ゲシュパンとTP装甲だ、便利なものだろう? 作:QAAM_M1911
タッグマッチ開催日。俺とオルコットはゲシュパンを利用した跳弾の作戦を練習した……と思いきや、最初の一回しか許可が降りなかった。まぁ、織斑先生の二度はないという形相からもさらに押すのはやめておいた方がいいと思ったわけで。
その後はひたすら改修。オリジンとブルー共通で、パワーエクステンダーの搭載を目指していた。勿論今までの機体のバッテリーの性能が悪いというわけではない。が、結局そこは門外漢。ある程度まで許容できたが、エクツァーンとフレスベルグ、TP装甲にゲシュマイディッヒ・パンツァーの電力ドカ食い4兄弟を搭載した状態でもキツいので、今後更に機構を搭載するとなると電力不足は必須。
と言うことで。パワーエクステンダー……に似た技術を注文した。何言ってんの?と思うかもしれないが、結局内部機構に使用されている電子部品の殆どが一般に流通しているもの。何なら現状のバッテリーなんて、ポータブル電源の中身を並列に繋ぎまくってどうにか動かしている始末なのだ。
つまり、専門家に頼った方が早いってわけ。これ自体はもうアインの時から見えていた問題なので、先方にはとっくに打診済み。3か月弱で搭載可能になった。勿論今後の改良でより良い製品が出来たら導入する契約も取り付けてある。その見返りは実使用データの提出。ISにはほとんど使用されていない技術なのだが、IS以上に電力を食うものもそうそうないわけであり……今後の業界を牽引してくれるものだろう。
「……で、次の試合まで待機ですか。そうですか。」
「今は一夏さんとデュノアさん、箒さんとボーデヴィッヒさんのマッチですわね。」
「男性搭乗者2名と剣道有段者、現役軍人の戦いとは、面白いこともあるもんだ。」
「……箒さんの名前で篠ノ之博士の名前を出さないのは珍しいですわね。」
「何が?いくら偉い人、凄い人の血縁者だろうと本人が努力した方を讃えたほうが嬉しいもんだろ?」
「人の心があるのかないのか……私アンタのことが本当に分からなくなってきたわ。」
ちゃっかり鳳まで一緒に観戦しているのだが……鳳は誰と組んだんだろうか。まぁ当たった時に見ればいい。とりあえずまだここの連中の出番は先みたいだ。
「……イグニッションブーストで突撃。分かりやすい攻撃ね。」
「だが、それに対応しなくてはフォビドゥン以外だと簡単にやられる。」
「そう考えると貴方の機体無法すぎません?」
「無法で結構。だから“禁忌”なんだよ。」
零落白夜による一撃必殺の決着を狙う……が、それをAICによって阻まれる。そこをデュノアが援護してそこを篠ノ之が狩りに行く乱戦状態。
「……予言いいか?これデュノアが篠ノ之を手早く落としてパイルバンカーを死角からぶち込むゲームになる。」
「でしょうね。でもあの軍人娘が見落とす訳なくない?」
「いえ……一夏さんがどれだけヘイトを稼ぐかにかかってます。それまでに撃墜されてはダメですし、逆に箒さんの撃墜を長引かせてはその可能性がどんどん薄くなっていきます。」
「俺ならニーズヘグをぶん投げた後、バックパックを量子変換して挑発するが。」
「アンタ馬鹿なの?」
「頭に血が上ったところをニーズヘグのBTで斬った後、パイルバンカーだけ展開して必殺かな。」
「なんか出来そうなのが嫌だわ。」
そんな会話をしていると、盤面に大きな変化が起きた。ボーデヴィッヒの武装……ワイヤーブレードか。あれで箒の乗る打鉄を放り投げた。
「フレンドリーファイア!?正気ですか!?」
「……アンタたちが言えたことじゃなくない?」
「それが戦法だから良いんだ。無能な味方ほど怖いものはない……が、真に怖いのは自分が無能だと自覚していないバカだ。」
「しかもやたら強い……けど、あまりにも無謀だわ。どっかで零落白夜かパイルバンカーが刺さるわね。」
