スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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2-14 復学

教育委員会は異例のスピードで編成された。

傍聴に出席したホグワーツの保護者を中心に様々な部署から集められたメンバーが兼務も含めて集まり、魔法法執行部のフロアには新たな部屋が追加された。

──そしてそのメンバーにはセラフィーナの姿もあった。

 

例によって非正規で外部には秘匿扱いのメンバーだが、内部からの情報など学生ならではの視点が期待された。さらに、編成にあたって提出されたホグワーツの現状と改革案を記したレポートがその卓越した視野を物語っていた。

(名簿外とはいえ委員会のメンバーが停学中って皮肉ぅ〜)

 

最初に開かれた教育委員会の最初の議題として全会一致の形式的決議(いやどう考えても復学でいいでしょこれ)により、セラフィーナは停学から1ヶ月半かかってようやく復学の"推薦"が出され、ロックハートの調査も始まった。セラフィーナはここぞとばかりに公安部で作成した溜まっていた資料を放出した。教育委員会はホグワーツに対して命令することはできずあくまで勧告という形にはなるものの、さすがにこれはもはや時間の問題だろう。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

間もなく復学が()()()()()されて、例によってホグズミードから箒で飛んだセラフィーナは、1か月半前からそのままになっていた校門前の惨状を見て顔を引き攣らせた。

(やっべー……ブチ切れて焼き払ったままだったわ……)

生えていた木は炭化し、街灯などは跡形もなく消え、中心に近づくともはや何も残っていなかった。道があったところには巨大なクレーターが生まれていて、地面は溶解してガラス状になっていた。

セラフィーナは周囲から土を持ってきて穴を埋め、表層を石畳に変身させて元のように作り直した。生えていた木に関してはすぐにはどうしようもない。後で生やしておくか。炭は微生物が分解できないため、土に変身させておいた。

 

(はー、私も()()アンガーマネジメントを覚えなきゃね……)

いや、爺が悪い。あたしは……()()()()悪い。うっさいわね!わかってるわよ!

イラッとしたら10秒待てって?わかってるわよ。10秒でどう()()()()か考えて10秒後に跡形も残さず消し飛ばせってやつでしょ?はいはい知ってる知ってる。

 

ちなみに内部情報(セドリックからの報告)によると、月例のホグズミード行きは襲撃事件以降中止になっているとのこと。……つまり、おそらく本当に誰も気づいていない。つまり何も無かった。……ってことで。いいわね?

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

やがてスネイプ教授が校門まで迎えに来た。

門を抜け、しばらく無言で二人は歩いていたが、ふとスネイプが呟くように言った。

「私は反対したのだ。正直に言えば全く疑う気持ちがなかったという訳では無いが、いくらなんでもあれは無いであろうとな。あの態度は普通ではなかった。まるで私が学生の時の……」

「……何かありましたの?」

スネイプは口ごもった。

「いや、何でもない──庇ってやれずに済まない」

「教授が謝ることではありませんわ……あいつはいつか殺す

セラフィーナの後半のその口調はあまりの怒りからか逆に感情が抜け落ちたように平坦なものだった。

「……聞かなかったことにしておく」

スネイプはげんなりとした顔でそっと目を逸らした。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

クィディッチの初戦が終わってしまったと聞いてセラフィーナは思わず大広間に並べられた机に拳を振り下ろした。すこぶる頑丈なはずの胡桃(ウォルナット)の机が嫌な軋み方をし、周囲の生徒はそっと彼女から距離を取った。こわい。

……アンガーマネジメントどこ行った?いや、破壊しなかっただけえらい。たぶん。

聞けば代役のシーカーは力及ばずハリー・ポッターがスニッチを取り、クアッフルによる得点では圧倒していたのにスニッチを取られて10点差で逆転されてしまったという。

(残りの試合で全部ねじ伏せ(殲滅し)てやる)

セラフィーナからはどす黒いオーラが滲み出ていた。

 

 

そんなセラフィーナを待ち受けていたのは『決闘クラブ』という催しだった。

「決闘クラブ?」

「ええ、今日の夜にやるらしいわよ、掲示板に張り出されてたもの」

「ふぅん……」

(となると決闘チャンピオンのフリットウィック教授かしらね?楽しそう。お手合わせいただけないかしら)

「セラも行く?」

「行くわ」

「セラが行くなら私も行くー!」

「私も〜」

ダフネとパンジーが暢気に言った。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

担当はフリットウィック教授では無かった。

驚くべきことにあの無能(ロックハート)が現れたのだ。しかもスネイプ教授を助手として連れている。

(教授もよく引き受けたわね……いや、()()()()()

うん、そりゃそう。こんなん野放しにして変な決闘作法なんて教えられたらたまったもんじゃないもの。っていうか、普通に危険。ほんっとに生徒想いなんだから。

……まあついでにボコりたいのも事実でしょーけど。

無能(ロックハート)は、あーだこーだと御託を並べたあと、スネイプ教授と向き合って一礼した。

そして芝居がかったいつもの口調でロックハートが解説する。

「ご覧のように、私たちは作法にしたがって杖を構えています。そして三つ数えて最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」

杖を構え、数える。

「一……二……三……」

エクス(Ex)……ペリ(pelli)アーメス(armus)!」

スネイプ教授がものすごく丁寧に(舐めプで)生徒が聞き取りやすいように武装解除呪文を唱え、ロックハートは吹っ飛んだ。宙を舞い、壁に激突してズルズルと滑り無様に転がった。

ざまぁ(ざまぁ)

セラフィーナは呟いた。他に感想なんてない。

 

続いて生徒同士で組んで決闘の訓練をする流れになった。セラフィーナはにこり(ニヤリ)笑って(嗤って)周りを見たが、全員が後ずさった。

え、なんで?遊ぼーよ。え、なんでそんな目で見るの、あたしちゃんと手加減するし……

……しょぼん。ほんとにただ遊びたかった(Teaching Assistantするつもりだった)だけなのに……。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

結局誰にも相手をして貰えずセラフィーナは拗ねながら周りの様子を観察していた。

ぶーう。普通に楽しく手加減ありでって思ったのに。

 

しばらくしてドラコとポッターが戦うことになり、セラフィーナは人だかりに参加した。

いくつか呪文を撃ち合ったあと、ドラコは、

サーペンソーティア(Serpensortia)

と唱えた。蛇が現れる。

蛇は鎌首をもたげて辺りを睥睨した。しかし、

「私にお任せあれ!── ヴォラーテ・アッセンデレ(Volate Ascendare)

とロックハートが叫んだ。

(蛇投げあげてどうすんの……?なんでこいつ毎回トンチキな魔法使うの?ボケてる?ラテン語分かんない?なわけある?)

怒り狂った蛇はセラフィーナの方に向かってきた。

「ごきげんよう、きゅーとな蛇ちゃん」

セラフィーナは蛇に話しかけた。

「ごめんねぇ、バカが虐めちゃって……。怖かったよね、あとでしばいとくからもう大丈夫よ」

蛇は大人しくなり、とぐろを巻いた。ちろちろ、と舌を出し、クイクイ、と首を縦に振って頷いた。

──それからセラフィーナは周囲の生徒が驚いてる(ガチでビビってる)のに気づいた。

「あ、あーーーーっ。

……言ってなかったっけ、あたしパーセルマウスだよ」

そう言ってセラフィーナは頭を掻いた。

 

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