ゲシュパンとTP装甲だ、便利なものだろう? 作:QAAM_M1911
「……本当にレポートを提出してくるとはな。」
「えぇ、実験の際は提出しろと言われましたから。」
千冬は眉間を抑える。確かにレポートを提出しろ、対人戦は禁止だ。そう言った。そして提出されたレポートを見る限りやることは確かに対人戦ではない。対人戦ではないのだが……
「……他人に銃口を向けるのは禁止、そう意図していたんだがな。」
「そうでしたか。ですが、私としてはあくまで“戦闘”の禁止とまでしか受け取れませんでしたから。」
出した言葉は飲み込めない。そして意図を伝えきれなかった千冬の負けだ。
「……いいだろう。アリーナの使用を許可する。」
「ありがとうございます。」
「全く……抜け道を探り当てるのが上手い。」
「褒め言葉として受け取っておきます。」
遡って、フォビドゥンの改修案を書き上げた後。タッグマッチに関してどうしようかと考えたとき、俺は悪いことを考えた。
寮の電話を使って、オルコットに話したい事がある、とだけ伝えて寮室に向かう。
ついでにレポートを書く。一応練習は必要だろうし、あくまでフォーメーションの練習だ。織斑先生も拒否は出来ない。
粗方の筋書きを書き上げた時、寮の扉の前に着いた。躊躇わずにノックする。
「オルコット、ラーべだ。」
「鍵を開けます。少々お待ちを。」
「9時を回るのに悪いな。」
「……時間ではなく外聞を気にしては?」
「?」
「……はぁ。」
オルコットが言いたいことは多分男が夜女性の部屋に上がるのはどう思われるか、という事だろうが……別にアポ取ってるしそもそもそんな気は今のところないしで構わなくね?
室内に入るとアロマの香りだろうか、若干苦手な匂いがした。リラックス効果だとか言うけど、そこまで変わるか?と思いつつ椅子に座る。
と、同時にオルコットが奥から2つのマグカップとビスケットをトレイに乗せてやってきた。
「ん……気を遣わせたな、ありがとう。」
「構いません。客人を招いたのならこうしてもてなすのも作法ですわ。」
「……アッサムか?」
「えぇ。ミルクティーと言えば、これが一番のオススメです。しかし、ドイツでも紅茶を飲まれる方がいらっしゃるとは……」
「東フリースラントだと紅茶はかなり飲まれてるな。ビールやコーヒーの流通量の方が多いのは否めないし、俺自身ドイツ流の紅茶の淹れ方はやらない。もっぱらダージリンをブラックで飲む。」
「ドイツ流……ですか。」
「基本的にドイツの紅茶はフルーティーなものが多い。あまり俺は好かなくてな……最終的には三大紅茶をかわりがわり飲むようになったな。」
「フレーバーティーが苦手……と。ロンネフェルトがドイツでは有名でしたが、そちらは飲まれないのですか?」
「たまの贅沢に飲むな。そこまで自由に使える金がない。」
「……自由に使えるうちの9割ほどを設備に使っているのでは?」
「よくお分かりで。」
「今までの狂走を見ればなんとなく察しがつきます。」
アイスブレイクはここら辺まででいいだろう。双方ともに肩肘の力がある程度抜けた。
「さて、じゃあ本題に入っちまおう。あまり長居するのも悪いしな。」
「……一体、何が目的なのです?」
「
「……はい??」
そういう反応は最もだろう。あちらさんからすれば、技術を盗んだ相手から協力の申し出がある。あまりに厚顔無恥に見える……まぁ、実際のところは全部レーゲンが着想になっているので、イギリスの技術はほとんど使っていないのだが。
「何故です?ブルー・ティアーズと貴方の……フォビドゥンでしたか?悔しいですが、相性は最悪にです。わざわざ楽に勝てる相手と組む理由がおありで?」
「あぁ。実のところ、俺はタッグマッチに関しては勝ちにはいかない。あくまでフォビドゥンが連携にどの程度使えるかを実験し、ブラッシュアップするのが目標だ。」
「ボーデヴィッヒとの1VS3、俺はタンクとして度々鳳とオルコットの二人を庇ったな。」
「ええ。確かにあれは即席の連携としては上々だったと思います。これ以上のデータをお求めなのですか?」
「そうだが、一つ重要な連携要素を俺は出していなかった。」
「……ビームを曲げる、あの特殊機構ですか。」
「“ゲシュマイディッヒ・パンツァー”。あれを攻めに転用する。その為オルコットが居たほうがデータ取り出来る。」
「……どうやって?」
テレビを付けて、タブレットを接続して簡単に説明する。見せているのはバスケで使われるタクティカルボード。フォーメーションを指示するやつだな。それをちょいと改造してIS用に3次元投影できるようにしたもんだ。
「まぁオルコットのやることは変わらない……が、今回はタッグ。勿論味方の位置関係は把握するだろ?」
「ええ。流れ弾でフレンドリーファイアなど言語道断ですもの。」
「俺に関しては逆だ。ブルーオンブルー関係無しに撃て。」
