よう実の人気ぶりに戦々恐々としてます。というか面白い二次も沢山あっていいですよね。
なのでこれくらいゆるゆるした小説があっても大丈夫だろうという事で三話です。
入学してから三日目の放課後。
オレは見知らぬ生徒しかいないであろう教室が立ち並ぶ廊下へと向かっていた。
やってきたオレを見る視線は奇異なものを見るソレばかりだが、まぁ無理もない。
なんせここは一年生ではなく二年生が使うフロアなのだから。
「さて、誰か訊けそうな人はいるかな……?」
流石にこの学校で一年過ごしている為に、入学したばかりのオレたちと比べて落ち着いている。
なので容姿的には悪くないオレが後輩と分かれば、一人くらい先輩風を吹かせて教えてくれないかなと思って聞き込みに来たのだった。
「すみません。ちょっと質問したい事があるんですけど、いいですか?」
「デッ……!? って言うか君は一年か。どうしてここに……?」
近くにいた男子生徒に声を掛けてみたら、盛大に驚かれながらも足を止めてくれた。
髪をきっちり纏めた真面目そうな男子の先輩に、オレは上目遣いで……いや駄目だ、目の高さがそんなに変わらない。
「ワタシは一年の冬野と言います。ポイントについて訊けたらなって思ったんですけど、大丈夫ですか?」
「……ポイントについてか。すまないがあまり時間もなくてな。詳しく答えられるかは分からないが、それでもいいか?」
「はい、では一つだけ。今月は何ポイント貰いましたか?」
「……!」
簡潔な質問にしたにも関わらず、その男子の先輩は目を見開いて固まった。この反応はやはり、10万ポイントで固定ではないって事で確定だろうか。
「悪いがその質問には答えられない。生徒会の人間として不甲斐ない限りだが、了承してくれるか」
「先輩、生徒会の人だったんですか?」
「……そうか、一年生と関わる機会はまだなかったな。俺は
なんと驚き、最初に話しかけた先輩は生徒会の人間だった。けど入学式で答辞をしていた会長の人とは違うからきっとその後輩なんだろう。
「なるほど、なら時間がないというのは生徒会関連……もしかして副会長さんなんですか?」
「いや、俺は——」
そして入学式で見た会長と似た雰囲気なのでそのまま副会長なのかなと思ったが、対する桐山の目が僅かに細まってしまった。
マズったかと思ったオレは、けれどふと足音が近付いてくるのを感じた。
「——よお、桐山。こんな所で何をしてるんだ?」
その方向に振り返ると、これまた金髪の男子生徒が立っていた。傍には明るい茶髪の女子生徒がおり、オレたちを見て驚いた様子を見せていた。……いや、オレに驚いてるだけかもしれない。
「この子に質問を受けていただけだ。別にそれ以上の事はない」
「へぇ、質問を? 見ない顔だが……いや、確か昨日の学食で変わった一年がいるって噂になってたな」
「……やっぱり噂になってるんですか」
金髪の先輩が思い出したように言うが、オレとしてはあまり嬉しくないニュースだ。なっていてもおかしくないとは思っていたけど、いざ実際に聞くとちょっとダルいなぁ。
「ズボン姿の女子がいるって話だったけど、ホントだったんだ〜! え、しかも一年?! すごーいデカーい!」
「おい朝比奈、それくらいにしてやれよ。困ってるじゃねぇか」
「ああ、ゴメンゴメン。間近で見てつい興奮しちゃった」
「ええと……お二人も先輩、ですよね?」
「おっと、自己紹介もまだだったな。俺は
「私はそんな雅の友達の、
そうして名乗ってくれたお二人だが、これまた中々の大物だ。そして此方が本当の副会長、橋本よりもチャラそうなこの男が副会長なのか……。
「ワタシは冬野氷華です。何というか、お騒がせしちゃいましたかね……?」
「そんな事はないぜ。ただちょっと気になったから声を掛けただけだ。しかし質問とは、桐山に何を訊いてたんだ?」
一応は名乗ったが、オレの中で南雲副会長という男に対する警鐘はずっと鳴り響いたままだった。
金髪でチャラそうなのは橋本と同じなのだが、橋本よりもこの男の方がなんだか油断ならない。オレの事を変な目で見てないのに、狙われているような感覚がずっと消えないのだ。こうして接する分には普通に見えるんだが、本当に何故……?
