超かぐや姫R! ~彩葉が二周目チートで超ハッピーエンドに至る話~   作:そうすけVR

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3 Black onyX 戦

そんな訳で、正座である。

芦花が、仁王立ちである。激おこである。

私はしょんぼりと、こうべを垂れている。

 

「前に倒れた時、反省した、心入れ替える、って言ってたよね?」

「……言いました」

「健康第一、って言ったよね?」

「……言いました」

 

ここはツクヨミ。真実がプライベートで所有しているバーチャルな和風家屋。縁台のすぐ前に夜の湖が広がっていて、釣りもできる。

私は床に正座して、芦花からお叱りを受けている。

なぜかフッチョも、私と並んで板の上で、神妙な顔をして小さくなっている。

かぐやが、私が寝込んだことを芦花と真実にぽろっ、とこぼしてしまったのだ。そして、ツクヨミへ呼び出しを受けた。

ソファに座っている真実が、芦花の剣幕に苦笑いしているのが横目で見えた。

かぐやは、バスタオルを身体に巻いて、露天風呂で遊んでいる。何やってんだ。

 

「海で、『マジなエリートは、遊びもおろそかにしない筈』とか言ってたよね。それで倒れちゃったら、意味ないよね?」

「あれは――」

「あれは?」

「その……芦花と真実の水着姿がどうしても見たくて……」

語尾が小さくなる。

「はぁ?」

「ごめんなさい」

まったく、と芦花はため息をつく。

「そんな理由なら、部屋で水着タコパでいいじゃん」

「いいの!? いつやる!?」

なんて素敵な提案!

絵面を想像して、がばっ、と顔をあげた私を、芦花が上から半笑いで睨みつけてきた。

こめかみに、怒りマークが浮かんでいる。

「あうあうあう……」

しおしおと頭を下げる。

 

横から真実が、

「確かにさー、かぐやちゃんのライバー活動、彩葉、頑張ってたもんね。歌とか、良かったと思うよー」

助け舟を出してくれた。

それはそうだけど、と芦花も口ごもる。

「食事とか、勉強とか、そっちには気を使ってたんだよ。ただ、ちょっと張り切りすぎちゃって……」

もごもごと言い訳する。

『寝てなかったんだよねー』

フッチョが告げ口する。実際には交互に寝てたんだけど。

「彩葉?」

気温が5℃ほど下がったかのような――いや実際にはツクヨミにそんな機能は無いんだけど――芦花の冷たい声。

「かぐやが悪いの。彩葉に無理させちゃったから……」

バスタオルを巻いたままのかぐやが、私の隣まで来て、申し訳なさそうな声で謝る。

芦花も、これ以上私を追求するのは、かぐやも同時に責めることになる、と思ったのか、むむむむ~~、と唸った。

「彩葉は、自分のことは後回しにしちゃうんだから、気を付けて」

(ほんとですよ彩葉さん。いろんな意味で)

「……分かった」

「じゃあこの話はおしまい!」

芦花は、ぱん、と手を叩いて重い空気を振り払った。

「あの……水着タコパは……」

芦花の目が細められる。

「……なんでもないです」

 

話題は、かぐやのヤチヨカップランキングの話に移る。

真実が、大きなモニターでツクヨミ公式ニュースを再生する。

ヤチヨカップ期間中に獲得した、新規ファン数の途中ランキングを発表する動画だ。

 

『ヤチヨカップの公式実況担当、忠犬オタ公です! ではでは、トップスリーの発表だ!

三位、癒し系アイドル【湯雲ぬくみ】

二位、ハイスペエルフ【テレリリ・ティートテート】

そして、堂々第一位【ブラックオニキス】!』

 

画面が切り替わり、なぜかビリヤード中の様子をお届けされているブラックオニキスの三人が映る。

 

『当然だな』

『俺、帰っていい?』

『まだまだ、応援よろしく』

 

『もうこの三人で決定か!!』

忠犬オタ公さんの締めの言葉のシーンで、真実は再生をオフにした。

 

「う~、どうしたらいいのだ~」

かぐやが暴れる。

「強いね~、黒鬼」

芦花がしみじみ言う。

「当然。帝様だも~ん」

真実はブラックオニキスのファンだ。

「真実の裏切りもの~」

かぐやがふてくされている。

 

私は、お兄ちゃんにDMを送った。そろそろ仕掛け時だな。

すぐに、かぐや宛てに巻物を模したメールが届いた。

 

【Black onyX 帝アキラさんからのメッセージ

 

はじめましてかぐやちゃん!

