スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄 作:魔法史編纂委員会
グラブリー=プランク教授の魔法生物飼育学の授業を終えてクラスメイトとわいわい騒ぎながら寮に戻る。余談だが、去年度でケトルバーン教授という先生が退官して新任らしいのだが、教えるのも上手く、興味深くて楽しい授業である。
今日はオカミーについてだった。純銀の殻でできた卵を産むことで有名だが、身体のサイズを変化させること、卵を守るためなら攻撃的になるが、その対処法など、みっちり学ぶことができた。
……当然知っていることではあったが、実際に目にするのは初めてであった。なかなか可愛くて凛々しい子だった。
◆ ◇ ◆
寮の談話室でぐでっとソファーに沈み込んで自動筆記羽ペンにレポートを書かせていると、監督生であり仕事では部下のジェマ・ファーレイが駆け込んで大声で叫んだ。
「みんな、落ち着いて聞いて頂戴!グリフィンドール寮が何者かに襲撃されたって。
……なので、」
この間の意味はセラフィーナならわかる。このままここに立て籠もったほうが安全ではないか、という疑義である。が、指示なので仕方ない、と生徒たちにはわからない程度に顔に書いてある。
そして続ける。
「各部屋で人数確認して、まずはここで集合。いない生徒が誰か確認したあと、まとまって移動すること!」
談話室は空気が一瞬で切り替わり、部屋でくつろいでいる生徒を呼びに、小走りに三々五々動き出した。
そしてジェマはセラフィーナに走り寄った。セラフィーナは誰にも聞こえない程度の小声で手早く意思疎通を済ませる。人前なので口調はあくまで先輩後輩モードで。
「……まあ、
「ええ……。下級生に頼むのも監督生としてはなんだけど、いざというときはお願いします」
「任せてください。捜索するので、点呼のタイミングで不在でも上手くお願いします」
「もちろんよ」
◆ ◇ ◆
道中で襲撃されるようなことはなく、全員が大広間に集合すると、
全くもって指示の意味がわからないが、セラフィーナは
校舎をくまなく歩き回る──前に魔法警察のメンバーが居たので、そっと背中を事前に指示していたリズムで叩く。可愛い可愛いセラフィーナちゃんが来ましたよ、という合図である。
彼こと係長のエドモンドはすぐに物陰に移動し、セラフィーナは周囲に人が居ないことを何度も確認したあと、小声で耳打ちする。
「対応は基本的には訓練通りで良いわ、このまま続けてちょうだい。ただし捜索よりも生徒の安全対策を優先で、大広間周辺の警備を密に。
校長の言う事は適当に聞き流して大丈夫。あくまで生徒優先でお願いね。私は単独で捜索する。もし万が一点呼とかあったら適当にごまかしといて。
「承知しました。仰ることも想定通りですので、このまま対応します」
「よろしく」
共有を済ませたあとは単独で
それにしても、ポッターへの殺意マシマシとしか言えない行動である。謎は深まるばかりだった。
◆ ◇ ◆
深夜遅くまで
「……お前の猫だ!」
なにようるさいなぁ。
「猫は鼠を追うものよ!」
あ、ハーミィだ。なんか揉めてる。誰?
寝袋からにょき、と顔を出して見回すと、グリフィンドールの赤毛がハーミィに食ってかかっていた。
もぞもぞと這い出しながら聞き耳を立てる。
「お前の猫のせいで僕のスキャバーズがあんなに!」
「知らないわよ、猫の習性だもの!せいぜい寮から出さないように管理すればいいじゃない。私の他に何人の生徒が猫飼ってると思うの?」
あーなに、
他人だったら放っておくところだが、ハーミィが言いがかりをつけられているのは割と聞き捨てならない。
けれども、まだ"初代"の件はまだ同学年くらいでしか周知が進んでいない。他の寮ではそもそも純血とか混血とか気にしていないようだが、にしても今声を掛けるにはこの大広間の上下学年の生徒の目が気になる。
セラフィーナはそのまま布団に潜り直すと優雅に二度寝をぶちキメた。ハーミィもあの程度の口論で負けるはずもなし、つまり……おやすみ。
◆ ◇ ◆
昼休み。
「おつー」
「昼は久々ね、なにかあった?」
ハーマイオニーは若干不思議がってる顔。
「いやぁ、ね、今朝なんか揉めてたからさ」
と言うと途端に滝のように喋りだした。
「そうなのよ!!
私の猫、あ、そうそう、猫飼い始めたって言ったかしら?
え、ちょっと待って、なにかがおかしい。
「え、
──ハーミィあんたネーミングセンスちょっとそれはどうなの……?」
思わず突っ込んだ。
「え?あー、や、ペットショップでそういう名前だったから……。私もどうかとは思いつつ」
「あーーー」
あ、納得。そして、それはうん……。続ける。
「あのねハーミィ、それ、ペットショップで管理するための名前。
魔女の飼い猫にするならちゃんと名前付けてあげな。てか、名前付け直す前提でわざわざそういう名前にしてるっていうか……」
「あー、変だと思ったわ……」
「あんたそういうとこ偶に素直すぎるわよねぇ」
「だって勝手がわからなくて……」
「や、うーん、マグルとあんまし変わらないと思うわよ、てきとーてきとー」
「そうね……」
「で、名前何にするの?」
「あーどうしようかしら。ずっとクルックシャンクスって呼んでたからパッと思いつかないかも。や、でも一度そう言われるともうがに股!!って毎回呼んでたみたいで恥ずかしいわ……」
「うん、突っ込んでよかったわ」
「えっと……続き行くとね、」
若干ハーマイオニーの顔が赤いが、気のせい気のせい。
「とにかく私の猫があのウィーズリーの鼠を追い回してるんだって、前も言われたんだけど、今朝もすごいギャーギャー言われたの。
知らないわよ、私、クルッ……えと、
それはそう。
「うん、実際に鼠飼うならちゃんと管理するべきね」
「そうよね!?よかった、なんか私が猫を閉じ込めるのが当たり前みたいに言うから、口では反論しつつちょっと自信なかったの」
「友達ってこと差し引いても、簡単に食べられうる動物ほったらかしておいてハーミィ側が猫閉じ込めとけはかなり言いがかりレベルかなぁ」
「ほんとに!!そもそもさ!!……」
あー、これ昼中この話題のやつだ。全然楽しいから大歓迎だけど。