【Re:】ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー【make】 作:やーなん
『今回のターゲットは、愚連隊上がりのマフィア集団。“レッドファング”の壊滅だ』
錆付き、色褪せたかつての鉄道網を、線路に沿うようにレイジとカネシロの二人はバイクで走る。
その間に、シマからブリーフィングが行われる。
『ボスのダリオは今でこそ富裕層向けの高級オーガニックレストランのオーナーを気取ってるが、所詮暴力で前のオーナーを追い出したに過ぎない。
依頼主からは、マフィア同士の抗争に見せかけて欲しいとのことだ。
ただし、これは依頼主からの摘発のきっかけを作る為の口実だ。俺達の仕事が公的な記録に残る。殺しは無し、だ』
『いかにも元半グレ集団が大人になりまちたよぉ、って経歴だね』
淡々と仕事内容を読み上げるシマに対し、リーベの評価は失笑に満ちていた。
『レイジ、分かってると思うが……』
『ああ。みんなには迷惑を掛けない』
『なら良い』
シマの念押しに、レイジは通信で応じた。
だが、シマは更に続けてこう言った。
『レイジ。ローティが見ているぞ』
『……俺はそこまで信用が無いのか?』
『俺達は長い付き合いだからな』
代わりに、カネシロが応じた。
線路沿いをバイクで並走する彼を、レイジは睨むように視線を向ける。
彼らはよくレイジを理解していた。
彼の本質、その怒りを。
『俺達はビジネスをしている。各々それを忘れるな』
シマは最後にそう付け加えた。
それは、所詮はみ出し者の集まりである彼らを、社会に縛り付ける為の言葉でもあった。
§§§
『連中の店の経営用のPCから情報を頂いたよーん。
あいつら、店の元地下駐車場を改造して物理ドラッグの精製・栽培プラントにしてるみたい』
『せめて裏帳簿用のスタンドアローンのPCを用意するとか、その程度の知能も知識も無いのか……』
『所詮、その程度の連中ってことでしょ』
『大学生がマンションの自宅で栽培している大麻と同レベルだな……』
あまりにも杜撰な経営体制に、几帳面なシマが嘆いた。
ハッキング担当のリーベとしても、監視カメラの映像を繋ぎ合わせて物理ドラッグのプラントを探す手間が省けて、拍子抜けだった。
『……現場に到着した』
通信を切り、レイジとカネシロはエンジンを切り、旧渋谷地区の目的地の裏路地にバイクを停めた。
表通りへと視線を向けると、そこにはターゲットであるダリオが経営する高級オーガニックレストラン『グリーン・オアシス』が建っていた。
かつてのコンクリートの廃墟をリノベーションした造りで、外壁には一面に人工のツタが這わせられている。ガラス張りのテラス席は間接照明で上品にライトアップされ、“自然”と“健康”を売り物にした清潔感を放っていた。
店の前には高級なエアカーが数台停まっており、ドレスアップした富裕層の客たちが談笑しながら吸い込まれていく。
この小綺麗な表の顔の真下で、彼ら自身が吸い込むための粗悪な物理ドラッグが栽培されているのだから、質の悪い冗談だった。
「俺は裏口から行く、レイジは正面から殴り込め」
「ああ」
カネシロの指示に、レイジは頷いた。
要するに、正面から殴り込んでひと暴れし、客を逃がせという彼なりの気遣いだった。
「さて、裏口のロックはもう開いてるんだろうな」
『当然。ハッキング完了、いつでも入れるよ。一応、警備システムも落としておいたけど』
「まあ、連中が使うことは無いだろうな」
インカムから聞こえるリーベとの軽い声に頷き、カネシロは暗がりを抜け、レストランの勝手口へと歩を進めた。
「じゃあ、こっちは派手にやるか」
レイジはヘルメットを被ったまま、自動ドアを蹴り破って正面からレストランに入り、大口径の自動拳銃で天井に向けて一発ぶっ放した。
けたたましい銃声と共に石膏の粉が降り注ぎ、即座にマフィアと無関係な店員や客たちが悲鳴を上げる。
「レッドファングのクソガキども出てこいや!!
