男女比1:20の因習村に転生したけど、俺が生贄ってマジ?   作:飲酒村

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6話:2日目

 

「あんた、あの祠を壊したの!?」

「も、もう助かりませんよ……」

「あれ? 湖の祠を壊したのがもうバレた?」

 

 翌日。

 祠を壊して回ろうとする俺を待っていたのは、飛鳥と文香の熱いお出迎えだった。

 流石は神官。一応は、隠していたのだが、あっさりと気づいたか。

 

「神社に続いて祠まで……あんたの罰当たり行為だけで、辞書が作れそうだわ」

「祟りに遭いますよ…!」

「祟り? 勝負に勝てなきゃ余命1週間だから誤差だよ、誤差」

「だからって普通、祠を壊す!?」

 

 俺だって緊急時でなければ、こんな罰当たりなことはしない。

 だが、命がかかっているのだ。

 なりふり構ってなどいられない。

 

「あ! 後、今から村中の祠を壊していくから、今のうちに謝っておくわ。誠に申し訳ないことをします」

「謝罪の予約なんてするんじゃないわよ! バカ!!」

「痛ッ!? バカな、俺の守護霊が役に立たないだと?」

 

 ゴツンと飛鳥の拳が俺の頭に激突する。

 バカな……今の俺には守護神がついているというのに、貫通したというのか!? 

 

『貴様が悪いわ。こ奴らは何も間違っておらん』

「く! 裏切り者め…!」

 

 祠を壊した結果、俺に()いてくるようになった大蛇が隣でため息をついている。

 因みに、今の大蛇は紫の髪に赤い瞳の大人びた女性の姿を取っている。

 大蛇の姿では、デカすぎて俺と一緒に行動するのに不便だそうだ。

 

「そこに誰かいらっしゃるのですか…?」

「ああ、あそこの祠の大蛇……犀龍(さいりゅう)って奴だよ」

『ふん。今は神官ですら、我の姿を見ることが出来んのか』

 

 文香が不思議そうに、俺の隣を見つめる姿に大蛇、犀龍(さいりゅう)が鼻を鳴らす。

 名前に関しては、こいつ自身がそう呼べと指定して来たものだ。

 

「あんた、まさか竜神を神降ろししたの…?」

「まあ、取り憑いてるからそうなるのか? まあ、村の人間に手を出さないって約束だから、大丈夫だって。じゃ、俺は祠を壊しに行くから」

「あ! 待ちなさい──て、前に進めない!?」

 

 祠破壊RTAに挑みに行く俺を止めようとする、飛鳥だったが犀龍(さいりゅう)によってブロックされる。

 

「感謝するぜ、犀龍(さいりゅう)

『貴様に任せておいたら、いつまで経っても話が進まんからな』

「ツンデレ乙」

『意味は知らんが、馬鹿にされたことだけは分かるぞ? 食ろうてやろうか?』

「俺を食ったら腹を壊すぞ? 煮ても焼いても食えないってよく言われるからな」

 

 そうして、俺達は飛鳥と文香を残して、祠を探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

「これが祠か? なんというか……お地蔵さんじゃねぇか?」

 

 村の外れ。

 寺の墓地へと続く道と、村への道のちょうど境目。

 そこにポツンと佇む、2体のお地蔵さん。

 そして、地蔵を囲むように置かれた盛り塩。

 

『地蔵であり、道祖神(どうそしん)でもあるな』

道祖神(どうそしん)?」

『外からの厄から村を守る守り神だ。外来の敵を見張る存在だな……子どもと親しい神でもある』

 

 犀龍(さいりゅう)の言葉に、俺はまじまじと地蔵を見つめる。

 二対一組のお地蔵。

 仏教と神道がごちゃ混ぜになった結果、こんな形になったのだろうか。

 

「なるほど……で、これ本当に祠なのか?」

『そこに神が祀られていれば、それは祠だ。地蔵だろうが、何だろうが同じだ』

 

 本当に祠なのかと疑う俺に対して、犀龍(さいりゅう)の説明してくれる。

 そこに神が祀られていれば、何でも祠。

 日本らしい寛容さが溢れた理論だ。

 

「なるほどね……で、こいつは敵と味方、どっち側だと思う?」

『さあな。我にもそれは分からん。人間共は、神を敵味方関係なく祀る殊勝な存在だからな。我自身が、元はこの村にとっての敵なのは知っておろう?』

「うわ、すげー説得力。じゃあ、鬼が出るか蛇が出るか分からないわけだ」

『既に、蛇は出た後だがな』

 

 日本人の信仰の不思議な所は、自分にとって不利益な存在も祀るところだ。

 菅原道真さんとか、祟りを起こさなかったら絶対、祀られていないだろう。

 

「それにしても、お地蔵さんかぁ……人の形をしてるものを壊すのは、気が引けるなぁ」

『そう言いながら、平然と槌を振り上げているではないか。そもそも、祠の住人の目の前でぶち壊した人間が、今更何を言うのだ?』

「まあ、こっちも命がかかっているからな」

 

 小言を言われるが、スルーしつつお地蔵さんの首を狙う。

 良い子のみんなは絶対に真似しちゃだめだぞ? 

