ようこそぬくぬく至上主義の教室へ   作:棚木 千波

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評価バー着色と日間ランキング入りが早すぎてウキウキしてたら、とんでもねぇ計算ミスが多くの方に見られていたと判明して顔がなくなりました。四話です。


#4 思い付きと危険性

 

「——冬野、少しいいか」

 

「ん?」

 

 入学して四日目の昼休み。

 今日も気合い入れて人のいない所を探しに行こうとしていたオレにお声がかかった。

 

 そこにいたのはAクラス男子の中でもオレ並に目立つ葛城だ。近くにいるもう一人の男子は……確か戸塚(とつか)、みたいな名前だったかな。

 

「話したい事があるから、一緒に昼食でもどうかと思ったんだが……先約があるのか?」

 

「いや、そんな事はないけど……何か真剣な話?」

 

 オレの手にあるお弁当を見ているようだが、生憎と此方は一人飯しようと思って用意したモノだ。別に四日目にして誰からも誘われなくなった訳ではなく、食事をしてもいいスペースを探しにいくと自ら断りを入れた結果だ。すごく本当なので信じてほしい。

 

「いや、そこまでではない。ただポイントについて面白い話をしていたと聞いてな。興味が湧いたんだ」

 

「あー、なるほど」

 

 どうもオレ目当てではなさそうな感じがしてたけど、そういう事か。

 そう納得しながらギッと、目だけを動かして下手人候補の橋本を見る。また違う女子と話していてオレの視線には気付いていな……いやピクリとしたな。多分事の発端お前だろ。

 

「そういう事なら大丈夫だけど、学食以外の適当な場所でもいい? あそこは先日行ったばかりだから、ちょっと遠慮したいの」

 

「分かった、誘ったのは此方だからな。途中で何か買って食べるとしよう。戸塚もそれでいいか?」

 

「はい、葛城さんがいいなら!」

 

 ちょっと迷ったけど、()()()()もあったからオレは了承する事にした。

 そして元気に頷く戸塚の返事をもって、今日の昼食メンバーが決定したのだった。四日目ともなると大体のグループが固まって来るけど、戸塚は如何にも舎弟って感じだ。熱の入り方はやや早い気もするけど。

 

 

 

 

「……この学校にはこんな場所もあるんだな。知らなかった」

 

「まだ入学して数日だからね。毎日が発見の連続だよ」

 

 コンビニで二人の昼食を調達した後、オレたちは中庭にあったテーブルを三人で陣取っていた。

 流石にまだ学食ブームが続いているので人の通りは殆どない。木の陰で温度的にも問題ないという事で、早速オレは弁当を開いていた。

 

「こ、これが女子の手作り弁当か……!」

 

「驚いてる所悪いけど、全部売れ残りの冷凍食品だよ。夜詰め込んで朝持ってくるだけの自然解凍任せ。それでいいならあげるけど」

 

 何やら戸塚が目を輝かせていたので、オブラートに包む事なく現実をお届けする。

 何かの夢を打ち砕かれたらしい戸塚が「そ、そっかー」と寂しそうに焼きそばパンを齧り出したのを横目に、オレは本題に入る事にする。

 

「それで、ワタシに話って?」

 

「聞きたいのはポイントについての話だ。毎月10万ポイント貰えるとは限らない、そう言ってたそうだな」

 

「ええ?! それ、どういう事ですか!?」

 

 まぁそれだろうなと思ってたら戸塚は知らなかったらしい。これは葛城というよりは戸塚本人の所為な気がするな……。

 

「ワタシというよりは真嶋先生だけどね。あの説明、違和感なかった?」

 

「初日のホームルームの事だな。確かに、何処か引っ掛かる言い方ではあったが……」

 

 あの時の予想通り、葛城も気になってはいたらしい。ならば話は早いと橋本たちにしたのと同じ説明をすると、二人とも納得したように手を打っていた。勿論イメージで。

 

「……なるほど、それで冬野は色々と調べていたわけか」

 