俺はブラックオニキスの帝アキラ

ファン数100万おめでとう!

 

ここからは提案なんだけど……

 

KASSENで

帝 VS かぐやの竹取合戦

 

ってのはどう?

かぐやちゃんが負けたら……

やっぱ俺と結婚、かな?

こっちが負けたら、なんでもお願い聞くよ

俺らでツクヨミ盛り上げようぜ!】

 

ちな、メッセージの内容は私が指定した。

以前、『かぐや争奪KASSEN選手権』をかぐやが勝手に開催した時の流れを採用してみた。

 

かぐやを売り出すための作戦。

それが、ブラックオニキスとのKASSENを、ライブ配信イベントとして開催することだった。

 

『格上のブラックオニキスが、わざわざ私たちに試合を申し込むには理由がいるでしょ。だから、お兄ちゃんがかぐやに求婚するために勝負を持ちかけた、って形にしよう』

そう頼み込んだ時は、なんで俺が? って言ってたなー。私も理由は分かんないけど(多分【(みかど)】なんて名乗ってるせいだと思う)、まあ出来る限り、過去と条件を同じにしておこうと思って。

なんて説明したらいいんだよ、とも言ってた。頑張って乃依くんの機嫌を取ってくれ。一周目のお兄ちゃんが悪い。つまり、

「お兄ちゃんが悪い」

「んー? 彩葉のお兄さん?」

真実が耳聡く私のつぶやきを拾う。

あー、今後の作戦もあるし、言っておくか。

「ブラックオニキスの帝、私のお兄ちゃんだから」

 

◇ ◇ ◇

 

『注目のイベントが始まります!』

ツクヨミ特設スタジアムを照らす、巨大なアマテラスダイチョウチンアンコウが遥か上空を泳いでいる。

 

『王者ブラックオニキスが、異例の速度でのし上がった超新星・かぐや、いろPに宣戦、そして求婚!

運命を賭けたKASSENが、今、始まろうとしています』

 

かぐやと一緒に、会場に到着していた私は、ぐるりと今回のステージを見まわした。

特設スタジアムは超満員。実況/解説席には、忠犬オタ公さんと、元プロゲーマーの乙事照琴さんが座っている。

忠犬オタ公さんには、先にちょっとした情報をリークしておいた。

 

『ここで、衝撃の事実が判明したぞ――なんと、帝といろPは兄妹だった!?』

いろPとして活動する時に身に着けていたキツネのスキンを脱ぐ。私のアバター姿に、会場がざわめく。

どうして新人ライバーのかぐやに、ブラックオニキスがピンポイントで挑戦状を叩きつけてきたのか、これである程度皆も分かっただろう。コネか、と思われてしまうかも知れない。だけど、

「実力で黙らせてやる」

「彩葉、カッコいい~!」

かぐやがベタベタしてくる。テンションあがってるな。

一周目は、三人目のメンバーだった真実が、緊張の極致にいる時に、お兄ちゃんにメロメロにされて気絶しちゃったんだけど、流石に今回は実の妹の前でそんなことはしないだろう。……いや、案外お兄ちゃんはノリでやるかな?

今回は、最初から直前に体調不良になって棄権、ということにしている。これで、自動的に、お助けキャラのヤチヨがこちらのチームに合流する筈だ。

(この試合では、そのチートコード【自由(フリーダム)】は使わないんですよね?)

あれはね、まだ実装出来てないんだ。ツクヨミのサーバーに仕込みが必要なんだよね。FUSHIが協力してくれると一番楽なんだけど。

まあ、私の存在、っていう一番のチートが、

(そういうのはいいです。今度、そのコードを読ませてください)

そっけないな。

 

などとどうでもいい話を頭の中でしていると、会場の岩場ゾーンの一部が爆発した。

『黒鬼、ご来臨~~!』

虎のバイクにまたがって、堂々の登場だ。会場から歓声が上がる。

「どーも」

軽いノリで話しかけてくる。

「対戦受けてもらってありがと。そして俺の姫、かぐやちゃん」

さすがお兄ちゃん。設定は守る男。

「どぅるるるおら、帝! 勝負だ!」

巻き舌で、かぐやが反応する。ノリノリだ。

実は、現実では二人はもう対面済みだ。高級寿司までご馳走になっているので、かぐやもお兄ちゃんを嫌ってはいない。

「俺が勝ったら、結婚してくれんの?」

かぐやが威嚇姿勢のまま、ええと、と口ごもりながら後ずさる。

「そうなったら、かぐやは私の義姉に――? かぐやお姉ちゃん?」

私の独り言に、

「んな訳、ねえだろ!」

キレた彩葉が身体の操作権を奪って、お兄ちゃんに斬りかかった。華麗にジャンプで避けるお兄ちゃん。

「彩葉がダメって言ってるからダメ!」

本名だすなかぐや。

「でも、そっち2人? 3人いないと試合にならないんじゃない?」

 

と、空から玉手箱が降ってきた。

ふたが開き、大量の煙の中から、

「じゃじゃーん、呼んだ?」

いつもの着物姿とは違う、動きやすそうなKASSEN用の衣装をまとったヤチヨが現れた!!

