それぞれに事情を伺ってみた。
ヒントになりそうな点は以下の通りだ。
・地下3階あたりを探索していた。その先の記憶は無い
・変わった魔物がいた記憶はない
・自分も含め、笑っている事に関して思い当たることは無い
・たしかに、悪い感覚は無く、心地よさの余韻は残っている
大した情報にはならなかったか。
ちなみに発見された場所は、地下2階の野営地だ。
名前や今までの活動を確認しておく。
どこかで見た覚えはあったが、
彼らの実力は中堅クラス、実力派のパーティだ。
連絡先を聞いておき、一旦彼らを解放する。
後々、何か新し情報が聞けるかもしれない。
残りの調査に切り替えだ。
今度は死体だ。
死体のうち、2人コンビとみられる男女の二人を調べてみる。
ちなみに2人コンビは珍しい。
2人では。魔物に対しての純粋な戦闘力が足りない。
とはいえ、分け前も二等分で済む。
無理して深層を目指さず、低階層中心で活動するタイプも少なくない。
今回の2人は見覚えのある顔では無かった。
が、装備や格好からそれなりの実力者のようだ。
どちらも軽戦士といった感じだ。
こちらも地下2階エリアで発見された。
俺にとって死体を細かく見ることは日常茶飯事だ。
男でも女でも、何か変なところがあればたいていはすぐに気づく。
とはいえ、体自体にそんな異変はなさそうだ。
次は所持品だ。
薬草に、麻痺消し草、毒消し草に簡易的なピッキングツール。
あとは緊急信号を出してくれる魔法道具だ。
(これは自作するか得意先に頼めばとても安い。
新人がボッタクリにあう道具トップ候補)
男のバッグの奥を見ると、折りたたまれた紙がひっそりと入っていた。
地図のようだが、気になるのは、その状態だ。
紙は折り畳まれたまま乾き、折り目が固く貼り付いていた。
表面はくしゃくしゃに波打ち、所々に薄く黄ばみが浮かんでいる。
触れればパリッと音を立て、繊維の端がほろりと崩れる。
広げようとすれば、裂けて崩れそうだ。
おそらく、折りたたまれた状態のまま一度濡れて、そのまま乾いたのだろう。
死体は運ばれた時点では濡れておらず、他の荷物も濡れてはいなかったが、
この地図はその名残を残していた。
一応慎重に中を開いて確認してみると、
地下2階辺りの手書きのマッピング地図が中途半端にされていた。
一度水没くらいしないとこうはならない。
とすると、人魚に魅了され、何かのきっかけで襲われずには済んだがそのまま溺死?
それとも水は無関係?ますます訳が分からないな……。
派遣冒険者達は巡回中、他の笑死体が無いか調査をしたが、
新たに発見されることはなかった。
彼らは追加の調査や、新しい提案など気の利いたことをするわけもなく、
依頼通りの対応をこなし、また別の迷宮へと旅立っていった。
「ったく、ビジネスライクな奴は困るね。人の温かさってやつがねぇ」
「冷たい人間には慣れっこだろ?」
「死体の方がまだ生暖かいね」
軽口を交わしながら酒を交わしている相手はダンダン。
ハーフフットの冒険者だ。
この迷宮では古株で、金剥の一団にも所属していた。
「それでどうなってるんだ?調査の進捗は?」
「特に進展もないさ。新たな被害もないし、一旦このまま様子見だ」
「下層の魔物や新種の魔物が現れたなら脅威だが、まぁ今のところ何も無いしな」
それからしばらくの間、笑死体が現れることはなかった。
通常と異なった魔物の出現が起きたとすれば、
その目撃が出るはずだし、そうでなければ被害が続くのが普通だ。
平穏が違和感を育てていく。
俺はいつもの職務を果たしながらも、死体の笑い顔を頭にとどめていた。