客共は邪魔やッ、流れ弾当たりたくなかったらさっさと出てけや!!」
フルフェイスのヘルメット越しに、わざと下品なスラムの訛りを全開にして怒鳴りつける。
客たちは一瞬、何が起きたのか分からない様子だったが、すぐに“自分達は撃たれない”と理解すると、我先にと入り口に殺到し、レイジの脇をすり抜けて外へと逃げ出していった。
それを見届け、レイジはヘルメットの中で少しだけ安堵の息を吐いた。
この富裕層向けの住宅街は、下品なネオン街が当たり前になったこの時代に取り残されたように、まるで百年前の核戦争前の非スマート化社会の趣が感じられるものだった。
それは勿論、かつて日本に存在した電柱の電線が見えるか、見えないかの違いに過ぎない。見た目は古き良き街並みでも、実際は最新技術のインフラによって管理された最新鋭の街並みだ。
それでもレイジはこのノスタルジックな雰囲気が好きだった。
それを三流の半グレ崩れのマフィアに穢されたことが、忌々しくて仕方がなかった。
そして、客と入れ替わるように『スタッフオンリー』のドアから武装したマフィアがぞろぞろと出て来た。
数は三人。レイジを見るなり撃って来た。
だが、レイジの網膜デバイスに映る弾道予測を見るまでもなく、彼はすぐにこう断じた。
相手はフルオートのアサルトライフルで武装しているが、まともな軍事訓練を受けていない、ただ弾をばら撒くだけの素人集団だ、と。
所詮、愚連隊を気取っていても、自分より弱い市民しか相手にしたことが無い連中だ。
自分達で血の滲むような努力をして強さを手にしたわけでもないのに、適当な射撃補助用のインプラントを入れて、銃の暴威によって増長しているだけの雑魚ども。
レイジは手前にあった手頃な丸テーブルを、彼らの方に蹴りつけた。
瞬く間に木製のテーブルはハチの巣になるが、それだけの隙でレイジには十分だった。
銃弾の雨を掻いくぐり、レイジは姿勢を極限まで低くしてマフィア崩れどもに肉薄していた。
「なッ、てめッ」
「ガキどもには過ぎた玩具だ」
間近で見る彼らは、ライフルの重量と反動に完全に振り回されていた。おまけに、指を引き金にかけっぱなしにしたせいで、一度の銃撃で弾倉を撃ち尽くしている。
まともな訓練を受けていれば、絶対にあり得ない素人丸出しの行動だ。
ぱん、ぱん、ぱん、と無駄のない最小限の動作で、レイジは一発ずつ連中の膝や靴に向けて四五口径の弾丸を浴びせた。
それだけで、マフィア達は激痛に悶え、無様に床へと転がった。
レイジは足で彼らのアサルトライフルを蹴っ飛ばして遠ざけ、懐にサイドアームを隠し持っていないか、何度も念入りに踏みつけるようにして確認する。
痛みに苦しむマフィア崩れが汚い恨み言を吐くが、無造作に傷口を踏み躙ってやれば、それもたちまち情けない悲鳴に変わった。
「こちらレイジ、レストラン正面、クリア」
『了解。地下工場も異変を察知したみたい。全員武装して出てくるよ』
「わかった。カネシロと合流して対処する」
リーベの的確なオペレーションを受け、レイジは事務所の扉を開けてバックヤードの奥へ向かう。
丁度、裏口側のドアが開き、ヘルメットを被ったカネシロと合流した。彼の背後にも、既に数人のマフィアが気絶して転がっている。
レイジは網膜に投射された建物の3Dマップを確認し、彼と視線を交わす。
二人はアイコンタクトだけで所定の位置——エレベーターホールの死角——へと着いた。
「くそッ、襲撃だと!?」
「一体どこの──」
連中が、地下工場から上がってきた貨物用エレベーターから飛び出して来た瞬間だった。
中に居た五人に、左右の死角からレイジとカネシロは同時に襲い掛かった。
制圧まで、五秒も掛からなかった。
血まみれになってエレベーターから蹴り出された五人と入れ変わるように、二人が悠然と箱の中へと入る。
『アテンションプリーズ。地下へ参りまーす』
この場に居るはずのないインカム越しのエレベーターガールの明るい案内を受け、彼らは操作パネルに触れることすらなく地下へと赴いた。
チン、と軽い音が鳴り、エレベーターの扉が開く。
そこには、これから上の階へ向かおうとしていたマフィア崩れが四人。突如現れた黒づくめのレイジとカネシロを見て、完全に呆気にとられていた。
今しがた上がったばかりの仲間の援軍に向かうつもりだったのだろう。エレベーターの中は空っぽだと思い込み、完全に油断しきっている様子だった。
彼らの銃口が向く前に、二人は動いた。
まずカネシロが手前の二人を両手に装備している鉄塊で殴り飛ばした。
