淫紋の魔法少女 〜お姫様は、お姫様に永遠を誓う〜   作:目玉焼きトースト

1 / 3
彼女の名前は、初恋

「お゛……っ♡」

 

 太腿の内側から、腰の奥から、自分のものじゃない声が這い出た。廃工場の冷たいコンクリートに膝をついたまま、詩織は自分の身体が自分のものでなくなる感覚に爪を立てる。

 

(ちが、これ、あたしの声じゃ──)

 

 言い訳を探す間もなく、二度目の震えが喉を突き上げた。口を押さえた指の隙間から熱い息が漏れて、自分の指を濡らす。唇が、指の腹に食い込む。蛞蝓のようにぬめるその唇は、自分の指の骨の形をなぞって、勝手に震えている。噛み締めても、快楽は逃げていかない。むしろ、痛みが甘い痺れに変わるだけだ。

 

 背中を汗が伝い、結び目が解けた黒髪が肩に張りつく。額の汗が一筋、童顔の輪郭を伝って落ちた。三体の《悦楽の使徒》が、ゆっくりと間合いを詰めてくる。顔がない。あるのは裂けた口だけ。その口から溢れ出した触手が、意思を持った指みたいに詩織の肌を探った。制服の上から胸の膨らみをなぞられ、小柄な身体が震える。膝の裏を這われ、力が抜ける。太腿の内側に絡みつかれ──そこを、きゅう、と締め上げられた。

 

「ひ、ぅ……っ」

 

 目の裏で火花が散った。締め上げられた場所から、熱い蜜が零れるような錯覚。太腿の内側が濡れている。それが自分の汗なのか、粘液なのか、それとも──。腰が浮き、淫紋が内臓のように脈打ち始める。胸の谷間に刻まれた薔薇が、心臓とは別のリズムでどくどくと鼓動し、全身に甘い痺れを送り込んでくる。七枚の花弁のうち三枚が紅く開花していて、四枚目が今にも開きそうに震えていた。華奢な鎖骨の下、控えめな胸のあいだで、淫紋だけが大人の女のように艶めいている。

 

(やだ、やだ、これ以上──)

 

 それなのに腰が浮く。もっと触ってほしいと身体がねだる。敵の触手が這えば這うほど淫紋は昂奮して、昂奮すればするほど身体は言うことを聞かなくなる。これがこの身体の仕組みだった。戦えば穢れる。穢れればもっと戦いたくなる。悦楽の使徒は、人間の身体の感じる場所を正確に知っている。その触手は、ただ這うだけじゃない。撫で、絡め、時には優しく、時には乱暴に、詩織の身体を手なずけていく。

 

「……ふざけ、んな」

 

 詩織は右手を掲げた。

 指先が裂け、血が滴る。空気に触れた瞬間に紅く凝固した血が、しなやかな鎖へと変わる。一筋、二筋、三筋──指の隙間をすり抜けて伸びていくそれは、自分の神経が皮膚を破って飛び出したみたいに、詩織の感覚と直結していた。鎖そのものが、詩織のもう一つの手足だった。

 

 固有魔法『紅鎖緊縛』。

 

「──ぜんぶ、縛ってやる」

 

 鎖が跳んだ。一直線に使徒へ殺到し、触手を薙ぎ払い、胴に巻きつき、締め上げる。鎖に触れた部分から使徒の輪郭が溶けていった。同時に、使徒の感覚が詩織の身体に流れ込んでくる。締め上げられる苦痛。溶かされる恐怖。そして──。

 

(ぁ……っ)

 

 使徒の快楽。

 穢れを糧に生きる使徒は、苦痛すらも悦びに変換する。その悦びが紅鎖を伝って詩織の淫紋に注ぎ込まれ、花弁を内側からこじ開けようとする。まるで他人の舌が、胸の内側から淫紋を舐めているみたいだった。歯を食いしばる。ぬめる唇の内側に、鉄の味が広がった。太腿を伝うものが粘液か血か、もうわからない。

 

 一匹。鎖が核を砕き、使徒が消滅する。二匹目も、三匹目も。立て続けに縛り上げ、締め殺す。相手の苦痛と快楽が波のように押し寄せて、視界が赤く滲んだ。

 

(まだ、足りない)

 

 もっと縛って、もっと壊して、もっと穢れて──そうすれば私は大人に──。

 

「──詩織!」

 

 声が飛び込んできた。

 顔を上げるより先に、視界が白く染まる。純白のコートドレスを翻し、銀髪を月明かりに透かして、小夜が詩織と最後の使徒とのあいだに滑り込んだ。腰まで届く銀の髪が、動くたびに月の光を散らす。詩織より頭一つ高い長身。雪のように白い肌。切れ長の紫色の瞳。祈るような白銀の杖が掲げられ、光のヴェールが展開する。

 

「離れて!」

 

