世界平和監視機構コンパス特務顧問「クライ・アンドリヒ」 作:isizu8
これはクライがパーティでご馳走を平らげキラを救った?直後に起こった出来事。ファウンデーション王国での親善パーティーの裏。コンパスの警戒レベルを下げるため、そして数名の精神崩壊させられたアコード達の敵討ちのため、ブラックナイトスコードの近衛隊長シュラ・サーペンタインは、コンパス最強の切り札『千変万化』の渾名を持つクライ・アンドリヒを秘密裏に排除するべく、夜遅く人通りのない中庭で待ち伏せしていました。
「待っていたぞ、『千変万化』クライ・アンドリヒ! 貴様がコンパスの裏の支配者、そしてあらゆるアコードの天敵たる男かっ!」
興奮したキラから逃れたい一心で何も考えず歩き出したクライはやはり道に迷ってしまいました。そんな風に適当に歩いてしまったために意図せず中庭へたどり着き、今まさにシュラの襲撃を受けてしまうところです。
「えっと、人違いじゃないかな? 僕はただの通りすがりの一般人……」
(ひえっ、なんか出た! ルークと同じタイプの、絶対話が通じない戦闘狂だよこの人! なんで僕がこんな目に……と、とにかく否定しないと……)
彼のガタガタ震えた見え透いた演技(だとシュラは思っている)を鼻で笑い。剣を抜きクライに突きつける。
「ふん、白々しい。貴様のその構え……全身隙だらけに見えて、どこから踏み込んでも手痛い反撃を喰らう『無形』の極意か。だが、アコードたる私に死角はない。……抜くがいい、貴様の剣を!」
シュラは凄まじい速度で実体剣を抜き放ちます。クライは恐怖のあまりパニックになり、戦闘を回避しようと、必死にポケットの中の宝具を探ります。
(やばいやばいやばい! 剣なんて持ってないし使えないよ! 何か良い物は…… あ、これ! ちょっと前にシトリーがくれた、えーと、とりあえず投げたらすごい煙が出るやつ……の強化版!)
クライは、手当たり次第にポケットから取り出した丸い鉄球(実は超強力な閃光&催涙ガス&幻覚作用を持つ妨害薬品)を、シュラの足元へ投げつけます。
「小細工を――ッ!?」
カツン、と軽い音を立てて転がった鉄球から、物理法則を無視したレベルの「超高濃度・魔導漆黒煙」が爆発的に噴出します。ただの煙幕だと思って踏み込もうとしたシュラは、アコード特有の鋭敏すぎる五感(精神感応能力)が災いしました。それは五感の完全シャットアウト……薬品から発せられた魔導的な「認識阻害」により、シュラの誇るアコードの読心・未来予測ネットワークが完全遮断。暗黒の精神宇宙に叩き落とされます。そして幼馴染の幻影……煙に含まれる幻覚成分が、クライの記憶の底にある彼を守護する「精神体」の具現化。シュラの脳内に、木刀を持ち笑顔で迫り来る剣士や、物理法則を無視して殴りかかってくる守護騎士の精神的プレッシャーがシュラの元へダイレクトに叩き込まれます。
「な、何だこのプレッシャーは……!? 剣の軌道が見えないどころか、私の心が……未来が、闇に塗り潰されていく……!! バカな、生身の人間がこれほどの殺気を放てるはずが――うああああああっ!」
既に錯乱したシュラは、まだクライが何も攻撃していない(ただ後ろを向いて全速力で逃げ出している)にもかかわらず、脳内を襲う「幻影たち」との壮絶な精神攻撃に耐えきれず、自ら全方位に剣を振り回した挙げ句、精神的過負荷で命かながらその場を逃げ出しました。その晩、シュラの夢元には凶悪な亡霊のような仮面を被った二人組の女性の声「おいテメェ……次クライちゃんに手ェ出したら……解ってんだろうなァ!?」「クライさんに手を出す人は……消えてください」などといった声がその晩シュラへ悪夢として流れてきたそうです(本人談)。
そして数分後、静まり返った中庭に、アスラン・ザラが駆けつけます。
「くっ、遅かったか! ファウンデーションの刺客がクライ顧問を狙って……って、え?」