 

「せいッ!」

 

 ハンマーを横殴りに振り、お地蔵さんの首を叩きつける。

 1体目の首が落ちる。

 

「さらに、もう一発!」

 

 そして、すかさず2体目のお地蔵さんを狙う。

 こちらもあっさりと首が落ちる。

 経年劣化で脆くなっていたのだろうか? 

 

「ふぅー……これで破壊完了だな。何が起きるか」

 

 俺は壊したお地蔵さんを、じっと見下ろす。

 すると、雲が太陽を遮ったのか、足元が影に覆われる。

 

『ほお……そういう訳か』

「なんだ? 何か出たのか?」

(おもて)を上げよ。貴様のような童には、ちと苦しいかもしれんがな』

 

 犀龍(さいりゅう)の声に釣られて、顔を上げる。

 

「……足?」

 

 まず目に入ったのは、病的までに白い脚。

 更に顔を上げるが、まだ脚。

 のけぞるようにして、ようやく白いワンピースが見えて来る。

 

「うわ……手も長い……」

 

 そして、ほぼ直角に上を向いてようやく全容が掴める。

 足と同じく長い手。

 白い帽子とワンピースに生える長い黒髪。

 そう、俺が祠から解き放った者は──

 

『ぽぽぽ』

「八尺様かよ…!」

『手長・足長め。憎き神の眷属が!』

 

 

 八尺様(?)だった。

 

「は? どう見ても八尺様だろ? ぽぽぽって言ってるし」

『貴様は何を言っているのだ? どこをどう見たら、あれが八尺(240㎝)に見えるのだ?』

「確かに……俺の倍じゃ説明できない背丈だな」

 

(八尺にしては)デカすぎんだろ……。

 犀龍(さいりゅう)の言葉に、確かにと俺は頷く。

 見た目は八尺様だが、そのスケールが違い過ぎる。

 

「で? さっき言った手長・足長って何?」

『憎き神の眷属だ。その名の通り、手の長い神と、足の長い神の夫婦だ』

「なるほど……でも、手も足も両方長くない? そもそも、1人だけだし」

 

 犀龍(さいりゅう)が夫婦の神だと言うが、どう見ても1人である。

 そして、手足のどちらかだけが長いわけでもない。

 両方が長い。まさに、フュージョンをしたといった感じだ。

 

『さあな。我の知ったことではないが……大方、1つの祠として祀られていった結果、変質していったのだろう』

「なるほど……分からないってことだな!」

 

 なんか良く分からないけど、巨女が生まれた。

 取り敢えずは、そう思っておくことにする。

 

『さて、これからどうする、八代? 我としては打ち倒したくて仕方がないのだが……一応は貴様の顔を立ててやろう』

『ぽぽぽ!』

 

 犀龍(さいりゅう)の姿を見て、明らかに警戒した声を出す、手長・足長…めんどいので八尺様と呼ぶことにする。

 お互いに、やり合った記憶でも思い出しているのだろうか。

 

「そんなの……まずは交渉だ! 寝返りのお願いをする!!」

『無駄だと思うがな。まあ、好きにするがいい』

 

 しかし、犀龍(さいりゅう)には悪いが、俺の目標の1つは戦力増強でもある。

 戦うのは後でも出来るので、まずは交渉から入らせてもらう。

 

「こんにちは! 俺は上澤野(かむさわの)八代(やしろ)。お前の名前は?」

『ぽ?』

「えー……自己紹介したんだけど、聞こえてる?」

『ぽぽ』

「聞こえてはいるんだな、出来たら名前を知りたい」

『ぽぽぽーぽぽ、ぽーぽぽ』

「何言ってるか分かんねぇ!」

 

 ちくしょう。

 八尺様がぽぽぽとしか言ってくれない。

 おじいさんの声真似とか出来るレベルで、ちゃんとした声帯を持っているんじゃなかったのか? 