 使徒がヴェールに触れる。悲鳴も上げられずに浄化されていく。詩織は鎖を引き戻し、膝をついたまま荒い息を繰り返した。

 

 廃工場が静寂に包まれる。

 小夜が振り返った。額に汗が浮かび、白い喉を伝って落ちていく。コートドレスが身体に吸い付き、鎖骨から腰へと流れる曲線を浮かび上がらせていた。その滴が襟に吸い込まれるのを、詩織はなぜか目で追ってしまった。

 

「無茶しすぎ」

 

 声は叱っているのに、震えている。

 

「また一人で突っ込んだのね」

 

「……ごめん」

 

 立ち上がろうとして、よろめいた。咄嗟に小夜が手を伸ばす。その指が詩織の手首に触れた瞬間、淫紋が跳ねた。さっきまで敵の快楽を流し込まれていた淫紋が、小夜の指の冷たさを検知して、歓喜の悲鳴を上げる。

 

 ──触らないで。

 

 声にならなかった。

 触られたらどうにかなる。小夜の指の冷たさが、熱くなった淫紋の中心を正確に狙っている。指だけじゃ足りない。もっと、もっと奥まで、淫紋の花弁を一枚一枚めくって──。

 

「……詩織? 立てる?」

 

 心配そうな小夜の瞳。その奥に、詩織は見てはいけないものを見た。

 

 ──渇望。

 

 ほんの一瞬。聖女の仮面の下から顔を出した、獣みたいな飢え。紫色の瞳の瞳孔が、すっと開く。詩織を映すその目は、獲物を前にした捕食者のようだった。小夜の視線そのものが、詩織の肌の上を這い回る。

 

「……大丈夫。自分で立てる」

 

 詩織は小夜の手を振りほどいた。振りほどいた自分の手が震えているのを、小夜に見られないように背中に隠す。小夜は一瞬息を呑み、それから静かに手を引いた。

 

「……そう。なら、後ろに下がってて。残党がいないか確認するから」

 

 小夜が背を向ける。そのコートの裾から、無数の淫紋の痕が一瞬覗いた。胸元から腰、腿の内側へと続く古い刻印が、まるで詩織に呼応するみたいにうっすらと輝いている。それは、誰かに刻まれた快楽の地図のようにも見えた。

 

(──あれ、全部)

 

 詩織は目を逸らした。

 

 ◆◆◆

 

 車内は沈黙に沈んでいた。

 黒塗りのワゴン車の後部座席で、詩織は窓にもたれて目を閉じていた。太腿には応急処置の包帯が巻かれ、制服の上から白いカーディガンを羽織っている。小夜が貸してくれたものだ。小夜の匂いが、カーディガンの繊維の奥から立ち昇る。それは洗剤の匂いだけじゃない。小夜の肌の匂い。治療室で、小夜の指が淫紋に触れるとき、いつもこの匂いがした。

 

(……やめて)

 

 なのに淫紋が反応する。小夜の匂いを嗅いだだけで、包帯の下の肌が熱くなる。さっき手首を掴まれた感触がまだ残っていて、そこだけが別の生き物みたいに脈打っている。骨の上から指の形がまだわかる。冷たい指だった。でも、触れられた瞬間だけ、そこだけが灼熱に変わった。

 

 隣の席で、美影が背筋を伸ばして座っていた。肩口で切り揃えた黒髪。前髪は眉の上で水平に切りそろえられている。切れ長の黒い瞳は正面を見据えたまま微動だにしない。でも詩織にはわかった。組まれた指の関節が白くなっている。引き締まった身体が、制服の下で強張っていた。美影は怒っているのだ。詩織が一人で突っ込んだことに。でもそれを口に出せないことに、もっと怒っている。

 

「お疲れさまです、主君」

 

 車に乗り込んですぐ、それだけ言って、あとは沈黙している。その声には、怒りと、それから──ほんの少しの、羨望が混ざっていた。小夜だけが詩織に触れることを許されている。その事実が、美影の指をさらに強く結ばせていた。

 

「詩織ー、またやったんだって?」

 

 ゆらが前の席から身を乗り出してきた。明るい茶色のボブカットの毛先が跳ね、大きな猫目がいたずらっぽく光る。その瞳は金色で、暗がりの中でかすかに輝いていた。小柄な身体がシートからはみ出しそうになりながら、ポニーテールを揺らす。ゆらが近づくと、詩織の淫紋がかすかに反応した。小夜のときとは違う、もっとくすぐったいような疼き。詩織はその理由をまだ知らなかったが、ゆらは知っていた。自分の淫魔の血が、詩織の淫紋と微かに共鳴していることを。

 

「毎回毎回、敵のど真ん中に飛び込んで。そんなに死にたいなら、私が気持ちよく殺してあげよっか?」

 

「……ゆら」

 

 美影が低い声で制する。ゆらは肩をすくめて席に戻ったが、その目は笑っていなかった。詩織のカーディガン──小夜のもの──を一瞥し、すぐに窓の外に視線を逸らす。金色の瞳が、暗がりで縦に細くなる。