「絶対勝とうね!」

ヤチヨが笑いかける。

 

ちなみに、このお助けキャラモードのヤチヨには、実力差補正が入る。

私はまだ、KASSENでのランキングは上げていないから、ヤチヨも強キャラになっているはずだ。

かぐやは、才能はあるものの、実力はまだまだなので心強い。

 

じゃあいっちょ、やってやるか!

 

ルールはSENGOKU、3対3の陣取り型KASSENだ。

「作戦だけど」

開始前、打合せをする。

「がーっ、といってしゅたたたた、そんでばーん!」

「――ってのは置いといて」

えーっ、と非難の声をあげるかぐやは無視。

「今回は、私の指示に従ってもらいます」

「りょー!」

ヤチヨも元気に返した。

 

『試合開始です! おおっ、トライデント! 黒鬼はトライデントです! そして……』

乙事さんが実況を始める。

『動かない? かぐや、いろPチームは見!?』

 

レーダーをチェックする。記憶どおり、あちらの戦術はトライデント――三つのレーンを一人ずつ進む作戦だ。

(トップにお兄ちゃんか。よし)

「私がトップレーンを行きます。ヤチヨとかぐやはボトムで。乃依くんを足止めしておいてください」

私は移動用の巨大なオオタカに乗り、上空へ飛び上がった。

 

◇ ◇ ◇

 

(出遅れちゃいましたけど大丈夫ですか?)

彩葉が脳内で問いかけてくる。

大丈夫。私が一人でお兄ちゃんに向かって行ってることは、あちらのレーダーにも映ってる。なら、迎え撃つために待っているよ。そうしないと盛り上がらないからね。

 

トライデント。

舐めプ、とか言われてるけど、あれも未来だとれっきとした戦術だ。ただし、実力が突出したアタッカーがいる前提の。

だから、そのアタッカーを潰せば脆い。

彩葉、行くよ。瞬殺する。

 

地上から、無数の矢が飛んでくる。

途中区間に配置されている、中立ミニオンだ。

 

私は地上に降り、戦闘態勢に入る。

(今から身体のメイン操作は彩葉に任せるよ。レッスン1だ)

彩葉が、ミニオンに向けてばら撒くように銃弾を放つ。私は、ミリ単位で銃口を操作する。

全弾命中。

(最初から当てろとは言わない。けど、ちゃんと敵を見て――から動いて)

彩葉の得物、ブーメラン型武器を投擲する。大きな弧を描き、ミニオンを複数撃破する。

(NPCなら素直に当たってくれるけど、対人だと予備動作が大きいし、投げてる間は武器も使えない。だから連発はしないで)

彩葉の動きは雑だし、そもそもきちんと相手を見てから攻撃をしていない。まだヤマ勘で動いている場面が多い。

要所要所で動きや視線を補正して、最適な動作を体感させる。

 

戦闘しつつ、移動していると、

 

ほいほいっと。

首を少し傾ける。弾丸が、頬のすぐ横を通過する。

振り返ると、丘の上に立つお兄ちゃんが銃口をこちらに向けていた。

(来たよ)

ここからは、全操作私モードだ。よく見てて。感じて。

 

「お兄ちゃん、今日はありがとう」

「どういたしまして」

 

金棒型武器を地面に打ち付けて、中盤地点で待っていたお兄ちゃん――帝アキラは、にこりと笑った。

 

「行くよ!」

 

『おおっと、初っ端から兄妹対決だ~~!』

 

全速力で駆け寄りつつ、ブーメランを投げつける。

(え? 初手それですか?)

お兄ちゃんは、身体の動きだけでブーメランを避ける。

 

ワイヤーの自動巻取りを起動する。

私の身体は、あり得ない加速をする。

ブーメランは二つに分かれ、片方は明後日の方向へすっ飛んでいく。

 

お兄ちゃんの目の前で、姿勢を低くして独楽のように一回転、強引に軌道を変えて戻ってきた右手の剣を背中に回した手で曲芸めいてキャッチ、

そのままもう一回転して、

 

――ツクヨミ式双剣術

 

横薙ぎの一閃!