「憂いは無くしておきたいタイプだからね。とは言っても、どれもまだ確証はないんだけど」

 

「いや、例えそれが事実ではなかったとしても、そういう考えが出来るクラスメイトもいると分かっただけで収穫だ。俺は違和感止まりで、そこまで辿り着く事は出来ていなかったからな」

 

「いやいや、葛城さんなら絶対に気付けましたって! 今回は冬野が先だっただけですよ!」

 

 葛城はその説そのものというよりは、そこに至ったオレの事について感心しているらしい。なんか戸塚は観点がズレてる気もするけど。

 しかしその戸塚じゃないが、葛城のその潔い精神は評価されるべきだとオレも思う。なのでここは試しに提案をしてみる事にした。

 

「ならまだ気になってる事があるんだけど、ワタシもまだ答えを絞りかねてるんだよね。なのでこの場を使って、一緒に考えてもらえない?」

 

「気になってる事か。どういうモノだ?」

 

「毎月貰えるポイントが10万じゃないのなら、当然そこから減るか増えるかしてる筈。ならワタシ達が何をしたら支給されるポイント額が増減するのか。その基準もワタシは知りたいんだよ」

 

「……てっきり減らされるもんだと思ってたけど、増える可能性もあるっていうのか!?」

 

「あくまで可能性だけどね、戸塚くん」

 

 持った箸を立ててそう話すと、葛城はふむと顎に手を当てた。

 今月貰えた10万という破格の額から中々増えなさそうな感じはするが、減る理由があるのなら増やせる理由だってある筈。そしてそれを考える事の有意義さが分からない葛城じゃないと思ったんだが、どうだろうか。

 

「面白い。だが考えるとは、具体的にはどうするんだ?」

 

「別に今確かめる方法があるわけじゃないから、ひとまずは『そうかもしれない』を考えるだけでいいかなって。思いついた事から片っ端、口に出してみようよ」

 

「ブレインストーミング、と言う奴だな」

 

「そうそう、そんな奴」

 

「それってどんなに変な奴でもいいのか? 普通ならあり得ない奴でも?」

 

 ピンと来たらしい葛城へと戸塚が確認するように尋ねているけど、大体そんな感じだ。

 何ならオレの今までの考えとか全て勘違いで、実は月末のホームルームになると真嶋先生がルーレットとダーツを取り出して「俺が投げて当たった所の額が明日振り込まれるぞ!」とかの可能性だってあるわけだ。いやないな、うん。

 

 しかし今はそれくらい下らなくてもいいのだ。

 だってコレはあくまでランチタイムのついでに話しているだけだし、クラスの命運を決めるなんて大それた場でもない。話の種としてはこれで十分だろう。あと戸塚にそれを喋らせてる間にご飯食べたいし。

 

「普通に考えれば、試験の点数が良ければ増えて、悪ければ減るとかだろうか。しかし試験が毎月あるとはまだ聞いていないな。だが……」

 

「ストップ。ひとまず『試験の成績』で増減するかもしれない、それでいいんだよ」

 

「なんだ、そんなのでいいんだな? なら……『怒られた回数』とかは? ノーミスだったら増えるっていうの、ゲームならあるし」

 

「流石に曖昧過ぎるような気もするが、まぁいいのか。なら『授業態度』も関係しているかもな」

 

「この学校、監視カメラめっちゃあるからね。そこまで見ててもおかしくないよね」

 

「なら『出席日数』もだな! 皆勤賞だったらボーナスとか欲しいぜ!」

 

 なんか戸塚の精神年齢が思ったより低くないか。楽しそうだから別にいいけど。もぐもぐ。

 そうして三人(なおオレは二割くらい)でああでもないこうでもないと話した後に、オレはこう結ぶ事にした。

 

「来月になって本当にポイントが増減したとして、もしこの中にその正解があったとしたら。こうして一度考えた時点で想定内には入った事になるとワタシは思うんだ。そうなると全く知らない事を考えるよりかは、マシな気がしてくるんだよね」

 