 

「悪かったって。でも、早く終わらせたかったんだ」

 

 詩織は目を閉じたまま言った。

 

「それに、あのくらいなら一人でも──」

 

「一人でも、何?」

 

 助手席から小夜の声。いつもより硬い。

 

「紅鎖はあなたの命を削る魔法でしょう。感覚フィードバックの負荷も、毎回限界ギリギリで。いつか取り返しがつかなくなる」

 

「……わかってる」

 

「わかってない」

 

 小夜は振り返らない。でも、その背中が震えているのが見えた。銀の髪が、かすかに揺れている。小夜は言えないのだ、と詩織は思った。自分が大人になりたいと願っているのを知っているから。その願いの邪魔を、小夜にはできないのだろう、と。

 

「あなたが倒れたら、誰が一番困ると思ってるの」

 

 誰も答えない。答えられない。詩織は唇を噛み締めて窓の外を見た。蛞蝓のような柔らかさを持つ唇が、白く歯形を刻む。ぬめる感触が、歯の硬さと対比されて、いやに生々しい。流れていく街灯の明かりが、網膜に焼きつく。

 

(わかってるよ、そんなの)

 

 無茶をしている自覚はある。でも戦闘中は身体が勝手に動く。紅鎖を放って、敵を縛って、相手の感覚を自分の身体に流し込む。その昂奮が淫紋を育てて、淫紋が育てば私は大人に近づく。先生に──黎に、認められる。

 

(そうすれば、いつか)

 

 いつか、何を? 自分でもわからなかった。ただ戦い続ければ何かが変わると思って、そうでも思わなければ、この疼きと一緒に生きていけなかった。

 

 車が寮の前に停まる。蔦の絡まる古い洋館。かつては財閥の別荘だったという三階建てで、庭には手入れの行き届いた薔薇園が広がっている。おとぎ話の舞台みたいな場所。でも住んでいるのは全員、魔法少女。淫魔と契約して代償を支払い、戦うたびに穢れていく呪われた少女たちだ。

 

 ◆◆◆

 

 詩織が魔法少女になったのは、十四歳の冬の終わりだった。

 

 家庭教師の佐伯黎が最後の授業を終えた日。窓の外は雪で、暖房の効いた部屋の中で、詩織は黎の横顔を見つめていた。腰を超える長さの黒髪が、波打つように背中に広がっている。白いブラウスにタイトスカート。均整のとれた大人の身体。詩織の名前を呼ぶ、少し低くて甘い声。深紅の瞳が、優しく詩織を見下ろしていた。陶器のように白い肌。そして、詩織の頬に触れる指先は、死人のように冷たかった。でも、その冷たさが、熱くなっていた詩織の心を静めてくれるようで──。

 

 大人の女って、こういう人のことを言うんだろうな、と思った。

 

「先生」

 

「なあに、詩織さん」

 

「私、先生のことが……」

 

 好きです、とは言えなかった。喉の奥が熱くなって息ができなくなった。黎は詩織の顔をじっと見つめ、それから静かに微笑んだ。

 

「あなたはまだ子供よ」

 

 優しい声だった。だからこそ胸に刺さった。黎の視線が、詩織の童顔を、華奢な肩を、幼い身体を、値踏みするように撫でていく。その視線が、服の上から詩織の全身を嘗め回しているようで、詩織は息を呑んだ。嫌じゃなかった。むしろ──。

 

「でも、いずれ素敵な大人の女性になる。そうしたらきっとわかる。いまの気持ちが何だったのか」

 

 黎は詩織の頭をそっと撫で、振り返らずに去っていった。黒髪が波打ち、タイトスカートの裾が翻る。その背中を、詩織はいつまでも見つめていた。

 

 その夜、詩織は自室の鏡の前で泣いていた。子供扱いされた悔しさ。気持ちを伝えられなかった情けなさ。なにより、黎が自分を「女」として見てくれなかったことが、どうしようもなく悲しかった。鏡に映る自分の顔。童顔。華奢な身体。蛞蝓のように柔らかそうな唇。どれだけ戦っても、どれだけ穢れても、鏡の中の自分は「子供」のままだ。その唇を噛み締めると、ぬめる感触が歯の上を滑る。この唇が、いつか誰かに触れられる日は来るんだろうか。

 

「大人になりたい」

 

 鏡に向かって呟いた。

 

「先生みたいな、綺麗な大人の女になりたい。お姫様みたいな、誰もが振り返るような──」

 

 鏡の中の自分が、嗤った。

 

「──いいだろう。君を、最高の『女』にしてやる」

 

 次の瞬間、鏡の表面が波打ち、そこから手が伸びてきた。白く細い、女の手。その手が詩織の胸に触れ、熱い刻印を刻み込んだ。七枚の花弁を持つ薔薇。

 