それはメリケンサックの鉄板が張り付いたような物体で、やろうと思えば超振動で重厚な隔壁をも砕けるコンパクトな兵器だ。二人のマフィアはくの字に折れ曲がり、壁に叩きつけられる。
ぱん、ぱん、と対してレイジは正確に手足を撃ちぬいた。
苦痛と共に崩れ落ちる二人。
敵の戦力は、それで打ち止めだった。
二人が物理ドラッグの製造プラントに踏み込む。
むせ返るような青臭い匂いと、鼻を突く化学薬品の異臭が同時に押し寄せてきている。
そこは、元々は地下駐車場か広大な倉庫だったのだろう。
無機質なコンクリートの空間を無理やりパーテーションで区切っただけの、お粗末な違法プラントが広がっていた。
天井からは強烈な紫外線ランプがズラリと吊り下げられ、不気味な紫色の光を放っている。何列にも並んだ水槽には、不自然なほど急成長させられた大麻草がジャングルのように生い茂っていた。
本来なら厳密な温度と湿度の管理が必要なはずだが、空調設備は家庭用の延長のような安物ばかりで、室内の湿度は不快なほどに高い。
「……ひどい有様だな」
カネシロがヘルメットの空気清浄機を稼働させ、嫌悪感を滲ませて呟く。
「ああ、多分ネットで拾った見よう見まねの設備だろうな」
プラントの奥では、物理ドラッグの精製作業に従事していた白衣姿の作業員たちが、二人の姿を見るなり両手を挙げて降伏を示していた。
だが、レイジは容赦なく彼らの手足を撃ち抜いた。偽装降伏からの反撃など、この手の連中がよくやる常套手段だ。
激痛に転げ回る彼らを完全に無力化し、空になった弾倉を新しいものへとリロードした、その時だった
「お、お前達、何をしてる!! 早く戦え!!」
奥の部屋からダリオが慌てた様子で現れたのだ。
二人の第一印象は、成金趣味を絵に描いたような男だった。
右腕と左目をサイバネティクス化しているが、埋め込まれた義眼は悪趣味な金ピカで、右腕の方は軍用ではなく民間用のパーツに金メッキを施して取り繕っただけの見掛け倒し。
サイバネ強化と銃の暴力という虚飾で成り上がった、元半グレの若い男。
それがダリオだった。
レイジは無言で、彼に銃口を向けた。
そして無警告で発砲した。
「ひぃ!?」
ダリオが幸運だったのは、彼が本物の暴力の気配を前に完全にビビり、腰を抜かしてその場にへたり込んだことで、初弾を偶然回避したことだった。
放たれた四五口径の弾丸は彼の頭があった空間を通り過ぎ、背後のコンクリート壁を大きく抉る。
だが、その幸運もここまでだ。無様に尻もちをついた彼に、レイジの黒鉄の銃口が再び冷徹に向けられる。
「お、おいッ!! た、助けてくれ!!」
ダリオが顔をひきつらせ必死に叫ぶ。
「マフィアが命乞いしてんじゃねぇよ」
「いや──」
醜態を晒すターゲットにカカネシロが苦言を呈したその時だった。
「奥にまだ誰かいる」
レイジは気づいた。それは命乞いではなく、味方への懇願だと。
「ん? ダリオさん、どうかしたんですか?」
ダリオが出て来た奥の部屋から、この血生臭い空間には不釣り合いなほどのんびりとした声を上げて、新たな人物が登場する。
それは、二十歳ぐらいの金髪の女だった。
サイバネティクスや遺伝子調整の恩恵ではない、天然の美しさを残す黄金色の髪。それを後ろにまとめている。
そして、合成食品と日照不足で青白い肌が当たり前となったこの時代には到底見られないほど、健康的に血色の良い白い肌。
彼女は片手に、この時代では高級品であるはずのオーガニック小麦のパンをもしゃもしゃと食べている。
その出で立ちもまた、この状況から浮いていた。
シャツの上に胸当て同然の金属質の鎧を装着し、下半身は動きやすさを重視した丈の短めのプリーツスカートだが、その下には黒いスパッツをぴっちりと穿いており、露出を抑えつつも引き締まった健康的な足のラインを際立たせていた。
つまるところ──クラリスだった。
「お、女ぁ!?」
場違いすぎる姿に、カネシロが素っ頓狂な声を上げる。
時代がどれだけ進歩しようと、マフィアは男社会だ。血と暴力と硝煙を浴びる裏社会で生業を立てているなら、どこも同じだった。
「く、クラリス、お前、何やってんだ!?」
「お前知り合いかよ!?」
驚愕の声をあげるレイジ。すかさずツッコミを入れるカネシロ。
『え、誰、あの子。市民IDどころか、今時生体チップも入れてないの!?』
インカムの向こうで、クラリスのIDを照会したり生態情報をスキャンしたリーベが驚きの声を上げる。
それも当然だった。
レイジもカネシロも、サイバネティクスによる大規模な肉体改造は行わず、ほぼ生身を保っている。
だが、それでも射撃を補助するインプラントや、網膜への情報投影デバイスは組み込んでいるし、スマート化した社会インフラに対応するため、手の甲には認証用の生体チップを埋め込んでいる。
