「火力と機動性で見りゃとんでもない機体だな。だが遊び心がない。見ていてつまらんな。」
「そう言うな。責任は私が負ったとは言え、お前が指揮を執ったからには最後まで貫いてもらうぞ。」
「
「分かっているさ。むしろ、私も後で改めてお前に頭を下げなければならん。一夏と箒……そして束が迷惑をかけた。」
「前者に関しては受け取っときますし、最後の作戦で一花くらいは添えられてたんで大丈夫です。後者に関しては謝り損ですよ。あれに関してはどうしようもないでしょう。」
次の日。俺はいち早く寝て、織斑先生と浜辺に残っていた。残りの学生は全員強制帰宅。まぁ指揮を執っていたんだから最後までやれ、ということ。
「……というか、いつまでそこに居るんです?」
「えー?私は気まぐれだからねー?いつまで居るのかな?」
「……お前が居ると話がややこしくなる。帰れ。」
「今は嫌だね!でも、また追いかけられるのは確かに癪かな?」
「あなたの目的はもう果たされた。もしくは果たせなかった。どちらにせよ居る意味は薄い……が、今ここにいるのが意味がある証左。何が目的です?」
「分かってるくせにー。」
篠ノ之博士が屋根の上からダイブ。割と遠目だったはずだが、運動能力もやはり頭抜けている。俺の目の前に降り立った博士は俺の目を覗いて言う。
「君のEOS……既存技術の寄せ集めなのによく纏まっていると思ってさ?覗いてみたよ。何なのあれ?核融合炉って君は化け物かな?」
「親父が天才だった。俺はそれを引き継いだだけ。本物は親父だ。」
「束も分かっている、なのに珍しく褒めるのはお前がそれだけとんでもないことをしている……と自覚しているか?」
「ゲシュマイディッヒ・パンツァーやらクローキング、ホログラムに関しては俺がやりましたからね。自覚はありますよ。」
「それもそう。でも、真にヤバいのは相転移装甲だよ?アレがあるだけでISの防御力が最高から優秀まで下がったんだからね。」
「TP装甲の方か。あれは理論は親父が書いた。実現したのが俺と向こうの鍛造会社ってだけだ。基礎研究はやっぱり親父が優秀だよ。」
「謙遜しすぎも毒だぞ。お前ならこの助言も要らないだろうがな。」
リセットされたラファールのコアを再度機体に収めると、機体はフォビドゥンと組み合わさってグライダーへと変化する。まぁフォビドゥンが量子変換出来ねぇから即応性は最悪ってやつだ。
……あぁそうだ。ISコアは完全にリセットされたがまた使えるようになった。俺の経験値は雀の涙ほどだったので運用に支障はないが……学園側は大変だろうな。
「ま、未来のお楽しみのためにゴーレムのコア解析については大目に見てあげる。でも、壊したらただじゃおかないよ?」
「壊そうが直せばいい。俺ならそれが出来るし、気に入らないんじゃ分捕りに来ればいい。」
「へぇ……まぁ心意気は買ってあげるよ。本当に君がISを作れるか、魅せてもらおうじゃん。」
「いいや、ISよりいいもんを作るのさ。あんたが数年前に作ったんなら、もう世代交代機が出るころだからな。より機械的だが、生産性に優れ……万人が扱えるものを作る。世界がどうなろうとも関係ねぇ、俺が作りたいから作るだけだ。」
道路に大型のトレーラーが見えた。米軍の迎えが来たようだ。
「時間切れかー。ま、また今度ゆっくり話そうじゃん。ちーちゃんもまたねー!」
「おい待て!」
「やめといた方がいいですよ。あちらさん絡みでより混乱する。」
「……そうだな。すまない。」
さて、誰が来るかと思えば……それなりの美女とも言えばいいか。っても俺のタイプって感じではない。
「初めまして。ナターシャ・ファイルスよ。あの子のパイロットをしているわ。」
「こちらこそ初めまして。ラーベ・フォカロル、バンディット撃退作戦の指揮を執った。」
「織斑千冬だ。まぁ……そうだな、あくまで見届け人とでも言おう。」
「学園も学園で大変そう、ということで合っているかしら?」
「代表候補生が居るとは言え、一年坊に任せる案が通ってしまう程度には。」
「代表候補生が居たとしてもだ。お前自身が言ったことだろう?」
「生真面目なことで。折角先生のメンツを保とうとしたのに。」
「未成年にメンツを保たれても良いと思う大人にはなりたくないだけだ。」
機体の引き渡し自体は簡単に終わる。が、その前に一つ言っておきたいことくらいはある。
「今回の米軍の不手際における責任は……一体誰が取るもんだ?」
「まずパイロットである私が取るのは当たり前。ここに正式に謝罪をする……ってだけでは恐らく不満って感じかしら?」