「ポイントについて、です。ちょっと気になる所があったので」
「へぇ、そうなのか。それで桐山は答えてくれたのか?」
「残念なから答えられないとの事でした。因みに南雲先輩が教えてくれたりはしますか?」
「いいや、それは出来ない。だがその口振りだと、その理由にも既に辿り着いてるんじゃないか?」
「……まぁ、何となくですけど」
「はは、やっぱりそうか! 今年は随分と面白い一年が入ったみたいだな!」
オレが控えめな口調でそう答えると、それに反比例したようなトーンで南雲が笑い出す。
つまりオレの考え——毎月のポイント額は変動するものであり、また何らかの理由で学校側はそれを隠しているというのは合っているのだろう。だからこそ先輩である彼らもその事に関するヒントにならないよう、『答えられない』と言っている。それがここでの問答の答えだ。
それが分かったのはいいんだが……新たな問題として、オレが分かった事がこの男に知られてしまった。なんか、ダルそうな気配がするぞ……。
「お前、冬野氷華って言ったな。ウチの生徒会に興味はないか?」
「南雲、まさかお前……!」
「おいおい、こんなのただの雑談だろ? 有望な後輩に声を掛けるくらいなら、堀北先輩だってやってたじゃないか」
何やら桐山が驚愕しているが、対照的に南雲は楽しそうだ。堀北先輩というのはご存知ないが……確か会長の名前がそんなんだった気がする。
「生徒会って、何をする所なんですか?」
「そうだな……。この学校をより良いモノに出来る、選ばれた者だけが集まる場だ。そしてお前にはその資格が、能力があると俺は判断する。きっと面白い事になるってな」
「えぇと……?」
分かるようで分からない説明をされてしまった。
とりあえずラノベみたいに不思議な権力を持った団体って認識でいいんだろうか。その権限に興味がないとは言わないが……。
「流石にまだ不明点が多いんで、考えさせて貰ってもいいですか? 気になる所も多すぎますし……」
「気になる所って、生徒会に関して?」
「いや、生徒会だけじゃないです。この学校全体について、でしょうか」
「この学校について、だと……?」
ひとまずは断りを入れておくと、朝比奈や桐山に首を傾げられてしまった。流石にもう少し説明しておくか。
「大した事じゃないですよ。学校の制度や設備だったり、どんな生徒や先生や先輩がいるかといった、知っておいて損のなさそうな事です。そもそも知ろうとしなければ、分からない事も多いですから」
もっと言えば今回やって来たのもただポイントについて訊きたかっただけではなく、二年生のフロアがどうなっているのか、そしてどんな二年生がいるのかを知る為だった。
そういう意味ではどちらの目的も達成したわけなのだが……あまり素直には喜べないかもな。
「なるほどな、大きく出るじゃないか。ならもし調べても分からない事があったら俺の所に来い。先輩として話を聞いてやるよ」
「ありがとう、ございます?」
ニヤリと笑ってそう言う南雲へと、一応は頭を下げるオレ。けれど感じる視線はやはり粘りつくようで、どこか居心地が良くない。
とりあえず、二年生には要注意という認識でいく事に決めた。
☆☆☆☆☆
「三年生の教室も、基本的には違いはないね」
愉快な二年生の先輩方と別れた後、オレは三年生のフロアへと突入していた。
三年生の皆さんも下級生であるオレを物珍しそうな目で見てくるけど、話しかけてくる人はいない。なのでそれは好都合とばかりに、早足で三年生の教室を見て回っていた。
二年生の教室も一年生のモノと対して変わりなかったのだが、一つだけ気になる所があった。それが二年生だけなのかを確かめる為に三年生の教室を覗いてるのだけど、此方も同様だった。
「けれど机と椅子の数が少ない。これはどういう事だろう……?」
オレたち一年生は40人の4クラスで160人。なので他の学年もそうなのかと思ってたけど、それは思い込みだったらしい。なんせどのクラスも机と椅子の数が40に満たないのだ。
それが一つや二つならまだ分からなくはないけど、オレが違和感を覚えた2-Dの教室は片手では足りない数の席がなくなっていたのだ。これは流石に流していい問題ではない。
とりあえずなくなった席の分だけ生徒がいなくなったと仮定するとして。普通の学校なら転校したとかになりそうだけど、にしたって数が多い。ならそれ以外の理由があったと考えるのが自然だ。