「その代わり──君の初恋は、私がもらう」

 

 鏡から現れたのは、黎だった。いや、黎の姿をした何か。腰を超える長さの黒髪。波打つように広がる髪の下から、深紅の瞳が詩織を見つめている。白いブラウス。知的な眼差し。詩織が最も憧れた人が、そこに立っていた。その身体からは体温が感じられず、差し伸べられた指先は、あの日と同じように冷たかった。でも、その冷たさが、あの日と同じように、熱くなっていた詩織の心を静めてくれた。

 

 詩織は怖くなかった。むしろ嬉しかった。もう一度先生に会えた。先生が自分に触れてくれている。それだけで──。

 

「うん。あげる」

 

 詩織は笑った。ぬめる唇が、わずかに震える。

 

「私の初恋、先生にあげる。だから、私を大人にして。お姫様にして」

 

 それが、すべての始まりだった。

 

 あれから二年。十六歳になった詩織の淫紋には、三枚の花弁が咲いている。今日、四枚目が開きかけた。

 

 あと四枚。すべてが咲いたとき、詩織は完全な大人の女になり、黎の花嫁になる。

 

(──私は、お姫様になれるのかな)

 

 それとも、ただ穢れて終わるんだろうか。

 

 ◆◆◆

 

 シャワーを浴びて自室に戻ると、詩織はベッドに倒れ込んだ。

 

 太腿の包帯を外す。敵の触手に這われた痕はもう薄くなっている。魔法少女の治癒力は高い。でも痕が消えても感覚は消えない。小夜の指の感触が、まだ手首に残っている。骨の上から、小夜の指の形をなぞることができる。冷たい指だった。でも、触れられた瞬間、そこだけが灼熱に変わった。

 

(さわってほしい)

 

 天井を見上げながら思った。

 

 冷たくて細い小夜の指。淫紋に触れるときだけは驚くほど優しくなるその指が、今夜も自分に触れてくれる。あと数分もすれば、小夜は医療キットを持ってこの部屋を訪ねてくる。そして、治療という名前の──。

 

(やめよう)

 

 考えるのはやめた。答えを知ってしまったら、もう戻れなくなる。

 

 コンコン。

 

「詩織。小夜です。入ってもいい?」

 

「……どうぞ」

 

 ドアが開く。小夜は部屋着ではなく白いコートを纏っていた。手には医療キット。いつもの治療の準備だった。

 

「こんな時間に?」

 

 時計は深夜を回っている。

 

「ええ。今日の戦闘でかなり穢れが溜まってるはずだから。それに紅鎖のフィードバックも受けていたでしょう。放っておくと明日動けなくなる」

 

 小夜は詩織の隣に腰掛けた。ベッドがわずかに沈む。長い銀髪がさらりと揺れ、シャンプーの匂いがかすかに漂った。

 

「服、上げてくれる?」

 

 詩織は黙ってパジャマの前を開けた。胸の谷間に淫紋が浮かび上がる。三枚が紅く開花し、四枚目が今にも咲きそうに震えている。華奢な鎖骨。控えめな胸。そのあいだで、淫紋だけが大人の女の証のように輝いていた。小夜の視線が、淫紋に注がれる。その視線の熱さだけで、花弁が内側からこじ開けられそうになる。

 

 小夜の指が、まだ触れていないのに、詩織の肌が粟立った。来る、来る、小夜の指が──。

 

 小夜の指が淫紋に触れた。

 

「……っぁ」

 

 声が漏れる。冷たい指先が火照った淫紋に触れた瞬間、背筋を冷たい手のひらで撫で上げられたような震えが走った。熱い淫紋と冷たい指。その温度差が、皮膚の下で快楽の火花を散らす。

 

「熱いわね。かなり穢れが溜まってる。しかも、これは──敵の快楽まで流し込まれたの?」

 

「……紅鎖で、拘束したから」

 

「馬鹿ね。本当に馬鹿」

 

 小夜は叱りながらも、その指は優しかった。淫紋の花弁を一枚一枚なぞるように、中心に向かって螺旋を描くように、ゆっくりと穢れを吸い取っていく。まるで楽器の弦を爪弾くみたいに、一本一本、丁寧に。

 

「ん……っ、ぁ……っ」

 

「力、抜いて。強く吸収できない」

 

「む、むり……小夜の指、冷たくて……っ」

 

「冷たいのがいいの?」

 

 声の色が、少し変わった。紫色の瞳の瞳孔が、すっと開く。獣の目。

 

「冷たい指で、こんなに感じてるの? さっきまで敵の触手に散々弄ばれて、それでも足りないの?」

 

「ちが……っ、そうじゃなくて……っ」

 

 違わなかった。敵の触手は、暴力的で無機質だった。でも小夜の指は、優しくて、罪深い。優しいからこそ、もっと深くまで受け入れたくなる。小夜の指になら、淫紋の奥まで掻き回されてもいいと──。