アスランは衣服一つ乱れていない(逃げる時にちょっと転んで服が汚れてはいるが)クライを見て呆然と立っていました。
「あ、アスランくん。あのね、さっき変な人が急に暴れ出して、どっか逃げちゃったんだけど……」
アスランは銃を収め、何か言いたそうな表情を必死に堪えクライの護衛にあたるのでした……。
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そして数日が立ち「おのれ千変万化ァ!」とクライに対する復讐心で精神的恐怖を気合で克服した(後遺症あり)シュラ率いるファウンデーションの新型MSブラックナイトスコードの編隊がコンパスを強襲。クライはパニックになり、支給されていたコンパスの最新鋭MSのコックピットで、手当たり次第にボタンを連打します。その結果……
「こちらの未来予測の先を行くだと……ッ!? まるで、我々がどこに撃つか最初から知っているかのような挙動だ!」
シュラは驚愕します。しかし現実はクライがパニックでレバーをめちゃくちゃに動かした結果、機体は物理法則を無視した予測不能なステップ(ただのガタガタ震え)を踏み、シュラたちの予測照準をすべて完全に回避したというものでした。さらにクライは戦場から逃げ出したい一心で、ポケットに入っていた宝具『ただ指先からちょっとした衝撃波が出るだけ玩具(仮名)』を、迫り来る敵集団に向けて、もうどうなってもいいやと半ば投げやりになり「ばーん」と指鉄砲のポーズで放ちます。その衝撃波は自機のコックピットを通過し敵機の車線上に出現。その瞬間、たまたまキラが乗るライジングフリーダムの放ったフルバーストと、シンが放つイモータルジャスティスのビームが、超偶然にクライが放った衝撃波の延長線上で交差。それが敵機へ直撃し、エネルギー回線に過負荷がかかっていたため、シュラ機を始めとしたブラックナイトスコートの編隊は大破寸前……絶体絶命です。
「ば、馬鹿な……!? 我らアコードが……ブラックナイトスコードが……おのれ千変万化ァ! おのれクライ・アンドリヒィィィ!」
とはいえファウンデーションもこのままでは終わりません。彼らの決死の特攻により、アークエンジェルが絶体絶命の危機に陥った時、クライは涙目で通信を開きます。
「もう駄目だ、みんな、艦はいいから脱出して適当に散らばって逃げて。僕のことは置いていっていいから。あ、右とか左とか適当に動いてね」
クライが「逃げ道」だと思って指示した方位は、アコードたちの戦術ネットワークの死角(ラクスやマリューが深読みして奇跡的な包囲突破ルートへと昇華させたもの)でした。
「流石はクライ顧問! 私たちの心理の裏をかいた完璧な撤退ルートです!」とはコンパス一隊員の声。そして……。
「クソッ、我らの決死の攻撃すら……! 奴には、我々の配置がすべて見えていたというのか……! クライ・アンドリヒ!!!」
今度こそ作戦は失敗だと思い知ったシュラ達は命かながら撤退していったのでした…………。
そしてまた、伝説(勘違い)が刻まれます。
ファウンデーションの野望は、クライの「何も考えていない行動」を深読みしすぎたアコードたちが錯乱・自滅したことで、キラたちの反撃を許しファウンデーションは大敗を期すことになりました。
「あなたがいてくれなかったら、僕たちは勝てなかった。ありがとう、クライさん!」
「いやぁ、僕は本当に何もしてないし、ただお茶漬けが食べたかっただけで……」
「ふふ、照れ隠しまでお上手ですのね、クライ顧問」
その後、アークエンジェルは大破したとはいえ、死傷者ゼロ&シュラ達を大敗に追い込んだ英雄『クライ・アンドリヒ』はキラを始めとしたコンパス一同から最大級の感謝を述べられることになり、クライの「帝都(元の世界)に早く帰りたい」という悲痛な願いは、C.E.の世界では「これ以上の権力や名誉を求めない、真の聖人」として語り継がれることになるのでした。
「(はぁ……ゲロ吐きそう)」