――人が次第に朽ちゆくように、国もいずれは滅びゆく……千年栄えた帝都すらも、今や腐敗し生き地獄。人の形の魑魅魍魎が、我が物顔で跋扈する……天が裁けぬその悪を、闇の中で始末する……我等全員、殺し屋稼業――。
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「久しいな、兄弟」
「久しぶりだな、皇帝陛下」
帝都にある宮殿、仮面の少年が玉座に座る少年の前に立っていた……。
二人の間にはこの国を腐らせている原因だった大臣の死体。仮面の少年は死体を一瞥してから、この国の皇帝である少年に視線を向ける。
「この大臣も哀れだな……。まさか自分が操っていると思っていた傀儡(こうてい)が、逆に自分を操ていたなんて思いもしなかっただろうからな……」
「それはそうだ、余は途中でバレたりするような脚本は書かん、余が書くのはドキドキ、ワクワクがある脚本だからな……えっへん!」
「自分でえっへんとか言うな……」
仮面の少年が呆れたような様子で言うと、皇帝は頬をぷくっと膨らませ……。
「そうは言うが、余は知ってるぞ!兄弟は彼女の前では甘えまくってるらしいではないか!」
「ブホッ?!」
皇帝の爆弾発言に少年は息を吐き出し、仮面越しではあるが皇帝を睨む。
「まあ、その話を置いておいて……兄弟、今回の劇はどうだったかな?」
「どうもなにも、何時も通りの感想だ」
「余は満足していたのだが、兄弟の反応は変わらなかったか……。そうか……フム、欠陥品(エスデス)、潔癖症(セリュー・ユビキタス)や現実逃避(ウェイブ)、盲信者(クロメ)をあの配役にしたのは失敗か……しかし、いつも思うが愚者達(革命軍)は同じような行動しかしないな……革命をしたとしても、所詮は一時の安寧……兄弟は、何故革命軍の肩を持つ?」
皇帝の言葉に少年は肩をすくめ、やれやれっと首を振る……。
「別に俺は革命軍の為に殺ってるワケじゃないさ」
「ほう、なら何の為だ?」
「マインの為だ……。もしもお前ら側に居たら、俺はマインを殺さないといけなくなるだろ?だから、革命軍側で何時も戦うんだよ。まあ、それでもお前ら側に居ることはないけどな……」
「うん?一体どういうことだ?」
「俺が世界を殺すからだ……。マインを殺すくらいなら、世界を殺したほうがいい」
少年の言葉に皇帝は腹を抱えながら笑い、少年は笑う皇帝を見続ける。
「ハハハ、なるほど、なるほど。やはり、兄弟らしいな……この狂愛者め」
「別にコレは普通だろ?そもそも、狂ってない愛なんて、愛じゃないだろ?」
「それもそうだな……では、そろそ始めるか?」
皇帝の言葉をきっかけに、先程までの日常のような空気が一変し、二人の間には重苦しい空気が流れ、皇帝は玉座から立ち、少年は懐から無骨なナイフと銃を取り出し、構える。
「では、この世界での歌劇を終幕へと向かわせよう」
皇帝は自身の渇望を世界へと流れ出させる。
「今度こそ、終わらせてやる」
少年はその身に宿す異形と共に、皇帝と同じ舞台に上がる。
「では、始めようか兄弟……いや、タツミ……この舞台で散り、新世界の礎となれ!」
「ハッ、新世界の礎だと?生憎だが、そんな巫山戯た物になるつもりはねぇよ!」
二人は自身の覇導で世界を塗りつぶしていき、永遠とも言える程繰り返してきた喰らい合いという名の歌劇を開演させる……。
「「流出――」」
Atziluth――
「生と死の刹那に未知の結末を見る」
Vive memor mortis――Acta est abula
「罪都――失楽園」
Sodom――Paladise lost
歌劇の幕は上がり、世界に罪(シン)が溢れ、回帰していく……。
さて、この歌劇に終幕が来ることはあるのだろうか……。
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悲劇があった、悲鳴があった、地獄があった、神がいた、天使がいた、悪魔がいた、奴隷がいる、主人がいる、王がいる……この国は神や天使、さらには悪魔にでさえ見捨てられるほど腐っている。
この国では、強いと勘違いしている奴がいる。
この国では、欲しいものはどんな手段でも手に入れようとする奴がいる。
この国では、格下のものを妬み殺す奴がいる。
この国では、現状に不満を抱き、元凶に怒りを向ける奴がいる。
この国では、食物を民の分まで食べ続ける奴がいる。
この国では、快楽のため陵辱の限りを尽くす奴がいる。
この国では、民に働かせ自身は楽する奴がいる。
この国は、『罪(シン)』で埋め尽くされている……。
だから……。
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目の前には大量の死体、この帝都に巣食う悪性腫瘍の成れの果て、3人の少女、1人の青年、黒尽くめで仮面を被っている少年以外は、全員死んだ……。
少年は青年にゆっくり近づいていき、青年は少年との距離が近くなる度に顔を青ざめさせていく。
「ま、待ってくれ!これを見てくれ!」
青年は服を脱ぐと、少年に自分の胸の辺りに刻まれた模様を見せ、少年は仮面越しで青年を見続ける。
「ほら!これは奴隷の証!母さんが僕を……ムグッ?!」
青年の話を遮るように少年は青年の顔を掴み、掴んでいる手の力を強くしていきながら、青年に顔を近づけていき……。
「お前らのような奴らに笑顔は似合わない」
「アァァァァァ?!」
次の瞬間、青年は体を痙攣させながら叫び、数秒後に体の痙攣が止まると、眼、口、耳から血を流し、死んでいた……。
少年が青年の死を確認した後、今度は三人の少女……正確に言うなら、両足を折られた少女、片眼を潰された少女、服を破かれた少女に近づいていく……。
少女たちは恐怖のせいか、表情を歪め一言も発せないでいる
そして、少女達と少年の距離が0になり、少女達は自分達の死を覚悟して、目を瞑る……だが、少女達が覚悟した未来は何時まで待っても来なかった……。
少女達が目を開け、恐る恐るといった感じに少年の方を向くと、少年は女性用の服一着を持ち、金が入っている袋を台車に乗せていた……。
「そこの女はこの服を着ろ、そして怪我人二人……骨折してる奴を台車に乗せて、この屋敷を出て真っ直ぐ行った所にある喫茶店に行け……後の事はそこの店主に聞け」
話を終えると、少年はこの屋敷から出て行き、後に残された少女達は痛みや恐怖に耐えながら、少年に言われた通りに移動した。
その後、少女達は自分たちを助けた少年がこの帝都で『黒の死神』、『デスサイズ』、『タスラム』、『執行者』、『魔刃』、『魔群』と呼ばれている『殺し屋』だと言うのを知った。
はい、タツミくんと皇帝陛下は人間をやめました。