 

 小夜の指が淫紋の中心を捉えた。

 

 瞬間、詩織の身体が跳ねた。視界が白く滲む。花弁が内側から指を締めつける。熱を持った蜜が淫紋から溢れ出し、小夜の指を濡らした。喉から、抑えきれない声が溢れ出る。

 

「お゛……っ♡」

 

 ──やだ、声、出ちゃ、とまんない。

 

 なのに身体はもっと欲しがる。もっと深く、もっと強く、淫紋の奥まで小夜の指で。ぬめる唇が震え、そこから漏れる吐息が、自分でも知らない言葉を紡ごうとしている。唾液が溢れて、唇のぬめりが増していく。その感触さえも、いまは快楽の一部だった。

 

「詩織」

 

 小夜が名前を呼ぶ。その声が震えている。

 

「私もね、同じなの」

 

 小夜の手が詩織の頬に触れる。淫紋に触れていたのと同じ指が、詩織の涙を拭った。その指はもう冷たくなかった。詩織の淫紋の熱が、小夜の指を温めていた。

 

「あなたの穢れを吸うたび、身体が熱くなる。淫紋の痕が疼く。あなたに触れたくて、あなたに触れられたくて、どうしようもなくなる」

 

 小夜の白いコートの下で、無数の淫紋の痕がうっすらと輝いている。胸元から腰、腿の内側へと刻まれた古い穢れの跡が、いま詩織に応えるように脈打っていた。それは、雪のように白い肌の上で、紅い蔓草のように絡み合っていた。誰かに刻まれた快楽の地図。その地図が、いま詩織の淫紋と共鳴して、紅く、あざやかに浮かび上がっている。

 

「これは治療じゃないのかもしれない。それでも、やめられない。私は、あなたの穢れが欲しい」

 

「……小夜」

 

「拒否して。嫌だと言って。そうしたら私は身を引くから」

 

 詩織は小夜の手を握った。

 

 拒否なんて、できるわけがなかった。だって詩織も同じだ。小夜に触れたい。触れられたい。もっと名前を呼んでほしい。もっと──。

 

「拒否、しない」

 

「詩織」

 

「私も、小夜が欲しい。小夜の指も、声も、全部……私だけのものにしたい」

 

「私だけの、もの……?」

 

 小夜の瞳が揺れた。驚きと、歓喜と、なにより深い悲しみが混ざった色。紫色の虹彩が、涙で揺れている。

 

「……あなたは、残酷ね」

 

 小夜は詩織を抱きしめた。長身の身体が折り曲げられ、銀の髪が詩織の肩に流れ落ちる。その腕は震えていて、でも力強かった。

 

「私、あなたには絶対に言わないと決めてた。こんな気持ち、知られちゃいけないと思ってた。なのに──」

 

「小夜」

 

「好きよ、詩織。あなたに初めて会ったときから。あなたの穢れを初めて吸った瞬間から。私は、あなたのものだった」

 

 小夜の唇が詩織の額に、瞼に──そして、淫紋の上で止まった。

 

 吐息がかかる。熱い。花弁が震える。小夜の唇は、詩織のぬめる唇とは違って、かすかに乾いていた。その乾いた唇が、淫紋のすぐ上で、言葉を紡ぐよりも近くで、息を吸い込んだ。

 

 詩織は目を閉じた。瞼の裏で、淫紋が脈打つ。自分から近づくのか、小夜が近づくのか、もうわからない。

 

 小夜の唇が──触れた。

 

 花弁が、一枚、開く。四枚目。

 

「お゛……っ♡ さや……さやぁ……っ♡」

 

「愛してる、詩織。誰よりも、何よりも」

 

「わたしも……私も、小夜を……っ」

 

 その瞬間、詩織の胸から何かが抜け落ちた。

 

 ──あれ。

 

 小夜の顔を見上げる。腰まで届く銀色の髪。潤んだ紫色の瞳。紅く染まった頬。長身の身体を折り曲げて、雪のように白い肌を紅潮させて。小夜だ。私の──私の、何? 

 

(好き、だった)

 

 さっきまで確かにあった想い。触れられて嬉しかった記憶。もっと触れたいと願った渇望。それが、音もなく消えている。

 

(──奪われた)

 

「……詩織?」

 

 小夜の顔が曇る。詩織は口を開きかけて、言葉を失った。

 

 小夜のことは覚えている。名前も顔も声も、今日一緒に戦ったことも、さっきまで身体を重ねていたことも。全部覚えている。それなのに。

 

 小夜の銀の髪も、白い肌も、紫色の瞳も、ただの情報でしかなかった。淫紋に触れた指の冷たさも、声の震えも、すべて覚えているのに、何も感じない。

 

「……だいじょうぶ。ちょっと疲れただけ」

 

 詩織は笑った。蛞蝓のように柔らかな唇が、ぎこちなく弧を描く。上手く笑えているかわからなかった。

 

