乙女アポカリプス   作:フィールデ行橋

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春はなぜこんなにきらめくの?

夜の土佐堀川、春の風。夕食のあと私は1人で川沿いを歩いていた。ゆくりちゃんと「また明日ね」と言って別れたばかりなのに、なんとなく心が落ち着かなかった。

 

今日は、2人だけの小さな記念日だ。

 

ゆくりちゃんと最初に一緒に夕焼けを見た日――

 

2人でなんでもない話をして、空が群青に変わるまでずっと、隣にいた。それとゴミ拾いも一緒にやった。あのときゆくりちゃんが「真緑ちゃんと一緒だとなんか心が弾むし、毎日が特別に思えるね」って、何気なく言った。それを聞いた時私も心底嬉しかった。それから、私のなかで“この日”は、ずっと小さな宝物になっていた。放課後、ゆくりちゃんはフロアでローラちゃんと話していた。2人で向かい合って、嬉しそうに笑っているゆくりちゃんを見て、なんとなく、胸が苦しくなった。

 

(空しいです・・・・。2人だけの思い出なんて、私だけが大事にしている。心がぽっかり穴が開いてしまったような気がします。私が成長していないだけでしょうか?)

 

なんてちょっとだけ寂しくなった。

 

あのときの夕焼けも、今日の夕焼けも、ゆくりちゃんと一緒なら全部特別だった。でも最近は、私がいなくても、ゆくりちゃんはすごく楽しそうに見える。私は自分だけが2人の思い出を大切にしすぎてるんじゃないかって、不安になった。

 

川沿いのベンチに座って、スマホを見つめる。

 

グループチャットのやり取りはなんだかいつもより遠く感じる。ゆくりちゃんから、「ちゃんと帰った?」ってメッセージが来ていた。

 

“はい。少し今日は寄り道してますので”

 

本当は「覚えていますか?あの時」って聞きたかった。でも、それは言えなかった。私は今夜だけ、少しだけかっこつけてみたかったのかもしれない。

 

「真緑ちゃん!」

 

名前を呼ばれて振り向くと、ゆくりちゃんが風を切って走ってくる。

 

肩で息をしながら、私の前に立った。

 

「どうしましたかこんな所で!?びっくりしましたよ・・・・」

 

「あぁ、ごめんね?その・・・・、何となく来たくなっちゃっただけだよ」

 

ゆくりちゃんは、私の隣に腰かけた。

 

「そういえばさ、今日って・・・・」と、小さく笑う。

 

「2人で初めてベンチで夕焼け見た日、だよね?」

 

思わず息が止まった。

 

「真緑ちゃん、そういう出来事絶対忘れないからさ・・・・。だから、今日もきっと覚えてるんじゃないかって思ったんだ」

 

真緑ちゃんは、すっと笑って私の手を握り私の目を見つめた。そのぬくもりが、春の夜風よりあたたかくて――

 

胸がじんわり熱くなった。

 

「私もあの日の想い出を大事にしてました。だってゆくりちゃんといると自然と笑顔になりますし、何もない日でも宝物になりますから」

 

心がほどけていく。

 

「・・・・私、真緑ちゃんの隣にいられるだけで幸せなんだ」

 

「ゆくりちゃんがそう思ってくれるなら、私も世界一幸せです」

 

なんでもない春の夜、2人だけの宝物を、今年もまた大事にできた。

 

手をつないで歩く帰り道、

 

ゆくりちゃんの隣にいるのは、今は私だけ――

 

他に誰もいないし、ゆくりちゃんしか分かり合えるほかは無い。

 

それだけで、心の奥からじんわり幸せが広がっていった。




真緑ちゃんとゆくりちゃんの2人による小説が探しても見かけなかったので、書くしかないと考えました。興味があったらぜひ読んでください!
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