コードギアス:The New Order ─ Last Days of Empire   作:オムライス黄色連盟

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本編です。


魔神が生まれた日

1962年4月21日午後

神聖ブリタニア帝国  首都ペンドラゴン

 

 二人は地上へ出てから、バイクを止めた場所までゆったりと歩いていた。

 七分でチェスを終わらせたために、午後の授業まで余裕ができたからである。

 しかし地上へ出た直後、辺りに重い衝突音が響いた。

 

「なんだ!?」

 

 道路の向こうで軍用輸送車が横転していた。

 その後方では治安警察の装甲車と黒いトレーラーが衝突し、顔を覆った武装集団が軍用車両を包囲している。

 銃声が鳴った。

 

「伏せろ!」

 

 市民が逃げ惑う。

 治安警察が応射し、建物の壁に弾痕が走った。

 ルルーシュとリヴァルは路地の陰へ飛び込んだ。

 

「何なんだ、あいつら」

「テロリストだろう」

「そんなこと見れば分かる!」

「目的が妙だ」

 

 ルルーシュは銃撃の向こうを観察した。

 武装集団は現金輸送車にも、警察車両にも目を向けていない。

 狙っているのは、軍用輸送車の荷台に固定された黒い円筒形コンテナだけだった。

 表面には放射性物質を示す標識。

 その下には、ドイツ語の警告文が記されている。

 

 GEHEIME REICHSSACHE

 

 国家機密。

 

 さらに、銀色の骸骨を囲むルーン文字。

 あれはドイツ本国のものではない。ドイツ本国は鉤十字のマークを使用しているはずだからだ。

 記憶の中にあるそれは、フランス北部にまたがる親衛隊の人工国家、騎士団領ブルグントの標章だった。

 

「ブルグントからの回収物か」

 

 ルルーシュが呟いた。

 昨年のハワイ危機では、日本とブリタニアの双方でブルグント工作員が摘発されていた。

 両国を核戦争へ誘導するため、軍事施設への破壊工作と偽旗攻撃を計画していたという。

 公式発表は断片的だったが、帝国政府が何かを押収し、ペンドラゴンへ運び込んだという噂は残っていた。

 

「ルルーシュ、ここを離れよう!」

「待て。あのトレーラーは──」

 

 テロリストはコンテナを黒いトレーラーへ積み替えようとしていた。

 だが、ブリタニア軍の増援が近づいている。サイレンの音に混じって、規則的な重低音が響いた。

 ランドスピナーが地面に擦れる音。駆動系と外部カメラの開閉音。

 KMFだった。

 治安警察ではない。治安警察はKMFのような重装備は持っていない。

 だとするこれは、軍用KMFだった。

 

「急げ!」

 

 テロリストの一人が叫んだ。

 

「カレン、出せるか!」

『もう乗ってる!』

 

 少女の声が無線から返る。

 黒いトレーラーの後部が開き、その内部から赤く塗装された旧式KMFが姿を現した。

 

 グラスゴー

 

 ブリタニア軍では既に二線級へ退いた旧型機だが、テロリストにとっては貴重な戦力だった。

 折り畳まれていた腕部が展開し、ランドスピナーが地面を蹴る。

 

『ここは私が引き受ける! 荷物を地下へ!』

 

 赤いグラスゴーが道路へ飛び出した。

 直後、交差点の向こうから帝国軍の最新型KMF サザーランドが姿を現す。

 

『反乱機を確認。投降せよ』

『誰が!』

 

 カレン機がマシンガンを連射した。サザーランドが建物の陰へ退避するが、追撃しない。

 カレンは撃破を狙っていない。

 道路を塞ぎ、帝国軍の進路を限定し、トレーラーが逃げるための時間を稼いでいる。

 

「今のうちだ、走れ!」

 

 ルルーシュはリヴァルの肩を押した。

 

「右の路地を抜けろ。そのまま学校へ戻れ」

「お前は?」

「すぐに追う」

「嘘つけ! その顔は絶対に何かする時の顔だ!」

 

 銃弾が路地の入口へ着弾した。

 リヴァルが頭を抱える。

 

「いいから行け!」

 