これでも、全身に機械化を施す連中が珍しくない現代においては生身を大事にする、かなりお堅い部類なのだ。
そんな無骨で洒落っ気のない二人でさえ、サイバネ技術とは無縁ではない。
そんな中で、電子的な痕跡を一切持たないクラリスの存在は、電脳の海を泳ぐリーベにとって化石から蘇った原始人が突然目の前に現れたようなモノだった。
「おや、あなたは魔王を保護してる良いヒトじゃありませんか。こんなところに何をしているんですか?」
「それはこっちの台詞だ!! なんでマフィアの根城に居るんだ!!」
「んん? マフィアって何ですか?」
レイジは、そこからか、と内心ツッコミを入れた。
いやそもそも、彼女の反応は当然だった。
故郷でも隔絶された閉鎖的な村で生まれ、その後十年間もさらに閉鎖的な環境で、ただ魔王を殺すためだけに心身を鍛え上げられてきた。
言うなれば、生きた対魔王兵器。それがクラリスという少女の全てだった。社会常識など育つはずがない。
「マフィアってのはな、悪人の集団なんだよ!!」
「え、でも、この人たち、良いひとたちですよ?
毎日三食、食べ物をくれるからここに居て欲しい、って」
「馬鹿かお前!? この大麻がわからないのか!? 分からないんだろうな!!」
違法性のある植物が大量に栽培されているプラントのど真ん中で、もうレイジもヤケクソ気味に叫んだ。
「お前騙されてるんだよ!! どうせこいつら、お前に突っかかったんだろ!? それでボコボコにして、お詫びに食べ物をって言われたんだろ!?」
「あれ、親切な人、何で分かったんですか? 見てたんですか?」
きょとんと首を傾げるクラリスを見て、それはお前が単純すぎるからだ、とレイジは頭を抱えた。
「お前それ攫われかけたんだよ!! 暴力でどうにもできないって分かったから、利用しようって思われてんだ!!」
「俺がマフィアだったら飯にヤクを入れて薬漬けにしてマワしてるぞ……」
あまりにも無防備で危なっかしい有様に、横で聞いていたカネシロも心底ドン引きしていた。
ただ、ここの連中は底が浅く、知略よりも暴力にしか価値を見出せない三流のチンピラだったのが、彼女にとっては幸いだったと言える。
「え、そうだったんですか!? ダリオさん!?」
「あッ、えッ、違う違う!!」
「違うって言ってますけど!?」
「ああもう、こっち来いッ!!」
ダリオの言い訳を真に受けようとするクラリスに痺れを切らし、レイジは彼女の腕を乱暴に引っ張って、貨物エレベーターで一階のレストランへと移動した。
レストランの奥まった位置、表の華やかなホールからは完全に隔離された場所に、『VIP会員専用』と書かれた厳重な電子ロックのドアがあった。
「リーベ、開けてくれ」
『う、うん……』
リーベのハッキングスキルにより、強固なはずの操作パネルが勝手に明滅し、『アクセス承認』の緑色のランプと共にロックが外れた。
分厚いドアがスライドして開いた瞬間から、思わず顔をしかめるほどの異臭が漏れ出してきた。
業務用と思われる強力な空気清浄機が唸りを上げて作動しているが、それでも壁や床に染み付いた吐瀉物と、甘ったるい化学薬品の醜悪な匂いは隠しきれていない。
その先の一枚隔てたドアの奥は、現代の地獄だった。
まるで、かつて歴史の教科書にあった『アヘン窟』のようだった。
間接照明で薄暗く照らされた部屋の中には、最高級のベルベットのソファがいくつも並べられているが、そこに転がっているのは正気を失った人間の肉塊だった。
高価なスーツを着た実業家らしき男、ドレスコードで着飾った女。社会的地位のある身なりの良い男女が、地下で作られた劣悪な大麻を精製した薬物を鼻から吸引し、虚ろな目で宙を見つめてだらしなく涎を垂らしている。
中にはオーバードーズを起こし、白目を剥いて痙攣しながら、自身の吐瀉物にまみれて倒れている者すらいた。
「な、なんですか、これ……」
「これがこのレストランの正体だよ」
レイジは淡々と、クラリスに事実を突き付けた。
パンを持った手を震わせ、クラリスが絶句する。
今まで彼女が見てきた『悪』とは違う。ただ快楽に溺れ、ただ腐っていく人間の凄惨な末路がそこにあった。
「お前はローティと戦えるほど強いのかもしれんが、食事にここにある薬を混ぜられてたら、お前もああなっていたかもしれない」
「そんな……」
ぽろり、とクラリスの手から食べかけのパンが落ちる。
「赦せません!!」
悲惨な光景にクラリスが強く拳を握り、正義感から怒りの表情を見せる。
「止めろ。これから警察が来る。警察ぐらいわかるよな?
