スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄   作:魔法史編纂委員会

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2-18 捜索

早めのクリスマス休暇を堪能する暇はなかった。

 

魔法警察庁警備企画課の執務室には若い顔が三つ揃っていた。

中心に座るのはセラフィーナ。背筋が伸びて今は仕事モード。

セラフィーナの向かいには彼女の部(・)下(・)である新任メンバーがいる。一人は二つ年上のセドリック・ディゴリー。穏やかな笑みと整った顔立ちだが、今は鋭い眼差しでセラフィーナの言葉を待っている。もう一人は、さらに年長で四年上のジェマ・ファーレイ。スリザリンの監督生で、抜群の統率力で慕われているいる才媛である。彼女はメモを片手に黙ってセラフィーナの説明に耳を澄ませている。

 

セラフィーナはばさりとテーブルに校内地図を広げた。ホグワーツ内部を描いた羊皮紙には教室や研究室はもちろん、各寮の塔や図書館、禁書棚、裏口や使用禁止区域などがマークされている。入学して1年半、せっせと深夜徘徊(お散歩)した成果とも言える。

 

「まず、ここで基本合意を形成しましょう。私たちは生徒ではありますが、改めてホグワーツ内部の環境を知る必要があります。寮生や教職員と接触する中で、不審な動きを示す者を洗い出し、潜在的な脅威になり得る存在を特定することが私たちの目標です。任務を遂行する際には各自の強みを活かしていきましょう」

セラフィーナの声には冷静な分析モードの響きが宿っている。セドリックが頷いた。

「僕はハッフルパフ寮生として、身近な噂話や裏情報の収集に当たります。謙遜を棚上げすると……人望にはそこそこ自信がありますから、生徒間の関係性や動向を探ることは任せてください。疑念を抱かれぬよう自然な会話で情報を引き出します」

ジェマは、涼しげな微笑を浮かべた。

「私のほうは、スリザリンの監督生としてアクセスしやすい情報にあたります。教授会のこぼれ話、校内の規則違反、また、図書館司書のマダム・ピンスの手伝いをしていますので禁書に興味を示す人物など……目立たない形で把握できるはずです。情報整理や照合も貢献できると思います」

セラフィーナは無意識に声のボリュームを絞って続けた。

「特にこのミッションは校長のアルバス・ダンブルドアが焦点となります。彼がどのような方針で学校を運営し、陰謀の兆候や政治的意図がないか徹底的に見極める、というのか上(・)か(・)ら(・)の(・)指(・)示(・)です」

ま、その上(・)と親子なのがあたしなんだけど。それは黙っておく。

「了解です」

セドリックは頷き、ジェマが続けた。

「私も、教育方針や教職員の個性については多少耳にしたことがありますが──いえ、個人的な見解については黙っておきます。セラフィーナ捜査官、具体的な行動指針に補足はありますか?」

そう、悩んだ結果『捜査官』と付けて呼んでもらっている。校内では後輩先輩の立場だが、ここでは上司と部下の関係としてバランスを取っている。

 

セラフィーナは少しだけ思案してから口を開いた。

「情報収集より"露見しないこと"を優先すること。仮に"あと一押し"で何かが掴めそうでも、露見する可能性が無視できないならすっぱり諦めること。情報にアクセスする機会は他にもあるので。無理をしない。それと、閉心術の訓練は引き続き継続しましょう。最終的にはダンブルドア級の開心術(レジリメンス)に耐えることが目標ですね」

だいじょーぶだいじょーぶ。ちょっと魔(・)改(・)造(・)するだけだから。

セドリックは若干引きつった顔で再び口を開いた。

「あくまで僕たちは新任。あまり派手な行動をとらず、自然な立ち回りを心掛けますね。……閉心術は、頑張ります」

ジェマは涼しい顔で頷く。

「あくまで監督生として自然な範囲を維持して成果の最大化をねらいます」

セラフィーナは淡々と続けた。

「よろしい。それから、これは理事官とも相談済みですが、校長がいない隙を見計らって校長室を捜索しようと思っています。これは危険で隠密性と迅速性が求められる任務なので私一人で実施します」

二人はさすがに顔を見合わせた。

「それはリスクが高過ぎませんか!?」

「ええ、承知の上です。ですが、彼を普通に監視しても尻尾はなかなか見せてくれないので。失敗したらいたずらということにして誤魔化しますので問題ありません。既に薬を盛ったりブーブークッションを設置したり校長室前に対人地雷(M18クレイモア)を設置したりと、カモフラージュ(ただの憂さ晴らし)は相当やっているので。

教育委員会の方で会議を設定して魔法省に呼び出している間に実施します。ダラダラやるように伝えてあるので時間は十分にとれます。そちら側と連絡も取れますから失敗のリスクは無視できると考えてます」

「「なるほど……」」

彼らは不安そうな顔を見合わせた。……いや、違う、ドン引きしてる。ナンデ???

