武蔵転生記外伝 必殺喰種人   作:masasoukoku

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「モンド―は王家を斬れるのか」その2

数日後――。

 

リリアの嫁入りの日。

 

花嫁衣装に身を包んだリリアは、近くの村へ向かう荷馬車に乗っていた。

 

隣には、迎えに来た青年。

 

派手さはない。

 

裕福でもない。

 

だが実直で、誰にでも優しい農夫だった。

 

父親は少し寂しそうに笑う。

 

「幸せになれよ。」

 

「うん、お父さん。」

 

リリアは何度も振り返りながら手を振る。

 

その日が、人生で一番幸せな日になるはずだった。

 

だが――。

 

偶然。

 

本当に偶然だった。

 

ローワン・ヴァイセルフと、その家臣二人が街道を通りかかる。

 

そして、その偶然が悲劇を呼んだ

 

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「ニニャちゃん!」

 

息を切らした村人が「ツアレ」へ駆け込んでくる。

 

「街道で……!」

 

「大変なんだ!」

 

ニニャは顔色を変えた。

 

「おばさん!」

 

「行こう。」

 

二人は店を飛び出した。

 

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現場。

 

静まり返った街道。

 

横倒しになった荷馬車。

 

散乱した荷物。

 

そして――。

 

倒れている二人。

 

花嫁衣装は赤く染まり、

 

夫は娘を守るように倒れていた。

 

もう、どちらも動かない。

 

リリアの父は立ち尽くすだけ

 

「……。」

 

ニニャはその場で。

 

「ひ、ひどい……。」

 

怒りより先に涙があふれた。

 

「どうして……。」

 

「どうしてこんなことを……。」

 

半喰種となって以来、人間を見ると本能が疼くこともあった。

 

しかし今は、その本能すら消えていた。

 

あるのは、胸を締めつける悲しみだけ。

 

おばさんは静かに亡骸の前にしゃがみ込み、二人の瞼をそっと閉じる。

 

「……そうだね。」

 

短く、それだけつぶやく。

 

その声は穏やかだった。

 

だが、ニニャには分かった。

 

おばさんの瞳には、普段の柔らかさはなかった。

 

静かな怒りだけが宿っていた。

 

遠くで誰かが震える声で言う。

 

「犯人は……。」

 

「ローワン様だ。」

 

その名を聞いた瞬間、

 

ニニャは拳を強く握り締めた。

 

「王族でも……。」

 

「こんなの、許されない。」

 

おばさんはゆっくり立ち上がる。

 

「ニニャちゃん。」

 

「……うん。」

 

「今日は元締めのところへ行こう。」

 

「この依頼は、私たちだけでは決められない。」

 

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古道具屋・地下。

 

重い沈黙が流れていた。

 

テーブルの上には、一つの金袋。

 

元締めは四人をゆっくり見渡す。

 

モン・ドー。

 

先生。

 

おばさん。

 

そしてニニャ。

 

誰も口を開かない。

 

やがて元締めが静かに言った。

 

「……助けを求める依頼人は、おる。」

 

カタン。

 

「救い料は金貨五枚。」

 

「依頼人は――」

 

一拍置く。

 

「ローワンの父親じゃ。」

 

「……!」

 

ニニャは思わず立ち上がった。

 

「そ、それって……!」

 

「国王陛下?」

 

元締めは静かにうなずく。

 

「そうじゃ。」

 

「王として裁けぬ。」

 

「父としても止められぬ。」

 

「だからこそ、喰種人へ救いを求めた。」

 

部屋は静まり返る。

 

モン・ドーが低くつぶやく。

 

「王が、自分の息子を……。」

 

先生は目を閉じたまま言う。

 

「為政者としてではない。」

 

「一人の父親としての依頼、ですか。」

 

元締めは煙管を置いた。

 

「そう受け取っておる。」

 

ニニャはまだ戸惑っていた。

 

「でも……。」

 

「相手は王族ですよ?」

 

「もし本当にやれば、王国中が敵になるかもしれません。」

 

元締めはニニャを見つめる。

 

「そう。」

 

「だから聞く。」

 

その声はいつもより厳しかった。

 

「それでも受けるかい。」

 

「この喰種人の仕事を。」

 

ニニャは言葉を失う。

 

リリアの笑顔。

 

父親の笑顔。

 

街道に横たわっていた二人の姿。

 

それが脳裏によみがえる。

 

モン・ドーは黙って剣の柄に手を置く。

 

先生は静かに金袋を見つめる。

 

おばさんは穏やかな笑みを浮かべたまま、小さくつぶやいた。

 

「相手が誰かじゃない。」

 

「泣いている人がいる。」

 

「それだけで十分じゃない?」

 

再び静寂が訪れる。

 

元締めは四人を見渡し、最後に静かに告げた。

 

「喰種人は権力のために刃を振るわん。」

 

「復讐のためにも振るわん。」

 

「ただ、救いを求める者の声に応える。」

 

「その相手が盗賊であろうと、貴族であろうと――」

 

「王家であっても変わらん。」

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