「いくら軍人であろうとも、一度見失ったものを見つけ出すのは厳しい。しかも、目の前に致死毒を持つ蜂が飛んでいるのであればなおさらだ。」
そうしていくうちに、シュヴァルツェア・レーゲンの機体にパイルバンカーが突き刺さった……と同時に、機体が変形していく。知らないよ、あんな武器!なんて言ってないで対処だ。
「……只事じゃなさそうだな。避難準備!先生の指示が下った後直ぐに出られるように準備しろ!」
「あれ!昔の千冬さんだわ!」
「さしずめ“女騎士の幻影”ってか。幻影を追い求めてりゃ良いってもんじゃないんだがな。」
「とりあえず私は1組に戻って混乱を鎮めてきますわ!」
「怪我せずさせずだ!気を付けろ!」
オルコットの後ろ姿を見ずに2組の点呼を開始する……が、アリーナでは動き。織斑があの幻影に突っ込んでいきやがった。
「Idiot!鳳、ここ頼む!」
「何しに行くのよ!」
「幻影には幻影だ!」
「また何か積みやがったわね!?」
フォビドゥンを使ってアリーナのSEを潜り抜ける。え?何で出来るかって?これもゲシュマイディッヒ・パンツァーのちょっとした応用だ。
アリーナには部分展開しか出来ていない白式とラファールの改造機。そしてあの幻影。白式を執拗に狙う幻影の前に割り込んで防御。
「何してやがる!」
「零落白夜に使うエネルギーが必要!僕のラファールからバイパスさせる!」
「時間稼ぎなら大得意だ!下がってろ!」
とは言え、相手は唯一有効打を持つブレード。TP装甲である程度軽減は出来るが、条約違反と思える相手にどこまで通用するか。何合も打ち合われてはさすがに強度が持たないだろう。
なら。何をするか?
「“ホログラム”だ!」
ミラージュコロイドによる幻影を長く続かせる特殊武装。デスティニーのヴォワチュール・リュミエールは使用していないが、また別方向からアプローチしてみた。
これはISのハイパーセンサーにも干渉するものであるため、今ISに支配されているであろうコイツには効果覿面。しかも!
「まだ喰い足りないだろ!?“ホログラム・ノヴァ”だ!」
3方向……いや4方向からの強襲。その全てを切り伏せた泥人形だが……これこそが一番の狙い。
「本体が見えない想定はしていなかったみてぇだな!」
バックパックを自立稼働させて、ミラージュコロイドによるクローキングを行ったラファールでの組みつき。ご丁寧にバックパックにはホログラム。ニーズヘグでブレードを持つ腕を弾き飛ばしてそのまま背後に回り込む。
「決めろ!」
「うおおお!!!」
零落白夜の一撃が泥人形を切り裂く。内部からは銀髪のマリオネットがゆっくりと倒れこんでいく。それを抱き止める織斑君だが、俺はそれよりも……
「……このオンボロはどうしてくれようか。」
とりあえずこのまま何があったか解析を始めてしまおう。ISコアまではいかないだろうが、レーゲンの内部……カーネルレベルで仕込まれていたものだと断定する。現状機能停止しているとは言え、どこまでセキュリティが掛かっているか……
と思ったが、内部のセキュリティがダウンしている。例のシステムが機能停止した結果、セキュリティホールがでっかく空いた感じなんだろう。もしくは、あの博士がやったか。まぁ後者については考えるだけ無駄なのでとにかく情報を集める。
「何か見つかったか?」
「とりあえずISの起動を封じた程度です。後はお任せします。」
「お前はやらないのか?」
「止められますからね。何より俺はさっきのシステムについては全く知識がない……織斑先生。あなたならよーくご存知だと思いますし。あと単純に興味がない。」
「そうか。なら戻れ。2組の点呼もあるだろう。」
「まだ幾つかお小言あるかと思ってましたが。」
「アリーナのシールドを突っ切ったことか。シールドを破損させたなら始末書だが、どういうわけかそうはなっていなかった。後で原理を記したレポートを提出しろ、それで今回は不問とする。」
