというやつであった。
大広間からぞろぞろと出ていった生徒たちはとんでもないものを廊下で目にすることになる。
「
血で書かれた文字を見てセラフィーナの周りから生徒がぞわりと後ずさった。
(なにこれ!?)
もちろん心当たりは無い。センスがキモい。そもそもこんなつまらん悪戯もしない。する理由がない。なさすぎる。
松明の腕木に引っかかった猫──管理人アーガス・フィルチの飼い猫だ──の死体らしきものと血文字を見つめて生徒たちは固まっていた。
そしてフィルチが生徒をかき分けてやってきて猫を見た途端、恐怖のあまり顔を手で覆って絶叫した。
「私の猫だ!私の猫だ!ミセス・ノリスに何があったんだ!
──お前だな!お前が私の猫を殺したんだ!あの子を殺したのはお前だ!お前も殺してやる!」
(いや、違うけど……)
と思いつつセラフィーナもさすがに驚きでやや思考が停止気味になっていた。
その時、ダンブルドアが教授を従え、鋭く怒りを湛えた表情で有無を言わさずに
「アーガス、一緒に来なさい。そしてミス・ゴーントもじゃ」
(えぇ……)
「私何もしてないですが」
「いいから、来るのじゃ」
有無を言わさぬその態度にセラフィーナは内心で盛大に舌打ちしながら着いて行った。
◆ ◇ ◆
ロックハートが部屋を提供した。
(こいつなんでまだ解任されてないのかしら)
そんなことを考えながらセラフィーナは教師陣に囲まれて立っていた。帰りたい。
まずダンブルドアが猫を調べる。ロックハートは何やら自慢話と訳の分からない憶測を撒き散らしているがその場の全員が無視した。
「アーガス、猫は死んでおらんよ」
「死んでない……?それじゃどうしてこんなに冷たく固くなって……」
「石にされたのじゃ」
言うが早いか、ダンブルドアはセラフィーナの襟首を掴んで壁に押し付けた。
「ゴーント、何をした。吐くのじゃ」
セラフィーナはダンブルドアの腕を掴んで振り払い、服を整えながら
「何もしておりませんわ!」
ダンブルドアは詰め寄る。
「しかし
「だから知りませんってば。わたくし、先程まで大広間で食事していたのですよ?
周りに友人もおりました。確かめてみてください。物的証拠?コレと私となんの関係があるのです!」
「魔法でどうにでもできるじゃろう」
セラフィーナは叫んだ。
「確証もないのになんでそんなことが言えるのです!!」
バカかぶち殺すぞ、と喉元まで出かかった。
押し問答が続いた。
悪魔の証明と言うやつである。
(こいつ、
「水掛け論でしょう。話になりませんわ」
その冷えた態度に、ダンブルドアは逆に青筋を立てた。
「もうよい!君を無期限の停学処分とする!今すぐ荷物をまとめて家で謹慎しておれ!」
「はあ!?!?」
言うが早いか、セラフィーナは校門に転移させられた。ホグワーツに掛けられた魔法を校長の権限で行ったのだ。
寮に置いてあった荷物が地面に落ちている。仕事場代わりに使っているトランクと、全ての荷物が詰め込まれているポーチだ。
泥にまみれ。
転がり。
「……あいつ殺す!絶対に殺す!」
無期限停学とは実質的な退学処分に相当する。
怒りに任せてセラフィーナは杖を引き抜いて全力で呪文を唱えた。
「
即座に空中に重水素化リチウムのコアが発生した。
セラフィーナの研究資料の片隅にメモされている自作の魔法である。
(もうこんな学校知らん!滅べばーか!)
怒りに任せて魔力を注ぎ込み続けると魔力場が究極の超高圧・超高熱状態となる。
──そしてセラフィーナは全力で注ぎ込んだ魔力を解放した。
一点に向かって凝縮するように放たれた最大出力の魔力放射はコアの自己点火条件を満たしてD-T反応を引き起こし、
人工の太陽がその場に出現した。
付近の地面の温度は土が容易く蒸発するほどに達し、辺り一面は一瞬で更地と化す。
轟音などという生易しいものでは無い空気の波は遠く離れたホグズミードの窓ガラスすらを揺らした。爆心地にて渾身の魔力で展開した盾の呪文で身を守ったセラフィーナはいとも容易く吹き飛ばされ宙を舞う。
数百メートルの範囲で全てが焼き尽くされ、キノコ型の雲が立ちのぼる。漂うツンとしたオゾンの臭いがその魔法の原理を物語っていた。
空中でトランクを抱えて体勢を整えた彼女はホグワーツを見たが、保護呪文の内側には何一つ被害が出ていなかった。
(なにあの呪文強度!?馬鹿なの!?)
自分のことは棚上げである。
バカはどっちだ。
なお、校門は城から遠い上に往来が少ないので今のところ誰も気づいていない模様。
要するに、
──セラフィーナ・ゴーント単独キレ芸ライブ
である。