 あれか? 反逆者とは会話する気も無いってか。

 

『ぽぽぽ!』

「な、なんだ!? いいのか! 俺は器だぞ!? 俺を殺したら、お前の主が困るんだぞ!」

『お前のその、すぐに生贄であることを人質にする戦法はどこで覚えたのだ?』

 

 グッと背中を丸めて、上から俺の顔を見下ろしてくる八尺様。

 まるで、俺のことを品定めしているような瞳だ。

 まずい……会話が出来ないと、俺はただの子供でしかない。

 万事休すだ。

 

『ぽ///』

「ぽ?」

 

 だが、何か分からないが八尺様は頬を赤くする。

 そして、どういう訳か俺をスルーして、犀龍(さいりゅう)の方を睨む。

 

『まあ、そうなるか』

「な、何が起こったんだ?」

『簡単な話だ。我が敵。お前は守るべき子供と判断したのだろう』

「まさか……」

 

 子どもと親しい神でもある。

 犀龍(さいりゅう)の言葉を思い出す。

 道祖神と祀られていたこと、そして八尺様特有のショタコン要素。

 それが結びついた結果、俺を守ろうとしてくれてるのかもしれない。

 

『ぽぽぽ!』

『やるか? いいだろう、あの神との再戦の前の良い肩慣らしだ』

 

 威嚇するような声を出す、八尺様。

 女性の姿から、巨大な大蛇の姿へと戻っていく、犀龍(さいりゅう)

 巨人VS大蛇の怪獣大決戦が今始まろうとしていた。

 

「待て待て待てッ!」

『ぽ?』

『何だ、八代。我の邪魔をするのか』

 

 しかし、俺はそこに待ったをかける。

 子供の味方ならば、何とか八尺様を味方に引き込めないだろうか? 

 子供を守るのならば、俺の目的と一致するはずだ。

 

「八尺様? 俺はこのままだと金髪の神様に殺されて、器になるけど、それでいいのか!? お前は子供を守る神様じゃないのか!」

『ぽぽ……』

 

 少し考えこむ仕草を見せる、八尺様。

 ひょっとすると、自分の立場と使命の間で揺れ動いてくれているのかもしれない。

 そう、思っていたのだが。

 

「わわッ!? 何で、俺を掴むんだ!?」

『ぽぽ!』

『全く、言わんことない……手長足長は、邪神の類だ。何故その手足が長いか知っておるか? 山を行く旅人や、海を行く船を襲い──』

 

 八尺様は俺を指で摘まみ上げて、巨大な胸の谷間が見える位置、つまり口の前まで持ち上げる。

 そして、淫靡な唇を舐めて、準備をする。

 俺を──

 

 

『──食べるためにだ』

 

 

 ──食べる準備を。

 

「子供を守る神様じゃなかったのかよ!? さっきは守ろうとしてくれたのに!」

『子供好きなのは事実だ。まあ、どういう意味で好きなのかは……今のお前が一番良く分かっているだろう?』

「メインディッシュ扱いされただけかよ!?」

 

 悲報。

 八尺様が味方と思ったら、異常性癖者だった件。

 

「というか、さっきも言ったけど俺を殺したら、生贄が居なくなるんだぞ!?」

『ぽぽぽ』

『味見をするだけだそうだ。なに、神の腹の中なら、後6日ぐらいは生きていられるだろう』

「お前も解説してないで、助けてくれよ!?」

『待てと言ったのは貴様だろう? 生意気なガキにはいい薬だ』

 

 さっきまでやる気満々だったのに、今はあっさりと観戦モードに入っている、犀龍(さいりゅう)

 まるで、生意気なガキの躾にはちょうどいいと言った感じだ。

 この野郎、現代ならハラスメントで一発アウトだぞ、クソ! 

 

「八尺…いや! 手長・足長様! 今の俺は汚いぞ!? なにせ、武器としてクソ爆弾を持っているからな!!」

『ぽぽぽ』

『丸飲みしようとしている奴が、その程度のことを気にすると思うか? 内臓を一々洗うのは人間ぐらいなものだ』

 

 クソをぶつけるぞと言ってみるが、無反応。

 丸飲みするのだから、そりゃ腸ごと食うのでクソ爆弾なんて誤差なのだろう。

 

「や、やめろー!!」

『ぽぽ///』

 

 そうして俺は──

 

 

『少しは、我々がなんたるかを知るのだな、八代』

 

 

 ──八尺様のねっとりとした口の中に、飲み込まれていったのだった。

 




次回、一寸法師。
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