スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
ハーマイオニー回です。
ほんっっっっとうに忙しかった、とセラは証言しています。
3-1 お呼ばれ
あっという間に過ぎ去った二年次を振り返り、セラフィーナはゾッとした。
(私……仕事しかしてない!?)
そう、本当に忙しかったのである。初日から空飛ぶ車事件に巻き込まれ、落ち着いたと思ったら停学になり、復学してすぐにバジリスクを見つけ事後処理に終われ、終わったと思ったら部下たちが使えるようになってきたので生徒全員の調査報告書と戦う日々。食事や授業ではクラスメイトと仲良くしていたが、放課後は基本的に
(私の青春ってどこ……!?)
そんなセラフィーナは明日は久々に
初めての魔法界の友人ということで先方のご両親もそうとう楽しみにしているらしい。
せっかくなので手土産として
ほとんど『
◆ ◇ ◆
指定された住所の少し手前で姿現しをしたセラフィーナは住所を確認しながら道を歩き、そして時間ぴったりにインターホンを押した。
すぐにハーマイオニーが玄関を開けた。
「わあ!いらっしゃい!」
「お邪魔しまぁす」
淑女の嗜みとしてよそ行きの皮はしっかり被っている。
両親がリビングから現れた。自然な雰囲気を出しつつも、これ、そうとうしっかり準備してたやつだとわかる。
「いらっしゃい。今日は来てくれてありがとうね」
「こんにちは。本日はお邪魔させていただきます──これ、宜しければ皆様でどうぞ。ちょっと食べ方に注意があるものがあるので開ける時にお伝えします」
「まあまあ、気を遣わなくてもいいのに、ありがとうね」
「いえいえ、ほんのお気持ちです!お口に合えば幸いです」
「わざわざありがとうね。どうぞ、ゆっくりしていってくださいな」
「ありがとうございます!」
やり取りを終え、リビングに入った。
◆ ◇ ◆
お菓子は大ウケだった。
まずはフラッター・マシュメルツ、小さな羽が生えていて空中でヒラヒラと舞うマシュマロである。見た目も可愛く、口に入れるとふわりと口の中で溶ける優しい甘さが特徴のお菓子だ。
ハーマイオニーが言った。
「これ、食べる前に空中で踊るのよ!ちょっと投げてみて!」
父親が気に入ってぽんぽん投げ上げていた。
次はポッピング・フルーフィーズ。口の中に入れるとパチパチ跳ねて最後に優しく破裂して甘い味が広がるお菓子だ。マグルにも炭酸を閉じ込めてパチパチ音が鳴るお菓子があるが、これは口の中で文字通り飛びまわる。
他にも6種類ほど持ち込んでいて、皆でひとしきり楽しんだ。
食べたあとは歯磨きをする。セラフィーナは歯ブラシを持っていないのでスコージファイを掛けて綺麗にしたが、ハーマイオニーの父親が言った。
「せっかくだから、魔法式では無いけれど我々のやり方で歯を検査するのはどうだろう。道具を色々使うので嫌でなければ……だけども」
セラフィーナは乗り気だった。
「よろしいのですか、せっかくなのでマグル式……失礼しました、差別的な意図は無いです。そちらのやり方でもぜひ見ていただければ嬉しいです、興味津々です!」
ハーマイオニーだけ待たせるのもなんなので、全員で隣の診療所に移動した。
ちなみにハーミィのナース服姿が見たいと駄々を捏ねたら、パパさんがノリノリで出してきた。あるんかーい。
──え、かわいい、すき。
ちょっと!なんであるの!?恥ずかしいわ!
よいではないかーよいではないかー。
きゃーっ!