「イエスマム。」
……気づいたが、織斑先生はゲシュマイディッヒ・パンツァーに対してのレポートを頻繁に提出させている。まぁ未知の技術だからそりゃそうだが、何をしたか、害がないかくらいは認識をしておきたい……という感じだろう。
「あぁ先生。レポートですが私が公開するまでコンピュータに転写するのは禁止です。コピーもね。どこから情報が漏れるか分かりませんからね。」
「良いだろう。お前が開発したものだ、尊重しよう。」
口約束ではあるが、言質はとれた。これで大丈夫だと思いたいが、念には念を入れてある。コピー機やカメラでフラッシュを焚かれたら全部黒塗りになるようにしてある。漏洩のリスクは原本を見られるか、それとも人が覚えるかくらい。
「ならこちらも一つお願いが。あのシステムについて、概要だけ教えてください。」
「とは言っても、概ね予測はついているのだろう?」
「昔のあなたを再現する……程度です。トリガーは分かりませんが、織斑君とデュノア君に負けたからですかね?」
「あのシステムは……ヴァルキリートレースシステムと言う。内容もほぼ貴様の推測で合っている。」
「……なぜそんなモン積んでるのか分かりませんね。強さは、センサーによる反応速度だけで完成されるものではない。経験や慣れ、そして戦いに対する嗅覚と貪欲さ。それらを以って完成されたもの。人のセンスは唯一無二、それを分からないんですかね?」
「随分と言うな。」
「つい先日、無人機と交戦した経験があるもので。」
「反省文を今からでも書くか?」
「遠慮させていただきます。では。」
そのまま2組へと帰り、全員の無事を確認した。鳳に色々ドヤされたが、甘んじてそれを受け入れることにした。あそこは割と適当に突っ走ったからな。
つーかセシリアとの連携披露せずに終わったわ。トラブル続きじゃねーかクソ!一体何があったか教えて頂戴!ダメ!?今年は厄年だわ!
「……ロック解除します。」
「しかし強固なロックだ。コンピュータウィルスとして使えそうだ。」
「ラーベ君、色んな分野に秀でてますね。」
「とは言っても、この前はバッテリー問題を解決出来ずに外部を頼っていたがな。」
「……おかしくないですか?ISは基本的にバッテリーを使用しません。アーク放電とかをするなら別ですが……」
「これを見てくれ、山田先生。」
今まで提出させた、フォビドゥンのレポートだ。幾度とない始末書の末にレポートを提出させ、組み上げた全貌が窺い知れるものだ。山田教諭はかなり柔らかい印象の女性ではあるが、パイロットとしての腕も確か。レポートを流し読みして大方を理解する。まぁ、技術的なところまでは織斑教諭も山田教諭も理解は出来ていないが。
「演算機能以外ではISの機能を必要としない、追加特殊兵装……」
「しかも演算機能はISのものがあるから頼っているだけで、最新のパソコンなら市販のものでも十分可能な程度。分かるか?」
「……通常兵器が、ISの攻撃でも破壊されなくなる?」
「勿論機動性であれば優位には立てる。だが、この技術が流出すれば非常に危険だ。」
「ラーベ君に警告はされたんですか?」
「本人も分かっている。むしろ流出しないように私が警告されたさ。」
「なら良いんですが……」
「むしろ本人ではなく、外部からの攻撃に気を配るべきだ。この資料はデータ化するなよ。」
「分かりました。」
織斑教諭は1人の天災を脳裏に思い浮かべた。彼女ならこの技術も使えるのだろうか。使えたとするなら、この技術を世界に広めるのか。ラーベに興味を示すのだろうか。それは分からない。ただ、波風立ったら対処するのみだ。
「この学年は大変だな。」
「全くですね……」
VTシステムの解析と共に、ドイツへの事情聴取。ラウラの回復後のサポートまでする必要がある。まだまだ忙しくなりそうだ。