有効打なんてねぇよ 効かねえよ   作:QAAM_M1911

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箒「不謹慎という意味では姉さんを上回る。」

臨海学校。一年生が最初に行う校外学習となるこのイベント……と言う名の合宿。ISは実習もやるにはやるが、基本的に肉体面を鍛えるイベントだな。

 

「しかし1日目……こんな遊んでて良いのかね?」

「いいんじゃない?明日っから遊ぶ暇無くなるわよ?」

「まぁそうだが……バレーよりフォビドゥンをだな……」

「たまにはフォビドゥンとゲームの事忘れる!しっかしアンタホントに色気に鈍いわね?」

「織斑君とは違うぞ。理解した上で興味が薄い。」

「自覚してるから尚のことタチ悪いわホント。まぁそういうヤツっての分かってるから接しやすいのはあるけど。」

 

パラソルの下でコーヒーを飲みながら本を読む。たまには紙で活字を頭に入れるのも悪くはない。因みに俺は水着を持ってきていない。短パンにアロハシャツ。泳ぐ気はサラサラないぜ、何せフォビドゥンで自由に泳げるからな!

 

「ラーベさん?バレーはやらないのですか?」

「日光浴しながら本をゆっくり読むのも俺の楽しみに追加してるところだ。」

「……何を読まれているのです?」

「“我が闘争”。」

「……貴様それをドイツ人の身でよく堂々と読めるな。」

「俺の好きなアニメ知ってるか?HELLSINGだ。」

「不謹慎好きかアンタ。」

「ついでに1番好きな戦闘機はMIG-25だぜ。」

「貴様マジでやめろ。ただでさえ張りつめている国際情勢に喧嘩を売りに行く気か??」

「一番好きな銃はL85A1。」

「またわたくしに喧嘩を売っているのですか??」

 

因みに本の内容はあんまり頭に入ってきていない。フォビドゥンの構想が浮かびまくって仕方ない。

 

「あー……?コーヒー無くなったか。皆なんか飲み物いるか?今なら取りに行ってやる。」

「サイダー。」

「僕も。」

「アイスティーを。」

「烏龍茶。」

「ふむ……では貴様と同じものを。」

「サイダーが2、コーラ1、紅茶1、ラードラー2で承りますと。」

「最後の酒じゃね?」

「よく分かったな。流石に冗談。紅茶が3だ。俺はブラックだがラウラは?」

「ならセシリアと同じで良い。」

「はいよ。」

 


 

「うーん……なんか、ラーベの事イマイチよく分かんねぇなぁ……」

 

ラーベのいない間に、彼の事を話し始める一夏。そう言えばそうだな、と各々が感じるところではあるが……セシリアは彼の両親が他界している事を知っている。

 

(もしかして……本人も気付かないところで、悔恨があるのでは?)

 

そう勘繰ることも致し方ないところではある。

 

「いつもキチゲ解放しっぱなし。所々気配りが出来てると思ったら、またあんな感じでいつものペースになって……」

「2組ではどうなのですか?」

「今ほどのハジケはあんまり無いわ。基本ISが絡まなきゃむしろ優等生というか、模範生よ。案外人気高いんじゃ無いかしら?」

「教官にも操縦について一目置かれているようだしな。フォビドゥンの使い方を誰よりも分かっているからだろうが……」

「まぁあの暴走が無ければ凄く良い人なのは分かるよ。うん、分かってるけど……」

 

とまで言って、皆彼のことについてそれ以上言うことがないことに気づいた。

 

「……なんであそこまで頭が良いのだ?」

「それが分かれば一発なんだがなぁ。」

「……御父上が科学者であるとは聞いています。」

「ゲシュマイディッヒ・パンツァーを製作できるほどの科学者であれば黒兎隊に間違いなくスカウトが行くはずだが……」

「フォカロルって科学者は見たことがないの?」

「IS……いや、軍事に携わっているのなら少なくとも開発主任以上は必然の技術だ。だが、それをラーベが継承している理由が解せん。」

「一ついいか?あの技術がそこまで軍事的に有利になるものなのか?ビームを曲げるとなると私にはISとの戦闘しか思い浮かばんのだが……」

「いや、ビームを曲げるのはあくまで副産物……でもないが、それ以上に軍事において歴史を変えてしまう特性がある。それが“水分子への干渉”だ。」

「……それがどう歴史を変える?」

「考えても見ろ、潜水艦が遅い理由はなんだ?」

「……なるほど。確かに脅威ですわね。」

「話が見えてこないのだが。」

「潜水艦は20ノット……時速37kmってところが限界。勿論これは最高速だから、バッテリーを温存するとその半分くらいにはなるんだ。原潜だとそれを無視できるから35ノットくらい?」

「大体50km/hくらいなのか……結構遅いんだな。」

「潜水艦の船体が水との間で抵抗力が働いてブレーキになってしまうからな。それを軽減するために潜水艦はああいう形をしている。」

「あー、そういう事か!その抵抗力がなくなるから加速やらトップスピードが高くなるのか!」

「あぁ。つまりだが……ミサイルを積んだ潜水艦が時速100kmで突っ込んでSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を撃って即座に帰ってくることも出来る。」

