超かぐや姫R! ~彩葉が二周目チートで超ハッピーエンドに至る話~ 作:そうすけVR
ソッコーでバレた。
翌日、大学での昼食時、ヤチヨとタブレットでビデオ通話していて、
『あっれー? 彩葉、目の下にクマ、出来てない?』
目ざとく見つけてきた。
私は、つ……と目を逸らしたが、
『彩葉さーん? ちょっと、こっち見てくださーい』
無表情のヤチヨの顔が、タブレット画面いっぱいになる。額におこのマークが浮かんでいる。これは、確実に気付かれている。
「ナニモナイヨ」
だらだらと脂汗が流れる。
『そっか。夜8時にツクヨミに集合しよっか』
「ええとー、今日はー、コーネルテックの学生グループとの生体分子工学についてのミーティングがー」
通話は切れた。
ツクヨミにログインすると、いつもと違う場所に出た。
無数の灯篭が並んでいる。一般には開放されていない、ヤチヨの天守閣の私室だ。
笑顔を張り付けたヤチヨが出迎えてくれた。
縮こまって床に張り付いているFUSHIがいた。
「正座しよっか」
ニコニコとヤチヨが告げる。
私はFUSHIの隣に、畏まって座った。
小声で尋ねる。
(言ったの?)
(言ってない)
汗のエフェクトを散らしながら、FUSHIも小声で返事してくる。
データの転送履歴から辿られた?
(これはFUSHIのミスだよね。履歴の消去漏れとかあった?)
(違う……多分。彩葉のキーログ、監視されちゃったりしてるとか?)
なにそれこわい。あり得るだけにこわい。
「おやおやー? 仲良しさんだねー」
「何の話かな?」
分身したヤチヨが、左右から囁いてくる。なんてASMRだ。
「非公開のファーストテイク、どうだった?」
吐息がかかりそうな近距離で(VRだからかからないけど)、ゆっくりとヤチヨは言った。リップが瑞々しく光るヤチヨの唇の動きが、なんだか艶めかしかった。
私は、視線を床に落として、あうあうあう、としか言葉が出なかった。
「ふーん」
ひらりとヤチヨは身をひるがえして背を向ける。
まるで、体温があるかのような、熱源が遠ざかったかのような錯覚。
「聴いちゃったんだー。まだ出来てないヨ? って言ったよね?」
「でも、だって! ヤチヨは――」
「そうかー。もしや、って思ったけど、聴いちゃったんだー」
後ろ姿のヤチヨの表情は分からない。
「彩葉、眠れなかった? 私のことで泣いちゃった?」
優しい声。
私は黙っていた。
長い、とても長い、静かな時間が流れた。
私は、ためらいつつ、
「二番、二人っきりの時に、歌って聴かせて?」
そうお願いしてみた。
ヤチヨは、短く息を吸い込んで、
――月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ
振り返って、和歌を詠み始めた。
ヤチヨの後ろに広がる夜のツクヨミがキラキラしていて、軽い眩暈を感じて、彼女の表情は見えなかった。
私は、
「……わが身ひとつの 秋にはあらねど」
そう続けた。
ヤチヨは、うんうん、とうなづいて、
「だからきっと、私は大丈夫。でも、彩葉、ありがとね」
そう言った。
◇ ◇ ◇
FUSHIが、音源を渡す時に出してきた条件、それは、
【時々、FUSHIのアバターに私が入って、ヤチヨのお仕事の手伝いをすること】
だった。
後日、ヤチヨがFUSHIと過剰なスキンシップを取る配信が、一部で噂になった。
撫でたり頬ずりしたり、チューしたり。
いやお仕事って聞いたんだけど? いつもはこんな配信しないよね??
胸元に入れられて、頭に血が上ってもぞもぞしていると、
「彩FUSHI……おいたは、ダメ、だよ……(ちょっとならいいよ?)」
メンダコをぎゅっと抱いて、頬を染めて配信を続けるヤチヨ。
いやいやいやいや、ツクヨミには触覚ないよね? 彩FUSHIって言った今??
それと、服の下のテクスチャこんなに高解像度にする必要ある? 外には見せないでしょ??