「じゃ、全員集まったことだしブリーフィングと行こう。一応言っておくが、もう準備は済ませた。俺も参戦できるし、作戦だって立てた。」
「ある程度内容は把握している。我々でも普段通りに動けていれば十分可能だと私は判断しているが……貴様らはどうする?」
「……やってやろうじゃない。一度抜けたからには、良い作戦持ってきたんでしょうね?」
「これが許容できなければ別に好きにしてくれ。既に95%の成功率はあるんだからな。」
「残りの5%を今いる皆で補う。理解したか?」
「たった5%を補えとか、気を悪くしてくれるなよ。皆が参戦してくれればか細い負け筋を潰せることになる。」
とりあえずは……皆やる気のようだ。
「始める……前に篠ノ之はどこだ?」
「失敗のショックでどこかに行ったわ。」
「後で煽りに行くか。篠ノ之の協力も得られたほうがいい。」
「……貴様正気か?」
「正気も正気、なんならアレも勝機を潰す一手になるはずだ。兎印の最新鋭機は伊達じゃねぇってことだよ。」
とりあえず……今砂浜に居る機体を集める。規模だけ見りゃ軍隊だな。
「俺の開発した随伴無人EOSの“フォビドゥン・リーパー”。ISほどの性能はないが、それでもゲシュマイディッヒ・パンツァーとTP装甲の堅牢さは損なわれていない。盾によし、砲撃支援にヨシの優れものだ。オリジンとブルーがそれぞれ2機。オリジンは前線でタンク、ブルーは海中から砲撃を行う。」
「言ってしまえば簡単、タンクであるリーパーの陰からコソコソ撃ってバンディットを削る。だが完全に隙がないというわけでもない。」
「リーパーの戦闘バッテリー消費が最大値計算だと1分で2割削れる。1分戦闘機動をしなければそれでバッテリーは満タンだ。4分でリーパーを下げ、1分待機させてまたタンクとして出す。」
「私たちはそこの間にリーパーからヘイトを向ける仕事……ってことかな?」
「デュノア、それで正解だがさらにもう一歩踏み込む。今回の作戦ではボーデヴィッヒとオルコット、簪が狙撃支援を行う。万が一狙撃支援が狙われた場合にはボーデヴィッヒが我々の到着まで時間を稼ぐが、その間にオルコットはビットの展開。簪はリーパーで離脱するボーデヴィッヒの支援。」
「私たちはとりあえず攻撃よりも回避に集中ね。」
「そう。前線は俺と鳳、居れば篠ノ之。その支援にデュノアを配置する。つっても最前線はリーパーだってことは忘れるな。」
「あと一つ伝えておかねばならんこともあるだろう。ラーベのISについてだ。」
「別に良くねぇか?ISが起動しなくともフォビドゥンがあればEOSで十分だろ。」
「それは言っておかないとダメですわよ。もう間違っても負傷者を出すわけには……」
「まぁそうだな。だがフォビドゥンの機能は十全に使える。むしろ近接を振りには行かないから安全になったかもな。」
事実である。軍用機であれば強化しているとは言え、EOSの装甲は切り裂いてくるであろう。ビームサーベルやらレーザーブレードを装備しない理由がないからな。
「バンディットの情報は見たの?」
「
「保険……というかまだ想定している事態がありますの?」
「
「セカンドシフトって……世界でもそう例があるものじゃないわよ?」
「例がなくともゼロじゃないんだ。絶対数が少ないなら取りこぼしのデータだって存在している。今までの例を見たが……とにかく長い慣熟期間が存在し、何かしら窮地などのきっかけがあれば入るもんだ。これが無人機でも起こらないというデータは存在していない。」
「そもそも無人機自体がそこまで開発が進んでいない技術だ。今回も本来有人機の機体が無人で暴れだしている。ラーベの言う通り、最悪を想定するなら二の矢を持っておくべきだ。」
で……その案というのが。
「このEOSには核融合炉が積んである。」
「なんて?」
「つまりヤツをEOSごと
「馬鹿なの?」
「そのための随伴機だぞ。成功の可能性が高まるって言ったのはこれが理由だ。イオンを篠ノ之の機体で回収してもらうのが目的だ。」
「生身でマッハに耐えられますの?」
「イグニッションブーストを使用しなきゃスーツでマッハまで耐えられる。流石に核融合の温度を耐えられるほどISも頑丈じゃない。あくまで耐えられるのは高放射能環境下だけであって、爆破時のダメージは入っちまう。」
「……どこまで知っているんだ、お前は。」
黙りこくっていた織斑教諭が口を開く。作戦を聞いていたのもそうだが、俺がどこまで考えているかも探っていたのだろう。そして、結論にたどり着いた。
「俺がISを解析しかけているって。」
「……やはりか。」
「まだ根幹までは触れられていませんよ。でも、どうすれば破壊できるかくらいは既に研究済み。今からどうコアを作っているかのリバースエンジニアリングを始めたいんですが……まぁフォビドゥンのコアは学園の管轄ですし。分解はしません。」
