高嶺累くんは種付けおじさんに狙われています。なお護衛も種付けおじさんです。 作:T-1000
「もういいでしょ。はやく着替えさせて」
「ああ、本当にありがとう。君の普段着だけでもご飯三杯はいけるよ……」
(なんか、気持ち悪い……)
累は心の中でそう思いながらも、決して口にはしなかった。
同族を掌一突きで葬り去った、その実力に恐怖しているのではない。
累がただ、純粋に優しい性格だからであった。
「伏せろ!」
「え?」
T-0721に抱えられ、マイクロビキニの姿のまま、しゃがみ込む累。
その眼前を、白い奔流が勢いよく通り過ぎる。
「あぁぁぁん♡」
一拍遅れて、後方から嬌声が鳴り響いた。
「え? な、なにこれ!? なんなの!」
累はパニックになりながらも、T-0721から離れて後ろを振り向く。
目に飛び込んできたのは、腹部が大きく膨らんだ女性の姿。
そして、辺りに飛び散る白い液体だった。
奇妙な光景に困惑している累をよそに、落ち着いた表情でT-0721は辺りを見回す。
「今のは君を狙った一撃だろう。君に当たったところで妊娠はしないはずだが、万が一のこともある」
「妊娠!?」
その言葉を聞いて、ビキニのクロッチに収まっている膨らみがわずかに反応する。
自身の腹部が大きく膨らんだ姿を想像してしまい、累は思わず身を寄せた。
「そこにいるのは分かっている!」
T-0721が大きく声を張り上げると、路地裏の奥から種付けおじさんが現れた。
外見はT-0721が倒したおじさんと、ほぼ変わらない。
しかし明らかに異なっているのは、そのテカリだ。
全身が油でコーティングされているかのようにツヤツヤしている。
「お前は、T-1919! 何故だ、裏切ったのか!?」
T-1919と呼ばれた種付けおじさんは、どうやらT-0721の仲間だったらしい。
離反を問われたT-1919は、意に介さず淡々と告げる。
「我々の未来のために、その少年を『女』にする」
「累くんを『女』にする……だと!?」
いつの間にか累を名前呼びしているT-0721は激しく動揺する。
裏切りは組織単位であった。
一方、累は二人のやり取りを見つめているが、何一つ状況が理解できていなかった。
(女にするってなんなの!? 去勢手術でもされちゃうの……!?)
やがて、累の不安げな瞳をまっすぐと見返し、T-0721は何かを決心した。
「T-1919、許せ!」
T-1919に向かって、ピンク色の何かが投げつけられた。
どういうわけか、それはT-1919の股間にへばりつき、小刻みに揺れ始めた。
……楕円の真ん中に穴が開いている、電動式のジョークグッズだった。
「うぉっ、イクッ!」
T-1919がたまらずに声を上ずらせ、その場で痙攣する。
しかし、足止め程度にしかならないことは、T-0721自身がよくわかっていた。
「乗れ、少年!」
どこから手配したのか、T-0721はハーレーに跨り、累に手を伸ばしている。
「もう、なにがなんだかわからないよぉ」
流されるままT-0721の手を取り、累はその鉄の塊に跨った。
累が背中にしがみつくと同時に、ハーレーは閑静な住宅街を抜け、公道へと駆け出した。
「変態だーー!!!!」
「なんだあのおっさん!?」
「種付けおじさんが来るぞ! 気を付けろ!」
「背中に乗ってる子が獲物か……可哀そうに」
「くそっ、あんな可愛い子が種付けおじさんの餌食に……っ! うっ……!」
「マイクロビキニじゃん、エッロ」
事情を知らない人々が、憶測だけで言いたい放題に言っている。
もっとも、事情を知ったとしても、だいたい同じ感想が出るであろう。
「うう……僕まで変態扱いされちゃってる……」
「気に病むな少年! 今は逃げることだけに集中するんだ」
カッコイイことを言っているが、先ほどまでその少年に劣情を抱いていた男である。
そんな説得力の欠片もない男の背中にぴったりとくっついている累は、ふと、自分の股間の違和感に気付く。
(ウソ、こんな状況なのにどうして!?)
勃起していた。
生命の危機に瀕し、子孫を残そうとする本能が働いた結果だろう。
なお、その状態であっても、累の分身は同年代の男子の平常時より小さかった。
(だ、だめ……振動が……)
黒煙を吐き出すマフラーの震えと連動するように、シートを伝う縦揺れが激しさを増していく。
累の粗末なモノも行き場を失い、揺れ動く。
その単純な刺激の繰り返しで、累は快感を得てしまう。
「んお゛っ♡」
「む、どうした少年!? 体調でも悪いのか!」
「ち、ちが……い゛っ」
(もう、でちゃ……)
あわや臨界点に達するという寸でのところで、ハーレーの振動は収まった。
(えっ?)
「くっ、赤信号か」
非常識な存在が社会の常識に囚われている。
累の決壊を先延ばしにする、拷問のような時間が続く。
……永遠にも感じられる数秒の沈黙。
耐えきれなくなった累は、ついにT-0721へ懇願した。
「おじさん……ドイレッに、い゛か゛せ゛てぇ……」
累が涙ながらに訴える。
頬の紅潮と悩まし気な表情は、まるで恋する乙女のようだった。
「……っ、わかった! しっかり捕まっていろ!」
T-0721はしがみついている累を背負って、近くのコンビニに駆け込む。
「トイレ借ります」と一言だけ発し、そのままお手洗いへ直行するのだった。
「今の、絶対アレだよな」
「トイレに連れ込むなんて、鬼畜……」
当然の反応だった。
全裸のおじさんが年端もいかない少年をトイレに連れ込んだのである。
幸い、客は一人もいなかったようだが、店長とバイトの店員からは好奇の目で見られていた。
「さあ、少年。今の内に用を足すんだ!」
T-0721に促され、累は己の欲望を便器に吐き出す。
「あ゛っ、いぐっ……」
小さな声が漏れ出ると同時に、便器が白く染まった。
同時に、累は倦怠感に襲われる。
そして、自身が今、何をしてしまったのかを自覚し、涙をこぼす。
すすり泣く累の嗚咽をドア越しに聞きながら、T-0721は目を閉じる。
彼は、単に尿意を我慢できず、漏らしたと思っている。
種付けおじさんながら、純粋な心の持ち主であった。
「……用が済んだら、ここから離れよう」
トイレから出てきた二人は、誰がどう見ても、一戦交えたカップルのようだった。
累はT-0721に身体を預けて、寄りかかっている。
そうして、横並びになった二人は自動ドアをゆっくりとくぐり、外へと向かっていった。
「ぜっっったい、アレしてたよな?」
「トイレに連れ込むなんて、鬼畜……」
累とT-0721の逃走劇は続いていく……。
なんとか続きました。