高嶺累くんは種付けおじさんに狙われています。なお護衛も種付けおじさんです。   作:T-1000

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Chase1:Tが来る

 

 ――種付けおじさん。

 

 あらゆるジャンルを跨ぎ、世界を駆ける、成人向け同人誌における竿役。

 彼に目を付けられたが最後、濃厚な液体を注入されて、望まぬ命を育んでしまうという末路が待っている。

 我々のよく知る島国、日本においても、それは例外ではない……。

 

(はぁっ……も、もうダメ……追いつかれるっ!)

 

 今、逃げ場を求めて全力疾走している彼は、都内の学園に通うごく普通の男の子。

 容姿端麗で中性的な顔立ちと挙動に、種付けおじさんは少女と勘違いしたのだろう。

 この少年、高嶺累は最高の獲物として狙われていた。

 

 太陽の光を受けて輝くアクアヘアーのボブカットが、激しく揺れ動く。

 

(あんっ……もう足が動かない……)

 

 やがて、体力の限界が訪れ、累はその場でへたり込んでしまう。

 無意識に両足を外側に曲げてお尻を床につき、女の子座りで尻もちをついた。

 

 累を追いかけている種付けおじさんは、ハゲ・デブ・チビの三拍子が揃った怪物。

 巨体に似合わずアレは普通サイズであり、全身が汗で滑っている。

 

「ぐふふ、もう逃げ場はないよ、お嬢ちゃん……」

 

(――犯られるっ……!)

 

 眼前に迫る脅威を前に、累は自身に残された、最後の切り札を使うことした。

 

「ぼ、僕はっ、男だよぅ!」

 

 言葉だけでは足りなかったのか、種付けおじさんの反応はない。

 

(信じてもらえてない……! もう脱ぐしか……)

 

 しかし、彼から返ってきた言葉は予想だにしないものだった。

 

「知ってるよ、そんなこと。だから、いいんじゃあないか」

 

 累を絶望させるには十分な一言。

 数分後の自身の姿を想像してしまい、累自身の粗末なモノから降参の印が漏れ出そうになる。

 

 ――その時。

 

「女装少年、男の娘、TS、女装子、メスショタ、ふたなり……結局のところ全部ホモでは……?」

「なんだァ? てめェ……」

 

 累の前に立ちふさがったのは、もう一人の種付けおじさんだった。

 

 そう、この世界に存在する種付けおじさんは、一人ではない。

 

 ある日を境に、無数の種付けおじさんがどこからともなく現れ、現代日本は地獄と化した。

 自警団、警察、果ては自衛隊まで駆り出される事態になったが、一向に解決されない。

 

 なぜなら、種付けおじさんは無敵だからだ。

 発砲許可が出たにも関わらず収拾がつかないのは、その厄介な防御力にあった。

 あらゆる国家権力が対応に追われる中、種付けおじさんの快進撃を止める手段は、もはや誰にもなかった。

 

「無理矢理犯すなど、紳士的ではないね」

「『種付けおじさんといえど無理矢理するのはなんか違くね派』か……どけ、てめェの相手をしている暇はねぇ!」

「おっと、自己紹介を忘れていたね。君の言う通り、『種付けおじさんといえど無理矢理するのはなんか違くね派』のエージェントだ。コードネームの『T-0721』で呼んでくれたまえ」

「聞いてねえつってんだろっ!」

 

 種付けおじさんが大きく振りかぶって、T-0721に殴りかかる。

 

「分かり合えないとは、残念だ……」

 

 しかし、それをいとも簡単にかわすT-0721。

 攻撃を避けると同時に、彼の掌底が種付けおじさんの腹にクリーンヒットした。

 

「どぴゅっ!?」

 

 奇妙な声を上げ、その場で倒れる種付けおじさん。

 たった一突き――ただそれだけの動作で、累を追いかけていた種付けおじさんは絶命していた。

 

「大丈夫か、少年」

「あ、ありがとう……」

 

 失禁しかけた累は、目の前の全裸の紳士から目をそらしながら、礼を言う。

 T-0721は頷きながらも、累の身体を凝視していた。

 

 華奢な身体でありながら、男にしては妙に丸みを帯びた腰回りにやや大きめの尻。

 太ももは引き締まっているというより、柔らかそうで張りがある。

 

 視線に気づいた累は、両手で胸と股間を隠そうとする。

 その所作の数々は、女の子そのものであった。

 

「君のボディーガードをさせてくれ。頼む、この通りだ……!」

 

 いきなりT-0721は、土下座した。

 しかし、この男の目論見は、累から見ても、明らかだった。

 

「僕を今、エッチな目で見てたよね……」

「見ていない」

「じゃあ、なんなのそれは!」

 

 累の指摘にT-0721は、自身の腹部をのぞき込む。

 そこには、もう我慢の限界だと言わんばかりの怒張が激しく脈打っているのだった。

 

「誤解だ」

 

 噓をつくな、とその場の誰もが発言してしまうであろう光景が広がっている。

 太った全裸の男に、女の子のように可愛らしい少年。

 傍から見れば、いつ通報されてもおかしくはない。

 

「……見返りはなに? 変な要求しないでね」

「君のコスプレ写真だ」

「え?」

「君の……ちょっとエッチなコスプレ写真だ」

「どさくさに紛れて付け足さないで……!」

 

 ボディーガードの条件は、露出の高い衣装を着た累の生写真。

 先ほど倒された欲望全開の種付けおじさんとは打って変わって、控えめな要求だった。

 

「我々は他人との接触が禁じられている。故に、自家発電による発散のネタを得ることは死活問題なのだッ! 頼むっ少年、見捨てないでくれ……っ!!」

「――もうっ、わかったから。で……なに着ればいいの?」

 

 切実な頼みに累は折れて、要求を飲んでしまう。

 T-0721は満面の笑みを浮かべているが、紳士的とは程遠い、下卑た笑顔だ。

 言葉で取り繕っていても、彼も所詮、種付けおじさんだった。

 

「少年……君に着てもらいたのは、これだ」

 

 渡された衣装を見て、累の顔が引きつった。

 彼がこれから着る衣装、それはピンク色の紐のような水着……いわゆるマイクロビキニだった。

 

「ばっ……ちょっとエッチじゃなくてだいぶエッチだよこれ!?」

「おじさん基準ではちょっとなんだが……これもジェネレーションギャップというやつか」

 

 累は嫌がりながらも近くの路地裏に入り、服を脱いだ。

 マイクロビキニの薄い生地が、柔肌に食い込む。

 慣れない感触に戸惑いながら、累は破廉恥な水着に着替えるのだった……。

 

「ほ、ほら、約束通りに着替えてきたよ……」

「おお!」

 

 同年代の美少女でも敵わないであろう美しいフォルム。

 ビキニのボトムスには、女にはない、ほんのわずかの小さな膨らみが主張していた。

 

「美しい……」

「いいからっ、はやく撮ってよ!」

 

 累に急かされ、写真を撮り始めるT-0721。

 

「おおっ!」

「な、何?」

「お尻の形があまりに綺麗だったもので、つい」

「い、いちいち声に出さないで……」

 

 もじもじと身をよじりながら、累は延々と写真を撮られ続けるのであった。

 

 ――しかし、二人は気付いていない。

 

 路地裏の向こう側で、何者かが累たちの様子をじっと見つめていることに。

 そして、累の着替えの一部始終を覗いていたことに。

 




気が向いたら続きます。
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