 ルルーシュはリヴァルを路地の奥へ突き飛ばした。

 その直後、黒いトレーラーが急発進する。

 破損した軍用車両を避けようとした運転手が、路地の入口で急激にハンドルを切った。

 車体後部が壁へ衝突する。

 崩れた外壁と一緒に、ルルーシュの足元が抜けた。

 

「な──」

 

 身体が落下する。

 路地の下には、使用されなくなった旧地下鉄への搬入口があった。

 ルルーシュは瓦礫とともに斜面を滑り落ち、その先で停車していたトレーラーの屋根へ叩きつけられた。

 薄い外板が破れ、そのまま内部へ落下する。

 視界が暗転した。

 


 

数分後

ペンドラゴン 旧市街地下道

 

 ルルーシュが意識を取り戻した時、トレーラーは地下道を走っていた。

 背中と肩が激しく痛む。

 荷台内部には数人の武装した構成員がいた。負傷者もいる。

 中央には、例の黒いコンテナが固定されていた。

 

「起きたか」

 

 テロリストの男が、ルルーシュへ拳銃を向けた。

 軍用ジャケットの肩には、黒く塗り潰されたハワイ駐留軍の旧徽章が縫いつけられている。

 

「ずいぶん派手な乗り方をしてくれたな、学生」

「俺が望んだわけじゃない」

「カレンが時間を稼いでいる間に、余計なものまで積み込んだらしい」

「だったら止めて降ろせ」

「後ろをブリタニア軍に追われている。今止まれば、全員まとめて捕まる」

 

 ルルーシュはゆっくりと身を起こした。

 

「そのコンテナは、昨年のハワイ危機でブルグント工作員から回収されたものか」

 

 男の表情が変わった。

 

「なぜそう思う」

「標章を見れば分かる。ドイツ本国の親衛隊規格ではない。騎士団領独自の管理記号だ。それに、ブリタニア軍が首都中心部でこれほど厳重に運んでいる」

 

 ルルーシュは男の肩章を見る。

 

「お前たちは日系の移民組織だな」

「……だったら何だ」

「目的は兵器の奪取ではない。ハワイ危機の裏でブリタニアが何を回収したのか、それを突き止めようとしている」

 

 拳銃の銃口がルルーシュへ近づいた。

 

「口を閉じろ」

「図星らしい」

 

 その時、トレーラーが大きく揺れた。

 後方から爆発音が響く。

 

『カレン、戻れ! これ以上は持たない!』

『分かってる! 先に行って!』

 

 無線越しに、金属が激突する音が続く。

 カレンの"グラスゴー"は旧式機だ。

 正規軍のサザーランドを相手に長く戦える機体ではない。

 それでも彼女は狭い地下道と廃線設備を利用し、ブリタニア軍KMFの進路を塞いでいた。

 

 トレーラーが急旋回した。

 黒いコンテナの固定具が軋む。

 外から射撃音。

 荷台の壁へ弾丸が突き刺さり、金属片が飛び散った。

 

「ブリタニア軍が先回りしている!」

 

 運転席から叫び声が上がった。

 

「前方にも歩兵! 退路を塞がれた!」

 

 男が拳銃を確認する。

 

「旧整備区画へ入れ。コンテナだけでも運び出す」

 

 トレーラーは錆びた防火扉を突き破り、旧地下鉄の整備区画へ進入した。

 直後、前輪が瓦礫へ乗り上げる。

 車体が大きく傾き、コンテナが横倒しになった。

 ルルーシュと構成員たちも床へ投げ出される。

 外から帝国兵の声が響いた。

 

「車両を包囲した!」

「抵抗する者は射殺しろ!」

 

 武装集団の男が歯を食いしばる。

 

「ここまでか」

「自爆装置は?」

 

 別の男が尋ねた。だが拳銃を向けてきた男は首を振った。

 

「積荷を巻き込む。まだ使えない」

「捕まれば同じだ!」

 

 その時、トレーラー後部の扉が外側から撃ち抜かれた。

 閃光弾が投げ込まれる。

 

 その直後、白い光と爆音。

 