「鬼斬り」

ドン!!

 

(なんですかそれ)

なんかカッコいい大技のときに、それっぽい技名を叫ぶのを未来のお兄ちゃんが流行らせたのよ。

 

(し……)

『瞬……殺……?』

辛うじて、オタ公さんが言葉を漏らす。

会場も静まり返る。

 

お兄ちゃんの視界では、丸腰で飛び込んできた私が身を翻した途端、何もなかった手に剣が現れたように見えた筈。ちょっとした手品みたいなものだ。

戻ってきた右手の剣を背中側でキャッチした瞬間は、私の身体にすっぽり隠れていた。

 

冗談のように、花びらを散らすエフェクトと共に、呆然とした表情のお兄ちゃんが消えていく。雑っ魚~~。

もう片方の剣もキャッチ、そのままウルトを発動――背後に辿り着いていた中ボス、牛鬼を仕留めた。

 

『鮮やか! いろPが櫓を占拠しました!』

 

「舐めプ相手だと楽でいいな~」

今回のは、奇襲と変化球で勝ったみたいなものだ。こちらの技量を見誤っていたからこそ、一瞬で勝負が決まった。次は、こうはいかない。まあ、それでも負けないけどね。

 

『続けて、ヤチヨも牛鬼を撃破! かぐやが櫓を占拠!』

おお、あっちに合流しようと思ったけど、ヤチヨとかぐやで乃依くんを抑え込んだか。

中央に出ていた雷さんが、ボトムへ移動しようとしていたみたいだったけど、遅かった。

両櫓占拠で第1回戦、コールド勝ちじゃん。

 

どう? 彩葉、分かった?

(分かりません……)

 

◇ ◇ ◇

 

『二回戦が始まりました! 黒鬼は……動かない!? 今度は黒鬼が見!?』

『かぐや、いろPチームの動きに対応する作戦でしょうか――ヤチヨ、かぐやも動かない! そして、真ん中のミドルラインを、彩葉が単独で進んでいます!』

『おおっと、黒鬼にも動きが! 帝が、ミドルラインを単独で進み始めました。つまりこれは――』

 

一騎打ち。

 

そりゃあ、そうなるよね。

お兄ちゃんの目的は、KASSENで勝つことじゃなくて、ツクヨミを盛り上げること。

なら、一回戦であんなにも無様に負けたんだから、小手先の戦術で勝ちを拾ってもカッコ悪いもんね。

勝つにしろ、負けるにしろ、私の本当の実力を、スタジアムの観客に分かり易く示す必要がある、って考えると思ったんだ。

 

だから今から始まるのは、ステージの真ん中で、ガチンコの殴り合いだ。

 

(さ……作戦とか無いんですか?)

 

無いよ。本当の実力勝負。

ブラックオニキスには、もっと強くなって貰わないと。今のままだと実力不足。普通に戦ったら、少なくとも一対一なら私には勝てないよ。

(彩葉さん、そんなにKASSEN強くなってたんです……?)

10年後のお兄ちゃんに、特訓受けてたからね。

 

中央ステージには、ミニオンがひしめいていた。降り立った私とお兄ちゃんは、まずはミニオンを掃討していった。まるで共闘状態だ。

邪魔者を片付けたところで、距離を置いて、お互い睨みあう。

 

『運命の兄妹戦、両者、再び相まみえます!』

 

もう不意打ちなんてしない。

金棒を肩に乗せ、お兄ちゃんは真剣な表情を浮かべていた。

「さっきはどーも」

「目が覚めた?」

「ばっちり、冷静になったよ」

 

ボイスチャットを配信用から内部通信用に切り替える。

 

『ちゃんと、スポンサーには根回ししてきた? 負けるかも知れへんって』

『面白いことになるかも知れません、くらいは言うたよ』

 

双剣を構える。Xに交差させて、お兄ちゃんに突っ込む。

お兄ちゃんも、金棒をぶん、と軽く振り、私の突進を受け止め――

私は、左手の剣の重心をずらし、右に金棒をいなす。

 

お兄ちゃんが大きく距離を取る。私の剣先が、お兄ちゃんの前髪をかする。

 

『なあ、彩葉、いきなりそんなに強くなるもんなんか?』

『あ、私が強いって分かる? 特訓してん』

『特訓て――曲がりなりにも、俺たちはプロやぞ? それを、こんな』

『ぬるいぬるい! こんなレベルで満足されたら困るんよね私がッ!』

 

右手の剣を投げる。ワイヤーを操作して、軌道を変則的に変えつつ、お兄ちゃんの位置で交差するように左手の剣を振りぬく。

 

『ぐっ……』

 

ワイヤーが金棒に絡みつく。お兄ちゃんは鞘の部分の金棒を捨て、仕込みの剣を抜いて、隙間にねじ込んだ私の剣を受け止める。

 

『いい反射神経やね。――これが若さか』

はははっ、と笑い声が出る。

 

お兄ちゃんも、私も。

やっぱ、純粋な反応速度は、アラサーの時の脳とは全然違う! きっと今、瞳孔開いてる! 脳汁出てる!