「つまり……え、やばくね?」

「軍人として言えることは……ヤバいとしか言葉が出んな。世界中でゲシュマイディッヒ・パンツァーの研究が進んでいる。彼に聞けば一発なんだろうが……」

「なーんかそこは話さなさそうね。セシリア、あんたはどう思うのよ?珍しく家族の事知ってるんでしょ?」

「……まぁ、そうですね。恐らく聞いてくれるとは思います。ですが、その上で拒否されるでしょうね。」

「国家単位で個人に挑んで、負けて。こいつらは十年間何してきたんですかねぇ?ってな!」

「そうよねぇ……そうやって煽りに行くのも想像できる……は?」

「よっ。俺抜きで俺ちゃんの話してなーい?」

 

きっちり全員分のグラスを盆にのせて持ってきたラーベに皆が驚いた。地味に紅茶はティーセットを持ってきやがって。と考える暇もなくクーラーボックスから何かを取りだすラーベ。

 

出てきたのは……まな板と、匕首。それを目の前に置く。

 

「ちょっ、何よ。エンコ詰めさせたいほど嫌な話だったわけ!?」

「す、すまん。お前のことほとんど知らなくて」

「キィィエアアァァァァ!!」

 


 

そしてクーラーボックスに再び手を突っ込んで何かを取りだす。氷だ。ブロックの氷だ。

 

「「「「「「は????」」」」」」

「ホォォゥゥオアッ!シュウッ!」

 

そしてそれを匕首で一気に四分割!仕上げに氷の角を落とすように削って八角形に!!それをさっと水で洗い流す!!つーかどっからドスを持ってきたんだコイツ。

 

「えっと……」

「何見せられてるの??」

「最高に美味い炭酸には氷が欠かせねぇだろ?」

「馬鹿なの!?殺されるかと思ったわ!ビックリしたじゃない!!」

 

最後にグラスに突っ込んで炭酸を注ぐと……何の変哲もないサイダーとコーラの出来上がり。

 

「すげぇ、まるでバーテンダーだな!」

「織斑君、このロマンが分かるか?カッコいいだろ!」

「大人になったら行きてぇなぁ、ウィスキー?をこんな感じの氷でゆっくり飲むの、カッコいいんだよ!」

「なら二年次くらいにドイツに来な。飲める場所案内してやる。」

「なんか男同士で盛り上がってるわね……」

「シックなバーで大人っぽく一杯……でも憧れるなぁ。」

「というかこのコーラ地味に美味しく感じるのが腹立つわね。」

「泡立ちが少ないのか?」

「それもあるが、一番は氷が溶けにくくなるんだよ。氷の角なんかはドリンクの温度で簡単に溶けるから、それを取ってやることで味が薄まりにくくなる。あと炭酸だと氷の表面にある凹凸に反応して炭酸が抜けやすくなるってのもある。ここまでやれとは言わんが、自宅で手軽に炭酸をより楽しみたいなら氷を一回水洗いするのはアリだぜ?」

 

とりあえず紅茶も注いで……俺もなんかミルクティーの気分だったので3人分だな。

 

「で、俺の話してたみてぇだが?」

「……どこから聞いてた?」

「ゲシュパンを潜水艦に搭載出来たらなーってところから。」

「可能か?」

「可能と言えば可能だが、結局魚雷なんかには弱いのには変わらんぞ。そこでTP装甲の出番ではあるんだが……そうなると潜水艦がバカデカくなる。隠密性もへったくれもなくなるぞ?」

「……まぁそうだろうな。」

「その前はなんだ?親父の話でもしてたか?」

「えっと……」

「まぁ別に何だっていいさ。親父もお袋も死んだのは間違いねぇからな。ただ、技術を嗤ったやつだけはぶっ殺す。それだけだぜ。」

「前お聞きしたときも思いましたがドライ過ぎませんこと??」

「湿っぽい空気が苦手だからな。あぁ、別に海やら雨やらが嫌いなわけじゃないからな?」

「ペース乱されるわほんと……」

「……どうしてそこまで死に拘らん?死者に敬意を表しているのは分かるが、死した者を引きずらん者はいない。悪く言えば……貴様はある意味一夏より人間味がない。」

「えっ、何で今の流れで俺が刺されるんだ??」

 

刺されないわけないだろう。一体何人の女子生徒を墜としまくってるんだこいつ。

 

そうだな……まぁ一つだけ死んだヤツに引かれない理由があるとするならば。

 

「いつか人は死すらも超えることが出来る。時が未来に進むと誰が決めたんだ?いつでもリンボに歩みを進める、進まなければならない。ならその間に手土産を持っていくのが“受け継ぐ者”の役割だ。」

「手土産……」

「ま、そんな堅苦しく考える必要はねぇだろ。極々一部のクソ馬鹿を除いて、親は子が一生懸命生きてくれりゃそれで充分なのさ。それでも足りないと思ったなら、それなりに生きた証を歴史に刻む。こんぐらいで良いんだよ。」

「……案外しっかりしたこと考えてんのね。」

「そうか?あ!」

「今ので何を考え付いた……」

「亡霊(ホログラム)にゲシュマイディッヒ・パンツァーを疑似的に載せる方法思いついた。」

「天才なのか馬鹿なのかはっきりしてくれない??」

「こうしちゃいられん。つーかヴォーテックスの整備もしてぇ。また夕飯でな!」

 

「……嵐みたいな人だね。」

「荒らしじゃなくてか?」

「嵐というか、天災だろう。」

「姉さんみたいなやつだ……いや、人付き合い出来るという時点では勝ってはいるのだが。」

「……私はなんだか分からなくなってきましたわ。」

「なんだか真剣に考えてた私たちが馬鹿らしくなってきたわ。あぁもう!バレーやるわよ!」

「運動していた方が変に考えずに済む。私もやろう。」

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