武蔵転生記外伝 必殺喰種人   作:masasoukoku

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「罠にかかった喰種人」その3

古道具屋の地下。

 

薄暗い部屋には重苦しい空気が漂っていた。

 

モン・ドーが腕を組み、元締めを見つめる。

 

「それで、ニニャの捕まった場所は分かったのか、元締め。」

 

老人は静かにうなずく。

 

「うむ。」

 

「高利貸しの屋敷じゃ。」

 

「で?」

 

「……でとは?」

 

モン・ドーはいら立ったように机を叩く。

 

「助けるのか、助けないのかだ!」

 

「どっちなんだ!」

 

元締めは煙管を置き、静かに答えた。

 

「我々は喰種人。」

 

「捕まれば、自分一人で始末をつける。」

 

「死ぬときは黙って死ぬ。」

 

「それが掟じゃ。」

 

モン・ドーは苦い顔になる。

 

「ニニャは新入りだ。」

 

「拷問されれば……しゃべるかもしれん。」

 

その時だった。

 

部屋の隅で黙っていた先生――エルダーリッチが口を開く

 

「……いや。」

 

「彼女はしゃべらない。」

 

モン・ドーが振り向く。

 

「なんでそう言い切れる。」

 

先生は静かに答える。

 

「あの子は、自分が半喰種になったことを知った時、自分の存在を呪っていた。」

 

「それでも、人を助ける道を選んだ。」

 

「その覚悟は、本物だ。」

 

「だから仲間は売らない。」

 

部屋が静まり返る。

 

元締めも目を閉じたまま、小さくうなずく。

 

「……ああ。」

 

「先生の言う通りじゃ。」

 

「ニニャはしゃべらん。」

 

しばらく沈黙が続く。

 

やがてモン・ドーが低い声で言った。

 

「だから見殺しにするのか。」

 

その一言に、元締めはゆっくりと目を開けた。

 

その瞳には、いつもの飄々とした色はなく、長年修羅場をくぐり抜けてきた男の厳しさが宿っていた。

 

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地下室に、かすれた悲鳴が響く。

 

「あああああっ……!」

 

尋問に立ち会っていた男の一人が眉をひそめた。

 

「……あの女、しぶといな。」

 

別の男が、ニニャを見て息をのむ。

 

「おい……髪が。」

 

茶色い髪は、根元から少しずつ色を失い、雪のような白へと変わり始めていた。

 

赫眼も以前より深い赤に染まり、瞳には人ならざる光が宿っている。

 

男は腕を組み、静かに近づいた。

 

「……そろそろ限界か。」

 

「もういいだろう。」

 

「お前は十分黙った。」

 

ニニャは荒い息をつきながら、男を見上げる。

 

男は少し身をかがめた。

 

「元締めはどこだ。」

 

「仲間は何人いる。」

 

「言えば楽になる。」

 

ニニャの唇がかすかに動く。

 

「あ……。」

 

男は口元をゆがめた。

 

「そうだ、それでいい。」

 

「何だ?」

 

聞き逃すまいと耳を近づける。

 

その瞬間。

 

「がっ!」

 

ニニャは残った力を振り絞り、男に食らいついた。

 

「ぐあっ!」

 

男は思わず後ずさりし、周囲の男たちが一斉に武器を構えた。

 

「離れろ!」

 

「こいつ……!」

 

男は傷口を押さえながら怒りをあらわにする。

 

「最後まで反抗する気か……!」

 

ニニャは血のにじむ唇で笑った。

 

「……誰も……売らない。」

 

その瞳だけは、決して折れてはいなかった。

 

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夜のエ・ランテル。

 

高利貸しの屋敷を見上げる三つの影。

 

モン・ドーが肩を回す。

 

「やっぱり来たか。」

 

隣には、杖をついた先生。

 

骸骨の顔は相変わらず表情一つ変えない。

 

「あなたもですか。」

 

モン・ドーは苦笑する。

 

「見捨てられる性分じゃないらしい。」

 

先生は静かに答えた。

 

「彼女は仲間です。」

 

その時、背後からゆっくりと足音が響く。

 

「ニニャを助けに来るお人好しは、もう一人おったようじゃ。」

 

元締めだった。

 

煙管をくわえ、いつもの穏やかな笑みを浮かべている。

 

モン・ドーが笑う。

 

「結局、あんたも来るんじゃねえか。」

 

元締めは肩をすくめる。

 

「年寄りは約束を守るものじゃ。」

 

「仲間を見捨てるとは約束しておらん。」

 

モン・ドーは剣の柄を握る。

 

「よし。」

 

「それじゃあ屋敷に突入――」

 

その瞬間だった。

 

轟音。

 

ドォォォン!!

 

屋敷全体が内側から吹き飛ぶ。

 

炎が夜空を赤く染める。

 

「!」

 

「なんだ!?」

 

三人は思わず足を止めた。

 

崩れ落ちる屋敷。

 

燃え盛る炎。

 

その中心から、一つの人影がゆっくりと歩いてくる。

 

パチパチと燃える木材を踏みしめながら。

 

白く変わった髪。

 

両目は赫く輝き、人ならざる光を放っている。

 

腰からは十本もの赫子がうねり、生き物のように宙を這う。

 

その一本一本からは、圧倒的な殺気があふれていた。

 

そして。

 

その口元には。

 

今までのニニャには決してなかった、不気味な笑みが浮かんでいた。

 

「……ニニャ。」

 

モン・ドーが思わず名を呼ぶ。

 

だが、その瞳に宿る光は、彼らの知る優しい少女のものではなかった。

 

先生は静かに呟く。

 

「……これは。」

 

「半喰種の力が暴走している。」

 

炎を背に立つニニャは、ゆっくりと三人へ顔を向ける。

 

その笑みだけが、静かな夜に不気味に浮かび上がっていた。




ニニャのことは仲間に入る際 話したという設定です
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