武蔵転生記外伝 必殺喰種人   作:masasoukoku

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「罠にかかった喰種人」その1

夕方のエ・ランテル。

 

コーヒーショップ「ツアレ」の扉が静かに開く。

 

カラン――。

 

「いらっしゃいませ。」

 

いつものようにニニャが迎える。

 

入ってきたのは、やつれ果てた男だった。

 

服は泥だらけ。

 

目は赤く腫れ、何日も眠っていないように見える。

 

男は席にも座らず、ニニャの前で頭を下げた。

 

「お願いです……。」

 

「喰種人を……。」

 

「喰種人を探してください。」

 

ニニャの表情が変わる。

 

「どうしたんですか。」

 

男は震えながら話し始める。

 

「妻が……。」

 

「悪徳高利貸しに借金のかたとして連れて行かれました。」

 

「金は返したんです。」

 

「それでも足りないと言われ……。」

 

「妻を返してくれない。」

 

男は涙を流す。

 

「お願いします……。」

 

「私には、もう喰種人しか頼れないんです。」

 

その姿に、ニニャは姉・ツアレの面影を重ねた。

 

妾として連れ去られ、売られていった姉。

 

あの日の怒りが胸によみがえる。

 

その夜。

 

古道具屋の地下。

 

元締めに依頼を報告する。

 

元締めは黙って最後まで聞き終えると、小さく首を振った。

 

「断る。」

 

「え?」

 

ニニャは驚く。

 

「どうしてです!」

 

「奥さんがさらわれたんですよ!」

 

元締めは静かに煙管を置く。

 

「……話が出来すぎとる。」

 

「出来すぎ?」

 

「喰種人を名指しで探しに来る。」

 

「しかも、泣きながら。」

 

「わしの勘が言っとる。」

 

「胡散臭い。」

 

モン・ドーも頷く。

 

「俺も嫌な匂いがする。」

 

先生も静かに言った。

 

「少なくとも、もう少し調べるべきだ。」

 

しかしニニャは納得できなかった。

 

「もし本当だったら!」

 

「助けを待っている人がいるんですよ!」

 

元締めは静かに答える。

 

「だからこそ、急ぐな。」

 

「急ぐ者ほど、罠にはまる。」

 

だが、その夜。

 

ニニャは一人で古道具屋を抜け出した。

 

「あの人を……。」

 

「助けなきゃ。」

 

月明かりの下、高利貸しの屋敷へ向かう。

 

塀を越え、音もなく庭へ降り立つ。

 

屋敷の中は、不気味なほど静かだった。

 

「……誰もいない?」

 

ニニャが警戒しながら奥へ進んだ、その瞬間。

 

ガシャン!

 

鉄格子が一斉に落ちる。

 

「なっ!」

 

四方を塞がれた。

 

屋根の上。

 

庭の周囲。

 

無数の人影が現れる。

 

「かかったな。」

 

黒装束の男が笑う。

 

「喰種人。」

 

ニニャは赫眼を見開いた。

 

その依頼は、助けを求める者の叫びではなかった。

 

喰種人を誘い出すために仕組まれた罠だった。

 

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赫子が一閃する。

 

「はあっ!」

 

だが、その瞬間だった。

 

「――今だ!」

 

バチィッ!!

 

青白い雷がニニャの身体を包む。

 

「きゃああっ!」

 

赫子が痙攣し、制御を失う。

 

半喰種となった身体は再生力こそ高いが、神経を焼く雷撃には弱かった。

 

二発、三発と雷撃が撃ち込まれる。

 

「ぐっ……!」

 

視界が白く染まり、そのまま意識が途切れた。

 

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どれほど時間が経ったのか。

 

ニニャはゆっくりと目を開ける。

 

「……ここは。」

 

身体が動かない。

 

見下ろすと、両手両足を革の拘束具で固定され、石造りの台へ縛り付けられていた。

 

赫子を出そうとしても、身体に力が入らない。

 

周囲には魔法陣が刻まれ、封印の術式が淡く光っている。

 

「目が覚めたか。」

 

聞き覚えのある声。

 

依頼人を装っていた男だった。

 

「やはり、お前が喰種人だったか。」

 

男は薄く笑う。

 

「お前が喰種人と接触していることは調べがついていた。」

 

「だが、お前自身が喰種人だったとは予想外だった。」

 

ニニャは男を睨みつける。

 

「……。」

 

男は机に置かれた紙を取り上げる。

 

「さて。」

 

「仲間の名前を教えてもらおう。」

 

「元締めは誰だ。」

 

「ほかの喰種人は何人いる。」

 

ニニャは静かに答える。

 

「……わたし一人よ。」

 

男はため息をついた。

 

「そうか。」

 

「なら、口が軽くなるまで待つだけだ。」

 

彼はニニャの手を見つめる。

 

「痛みは、人を正直にする。」

 

ニニャは歯を食いしばった。

 

「何をされても……言わない。」

 

男は冷たく笑う。

 

「その強情さが、いつまで続くかな。」

 

部屋には重苦しい沈黙が流れる。

 

ニニャは心の中で、自分の軽率な判断を悔いていた。

 

(元締め……。)

 

(先生……。)

 

(モン・ドーさん……。)

 

(ごめんなさい。)

 

自分は、まんまと敵の罠にはまってしまったのだ

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