まあいいや。話をまとめましょ。

 

「よろし?では、行動を開始しましょう。この寮の模様が描かれたピンバッジを渡しておきます。この模様が──このように変化したら呼び出しの合図です。状況を見計らいつつ不定期で集まり、報告と分析を行いましょう。次(・)回(・)の(・)場所は、この、過去に使われていた箒置き場です。その次の場所は次回考えましょう。

……あ、メモは私信箱(シスタ・アルカナム)に入れて私に送るか、そうでないものは必ず焼却処分するように。多少余計なメモを送っても構いません。ラブレターも歓迎です」

「了解」

「了解です。……ラブレターを送ることはないと思いますけど」

ぶー。真面目だなあセドパイセンは。ま、あたしがラブレター欲しいのはジェマパイセンなんだけどね。たまにはデレてくれないかなぁ。内面結構熱いのにいつもクールなんだから。

──まいいや。こんなもんでしょ。

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

そして休み明け、

ついに校長室の捜索の日がやってきた。ダンブルドアは留守である。この間の毒蜘蛛大事件についての質疑というヘビー級の議題に加えて時間稼ぎも頼んであるので、おそらく今日は帰ってこないか、帰ってきても相当遅い時間なのは間違いない。

「レモン・キャンデー」

セラフィーナは目くらまし呪文によって透明な状態で合言葉を唱えて動く階段に乗った。ここの合言葉(パスワード)変えないの?まあいいけどさ。

 

上についたあと、今度は頑丈なドアが行く手を阻んだ。

爺(ダンブルドア)が在室の時は不用心に開いているが、今は不在。頑丈なロックが掛かっている。

セラフィーナはぐるぐると腕を回した。

──特に動作に意味はないが。ここは本気でいく。

どういうわけか、杖がめちゃめちゃ張り切っている気がする。

 

そして、

「アロハモーラ(Alohomora)」

ぶるぶると腕が震えるほどの魔力を注ぎ込み、押し切る。鍵から凄まじい抵抗があり、ガチャン、と扉が鳴る。しかし、まだ手応えは終わらない。杖先からスパークしてぶるぶると震える。人生でもこれほどの魔力を使ったことはない。

再びガチャン、と二つ目が開いた。

まだまだ終わってないのは分かっていつつ試しに魔力を止めてみるとガチャガチャと2回音が響いた。

なるほど。全部一発で開けきらないと振り出しに戻る(並列じゃなくて直列)ってわけだ。侵入対策としては相当筋がいい。

 

機構の方針もわかったので改めて突破を試みる。

 

一つ、二つ……。

 

ここまでは知っている。

 

三つ、四つ……

 

鍵が必死に抵抗し、セラフィーナはありったけの力でそれをこじ開ける。

 

五つ……六つ……七つ……八つ……。

 

手応えが急に消失した。開いたっぽい。

 

魔力をカットして慎重にドアノブを捻ると、それは無抵抗に回った。突破成功である。

……なんだろう、このロック、めっちゃ脳(・)筋(・)と性(・)格(・)の(・)悪(・)さ(・)が同居している気がする。まあいいや。

 

ドアをほんの少し開いて杖を差し込み、唱える。

「テネブラ(Tenebra)」

暗闇をもたらす呪文である。隙間からそっと覗き込み、辺りが真っ暗であることを確認してから彼女はそっと侵入し、次の呪文を唱えた。

「オブスキューロ(Obscuro)」

これで肖像画は目が見えなくなったはずである。あとで忘却術で修正するが、念には念を入れておく。

レベリオをそこら中に乱射しつつ、他に防衛機構が無いことを確認する。大丈夫そうだ。

暗闇を解除し、セラフィーナはようやく息を吐いた。

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

(うーわ、マジですの……)

捜索の戦果は上々であった。むしろ予想の斜め上とも言っていい。

本棚からは闇の魔術に関する本が出るわ出るわ。机の引き出しに入っていた闇のアイテムも数知れない。黒き囁きの仮面、血喰いの鎖、黒炎の燭台……。闇の魔術専門店が開けそうなそれら(コレクション)を見てセラフィーナはドン引きした。

(これ、ア(・)レ(・)よね……)

蛇がとぐろを巻いた意匠、ゴーント家の紋章が入っている小さな護符だった。裏返すと蛇の瞳が埋め込まれている。

(なんでここに!?)

それはいくつか伝わるゴーント家の家宝の一つだった。サラザール・スリザリンのロケット、ゴーントの指輪と並んで回収すべきと父が語っていたのをよく覚えている。

(あんの泥棒やろ……)

思わぬ収穫品にセラフィーナは驚きながら双子の呪文で複製して元に戻しておく。本物であれば、その護符を身につけて相手を呪うと病気や事故で最終的に相手は最悪、死に至る。持ち主の嫉妬や憎悪といった感情が特に有効である。

(これは理事官以外には伏せておきましょ)

セラフィーナはそっとそれをローブの内ポケットに放り込んだ。

 

他にも収穫があった。不死鳥の騎士団のメンバーリストと、敵対者らしき者のリストである。

二つ目のリストは半分くらいが斜線を引かれており、見る限り斜線は亡くなった者の名前だった。

(うーわ、やってんなぁ……)

セラフィーナは思わず天を仰いだ。

限りなく黒な灰色である。誰がやったかはともかく、確たる証拠の一つだ。するするとリストに目を通していくと、最後にこう書かれていた。

『セラフィーナ・ゴーント pending』

(うぇ、私、命危ない!?)

まぁ予想通りと言えば予想通りである。しかしこう改まって見せつけられると悍ましいものがある。

もちろん複製(コピー)を忘れない。

 

戦(・)果(・)を手に、最後にセラフィーナは肖像画全てに忘却術を行使したあと、きっちり施錠して部屋を出た。

はー、まったくどうしようかしら。

 





原宿のハリポタショップ行ってきました。
スタジオツアーのショップか、下手すればそれより充実してたかも。
なかなか良かったのでまたふらっと行きたいです。
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