 

『いろPが……帝を圧倒しているように……見えるんですけど……』

乙事さんの実況の声が聞こえてくる。

『まさか、もしかして――』

『どうしましたオタ公さん!?』

『ブラックオニキスの秘蔵っ娘、幻の四人目メンバー……?』

『おお! 兄妹(弟)ダブルタッグ、キタキター!』

 

未来でもそんなこと言われてたな。

一応、言っとくか。

 

「私は、ブラックオニキスには入りませーん。そんなつもりはありませーん」

『いろPのツンデレだ~~』

 

前にも同じやり取りしたぞ。時代は繰り返すな。

 

と、眉間に鈍痛が走った。

……もう来たか。

(彩葉さん、今の――)

ほんの一瞬、身体が強張る。

そこを逃さず、お兄ちゃんが攻め込んでくる。

 

抜き身の剣を振り、連続で斬りつけてくる。

私は左手の剣のみで、そのすべてを受けきる。

攻めが途切れたタイミングで、私はお兄ちゃんを大きく弾き飛ばした。

 

『分かった? 上には上がいるって』

『彩葉が、一番上の存在やって言いたいんか?』

『――違う。私なんて、全然届かへん存在がいる。私は……私たちは、そいつらに勝たなあかん』

『彩葉、何を言って……』

『月から、災厄がやってくる。かぐやを連れ去りに』

『かぐや――あの子を?』

『そう。だから、ブラックオニキスには、もっともっと強くなってもらわへんとあかんねん。私程度に負けてる場合やあらへん。だから、特訓。本気の特訓に付き合って。私は――』

『彩葉……』

『存在を賭けてる』

 

私はワイヤーを最大限に伸ばし、後ろに飛びのきながら、絡まったパスタのように地面に広げた。

距離を詰めに来ていたお兄ちゃんは手前の地面を蹴りつけ、跳躍してワイヤートラップに足を踏み入れるのを避けた。

 

こんなの10年後だと使い古された罠で、ミニオンにしか通用しないけど、初見だと対処難しいでしょ?

 

じゃあ、対空技行くよーー

 

私はお兄ちゃんの反応を見る前から、双剣をバトントワリングの要領で回転させ始めていた。

 

「コンタクトマテリアル!」

私は足を踏ん張り、両腕に力を込めて固定する。あらかじめ手首に巻き付けていたワイヤーの巻取りを起動、唸り声をあげて双剣の回転数が上がる。

刃先の速度が規定値を超え、炎のエフェクトが走る。

(こんな現象、初めて見るんですけど)

カッコいいでしょ? 双剣使いのロマン技!

 

「エーリアル!」

 

私は、飛び上がりながらそれを放つ――燃える双剣の二連撃がお兄ちゃんを襲う!

 

――ツクヨミ式双剣術・対空

 

(またですか)

 

「焼き――鬼斬りッ!」

ドドンッ!!

 

「……なんだよそれ」

特殊効果で燃え上がりながら散っていくお兄ちゃんのアバターから、呆れたような、嘆きの言葉が漏れる。

 

KASSENには、まだまだ秘められた隠し要素がたくさんあるからね。

未来だと、ただ強いだけじゃなくて、ロマン技でどれだけ観客を魅了出来るかも人気に影響してくるからね。

ブラックオニキスは、先駆者だったよ。

 

『某海賊狩りっぽい必殺技が決まったー!』

乙事さんの絶叫アナウンスが響く。

会場も大盛り上がりだ。

 

『ここで、ブラックオニキスサイドの降参宣言だ! かぐや、いろPチーム勝利!!』

オタ公さんが続ける。

『それにしても、第四のメンバー、帝の実の妹、いろPのお披露目は大成功でしたねー。話題性、注目度、共に今後の活躍が期待されます!』

 

だから違うって。

ズキズキ痛む頭に眉をしかめつつ、私はつぶやいた。

 

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