すなわち退学。この学校では過去に問題を起こした生徒がいて、その分だけいなくなっている……としても一年生以外ほぼ全てのクラスで発生してる事になるんだよな。治安悪すぎるだろ。
「段々ときな臭くなってきた……ん?」
「そこのあなた、どうされました?」
むんむんと唸っていると、横から声が聞こえてきた。それがオレに向けられたモノだと分かって、ゆらりと視線を其方に向ける。
そこにいたのは紫の髪を二つのお団子にした女子生徒だ。オレと比べるとほとんどの女子が小柄になるのだが、その中でも同級生かと思うレベルのサイズ感だった。けど見覚えがないのと態度から恐らく先輩なのだと予想する。
「もしかして誰か人を探しているんですか? 名前を教えてくれれば、力になれると思うんですが……」
「ごめんなさい、そういう訳じゃないんです。ただちょっと、教室を見に来ただけなので」
「見に来ただけ、ですか? それはどういう意味で……というかあなた、もしかして噂の一年生ですか?!」
大きく開いた口の前に手を当てて驚く推定先輩。どうやら昨日の学食だけでオレの事はばっちり他学年にも知れ渡ったようだ。まぁ遅かれ早かれそうなってた気がするからいいけども。
「冬野氷華、一年生です。ちょっと気になってやって来たんですけど、お邪魔しすぎたでしょうか?」
「邪魔というわけではありませんが、流石に目立っていたのでどういう訳かと……あ、私は三年の
裏表のなさそうな微笑みと共に名乗ってくれた橘に、オレの中での警戒度がぐーんと下がったの感じる。何と言うか、この学校でも屈指のいい人な気がするな。橘先輩と呼ばせてもらおう。
「ここに来る前に二年生の教室も覗いてきたんですけど、机と椅子の数が
「! ……いえ、新入生に言えるような事は何もありませんよ? 少なくとも法に触れるような事件は起こっていません。私から言えるのはこれくらいですが、よろしいですか?」
「……なるほど。ありがとうございます」
「そんなに気にしなくていいんですよ。むしろ貴女のような子が新入生にいると分かった私の方が、お礼を言いたい位です」
これは堀北くんに伝えるべきですかねと上機嫌になる橘先輩をよそに、オレはオレで思想を纏めていく。ところで堀北って名前また聞いたけど、大人気だなこの人。
オレの言葉を聞いた時、橘先輩は確かに目を見開いた。それ以上の驚きを示さないようにしたんだと思うけど、そうした時点で何かがあるのは判明している。そしてその後の返答から、何か後ろめたい事件によっていなくなったわけではない事が分かる。そしていなくなっている事自体を橘先輩も否定しなかった。
つまりこの学校では毎年生徒がいなくなるような何かがあり、そしてそれはある程度の秩序を持って行われている可能性があるという事だ。ヤバい学校かもしれないなやっぱり。
そもそもこの学校は監視カメラがこれだけあるんだから、何か問題が起これば一発でバレるだろう。それを気にせず馬鹿をやる生徒がそんなにいるとは思えない。
後はそういったマイナスが発生するトリガーは何なのかが分かればいいんだけど。ぱっと思いつくのはポイントを失いすぎるとか、或いはテストの赤点とかだろうか。けどそんな事で退学になるのか……?
「けれど他学年のフロアを用もなくうろついていると、こうして私みたいな生徒会の人間から注意を受けるかもしれないので気を付けてくださいね。今日の所は初犯なので良しとしますけど」
「あ、そうなんですね。分かりました、気に留めておきます」
「はい、そうしてくださいね」
けれどそれをストレートに訊いても答えてくれるとは思えない。今普通にこの人も生徒会って言ってたし、ポイントに関してもまたはぐらかされて終わりだろう。
ひとまずは二学年のざっくりした雰囲気とか教室とかが把握できただけで良しとしよう。
「ところでどうして貴女はズボンを穿いているんですか? いえ、言いたくないのならいいんですけど」
「趣味です。大した理由じゃなくてすみません」
「趣味、なんですね……」
あと橘先輩と知り合えた。それだけで今日の収穫としては十分だ。
☆桐山生叶
☆南雲雅
☆朝比奈なずな
☆橘茜
☆毎月貰えるポイントは変動する。しかし学校側はそれを隠している。
☆この学校では生徒がいなくなる、退学する何かがある。
☆橘先輩は多分いい人。
因みにまだネタバレ禁止期間中なので大した探求も出来ないとさっさと帰った人がいたり、二年生組と話している内にさっさと生徒会室に行った人もいるそうです。誰やろなぁ。