「勿論。米軍将校……そうだな、アンタの居る基地の司令官とチーフメカニック、銀の福音開発主任と次長……まぁ色々忙しいだろうからこれくらいが妥当だな。8月中に俺たち……まぁ、あの作戦を大っぴらにするわけにもいかないだろうから、作戦参加者と理事長の前に頭を下げに来る。そのくらいだな。」
「……割と軽いわね。銀の福音の稼働データ全部寄越せ、くらいは言ってくると思ったのだけど。」
「そんなもん請求したって価値がない。そもそも既にスペックは持ってるから、そこから大体は予測くらい付いてる。一応言っとくが後で頭下げる以外に請求はするからな、金を。」
「お前はその金をどうする気だ……」
「例のブツの研究費に充ててまた学園に還元する。」
「何か企んでたりする?」
「コイツはいつも企んでばかりだ。その企みにほぼ悪意もなく、利益すらもたらすから止めるに止められん。」
「なるほどね……」
トレーラーの方を見たが、手際が良いんだか悪いんだか……つーか危なっかしい。本当に軍隊か、とも思ったが作業員を見て納得がいった。
男性も数名居るが、力仕事には明らかに不向きな女性が数名。秘匿された軍隊に居るのだから普通の女性よりは屈強だとは思うが、こういう作業に使うには力不足だろう。
「リーパー貸してやる。早く終わらせろ、不向きな人材を持ってくるんじゃねぇよ。」
「彼女たちのこと?ちゃんと優秀よ?」
「それは承知の上で、ここで使うべき人材じゃないだろう。予備パイロットか?」
「そうよ。トレーニングの一環でこういう雑用をするの。」
「腰をいわしたらパイロットどころじゃないだろうが。EOSを使えってんだ。」
「残念だけど無理よ。」
「出来ないのか……ISばかり重視してるな。あぁ気にするな。ISのパイロットをやってるからにはそれに専念した方が良いのは間違いない。が、俺が言ってるのは軍全体だ。一応あれ機密だろ?」
「そうね……ISも出来るには出来るけど、手軽さや操縦の適性の広さで言えばEOSが圧倒的。私たちも二機くらい欲しいのだけどね。」
「前線で活躍してる者ほど必要なものを分かってる奴はいねぇわな。だが、その上層部がお馬鹿さんだと飼い殺しってわけだ。機密への危機感が無さ過ぎる。」
そもそも最速で来るならISの3機くらいは使って隠蔽処理を行うものだ。それが全て俺の手で行われているのだから、堕落も良いところ。
「この子は戦闘用に作ったの?」
「外装はな。中身はスペクターって言う人型機械だ。ソイツは大体の事が出来る。俺の家の警備もやってるぜ。」
「随分と太いお家なのね。」
「まぁな。資産家ほどじゃないが、それなりの家だとは思うぜ。」
リーパー2機が残骸を持ち上げてトレーラーに積んだのを確認して、再度警備に向かわせる。
「伝票は要るか?」
「発行出来ないでしょ?荷物が存在してないもの。」
「じゃあ後で頭下げに来いよ。ダメなら俺が殴り込みに行くしな。」
「教師の前で犯行予告とは、まるで緊張感がないな?」
「どうせ頭下げに来ますから、未遂になりますよ。仮に来なかったら実際に殴り込みに行きますがね。」
「はいはい。司令にはちゃんと言っておくわ。」
軍人の一人が積み込み完了の報告を行った後、ナターシャは頷いて再度こちらに向き直る。
「確認も完了したみたい。それじゃあ、また来るわね。新学期直前あたりが良さそうかしら?」
「その方向にして欲しい。出来れば、その5日前くらいだと生徒たちが来る前になる。」
「分かった、その方向で一週間内には答えを出すようにするわね。」
「では、ミス・ナターシャ。また後日。」
トレーラーの助手席が閉まり、俺も帰り支度を始める。
「……EOSの開発でもしてみるか。」
「ISの解析をするんじゃあなかったのか?」
「勿論それもしますがね、リーパーより洗練されたEOSを作りたいんですよ。昨日使った“アトラス”は俺の中で第一世代のEOSに定義する実験作なんで。リーパーはスペクターの追加兵装システムなんで、厳密にはEOSでもないんですがね。」
「お前はどこまで世界をひっくり返す予定なんだ……」
「俺の考えるまま、俺の気持ちが向くままに。」
「……まぁ、その方がお前らしい。多方面に迷惑をかけない限りは構わんが、身の振り方は気を付けろよ。」
ごもっともな忠告かつ、耳タコになるようだ。まぁそうでなけりゃ忘れそうで怖くもあるがな。
リーパーを荷台に格納して、トレーラーに乗り込む。さて、この後は学園に戻った後、夏休みに入ってドイツに帰る。まぁあっちの設備を諸々学園に運び込む予定だから、8月初旬で戻ってくる。その間に鍛造業者の方にも顔を出して、墓参りもして……輸送機で戻ってくる。こういう時、親父の交流関係の狭さと太さに驚かされるもんだな。