ゲシュパンとTP装甲だ、便利なものだろう? 作:QAAM_M1911
「よぉ、待たせたな。」
「良いけどさ……その、2連戦だぜ?大丈夫か?」
「ヨユーさ。」
そうは言うが、実際のところギリギリである。TP装甲がある程度アイドリング時のエネルギー消費を抑えることは出来る。改修案のVPSだと、TP装甲で追いつかないならVPSでもバッテリーが追いつかないと思うが、武装への電圧供給最適化を考えるとやはりVPSを搭載したい。想定ではエクツァーンが装備できるようになる。稼働時間は減るが。
……あぁ俺の身体の方の心配をしてくれてんだったか。ぶっちゃけそこまで疲れてはない。これ含めても2連戦は普通にこなせる。
「始めるとしようか。時間は貴重だ。」
「……お前が言うと凄く複雑だな。」
「文句は織斑教諭にツケとくぜ。」
ゼヒティーニェを連射し、まずは織斑君の出方をうかがう。向こうは前回のこともあって無暗に零落白夜を使ってこない。
なぜ効かなかったか、を説明すると……まずバックパックがシールドエネルギーによる保護から外れている。となると被弾に極端に弱いはず……なのだが、それをTP装甲とゲシュマイディッヒ・パンツァーによって相殺。つまりこれの突破方法はビーム系統の近接攻撃となるのだが、零落白夜は性質が違う。SEとSEの対消滅を引き起こして攻撃する……自分の装甲を犠牲にして発射するローエングリン砲みたいな感じか?一撃必殺のダメージソースはこれだ。
つまり、SEに絡まない部分を攻撃するとただの物理攻撃だ。TP装甲で弾き返せるって寸法だな。多少ビーム属性もあるにはあるが、ビームサーベルとしては出力が低いためゲシュパンで弾き返せてしまうのがカラクリだ。
むしろ、そんな相手を前にしているからこそ様子見に徹していると考えていい。恐らく、彼が警戒するのがゼヒティーニェとフレスベルグの射撃……ではなく、ニーズヘグによる斬撃と簡易BT操作による投擲だ。むしろこれを抜ければ彼の勝ち目は一気に高くなる。
ならば俺は焦らない。相手がこちらが崩れるのを待って機動してくれるのであれば、俺はその場で射撃を続けるのみ。しかもフレスベルグという命中率の高い火力装置だってあるのだ。
「どうしたどうしたァ!!逃げ回ってるだけじゃ勝てねぇぞ!!!」
「分かってるさ!でも……ッぶな!?」
「良く躱す!」
ニーズヘグはあくまで最終防衛手段だ。特に近接攻撃が主体の相手にはな。
と思った矢先、加速し続けていた織斑君が一気に接近してきた。多少の被弾を考えずに一撃を叩きこみに来た。確かに突破方法はそれしかない。
「ハァァァァアアア!!」
「何の!!」
零落白夜を遠くで発動させた……と思うと、その勢いでフレスベルグの一撃を切り裂く。なるほど、SEを纏うのだからビームも弾ける!だが今の一撃でSEが減った、となれば……次が決着の手だ。
「取った!!」
「と思ったか!!」
零落白夜の一撃がニーズヘグと激突し、甲高い金属音が鳴り響く。と共に下段から零落白夜の二撃目が突き抜けてくる。
「考えたな!だが!」
「いっ!?」
残念だが、下段からの一撃はニーズヘグの腹による打撃で大きく狙いをそらす結果となった。
……と思った瞬間。上空から熱源、ビームによる攻撃が飛来した。
「……学園のバリアーを貫通するとか、どんなバ火力だ。おい、生きてるよな!」
「な、なんだ……!?一体、何が?」
「アンノウン……いやボギーと断定した方がいいな。ピットまで戻れ、エネルギーが少ないぞ。」
「は!?そうしたらお前しかいなくなるじゃねぇか!」
「あぁ、うん……もう少し強い言葉を使った方がいいか?」
「邪魔だよ。的になりたくないならとっとと戻りな。」
「ッ!?」
織斑君の眼が見開かれた、と思った次の瞬間。件のボギーが襲来した。見たことのない機体だ。全身にスラスターが存在し、手に持つライフルはビームであり、かなりの火力を持っていることが一目でわかる。それ以上の特徴としては……
「無人機だな。」
「どうして分かる。」
「関節構造が人のものではない。巧妙にカモフラージュはされているがな。」
「なら零落白夜で壊しちまえば!」
「危険を冒す必要はない。つーかいい加減ウザイ。とっとと……帰んな!」
「うわっ!?」
並走していた白式をピット目掛けてシュート。誰かが見ていたら歓声が挙がっていたことだろうが、生憎非常事態だからな。
「ビーム兵器ィ?残念だけど、対策はもうあるんだよねェ~。」
静止しながら相手の動きに注意を払う。ライフルが動き出したと同時に、盾を構えて狂喜に震える!!ついにお披露目だ……
「ゲシュマイディッヒ・パンツァー……無敵の装甲の前に平伏せ!!」