 ルルーシュの視界が潰れた。耳鳴りがして頭が痛くなる。身体が頑丈ではないルルーシュは思わず頭を抱えた。

 その隙にブリタニア兵が雪崩れ込んでくる。相手は銃火器を持った訓練されたブリタニア軽歩兵たちだった。

 

「全員、伏せろ!」

「武器を捨てろ!」

 

 テロリストの構成員が応射する。狭い荷台の中で銃撃戦が始まった。

 ルルーシュは身の安全のため、コンテナの陰へ素早く転がり込む。

 構成員の一人が倒れ、残る者たちは側面の非常口から整備通路へ撤退した。

 

 やがて銃声が途切れる。

 

 荷台に残されたのは、ルルーシュと黒いコンテナだけだった。

 帝国兵の足音が近づく。

 最初に荷台へ入ってきたのは、ブリタニア軍の制服を着た少年だった。

 

 日本人の顔。

 茶色の髪。

 右手には小銃。

 胸には下級兵士を示す階級章。

 

 制服は支給品で、身体にわずかに合っていなかった。少年は銃口を向けたまま、倒れているルルーシュを見る。

 瞳が大きく見開かれた。

 

「ルルーシュ……?」

 

 ルルーシュもまた、その顔を見つめた。

 

「スザク」

 

 枢木スザク。

 大日本帝国の軍事華族、枢木家の嫡男。

 昨年のハワイ危機の最中に姿を消した少年が、祖国の宿敵であるブリタニア軍の制服を着ていた。

 

「どうして君がここにいる?」

「それはこちらの台詞だ」

 

 ルルーシュは痛む身体を起こした。

 

「なぜお前が、ブリタニアの軍服を着ている」

 

 スザクは答えなかった。

 答えれば、何かが崩れてしまうかのような顔だった。

 外から別の兵士が入ってくる。

 

「枢木二等兵、状況を報告しろ」

「民間人を一名確認。武装していません」

「積荷は?」

 

 横倒しになった黒いコンテナの外装には亀裂が走っていた。

 内部から白い蒸気が漏れ出している。

 

「破損しています」

「開けろ」

「危険物の可能性があります」

「命令だ」

 

 スザクは慎重にコンテナへ近づいた。

 だが手を触れるより早く、蓋が内側から押し開けられた。

 

 霧の中から、人間の指が現れる。

 

 細い、少女の指だった。

 

 黒いコンテナから、緑色の長い髪を持つ少女が身体を起こした。

 拘束具をつけられ、額と胸には電極の痕が残っている。

 彼女はゆっくりと目を開いた。

 金色の瞳がスザクを通り過ぎ、ルルーシュを捉える。

 

「やっと会えた」

 

 少女は言った。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」

 

 スザクの表情が凍りついた。

 ルルーシュも息を止める。

 死んだことになっている皇子の名。

 この場で知っているはずのない、ルルーシュの本名だった。

 

「昨年、世界は一人の少年が父を殺したことで生き延びた」

 

 少女はなんでもないかのように言葉を続けた。

 動揺したスザクの手から、銃が滑り落ちかける。スリングだけで保持された小銃はぶら下がったままだった。

 

「何を……」

「だが、それでは何も終わらなかった」

 

 少女の視線がルルーシュへ戻る。

 

「帝国も、核も、憎しみも残ったままだ」

「お前は何者だ」

「お前に力を与える者だ」

「力?」

「妹を守る力。全ての帝国を壊す力」

 

 少女は拘束された手を差し出す。

 

「昨年、お前は地下壕で祈ることしかできなかった」

 

 その言葉がルルーシュの胸を貫いた。

 デフコン2の警報が鳴った時。暗いシェルターの中で見た震えるナナリーの手と、その手を握る自分。

 核攻撃までの推定時間を告げるラジオ。

 安全な宮殿地下へ逃げ込んだ皇族たち。

 そして、何もできなかった自分。

 

「今度は選べる」

 

 少女は言う。

 

「再び誰かが世界を焼くまで待つか」

 

 外から新たな足音が近づいてくる。

 

「それとも、お前自身が世界の秩序を壊すか」

「ルルーシュ、その子に触れるな」

 

 スザクが声を上げた。

 

「なぜだ」

「分からない。でも、危険だ」

「危険なのは世界の方だ」

 