わからなくてもいいからここを離れるぞ!!」
「おい、レイジ。ダリオは無力化しておいたぞ。そろそろずらかるぜ」
「ああッ、わかった!!」
レイジは義憤に駆られる彼女を制した。
この後、通報を受けた警察の手が入る。いくら現代の警察機構が腐敗していようとも、なんの裏盾も無い三流の元半グレ集団を大金と引き換えに釈放するはずがない。そういう依頼なのだから、あとは任せるべきだ。
カネシロと合流し、三人がレストランから出た、その時だった。
『あ、二人とも、マズッ』
「あん? なんだ、もう警察でも──」
リーベの焦りが通信から聞こえ、カネシロが訝しんだその直後だった。
────背後のレストランに、隕石が直撃した。
いや、そうとしか表現できない。
けたたましい轟音と、全身の骨を軋ませるような爆風。規格外の衝撃が周囲一帯に走った。
三人は身を守る為、咄嗟に伏せるほかなかった。
「きゃはッ、きゃはは!! ツインバースト、エクスプロージョン!! *1」
魔王だ。魔法少女の必殺技のモノマネをして、本物の威力を再現できる怪物が、空から降り立った。
「あ、あ、う、嘘、だろ……」
レイジから報告は聞いていた。機狂い戦の動画も見ていた。
だが、それに直面したカネシロは現実とは思えない光景に呆然としていた。
彼らがつい十数秒前までいたレストランは、跡形もなく木っ端微塵に消え去っていた。
爆発の熱量と衝撃波で、恐らくは分厚いコンクリートの底にあった地下プラントも同様だろう。アスファルトがめくれ上がり、見事なすり鉢状のクレーターが出来上がっている。
『……依頼は失敗だ。総員、退却しろ。ローティも連れてな』
インカム越しに聞こえた、シマの絞り出すような声が、ひどく印象的だった。
それは、自分達がとんでもない代物を抱え込んでしまったのだと、今更ながらに強烈な頭痛を感じているような、そんな深い疲労が滲んだ声だった。
「きゃはは、きゃははは!! きゃははははは!!!」
激しく炎上するレストランの残骸を眼下に見下ろしながら、無邪気なごっこ遊びで悪党をやっつけたことにご満悦の魔王。
あのプラントにいたダリオも、作業員も、薬物中毒者たちも、当然ながら生存者など確認できるはずもない。
「……」
炎の照り返しを受ける中、空から降り立った彼女を、クラリスは無言で拳を握り締めたままジッと睨みつけていた。
旧作は掲示板がメインの作風でしたが、作者はライトノベル全盛期に青春を生きた人間なので、ちゃんとした文章こそが小説なのだと、そう考えていました。旧作が掲示板モノだったのは、いろんなジャンルに挑戦したかったからですね。
でも、やっぱり転生モノやファンタジーモノが大手を振るうハーメルンのオリジナル界隈で、私の作品って時代遅れなんでしょうか、って思う時があります。
この間、手慰みで書いた勢いだけのネタ小説が、これの旧作以上の評価を受けた時は正直複雑な気分になりました。
とは言え、更新する度にお気に入りの数は増えているので、愚痴っぽくなっちゃいましたが希望は抱いています。
なるべく更新頻度を維持したいので、高評価や感想を頂けると幸いです。
こんな惨めったらしいあとがきを最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
ではまた、次回!!