◆ ◇ ◆
ふかふかとした椅子に寝そべるように座り、ハーマイオニーのパパが舌圧子と鏡で覗き、ママがメモを取る。
「それでは見ていくよ──口を大きく開けてね。
右上1番から7番斜線、8番なし……左上1番から7番斜線、8番なし、うーん綺麗に磨けているね」
(磨いてないけどね)
「続いて左下1番から7番斜線、8番なし。右下1番から7番斜線、8番なし。実に綺麗だよ。歯列も綺麗だし歯肉の状態もいい。歯石すらない……どうやっているのかな!?」
「あー、魔法で綺麗にしています」
「なるほどね……凄いね、魔法は。親知らずが生えていないから念の為レントゲンも撮ろうか、こちらへどうぞ」
セラフィーナは厳重なドアのついた部屋に案内された。
「立ってもらって顎をこの台に乗せてもらえるかな──
そう、そう。今から機械が回るから、動かずに目を閉じていてね」
父親が去り、機械がジジ、と音を立てて回った。硬X線、ナノメートルクラスの波長。色々と知識としては知っていたが、体験するのは初めてである。そういえばルーモス改良したらX線出せたりしないかな。いや、でも遮蔽がいるか。んー、賢者の石の改造で黄金じゃなくて鉛出せたりしないかしら……むむ。
「お疲れ様。それでは診察室に戻ろう」
◆ ◇ ◆
すぐに写真が来た。
「うん、
「興味ありますし、機会がありましたら!」
それは本当である。マグルの医療には興味ある。もしかしたら魔法界の医療が飛躍的に発展するきっかけになるかもしれない。マグルは月に行くほどである。
月か。うーん、行けないかな。
以前、姿表しで成層圏入ったことがあるのだが、当然にして直ぐに落下し始めた。宇宙に行くには重力との戦いである。呼吸は……賢者の石の応用で酸素を合成するにしても、宇宙で「落ち」ずに留まるには最低でも秒速7.9kmの速度が必要になる。
これは以前計算したことはある。デパルソ系の射出で自分の体重からΔVを計算した限りだと、空気抵抗を考慮に入れても重力ターンと百数十回の加速でたぶん周回軌道への到達は可能。可能だが……
(再突入で焼け死にそうw)
というわけである。プロテゴに熱遮断が乗せられたらやってみようかな。周回軌道からの帰還なら2000度耐えれば行けるっしょ。月行くなら相当な
◆ ◇ ◆
「……顕微鏡なしで悪性腫瘍を判別するだって!?まさに魔法だ、どの医者も土下座して欲しい能力だよそれは!」
セラフィーナとハーマイオニーの両親は魔法界とマグル界の医療について熱く語り合ってしまっていた。ふと横を見るとハーマイオニーが頬を膨らませていた。
「もう……セラは私の友達なのに」
「ああ、すまん、つい盛り上がってしまった。しかし君は本当に博識だね、ホグワーツではそんなことも学んでいるのかい?」
「いえ、独学ですわ」
「ほう……君なら今すぐでも医大で通用するだろうね、ぜひその知識を……」
「もう、パパったら!」
「すまんすまん」
「いけない、もうこんな時間!」
セラフィーナがポーチを取り上げようとすると、ハーマイオニーの父親が言った。
「ついつい盛り上がってしまったね、ハーミィも話し足りないだろ?今日は夕飯を食べて……。なんなら泊まっていくかい?君の親御さんが良ければ、だけど」
「よろしいのですか?親は問題ないですが……」
「遠慮はいらないよ、ハーミィが初めて連れてきた友達だからね。家だと思ってくつろいでいってもらえれば」
「では……お言葉に甘えて」
◆ ◇ ◆
シャワーを終え、ハーマイオニーの部屋で二人はくつろいでいた。借りた服はいい匂いがした。自宅に飛べば着替えも一瞬だが、そんな無粋なことはしない。
ひとしきり部屋の中のものと持っている本の話で盛り上がった後、ハーマイオニーはぽつりと呟いた。
「セラ、二年生になってから全然かまってくれなかった。もう三年生になっちゃったじゃない」
「ごめんてー!」
「忙しかったのは察してるけど、私ともたまには遊んで欲しかったわ」
ぷっぷくぷーのぷーである。
「まあ、本当に忙しかったのは事実だけど……」
「セラとは寮も違うから話す機会ないじゃない、もう」
「ごめんて……来年度はそこまでじゃなくなるから」
「遊んでよ!約束だからね!」
「ん、約束」
くんくん。
今なんで匂い嗅いだの!?
いやぁ、いい匂いしますなぁ、ハーミィは。
もう!!!
◆ ◇ ◆
翌日、セラフィーナの家にも家族で招待する約束をし、彼女は名残を惜しみながら家を辞した。
久方ぶりの友人との交流でセラフィーナの足取りは軽い。
(来年度は何事もないといいなぁ〜)
その答えをまだ彼女は知らない。
色々と怖い、この魔女