学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD ―Re:Build― 作:UG-san
幕間二 拝啓、鉄庫より
——この状況、どうすれば良いんだYO!
俺? 田丸ヒロシっていうんだ。
仕事? してないよ。自由人ってやつだな。
現在地?ロッカーの中だよ馬鹿野郎!
ここに閉じ込められてはや数時間。
捻った足も痛ぇし……
全く、どうしてこんな事になってるのかって言うとだな……
あの日は、モデルガンの新作を買いにモールの模型屋に行ってたんだ。
平日の昼間だろって?
やかましいなっ!
俺だってバイトぐらいしてるんだよ!
オフの日にどこに行ったって俺の勝手だろ?
まあ、そんなわけで新作を手に入れて満足していたところだったんだがな。
そこにあのゾンビどもがやってきたってわけさ。
——”奴ら”って呼んでたな。あの高校生たちは。
とにかく、幸いなことにモールに現れた奴らは少数だったんだ。
平日の昼間で、まだ客が少なかったことも良かった。
客の大半が外に逃げ出したことも重なったからだろうな。
そこに居合わせた婦警さんたちがうまいことやって、モールの中は、まあ平和だったって訳さ!
しかもスーパーもあるから食料が大量。立てこもれば何ヶ月だっていられると思ったね。
結果的に全部で10人足らずだったかな。モール内に残ったのは。
婦警さんたちは最初は無線で本部とやり取りをしてたんだ。
聞こえてくるところによると、奴らは市内全域に出現してたみたいでな。
で、無線からは段々とサイレンや発砲音、はたまた悲鳴なんかが聞こえてきてな。
最終的には無線が繋がらなくなって、ベテランの方の婦警さんが本署へ助けを呼びに出てったってわけだ。
——その婦警さん、まだ戻ってきてないんだけどな。
そのまま夜を迎えて、みんなで雑魚寝してな。
異変があったのは翌日さ。
昼過ぎにいきなり電気が切れて大混乱さ。
頼みの綱の食料も、冷蔵庫や冷凍庫が止まってさ。
それでも、大量の食料と安全な場所がそこにはあったんだ。
ずっとタバコを吸ってるジイサンや、やかましいおばさん。
バーコードのサラリーマンにゴツい兄さん。
危ない雰囲気のフリーター……俺じゃないぞ!
偶然居合わせたいろんな奴らが、その場所を共有して、救助が来るのを待ってたんだ。
——で、そこに来たのがあの高校生たちさ。
跋扈する奴らの中を掻い潜ってきたのはなんとJKたち! まあ、男もいたけど。
しかも小学生ぐらいの子供連れでな。
さらにはエロい先生!
レベルの高い面々が、モール内に転がり込んできたんだ。
で、もう一晩明けたらさらに男女の高校生が一組。
女子の方はポン刀持ちだってんだから、恐ろしい世の中になったもんさ。
トラブルもあったのよ。
ゴツい兄さんがエロい先生に迫ったり、それを高校生が特殊部隊みたいにワイヤーで制圧したりさ。あれはシビレたな。
さらに、避難してた婆さんが持病のなんかで体調崩してさ。
で、すったもんだあって、この診療所に輸血?血漿?を探しに来たってわけさ。
メンツは俺と婦警さんの若い方、それに高校生(男子)二人。
なんで俺も来たのかって?
高校生にも聞かれたよ。その質問。
——そういえば、なんでかな?
それにしても、ずるいよな。
高校生たち、モノホンの銃もってやがったんだ。
しかも猟銃とかじゃなくてガチガチの軍用銃を。
俺の得物なんてさすまたに千枚通しをつけたさすまた(改)だぜ?
診療所は最初、無人だと思ったんだ。
人の気配も、物音もしなくてさ。
でも、やっぱり大量の奴らがいたんだ。
なんとか必要なものは集めたけど、奴らの数が多すぎてな。
ドアから窓から奴らに囲まれて、一巻の終わりってやつ?
で、高校生が機転を利かせてショットガンを天井にぶっ放してさ。
部屋のド真ん中に机を重ねて、ぶち抜いた天井から2階に避難しようとしたんだ。
高校生、婦警さんの順に上に上がって、残りはもう一人の高校生と俺。
そこで、何を思ったんだろうな。
「兄ちゃん!先に上がれ!」
なんて言っちゃった訳よ。
きっとあれだな、カッコつけたかったんだと思うよ、俺は。
で、最後に残った俺が登ろうとした時だよ。
——足場崩れて、落ちちゃったんだよ、床に。
ツイてないって思う前に、「ここでかよ!」って感じたね。
しかも落ちた拍子に足捻ったみたいでさ。……イテテ。
咄嗟に足引きずりながらこのロッカーに駆け込んだのさ。
あいつらは上から声かけてくれたけど、ロッカーの中からは見えない。
脱出が容易じゃないのはすぐ分かったね、
そのとき考えたのよ。
モールには薬?を待ってるばあさんがいる。
だから、ここで時間を潰すわけにはいけないって思ったんだ。
俺はそこで言ってやったわけよ。
「俺はもうダメだ!お前ら行け!」
ってさ。
で、あいつらは薬持って一足先にモールに帰ってった。
それが2時間前の話。
あいつら、一向に助けに戻ってこないなって思ってるんだけどさ。
流石に薬を届けたあと、誰か助けに戻ってきてくれるだろ?
——いや……あれ……?
あの時の俺、何て言った?
床に落ちた時、
「痛ってぇ!」
って言った。続けて、
「俺はもうダメだ!お前ら行け!」
って。
——もしかして俺、噛まれたと思われてる?
誰も助けに……来ないってことか?
さすまた(改)は……机から落ちた拍子にその辺に転がしたな、多分。
ロッカーの薄い鉄板越しでも、奴らの声は聞こえる。
「う゛……」
「あ゛……」
何体いるのかなんて、数える気にもならない。
逆に、こっちが音を出せば連中にも聞こえるってことだ。
動けない。
咳もできない。
助けを呼ぶこともできない。
……足、痛ぇ。
——HA! HA! HA!
——俺、詰んだ?
あ……
遠くから、ヘリの音。
それに……腹に響くような射撃音?
——おいおい、まさかアパッチか?
ヘリが来てる。
それも、かなり近い。
——救助、来てるじゃね—か!
心なしか、ヘリの音の方に奴らが集まってるか?
周り、少し静かになった。
——おーい、俺はここにいるぞ—(小声)