2組の授業は1組と比べれば平和なもんである。と言うか1組が異常に騒ぎが起きるだけだが。とは言え、特異な授業がないと言うわけではない。
「……ではラーベ君。ISの操作系統について、分かりやすく説明を。」
「はい。まぁ分かりやすく言うなら我々の脳波、電気信号を読み取って制御している。ここのコーディングについてはIS深部で行われているものであり、脳波形がISに記録されているビッグデータの平均に近ければ近いほど読み取りがしやすい……つまり操縦適正が高い。男性がそうそう動かせないと言うのも、当初博士が読み込ませたデータが女性脳波であったからしてそちらに偏っていったと言うのが真相だろう。」
「じゃあラーベ君と織斑君が動かせるのは?」
「織斑君に関しては適正が非常に高い織斑先生が血縁にあるため、あり得ない話ではない。俺に関しては適正が動かせる最低限。外れ値として考えてほぼ問題ない……が、そうなると操縦者のご兄弟が動かせない理由付けとして薄い。これに関してはまだ考察中だな。」
こんな感じで、ちょくちょくラーベの講釈が行われる。あくまで学生であるので、教えるのではなく発表という形で質疑応答も行われる。
この授業に関しては発表のお手本として、純粋に技術的な知識の獲得として試験的に行われているもの……
なのだが、如何せん教師以上にISへの理解が深い。というかほぼ世界第二位とか三位には入っているので事実上この授業がメカニック養成としては最上級のものとなる。
「質問、フォビドゥンにはISの処理を向上させるような機構は入ってる?」
「残念ながら入ってない。それどころかISの視界を邪魔するせいでいくら乗ろうが経験値が貯まらん。だが逆を言えば、自由に改造も出来るって事だ。逆質問になるが、なぜこの結論に至ると思う?」
「えっと……経験値を積めば、ISが勝手にパイロットのクセを覚えるから?」
「その認識が出来ていれば理解が出来ている。もし120点の回答にするなら、ISが学習するデータはパイロットの想像までは理解しない。ライフル主体の戦い方をすれば、パイロットは射撃戦が得意と考えて近接を捨てる。“乗り慣れる”と言う感覚は間違いじゃない。実際にISが合わせてくれている。」
「この前織斑君が二次形態移行したよね?あの機体も白式の短期決戦のクセを覚えたから、あの燃費になったって感じ?」
「そう言う事だ。もし鳳の機体が二次形態移行するなら……いやシンプルに性能強化か?遠距離戦から近距離戦に持っていく為に推力強化と堅牢になる感じか?」
「なんかパッとしないわね……」
「コンセプトがしっかりしてる分、伸ばすとしたらそこしかねぇんだよな。堅さと継戦能力を保持した上で、脅威となる牽制火器を持ち、近距離の火力を出せる様にしている。このバランスを崩すと遠距離を生やして器用貧乏になるか、織斑君のデットコピーになるかの二択だ。」
こんな感じで他人の評価などもする。というかISの基本操作を教えることもする。何せ適正が低いもんだから、当初の感覚そのままで操作している。つまり、経験値がまだまだと言うルーキーにも自分の感覚を伝えればそのまま操作出来る……のだが。
「ラーベ君みたいに機体が動かせない……」
「自分の機体じゃないなら、そりゃ遅延もデカいぞ。これに関しては皆の判断力を頼るばかりだぜ。」
「にしてもラーベ君の動きって滑らかな気がする……」
「通常動作は適性関係ねぇぞ。コンマ数秒の時に必須になるだけだ。」
「……というか待って?フィードバックされないってことは、アンタつまりずっと遅延ありの状態で操作してたってわけ?」
「まぁそうだ。」
「……ちょっと良いかな?つまり予測を当て続けるってのがラーベ君の戦い方?」
「近いが、戦いの前に試合運びをざっと5本くらい用意しておく。試合中にどれに近いかを判断して、その筋書き通りに試合を動かして、細かい判断は予測だな。」
「予測……ってなると、相手の動きはどうなの?」
「己を知り相手を知れば百戦危うからず。相手を調査して癖を知る。突然の動作は思考が挟まらないから、次どう動くか予想はつくぜ。」
「……そう言うことね。やけに意表をつくと思ったけど、誘導してたって訳。」
「煽りも立派な戦術だぜ?乗る方が悪いし、乗らなかったならそのまま封殺出来る機体を組んでる。」
「……一回さ、フォビドゥン操縦出来るかやってみていい?」
「大歓迎。ラファールにそのまま取り付けられるから……比較的機能少なめのブルーにするぞ。」
ブルーの機能であれば通常のラファールでも十分扱えると判断して、ブルー2機を接続する。
「……え?ナニコレ……」
「操作量多すぎじゃない?ハイパーセンサーもあまり機能してないし……」
「なら一回ゲシュマイディッヒ・パンツァーを切ってみろ。機能の60%くらい減る。」
「……というか、これで機能減ってるの?」
「勿論。そもそもフレスベルグがないんだ。BT兵器みたいなもんだから適性がないと確かにキツイな。」
「……そういやアンタBT兵器の適性あるんだったわね。」
「適性なんかねぇよ?」
「マジ!?」
「全部手動だぞ。」
「ラーベ君を真似しないほうがいい気がしてきた。」
「まぁそうだな。というか君たちは適性があるんだ、俺の真似をするより適正があるパイロットから学んだ方が良いぞ。」
「でもさ、情報処理能力に関しては教えてほしいな。」
「やるなら覚悟しろ。初級編として、レーダー見ながら目の前のドローンを順番に撃墜してもらうぞ。全部マニュアルでな。」