 ルルーシュは少女へ手を伸ばす。

 その直後だった。素早い足音が幾十にも重なり、地下に響き渡った。

 

「何をしている、枢木!」

 

 ブリタニア人の指揮官が荷台へ踏み込んできた。

 指揮官の拳銃がスザクへ向けられる。

 

「積荷から離れろ!」

「待ってください。この少女は生きています!」

「それがどうした。お前の任務は積荷の確保だ。目撃者は全員処分しろ」

「民間人です!」

「敵国人のお前が、帝国軍の命令へ意見するのか?」

 

 指揮官は冷たく笑った。

 

「父親を裏切った男が、今度はブリタニアも裏切るつもりか」

 

 スザクの顔色が変わる。

 ルルーシュは、その言葉を聞き逃さなかった。

 

「彼らを拘束してください。殺す必要はありません」

「必要かどうかを決めるのはお前ではない」

 

 指揮官はためらわなかった。彼は拳銃を構え、スザクへ引き金を引いた。

 乾いた銃声が響く。

 スザクの腹部から血が弾けた。

 

「スザク!」

 

 少年の身体が後ろへよろめく。

 銃を取り落とし、トレーラーの床へ倒れた。

 腹部を押さえた手の隙間から、血が広がっていく。簡素なボディアーマーは拳銃弾を防ぐことなく、貫通された。

 

「なぜ……」

「命令違反だ」

 

 指揮官は倒れたスザクを見下ろした。

 

「日本人を信用した上層部の判断が間違っていた」

 

 スザクは何かを言おうとしたが、声にならない。

 やがて、彼は意識を失った。

 

「次はお前だ」

 

 指揮官がルルーシュへ拳銃を向けた。

 ルルーシュは少女の前へ立つ。

 

「学生の姿をしているが、その女がお前の名を呼んだな?」

 

 指揮官の目に疑念が浮かぶ。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。死んだ皇子と同じ名だ」

 

 引き金へ指がかかる。

 

「確認は後でいい。死体からでも調べられる」

 

 銃口がルルーシュの眉間を捉えた。ルルーシュも思わず死を覚悟する。

 

 その瞬間。

 

 トレーラーの前部で、爆発が起きた。

 

 テロリストが撤退の際に作動させていた自爆装置だった。

 炎と衝撃波が荷台を貫く。指揮官の身体が壁へ叩きつけられた。

 照明が消え、床が大きく傾く。

 

「今だ!」

 

 ルルーシュは少女の腕をつかんだ。側面の裂け目から外へ飛び出す。

 背後でトレーラーが燃え上がった。

 爆発はコンテナを完全に破壊するほどではなかったが、ブリタニア軍の追跡と通信を一時的に混乱させるには十分だった。

 ルルーシュは少女を連れ、旧地下鉄の暗い整備通路を走った。

 

「どこへ行く」

「ここから離れる」

「逃げるだけか?」

「今はな」

 

 少女は走りながら、わずかに笑った。

 

「力が欲しいのではなかったのか」

「得体の知れない女の言葉を信じるほど、俺は単純じゃない」

「それでも私を置いていかなかった」

「ブリタニア軍に捕まれば、俺の正体も知られる。お前を渡せないだけだ」

「そういうことにしておこう」

 

 後方から銃声が響いた。

 

「いたぞ!」

「止まれ!」

 

 爆発を免れたブリタニア兵とその指揮官が追ってきた。

 ルルーシュと少女は、次第に袋小路へ追い詰められる。

 前方には閉鎖された防火扉。

 背後には数人の兵士。

 もはや逃げ場はなかった。

 

「両手を上げろ!」

「女から離れろ!」

 

 兵士たちが銃を構える。

 ルルーシュは周囲を見渡した。

 使えるものはない。

 武器もない。

 味方もいない。

 ここで捕まれば、後にナナリーも危険にさらされるだろう。

 

「選べ、ルルーシュ」

 

 少女が静かに言った。

 

「何を」

「このまま他人の命令によって死ぬか」

 

 彼女はルルーシュへ手を差し出す。

 

「王の力を受け取り、自分の命令で生きるか」

 