「ごめん小夜。今日はもう寝るね」

 

「……詩織」

 

「おやすみなさい」

 

 小夜は何か言いたそうにしていた。でも詩織はそれ以上何も聞けなかった。いま小夜の声を聞いたら、何かが壊れてしまう気がした。

 

 小夜が部屋を出ていく。ドアが閉まる瞬間、長い銀髪が揺れ、その背中が震えていた。

 

 詩織はベッドに倒れ込んだ。

 胸の淫紋がまだ熱い。小夜に触れられた感覚は残っている。淫紋の中心が、まだ小夜の指の形を覚えている。それなのに──小夜への想いだけが、なくなっていた。

 

(好きだったのに)

 

 どれだけ好きだったか、覚えている。でもその好きがどんな気持ちだったか、思い出せない。

 

 これが黎の言う「大人になる」ということなのか。愛したぶんだけ、愛する気持ちを奪われる。それが契約の代償。詩織の初恋は黎のものになった。そしてこれからも、詩織が誰かを愛するたび、その感情は奪われていく。

 

(じゃあ、私は)

 

 何のために戦うんだろう。何のために大人になるんだろう。

 

「……でも」

 

 詩織は呟いた。

 

「約束したから」

 

 小夜を守る。たとえこの気持ちが消えても、それだけは絶対に。好きだった。好きだったから、守る。その記憶だけは、誰にも奪わせない。感情は消えても、身体が覚えている。小夜の指の冷たさも、声の震えも、淫紋に触れるときだけ優しくなる指先も。すべて、この身体が覚えている。

 

 詩織は目を閉じた。

 胸の淫紋が静かに脈打っている。四枚目の花弁が、華奢な鎖骨の下で、紅く、あざやかに咲き誇っていた。

 

 開花状況──4/7。

 

 あと三枚。すべてが咲いたとき、詩織は完全な大人の女になり、黎の花嫁になる。

 

 そのとき私はまだ、小夜を守りたいと思えるだろうか。それとも、守りたいという気持ちさえも奪われるんだろうか。

 

「……こわい」

 

 声に出したら、涙がこぼれた。ぬめる唇が歪み、泣き顔なのか嗤い顔なのか、自分でもわからない。

 

 でもその涙が何に対する涙なのか、詩織にはもうわからなかった。

 

 ◆◆◆

 

 夢を見た。

 

 一面の薔薇園。白いガゼボ。その中に二人の人影がある。一人は詩織。もう一人は、白いコートを脱ぎ捨てた小夜だった。

 

 裸の身体に無数の淫紋の痕が薔薇のように咲き乱れている。長身の肢体。白い肌。銀の髪。腰の曲線、腿の内側、乳房のふくらみにまで、紅い蔓草の刻印が絡みついていた。その花弁から紅い露が滴り、小夜の白い肌を伝って落ちていく。まるで、身体中が泣いているようだった。

 

「──詩織」

 

 小夜が手を差し伸べる。淫紋に触れたときと同じ仕草で、空を掻く。

 

 詩織は手を伸ばす。でも指が触れる寸前で、小夜の身体が光の粒子に変わっていく。

 

「愛してるわ、詩織。だから、奪って」

 

「小夜……!」

 

「私のすべてを、あなたにあげる。感情も、記憶も、この穢れも。だから──」

 

 粒子が風に散る。銀の髪も、白い肌も、紫色の瞳も、すべてが光に溶けていく。最後まで残ったのは、詩織を見つめる小夜の目だけだった。その紫色の虹彩が、溶ける間際まで詩織を愛しそうに見つめていた。

 

「忘れないで。あなたが私を愛したことを。奪われても、それだけは──」

 

 目が覚めた。

 頬が濡れている。時計は午前四時。部屋は暗く、カーテンの隙間から月明かりが差し込んでいた。

 

 詩織は起き上がり、机の上の鏡を見た。月明かりを受けて、鏡の中の自分と目が合う。童顔。華奢な身体。寝乱れた黒髪。泣いているのに嗤っているみたいな、歪んだ顔。ぬめる唇が、月明かりを反射して濡れている。

 

 鏡の中の自分が、口を開く。

 

「──いい夜だったね、詩織」

 

 黎の声。鏡の向こうで、腰を超える黒髪が波打つ。深紅の瞳が、陶器のように白い顔の中で嗤っている。

 

「先生……」

 

「初めての『糧』は、さぞ美味しかっただろう」

 

「……小夜は、糧なんかじゃない」

 

「そうかな。君は彼女に触れられて悦んだ。彼女も君に触れて悦んだ。そしてその悦びは私がもらった。彼女は君を大人にするための、最高の糧だったじゃないか」

 

 黎が鏡の中から手を伸ばす。その指が鏡面を越えて詩織の頬に触れる──気配がした。冷たい指先。あの日と同じ、死人のような冷たさ。でも、その冷たさをまだ心地いいと思う自分がいる。認めたくなかったが。