放たれたビームは盾に沿って流線を……描くことはなく、そのまま一回転してボギーの機体に跳ね返っていく。左腕が失われた機体はライフルを撃とうとするが、先ほどの一手がAIの論理エラーを引き起こしているのか中々撃たない。と思えば恐らく拡張領域にインストールしてあった実弾ライフルで抵抗をする、がなら話はもっと早い。
「トランスフェイズ装甲……堅牢なる盾に慄け!!」
ニーズヘグと大楯二枚を構えながら急接近する。接近に合わせてビームライフルを構えたようだが、発射前にアルムフォイヤーで潰し、首ごと右腕を引き裂く。
「フォビドゥン……禁忌と名付けた由来、その身に刻め!!」
背部にフレスベルグのプラズマが届き、ボギーは沈黙した。
「え、えっと……どうしましょうあれ……」
アリーナに横たわる無人機を見て、山田教諭は頭を抱える。既に避難は始まっており、残るのは警戒のためISを使える代表候補生と試合をやっていた男子2人。だが、あろうことかラーベはボギーを1人で制圧してしまった。
「とにかく、事態の収拾に専念するぞ。あれの回収もしなければならないし、ラーベにも事情聴取を。生徒の安全確認でき次第、事情聴取の準備を。」
「は、はい!」
「しかしどんなカラクリを積んでいるんだ……あの機体は。」
「織斑先生……アレに、勝てます?」
「負けることはない。が、同時に勝てるかどうかは怪しいな。上手く誘い込まねば……手、止まっているぞ。」
「あ、す、すみません!」
今言ったのは事実である。白騎士があればまた話は別だが……打鉄では恐らく勝てない。彼の戦法は彼の機体特性とマッチし、こちらが有利を通そうとすれば逆に罠を仕掛けている。戦略眼だけで言えば代表候補生にも劣らない……いや、操縦の上手さもだ。
十分代表候補生としてやっていけるほどの腕がある。が、それ以上に技術者としての腕がある。実弾無効化兵装の開発。相手の機体から放たれたビームをフレキシブルに曲げるなど、最大のBT適性と熟練度があってようやくたどり着ける代物。それを彼はバックパック一つで解決した。イギリスの面目丸つぶれである。というかビームを一度だけでも曲げるという通常兵装がある時点でやばい。
「……何者だ、本当に。束並みの天才かなにかか……?」
「だったら良かったんですがね。」
フォビドゥン……と名付けたらしい。ISを解除して歩いてくるラーベ。この後することは分かり切っているらしい。
「事情聴取だ。分かっているな?」
「勿論。それと……」
「……撃破機体を見たいのか?」
「解析、と言った方がいいでしょう。」
「お前の腕は認めよう。だが、ダメだ。教師に任せておけ。」
「であれば一つだけ。無人機のISを作れるとするなら。まぁ言うまでもないでしょうが……」
「あぁ、分かっている。気を付けろよ。」
「えぇ。大きく開催した、大事な織斑君のレベルアップイベントをぶっ潰したわけですからね。」
「……どこまで見えている。」
「例の博士が織斑先生と織斑君、そして妹さん以外に興味がさしてない。今挙げた三名は溺愛すらされてます。」
「よくわかっているじゃないか。なら何故あんな真似をした?お前だけさっさと逃げて、一夏に投げれば安全だったものを。」
「……まどろっこしいのは嫌いなんですよ。織斑君を鍛え上げたいんならあんなポンコツを使わず、直接あなたが指導するように誘導したり、一人のときに誘拐して訓練させるとか。やりようはありますよ。」
「恐れ知らずだな。聞かれている可能性もあるぞ?」
「えぇ。煽りに行きましたから。」
「……ますますお前のことが分からなくなった。」
「人にちょっかい掛けるのが大好きなもので。怖いもの知らず、と言うわけではないんですがね?特に貴女の指導とか、ね?」
「……本当に指導してやろうか?」
「ハハッ、今は遠慮しておきます。」
芯のないやつ……と思えるが、その内は自信に満ち溢れている。かのISだけではない自信が、ラーベの奥底にあるというべきだ。事実ISを一人で一ヵ月足らずで組み上げたのも大きい。
……というか、普通に「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」という技術は特許どころの話ではない。大発見もいいところだ。彼はいつの間に、どのようにしてアレを発見したのだろうか。ますます束みたいな天才であるとしか思えない。
「……天才は案外居るもの、なのか?」
感覚麻痺してきた千冬だが、ともかく今はあの無人機の解析と騒動の終息に尽力するだけだ。それから考えよう。
「へぇ~。ゴーレムをほぼ無傷で撃退、ね~。いっくんの力を見せてもらおうと思ったけど、案外面白そうなもの持ってんじゃん。」
「SEも多少使ってるには使ってるけど……変な素粒子が干渉してるってわけ?これ私でもノーヒントじゃ見つけらんなくない?」
「うーん……ちょっかいかけたいけど、ぜーんぶスタンドアロンで組み立ててるか~。あれ、ISの技術使わずにあの装甲とビーム偏向こなしてるのこれ?」
「あれ…………コイツやばくね?」