 兵士たちが一歩近づく。

 

「最後の警告だ!」

 

 ルルーシュは少女を見た。

 

「力があれば、帝国を倒せるのか」

「使う者次第だ」

「日本も、ドイツも、ブリタニアも?」

「お前が命じられるなら」

 

 ルルーシュは少女の手を取った。その途端、視界が赤く染まる。

 

 無数の記憶が流れ込んだ。

 

 戦場。

 処刑台。

 燃える都市。

 王冠を被った男たち。

 巨大な扉。

 人間の意志を奪う研究。

 ブルグントの地下施設。

 

 そして、何度も繰り返される一つの言葉。

 

 ギアス

 

 王の力。

 

『契約しよう、ルルーシュ』

 

 少女の声が頭蓋の内側へ響く。

 

『私がお前に力を与える』

『その代わり、お前は私の願いを一つ叶える』

 

 赤い鳥のような紋様が、ルルーシュの左目へ焼きついた。

 

「何をしている!」

 

 兵士たちが銃口を向ける。彼らに対し、ルルーシュは顔を上げた。

 左目に赤い紋様が浮かぶ。

 兵士たちの瞳へ、同じ印が映り込んだ。

 

「お前たち」

 

 ルルーシュは初めて手にした力の正体を、本能的に理解していた。

 

「分からないのか。撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ

 

 相手の意志を奪う。命令を絶対のものにする。

 一度だけ、どのような命令にも従わせる王の力。

 最初の命令は、既に決まっていた。

 

自害しろ

 

 一瞬の沈黙。

 兵士たちの表情から、疑念も恐怖も消えた。

 

イエス、ユア・ハイネス

 

 彼らは揃って答えた。

 銃口を自らへ向ける。途端、連続した銃声が地下道へ響き渡った。

 兵士たちは一人ずつ倒れていく。

 ルルーシュは動かなかった。

 撃たれる寸前まで自分を追い詰めていた者たちが、たった一言で命を絶った。

 手を下した感覚はない。

 それでも、これは明確に自分が殺したのだ。

 少女が背後から問いかける。

 

「どうだ。王の力は」

 

 ルルーシュは倒れた兵士たちを見下ろした。

 

「恐ろしい力だ」

「それだけか?」

「代償は後で考える」

 

 ルルーシュは兵士の拳銃を拾った。

 震えはなかった。同時に先ほどの罪悪感が出てきたが、すぐに覚悟を決めた。

 罪を犯すなら、罪を無駄にはしない。

 手を汚すなら、その手で最後まで目的をつかむ。

 

「始まったな」

 

 少女が言った。

 

「何がだ」

「お前の反逆が」

 

 ルルーシュは暗い地下道の先を見た。

 一年前、自分は地下壕の中で祈ることしかできなかった。

 

 今は違う。

 

 軍隊はない。

 地位もない。

 だが、人間の意志を支配する力を手に入れた。

 

「日本も、ドイツも、ブリタニアも」

 

 三つの帝国。

 三つの支配。

 世界を核の炎へ近づけた三つの大国。

 

「すべて終わらせる」

 

 その声に迷いはなかった。

 世界はまだ、黒髪の少年が何者になるのかを知らない。

 帝国に捨てられた皇子。

 ハワイ危機を地下壕から見つめていた無力な少年。

 

 やがて三つの帝国へ反逆する、仮面の男。

 

 その日、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは初めて王の力を手にした。

 

 

 

魔神が、生まれた 

 




解説
『グラスゴー』
ブリタニア製の旧式KMF。
第四世代に分類され、ブリタニアで初めて開発されたナイトメアでもある。太平洋戦争後期にてようやく実戦投入され、日本軍の優れたKMFとも互角に渡り合った。
しかし現在では後継機の登場により一線を退いており、旧式故の管理の甘さからテロリストにまで横流しされる始末。

『サザーランド』
現在のブリタニア軍主力量産機。
第五世代ナイトメアフレームに分類される機体であり、太平洋戦争での戦訓を活かし、機動性や白兵戦能力の強化に重点が置かれた設計が為されているのが特徴。
1962年時点でブリタニアにて最も多く配備されているKMFである。
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