「まさか。跳弾を狙うとでも?」
「ほぼ正解だ。今回、俺は新しいフォビドゥンのバックパックで出撃する。フレスベルグ……曲がるプラズマ砲は装備しない。」
「今日試運転していたアレですわね。確か……ミサイルはありましたね?」
「後はフォノンメーザー砲、ラタトスク……パイルバンカーだな。近距離寄りの中距離戦仕様だ。一応言っておくが、これは習作だ。また新しいのをこの後作る。」
「なんて??」
「とりあえず、タッグマッチには間に合わない。フレスベルグを使用せずに、ゲシュマイディッヒ・パンツァーにエネルギーを割くことで水中戦と継戦能力を上げた。が、火力が不足気味。そこで補って欲しいのがオルコット。今の所、ビーム射撃を持ってるのはブルーティアーズだけだしな。」
「……流れ弾を全て処理出来ると?」
「出来なきゃ終わるだけ……あ。」
「また妙なことを思い付きましたわね?」
「フォビドゥンブルーの盾をビットにすれば最強じゃね?」
「貴方馬鹿ですか?馬鹿ですわよね??馬鹿にしていますわね???」
とりあえずタッグを組む方向で話はまとまった。後は当日まで練習するだけだ。
「とは言え、跳弾を当てるのは難しいと思いますわ。」
「そこでゲシュマイディッヒ・パンツァーのプログラムを最適化した。合計の展開範囲は狭いが、ビームの飽和攻撃が飛んで来ない限りは大丈夫だ。」
「最適化するとどうなりますの?」
「湾曲をコントロールできる。前の無人機騒ぎで大分曲がっていたが、それをより精密に……まぁ自分の頭にあるイメージとはズレちまうが、それをISはフィードバックしてくれるだろ?後は慣れだな。」
「慣れ……」
「オルコットもBT兵器を動かしながら戦うのがまだ不十分なんだろ?それに、フレキシブルショットに必要なイメージもそれなりにつく。原理こそ違えど、結果は同じだ。」
「……それへの慣れ、ですか。」
「ビームが曲がることへ、な。実際だと味方はより見なくてはならない……ので!こんなものを用意してみた。」
「また何か開発してらしたのですか!?ペース早過ぎですわ!」
「湧いてくるインスピレーションが悪い!」
「はぁ……それで、その背中に付いているものは何なのですか?見慣れないものですが……」
ミサイルユニットに接続されているものが、一体何なのかと説明を求めてきたオルコットに対して俺は意気揚々と説明する。
「コイツは“ミラージュコロイド粒子”の散布装置だ。粒子自体は前々から使ってるやつだな。ビームに干渉するのもコイツの性質だ。電磁波を偏向させる効果を持つ上に、粒子そのものが電磁場や量子情報を電場する伝導体……つっても分かりづらいだろうから、光のベクトルを曲げたり、ジャミングに使ったりと便利な粒子だ。」
「……貴方が見つけたのですか?」
「親父だな。でも見つけた直後に母さん共々事故で死んだ。」
「それは……」
「ま、親父の研究を引き継いだと思ってくれ。基礎理論は親父、発展は俺。んでオルコット。今回やって欲しいことは二つ。敵機の射撃、ランダムに俺に射撃。ただ俺に射撃する時は合図。チームの回線でFF……モールスで良いか。・・-・|・・-・を2秒前に発信。」
「待ってくださいまし!?今の話からいきなり戻られてもついていけませんわ!?」
「……そうは言われてもなぁ。死んじまったもんは仕方ないし、もう棺桶にも入ってんだ。死んだ日に献花も行ってるし、それ以上に何が出来る?」
ま、親父が居たわけでフォビドゥンが完成してるんだ。育ててくれたことにも研究の基礎を作ってくれたことにも感謝してる。親が居ないとは言っても、別にそれで何か不自由かと言われればそうでもない。
人の心とか無いんか?とか言われそうだが、フォビドゥンが全部持っていっちまってる。むしろ研究者への手向けとしてこの上ないと思うんだが……
「つーかさっきの話聞いてたよな?当日連携出来ませんでした、じゃデータにもならん。とりあえず一回練習してみようぜ。」
「……そうですわね。」
「あっ、そうだ。この“ミラージュコロイド”で簡易的にだが分身も作れる。よく見りゃまぁ分かるだろうし、俺が当たり屋するから大丈夫だが、変な方に撃つなよ?」
「まだ機能が隠されてますのね……何なんですの貴方……」
まぁ他人のレーザーを狙った通りに湾曲させるのは基本機能だから特に問題なく終わった。
次に実装する兵装は……ガンダム作品でも見ないものになる。インスピレーション自体は別の作品から来ているし、名前もピッタリ。
が、そりゃ難しい。何せミラージュコロイドを使っても再現が出来ない。
「……俺流の“ヴォーテクス”。臨海学校までに作り終えられるかねぇ。」
無論プランはある。実現も技術的に可能。後は、俺の技術者としての腕が試される。
「実弾もビームも反射……それでこそ最強だ。後はパワーエクステンダーの搭載……やる事が多くて楽しくなってきたな!」