 

「次は誰だ? 美影か? ゆらか? それともまだ小夜で遊ぶか?」

 

「……やめて」

 

「楽しみだよ。君がすべての『糧』を喰らい尽くし、最後に私の花嫁になる日が」

 

「やめて──ッ!」

 

 詩織は枕を鏡に投げつけた。鏡が揺れて、黎の気配が消える。

 

 部屋に静寂が戻る。

 

 詩織はその場に座り込んだ。身体が震える。怖い。黎の言葉が怖い。自分が誰かを好きになることが怖い。好きになったぶんだけ、大切な人が「糧」になっていく。

 

 鏡の破片が月明かりを反射している。あの夜、この鏡から先生が現れた。あのときの先生は、怖くなかった。深紅の瞳も、死人のような冷たい指も、波打つ黒髪も、すべてが憧れだった。むしろ──。

 

(……やめよう)

 

 詩織は頭を振った。

 

「……私は」

 

 小夜を守る。その誓いだけは消えない。好きだったという記憶だけは、誰にも消させない。身体が覚えている限り、あたしは戦える。たとえ心が空っぽでも、身体だけはまだ──。

 

 たとえその誓いすらもいつか奪われるとしても。今はまだ──私は覚えているから。

 

 ◆◆◆

 

 翌朝。リビングに行くと、三人がすでに朝食をとっていた。

 

「おはよう、詩織」

 

 小夜が微笑む。聖女の仮面。銀の長い髪が朝日に透けて輝いている。でも、紫色の目は少し赤く腫れていて、昨夜のことを詩織が覚えているかどうか、探るように揺れていた。

 

「……おはよう」

 

 詩織は目を合わせずに席についた。

 

 隣の美影が、そっと紅茶を差し出す。肩口で切り揃えた黒髪。切れ長の瞳。制服の下の引き締まった身体は、今日も一分の隙もなく整っている。

 

「ありがとう、美影」

 

「……主君、顔色が優れませんが」

 

「平気。ちょっと寝不足なだけ」

 

 詩織は紅茶を受け取り、一口含んだ。熱さに少し眉を寄せて、ふう、と息を吹きかける。ぬめる唇が、湯気に湿る。何気ない仕草だった。

 

 美影の指が、かすかに震えたのを詩織は気づかなかった。詩織の唇の動きを、美影は目で追っていた。ぬめるそれが、紅茶の水面に触れる瞬間を。自分はあの唇に触れることを許されない。小夜だけが知っている感触。鋼鉄の指では、感じ取れない柔らかさ。

 

「無理はなさらないでください」

 

 美影はそれだけ言って、詩織が紅茶を飲み干すのをじっと見つめていた。祈るような目だった。

 

「詩織ー、今日学校行く? それとも休む?」

 

 ゆらがトーストを齧りながら言った。明るい茶色のボブカットの毛先が跳ね、金色の大きな瞳が詩織を見つめている。暗がりでは縦に細くなるその瞳孔は、朝の光の下では丸く開いていた。ゆらが近づくと、詩織の淫紋がかすかに反応する。小夜のときとは違う、もっとくすぐったいような疼き。詩織はその理由をまだ知らない。

 

 詩織は一瞬、眉を下げて天井を見上げた。学校、だるい、と顔に書いてある。

 

 ゆらが吹き出す。

 

「いま超めんどくさそうな顔した」

 

「……してない」

 

「したした。美影も見たよね?」

 

 美影は答えない。でも、ほんの少しだけ口元が緩んだ。

 

 詩織は憮然として紅茶を啜る。

 

「行く。休むほどじゃない」

 

「ふーん。じゃあ一緒に行こっか。美影も小夜も任務だし、今日は二人きりだね」

 

 ゆらの金色の目が、一瞬だけ小夜に向けられる。小夜は気づかないふりでサラダを口に運んだ。銀の髪がかすかに揺れる。

 

「……そうだね」

 

 詩織は紅茶を飲み干し、立ち上がった。華奢な身体が、制服の下でまだ疼いている。

 

「先に準備してる」

 

 リビングを出るとき、小夜が何か言いたそうにこちらを見ているのに気づいた。銀の髪。白い肌。紫色の瞳。すべてが、美しいと思う。でも、心は動かない。振り返ったら何を言えばいいかわからなかった。

 

 ──好きだったのに、もう好きじゃないんです。

 

 そんなこと、蛞蝓のように柔らかな唇では、言えるわけがなかった。

 

 ◆◆◆

 

 学校が終わり、詩織は一人で寮に戻った。ゆらとは途中で別れた。ボブカットの毛先を跳ねさせ、金色の瞳を細めて「また後でねー」と手を振る背中が、いつもより小さく見えた。

 

 寮の門をくぐると、庭の薔薇園に人影があった。

 