とは言え、ハイパーセンサーの補助があるので射撃感覚を憶えたら誰でも出来る。故に中級編だ。
「次。VR上でコイツと戦ってもらう。」
「えっと……ナニコレ?」
「陸上戦艦“ビッグトレー”。」
「馬鹿なの?」
「データ上だから馬鹿も出来る。練習なんだ、性能を盛りに盛って何が悪い。」
「スペックは?」
「3連装レールガン3基、連装対空砲8基にVLSにCIWS、パルスレーザー砲多数。インターセプタードローンも本来ならあるが、まぁ初回だしな。一旦オマケしてやる。」
「どんだけ盛ってるのよ、というか中級編……?」
「弱点はほぼ動かないことだ。その代わり堅いぞ。機体のアッセンブリもちゃんと考えておけよ。」
そうして4機のISがVR上で戦闘を開始するが……
『対空への殺意が尋常じゃな……』
『1がやられた!』
『4、回避!真後ろ!』
『違う!3に行ってる!』
『レールガンを対空戦に……避けて!?』
と言う感じで非常に厳しいものとなっている。VR上でのラファールもカスタム出来るとは言え、厳しい性能はしている。
「じゃー反省会だ。まず1は近づきすぎ。CIWSとパルスレーザー砲の餌食でしかない。3については周囲に目を光らせているのは良いが、相手の裏まで見ろ。2は接近を恐れすぎだ。レールガンに狙い撃ちされる。4は回避に集中しすぎ、攻撃がほぼ出来ていない。後は……総評して敵の分析が出来ていない。ISなんだからもっと効果的な攻撃方法があるはずだ。凰、何か分かるか?」
「敵戦艦の懐ね。特に履帯とかが効果的じゃない?ああいう所の装甲って盛るのがキツイのよ。」
「正解。だが……ラファールでも出来る3分クッキングの成功例を見せてやる。」
「……あんたまさか一人で4機動かすとか言い出さないわよね?」
「そのつもりだが。」
「さらっと馬鹿みたいなこと言わないで?」
「だが、その判断さえ出来ていれば殺し切れる証左でもある。見てな。」
まず第一フェーズ。戦艦に近付くのだが、これは彼女らも出来ていた。出来るだけ低空で近づき、レールガンの射線を切る。そしてCIWSの射程圏内に入った時、一気に散開する。ここまではOK。
「まずはCIWSとパルスレーザー砲の数を減らす。」
グレネードを一気に3つ投擲し、後方から無人機がミサイルを2発ずつ、トップアタックを仕掛ける形で発射。CIWSは非常に優秀。破壊力の高いミサイルを先に潰す……が、そこが罠だ。
「グレネードってのは外形だけでは判断しにくい。こうして3種一気に投げれば良い感じだ。」
フラッシュ、チャフ、テルミットの3種が空中で炸裂し、CIWSとVLSの狙いが弱まる。電波も画像認識も赤外線も一気に使い物にならなくなる。その前に迎撃されたのは2発、だが残りの4発があればCIWSのいくつかは使い物にならなくなる。
ついでに接近していたのでパルスレーザー砲をプラスチック爆弾で破壊しておく。
「更に対艦ミサイルをお代わり。レールガンの照準はフェイントを織り交ぜながら回避、弾幕は多少の被弾は無視して飛ぶ。」
CIWSの迎撃がミサイルに向いたのなら、そこで飛び込んでパイルバンカーを主砲にぶち込んで離脱。
「威力の高い攻撃を囮にして、必殺をぶち込みに行く。これが鉄則だ。どの方法をとっても効果的な攻撃となる戦術を組み立てておけ。」
制御している無人機からグレネードが投下され、学習したAIがそれを迎撃しに行く。が、それこそスモークグレネードで更に状況が悪くなる。
「ここまで混乱させたなら次は簡単。武装を一つずつ破壊していって反撃の手段をドンドン折っていく。」
リーダー機であるし、主砲を一門潰しているので俺への狙いは更に激しくなる……が、それは承知。今度は俺がミサイルを発射して無人機2機が接近。無人機の方を放っておけば対艦ミサイルが刺さるし、無人機を放置すれば主砲が全て折れる。打った手は両方とも迎撃する……悪手。まぁ本来こういう時にドローンがカバーするため、ルーチンを組んでいないから仕方ない。
「ISってのは防御力も脅威だ。火力が2分の1になってりゃこの程度ってね。」
ミサイルの迎撃を確認したと同時に梱包爆弾を投下して、パイルバンカーを履帯裏に叩き込む。残してある無人機の援護で離脱し、爆弾を起爆。これで兵装の半分が沈黙。パイルバンカーを打ち込んだ無人機をまた戻して、再度攻勢に出る。
「後は死角を突きながら一点突破。後は簡単なお料理だ。」
陸上戦艦から立ち上る煙が墓標となって、仮想空間を黒く染め上げた。
「……アンタ本当に操縦適性低いのね。」
「まぁな。」
「今のでその感想出るの?」
「コイツ、イグニッションブーストも使ってないわよ。あの弾幕なら絶対必要になるのに、通常ブーストだけで乗り切ってる。」
「むしろ使えないから技術力で再現してるってわけ。」
「なるほどね……操縦技術を伸ばすんじゃなくて技術力でカバー。」
「ISのビッグデータへの蓄積はしないの?」
「やっても良いんだが、あまり気が進まん。やるにしてもコアを完全に独立させて、完全なる俺の個人所有にしてからだな。」
「学園の機体を、専用機に?」
「それだけじゃない、博士からも独立させちまう。」
「へー……えっ?」
「まぁどうしても抜け穴は作られているだろうから……俺が作るしかない。」
「……やっぱやめようかな、エンジニアになるの。」
「エンジニア方面には疎いけど、コイツが外れ値なだけよ。」