赫子が一閃する。
「はあっ!」
だが、その瞬間だった。
「――今だ!」
バチィッ!!
青白い雷がニニャの身体を包む。
「きゃああっ!」
赫子が痙攣し、制御を失う。
半喰種となった身体は再生力こそ高いが、神経を焼く雷撃には弱かった。
二発、三発と雷撃が撃ち込まれる。
「ぐっ……!」
視界が白く染まり、そのまま意識が途切れた。
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どれほど時間が経ったのか。
ニニャはゆっくりと目を開ける。
「……ここは。」
身体が動かない。
見下ろすと、両手両足を革の拘束具で固定され、石造りの台へ縛り付けられていた。
赫子を出そうとしても、身体に力が入らない。
周囲には魔法陣が刻まれ、封印の術式が淡く光っている。
「目が覚めたか。」
聞き覚えのある声。
依頼人を装っていた男だった。
「やはり、お前が喰種人だったか。」
男は薄く笑う。
「お前が喰種人と接触していることは調べがついていた。」
「だが、お前自身が喰種人だったとは予想外だった。」
ニニャは男を睨みつける。
「……。」
男は机に置かれた紙を取り上げる。
「さて。」
「仲間の名前を教えてもらおう。」
「元締めは誰だ。」
「ほかの喰種人は何人いる。」
ニニャは静かに答える。
「……わたし一人よ。」
男はため息をついた。
「そうか。」
「なら、口が軽くなるまで待つだけだ。」
彼はニニャの手を見つめる。
「痛みは、人を正直にする。」
ニニャは歯を食いしばった。
「何をされても……言わない。」
男は冷たく笑う。
「その強情さが、いつまで続くかな。」
部屋には重苦しい沈黙が流れる。
ニニャは心の中で、自分の軽率な判断を悔いていた。
(元締め……。)
(先生……。)
(モン・ドーさん……。)
(ごめんなさい。)
自分は、まんまと敵の罠にはまってしまったのだ。
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「答えろ。」
男の低い声が地下室に響く。
ニニャは唇を噛み締め、何も言わない。
次の瞬間。
「うああああっ!」
苦痛に耐え切れず、悲鳴が石壁に反響する。
呼吸は乱れ、視界が揺れる。
意識が遠のきかけた、その時。
「寝るな。」
冷たい声が飛ぶ。
「気絶されると困る。」
男は無表情のまま問い掛ける。
「千から七を引くと。」
ニニャは荒い息をつきながら答える。
「……九百九十三。」
「そこから七。」
「……九百八十六。」
「続けろ。」
数字を答えさせることで意識をつなぎ止められ、再び尋問が始まる。
苦痛と問い掛け。
沈黙と数字。
それが何度も繰り返される。
男の狙いは身体を傷つけることではない。
喰種人の仲間の名を聞き出すことだった。
しかし、ニニャは決して口を開かなかった。
(言えない……。)
(元締めも……先生も……モン・ドーさんも……。)
(私がしゃべれば、みんなが死ぬ。)
薄れゆく意識の中で、彼女はただその一念だけを握りしめていた。
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男は深く息をついた。
「口の堅さは大したものだ。」
「……仕方ない。」
「これは最後の手段なんだがな。」
そう言うと、部屋の隅に置かれていた蓋付きの壺へ歩いていく。
蓋を静かに持ち上げる。
中から取り出したのは、一匹の大きなムカデだった。
黒光りする甲殻が、燭台の明かりを受けて鈍く光る。
ニニャの顔色が変わる。
「……!」
男はムカデを指先でつまみ上げ、ニニャの目の前まで持っていく。
「安心しろ。」
「これは命を奪うためのものじゃない。」
「恐怖は、人の心を揺らす。」
男はニニャの表情を観察するように言った。
「肉体の苦痛に耐えられる者でも、恐怖には弱い者がいる。」
ニニャは男を真っすぐ見返した。
震えてはいた。
それでも視線だけは逸らさない。
「……仲間のことは話さない。」
男はしばらく無言で見つめ返し、やがて小さく笑った。
「なるほど。」
「その覚悟が、いつまで持つか見ものだ。」
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男は壺を机の上へ置いた。
「最後にもう一度だけ聞こう。」
「仲間の名を言え。」
ニニャはゆっくりと首を振る。
「……言わない。」
男はため息をつき、合図を送った。
部屋にいた者たちが、ニニャの身動きを封じる。
「ならば、恐怖というものを知ってもらう。」
ニニャの瞳が大きく見開かれる。
「いや……。」
「やめて……。」
次の瞬間、地下室いっぱいに悲鳴が響いた。
「あああああっ!」
石壁に反響する叫び声。
男は無表情のまま、その様子を見つめている。
「……まだ話す気はないか。」
ニニャは荒い息を繰り返しながら、涙を流していた。
それでも、震える唇から出た言葉は一つだけだった。
「……誰の……ことも……言わない。」
男は静かに目を細める。
「その忠誠心だけは、本物らしいな。」
例の金木くん拷問です