 小夜だった。

 

 白いワンピース姿で、しゃがみ込んで薔薇の手入れをしている。長い銀髪が背中に流れ、白い肌が午後の光に透けていた。その横顔は、昨夜の獣のような飢えをすっかり隠して、ただ美しかった。

 

「……小夜」

 

「詩織。おかえりなさい」

 

 振り返った小夜の顔は、少しだけ疲れているように見えた。

 

「薔薇、好きなの?」

 

「ええ。この寮に来たとき、誰も手入れをしていなくて荒れ放題だったの。だから私が引き継いだのよ」

 

 小夜は一輪の白薔薇にそっと触れた。棘に刺されたのか、雪のように白い指先に赤い玉が浮かぶ。その指を、小夜はしばらく見つめ、それからそっと舐めた。紫色の瞳が、血の味に細められる。昨夜、詩織の淫紋に触れていたのと同じ指。その指についた自分の血を、小夜は味わっている。その仕草に、詩織の淫紋がかすかに疼いた。

 

「薔薇は、棘があるから綺麗に咲けるのよ。……誰にも摘めない。触れられないから、枯れるまで一人で咲き続けるしかない。それって──」

 

 小夜は言葉を切り、指先の血を舐めとった。

 

「──少し、寂しいとは思わない?」

 

 詩織は何も言えなかった。

 

 小夜は立ち上がり、詩織の前に立った。長身の身体。白いワンピースの胸元が風に揺れ、鎖骨のあたりに浮かぶ淫紋の痕が一瞬覗く。紅い蔓草のような刻印が、白い肌の上でうごめいているように見えた。

 

「詩織。昨夜のこと、覚えてる?」

 

「……覚えてる」

 

「そう」

 

 小夜は微笑んだ。泣き顔にも見える微笑みだった。紫色の瞳が、潤んでいる。

 

「なら、いいの。あなたが覚えているなら、それで」

 

「小夜」

 

「行きましょう。夕食の時間よ」

 

 小夜は詩織の腕に手を絡めた。その指は昨夜淫紋に触れたときと同じ冷たさで、でも昨夜よりもずっと優しかった。長い銀の髪が、詩織の肩に触れる。

 

「今夜も治療するから。あなたの穢れ、まだ残ってる」

 

「……うん」

 

 詩織は小夜の手を振りほどけなかった。

 

 小夜の指がまだ好きだった。声がまだ好きだった。好きだと感じる心は消えても、好きだった記憶が身体に染みついている。小夜の指の冷たさも、声の震えも、淫紋に触れるときだけ優しくなる指先も。すべて、この身体が覚えている。

 

(いつか、この記憶さえも消えるんだろうか)

 

 でも今はまだ。まだ、覚えている。

 

 ◆◆◆

 

 その夜。治療を終えた詩織は、自室のベッドに横たわっていた。

 

 さっきまで小夜がいた場所が、まだ温かい。でも胸の中は空っぽだった。治療のたびに、何かが少しずつ零れ落ちていく。今夜も、ほんの少しだけ小夜への想いが削られた気がする。

 

 開花状況──4/7。

 

 鏡を見る。暗がりの中で、淫紋が紅く脈打っていた。内臓のように、生々しく。詩織の意思とは無関係に、次の花弁を咲かせようとしている。

 

「……お姫様にしてほしいだけなのに」

 

 呟いて、詩織は目を閉じた。ぬめる唇が、静かに言葉を紡ぐ。その唇に、自分の指で触れてみる。蛞蝓のように柔らかな感触。この唇が、いつか誰かに触れられる日は来るんだろうか。小夜の指が。黎の指が。あるいは──。

 

 十四歳の自分が、まだ鏡の向こうで手を振っている。先生みたいな大人の女になりたいと願った自分。初恋を差し出して、大人にしてほしいと願った自分。童顔も、華奢な身体も、ぬめる唇も、すべてを変えてほしかった。

 

 その願いが、いま、この身体を蝕んでいる。

 

 それでも。

 

「──まだ、止まれない」

 

 詩織は立ち上がった。小柄な身体。華奢な鎖骨。蛞蝓のように柔らかな唇。何も変わっていないこの身体で、それでも戦う。

 

 小夜を守る。それが、自分の愛した人への唯一の贖罪だから。たとえその誓いもいつか奪われるとしても、奪われるまでは──戦う。感情がなくても、身体が覚えている限り。

 

 鏡の向こうで、黎が嗤っている。次は誰を喰らうのかと、楽しげに見つめている。深紅の瞳。波打つ黒髪。陶器のような白い肌。あの憧れが、いまは呪いだった。

 

 開花状況、4/7。

 

 あと三枚。

 

 恋は奪われ、身体は疼き、それでも少女は歩き続ける。愛した記憶だけを道標にして。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけましたら、高評価・お気に入り登録・感想で応援していただけると励みになります。

今後の執筆の力になりますので、よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。