「スタートがゼロじゃなくなったと、そういう事か?」

 

「うん。ワタシに出来るのはそこまでだけどね」

 

 今回葛城がオレに話しかけてきたのも、結局は彼がそれを求めたからという話だからだろう。

 別にポイントの話を広めるつもりはなかったけど、耳に入った情報を確かめようと自分から動いてくれたんだ。ならこんな時間があったっていいだろう。オレも葛城と戸塚の事が分かってお互い様、というわけだしな。

 

「とてもいい時間だった、感謝する。良ければまた、一緒させてもらってもいいか?」

 

「んー、まぁその時次第かな。今日は偶々空いてたって事で、よろしくね」

 

「いやいや、そこは応じておけよ。葛城さんはAクラスのリーダーなんだぞ?」

 

「戸塚、俺はクラスの皆からそう認められた訳じゃない。変な誤解を招くからよしてくれ」

 

 そうして全員食べ終わったという事で、この場は解散する事になった。オレもちょっとお花を摘みに行きたかったし。

 葛城からは感謝と友好の視線を、戸塚からはそこはかとない不満を感じながらも立ち去ろうとして、ふと立ち止まる。

 少し、思い出した事があったからだ。

 

「そうだ葛城くん。ワタシ昨日、他学年の教室を見に行ったんだ。そこでもちょっと気になるモノがあったの」

 

「他学年の教室だと……? 何を見たと言うんだ」

 

「机と椅子が減ってたの。特に2-Dの教室は、露骨な位にね」

 

「なに……?」「いや、何の話だ?」

 

 突然の情報に戸惑う二人だけど、オレは気にせず話し続ける。

 この情報は葛城のような人物には知らせておいた方がいいと、そう思ったから。

 

「別に警察沙汰の事件があったわけでもないんだって。だからワタシはちょっと、警戒してるの」

 

「警戒……それは、つまり……」

 

「勿論()()もただの想像だよ。実は大したことじゃないかもしれない。けどそうじゃない場合に備えて、気を付けた方がいいのかもしれないよね」

 

 そもそもオレが色々と調べていたのもその為だ。

 オレは理不尽を嫌っている。例え己の破滅でも、それが不条理でないのなら受け入れる。オレはまぁそういう人間だ。だから降りかかるモノが理不尽である事に、オレは耐えられない。

 

 そしていつしかそれは、他者にとってもそうになった。

 自業自得ならまぁ手は出さないけど、そうじゃないのならある程度は他者の為にも動く。

 それであの光景を見なくて済むなら、安いモノだしな。

 

 だから今回の葛城の誘いにオレが乗ったのも、結局はオレの為というわけだ。

 ポイントだけならともかく、昨日分かった事は流石にオレだけの胸に留めて置いていいものではない。

 

 ()()()()()()退()()()()()()()()()()()()

 

 その事を葛城のような中心人物に伝えれば、ある程度の生徒にはそれが共有されるだろう。

 ポイント増減の事も合わされば、それなりの緊張感をもって今後の生活を送る事になる筈だ。

 

「だからクラスメイトの一人として期待してるよ、葛城くん」

 

 ——そうなれば『Sシステム』なんてものがあるこの学校でも羽目を外しすぎず、より良い生活を続けられると思っての事だったんだけど。ちゃんと伝わったかな?

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

「最後の何だったんでしょうね、葛城さん」

 

「……先日のオリエンテーションにいないとは思っていたが、まさかそんな事を調べていたとは……」

 

「葛城さん? どうしちゃったんですか?」

 

「だが冬野が言っていたように、どれもまだ可能性に過ぎない。どれが合っているのか、俺たちの手でも確かめてみるべきだな。いくぞ戸塚、やる事が出来た」

 

「えっ、ちょっ、葛城さん!? 何が分かったって言うんですか?!」




 ☆葛城康平
 ☆戸塚弥彦

 ☆理不尽は嫌い。

 閲覧、評価など誠にありがとうございます。毎日投稿ってヤバいんですね。続けてる方凄すぎとなりました。
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