―序幕―
迷宮近くに位置する1つの教会。
その扉を開けると、すぐ目の前に、大きな穴が開いている。
中は階段になっており、地下へと道が続いている。
階段を降りた先には、教会の扉と同じくらいのドアが待ち構える。
押し開くと、何とも言えない空気が、鼻に顔にと体中にまとわりつく。
ここは『島』唯一の蘇生所。
地下はダンジョンと繋がっており、
魂と肉体が繋がったままの死体が安置されている。
島主からの正式な依頼に則り、蘇生所の管理は行われている。
迷宮内で冒険者の死体を発見し、ここまで運んで来たものには報奨金が与えられる。
報奨金の支払いには審査があるが、俺はそこに関与していない。
俺の役目は、ただの蘇生所の受付だ。
―プロローグ―
最近、妙な死体が運び込まれてきた。
目立った外傷は無く、比較的きれいな死体だ。
しかし、その顔は皆一様に穏やかな笑みを浮かべている。
補助官と共に死体の詳細を確かめる。
「下層にいる魔物の仕業ではないですか?人魚やサキュバスに魅了されたとか」
「かもしれん。だが、こいつら揃いもそろって、下層まで潜れる実力者には見えんな」
「下層から上がってきた可能性は?」
「人魚は無いとして、サキュバスはあるかもな。元々人間を狙うことが多いやつだ」
「ですが、サキュバスに襲われたにもかかわらず、無傷で死亡というのは」
「ああ、もしかしたら新種の魔物かもしれん。どちらにせよ、被害が拡大すると危ないな」
数日後、派遣されてきた、ベテランの冒険者たちがダンジョンを巡回し始めた。
見回りや救助を専門にしている者たちだ。
一方、俺は別方向からの調査を命じられた。
死体を改めて調べて、そこから何か分かるか、とかいうそういった嫌な仕事を任されてしまった。
全くいい迷惑だ。
―開幕―
とにもかくにも、調査は始まった。
俺が取りうる選択肢は
①死体達を蘇生させる
②死体を念入りに調べる
といったところだ。
既に簡単な調査はしているが、
迷宮であがった死体は、時間を置くことで特有の変化を見せることがある。
これで何かヒントが得られるかもしれないのだ。
蘇生をすると、目撃者は1人増えるが物的証拠が1つ減るわけだ。
これで蘇生された者が何も覚えていないと、真実は遠ざかる。
ここは順当にやっておくか。
という事で、10名弱の笑う死体のうち、半数程を蘇生させた。
丁度当たりをつけた1人目が4人パーティだったので、その4名を蘇生させた。
ノームの魔法使いが1人に、トールマンが3人。
前衛らしき人が2名、弓を持った軽装のレンジャーのような役割と思われる人が1人。
いずれも男だ。