「……なるほどな。良いだろう、例の物の解析を約束しよう。ただし、皆が無事に帰ったらだ。」
「話が早い。複製出来たらそのブツは返却しますよ。」
「出来なさそうなことを簡単に言う。」
「やれますよ。天災が出来たんだから。同じ人が到達できないなんてことはあり得ない。」
まぁ……その話はあとだ。今やるべきことが目の前にあるのだ。
「異論のある者はいるか?」
「……一夏さんの様子は見られたのですか?」
「どうして?重症ってんなら作戦が終わった後お見舞いに行けばいい。」
「アンタホントに人間なの?どんな考え方してるか教えて頂戴。」
「何もないが。ただやるべきことの優先順位を付けているだけだぞ。」
「やめておけ、コイツの考えることは予想しやすいが予想して反論するだけ無駄だぞ。」
EOSに乗り込んで調子を見るついでに、反対にいる篠ノ之の方に飛んでいく。
「よぉ篠ノ之。ブリーフィングに呼んだってのに無視するなよ。」
「お前……さっき逃げた腰抜けが……」
「あー、もういいわ。頭数に数えてた俺が馬鹿だった。お前、博士と違ってあんま頭良くないな。」
「なっ……」
「そのまま腐ってな。紅白めでたき披露宴を血染めにされた悲劇の未亡人として……姉の盛大なプレゼントを受け取れずにその名を穢した不出来な妹としてな。」
「お前に……私の何が分かる!?」
「スマンが、俺とは話すだけ無駄な時間だぜ。もし参加したいんならオルコットなりデュノアなりに頭下げてこい。」
EOSを再び元のハンガーへと戻しつつ、若干弱めだったブースターの調整を始める。
「行って帰ってきただけ?」
「篠ノ之の仲介頼むわ。やっぱ俺だと相性悪い。」
「……何を言った。」
「さっきのブリーフィングの事を腰抜けって言ったから、博士と違って頭悪いなって言った。」
「私の経験が全く生きてない……」
「簪はちゃんと才能がある。対して篠ノ之に関しては武道以外の才能が並みだぞ。しかも姉貴の凄さも差がある。」
「生徒会長だったっけ。でもロシアの代表じゃなかった?」
「俺が務まるとは思わんが、国家代表だぞ。博士に比べたらやっぱりバリューは下がる。」
「出来ないのにそう言うの?」
「普通に俺だと歩く国際問題がテレビ垂れ流しで不適切極まりないだろ。」
「それは……まぁ、うん。そうだわ……」
フォビドゥンの調整が終わるまでにオルコットとデュノアが篠ノ之の説得をしてもらえれば上々ってやつだ。というか博士が居る以上何が起こっても不思議ではないな。
「というか……簪だっけ。よくラーベとやってられるわね。」
「えっと……まぁ成り行きというか。私が機体調整してる隣で開発してるから……」
「あー……エンジニア同士、機体が気になったと。」
「そうかな。まぁ思った以上の技術力で何が何だか分からなかったんだけど……でも。」
「でも?」
「悪くはないと思う。お姉ちゃんがISを一人で作ったって信じてたんだけど……ここまで振り切らないと一人で開発ってまず出来ないなぁって思って……」
「荒療治にも程があるだろう。私も似たような感じだったが。」
「だがそこで改められたのは間違いなく簪が実直に向き合っていたからだろ?恨みつらみだけでISに向き合ってたんなら、整備班に頼んで共同開発するどころかISに乗るのもやめるだろ。」
「なんか、あんたが褒めるの初めて見る気がするわ。」
「なんだかんだラーベは平等だと思うぞ。男女やら才能の有無で見るのではなく、本人が物事に真剣に向き合っていれさえすれば褒めることもあるだろう。」
「流石少佐殿。正解だ。俺は平等に物事を見る。心血注いでいるのであれば手助けはしたくなるし、偏屈に見られれば相応の対応で返す。」
「篠ノ之に対しても……だからか?」
「あぁ。まぁ結局オルコットとデュノアに頭下げりゃ俺も参加にとやかくは言わん。ただ、一人突っ走って死にに行くならぶっ飛ばしてでも下げる。良いな。」
「なんだかんだ命大事にやるってことね。」
「機体なら何度でも作り直せるが、命に変わりはねぇんだぞ。それを守ってこその作戦というものだ。」
再び軽くフォビドゥンを動かし、バランス調整を完了させる。思考制御出来ない分、若干反応が遅いが問題ない。元々俺はISの適性がそこまでよくない。EOSになってもやることは変わらん。
「……篠ノ之も来たな?参加するからには作戦に従えよ。」
「……あぁ。」
「ならヨシ。じゃあ……作戦“知らぬ海を泳げ”開始だ。皆初めての実戦だが、カタくなるなよ。」
「プラン通りに進める。何かあればすぐに私に言え。」
「起きた織斑君に首捧げてやるぞ。俺たちじゃなく、バンディットのな。テイクオフだ!」