仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

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本作は『Marvel Cinematic Universe』を舞台に、『仮面ライダーシリーズ』と『ホロライブ』の要素を取り入れた多重クロスオーバー作品です。
独自設定・独自解釈・原作改変を含みますので、あらかじめご了承ください。


ディケイド
第1話 世界の破壊者


日本、東京。

 

朝の街を、一台のバイクが駆け抜けていた。

 

ビルの隙間を吹き抜ける風を切り裂きながら、紫咲蓮はハンドルを握り、前方の信号を確認する。

 

後部座席では、ヘルメットを被った紫咲シオンが蓮の腰にしがみついていた。

 

「ちょっと蓮! なんで姉弟そろって寝坊するのよ!」

 

シオンの声が、ヘルメット越しに飛んでくる。

 

蓮は前を向いたまま、わずかに苦笑した。

 

「僕に言われても……」

 

本当は言いたいことがあった。

 

夜中までゲームをしていたのはシオンだ。

 

寝る前に「あと一戦だけ」と言いながら、そこから何戦も続けていたのもシオンだ。

 

そして、朝になって目覚ましを止めたまま二度寝したのも、おそらくシオンだろう。

 

だが、それを今言ったところで、余計に騒がしくなるだけだった。

 

「とりあえず急いでるから、しっかり掴まっててよ」

 

「掴まってるわよ! 落としたら許さないからね!」

 

「落とさないって」

 

蓮はアクセルを少しだけ回した。

 

やがて、ホロライブを運営するカバー株式会社のビルが見えてくる。

 

今日、シオンにはダンスレッスンが入っていた。

 

担当マネージャーである蓮も同行する予定だったが、姉弟そろって寝坊したせいで、開始時刻はかなり迫っている。

 

ビルの前にバイクを停めると、シオンは急いでヘルメットを外した。

 

「蓮、これ!」

 

シオンは外したヘルメットを蓮へ押しつける。

 

「先に行くね!」

 

「うん。先生にちゃんと謝るんだよ」

 

「わかってるって!」

 

シオンはそう言い残し、ビルの中へ駆け込んでいった。

 

蓮はその背中を見送りながら、小さく息を吐く。

 

「次からは、ちゃんと起きてよ……」

 

苦笑しながら呟いた、その時だった。

 

キィン――。

 

耳の奥を、鋭い音が貫いた。

 

「っ……!」

 

蓮は思わず片耳を押さえた。

 

ただの耳鳴りではない。

 

頭の奥へ直接響いてくるような、嫌な感覚。

 

次の瞬間、女性の悲鳴が聞こえた。

 

「きゃあああああっ!」

 

蓮の表情が一変する。

 

考えるより先に、体が動いていた。

 

「今の声……!」

 

蓮はバイクを離れ、悲鳴が聞こえた方向へ走り出した。

 

ビルとビルの隙間。

 

人通りの少ない路地。

 

朝の光が届ききらないその場所で、蓮はあり得ない光景を目にした。

 

一人の女性が、恐怖に顔を引きつらせながら必死に後ずさっている。

 

その前にいたのは、異形の怪物だった。

 

鏡に映った獣が、そのまま現実へ這い出してきたかのような姿をしている。

 

「いや……やめて……!」

 

女性が叫ぶ。

 

怪物が腕を伸ばした。

 

次の瞬間、近くにあったビルのガラス面が水面のように揺らぎ、女性の体がその中へ引きずり込まれていく。

 

「待て!」

 

蓮は叫んだ。

 

しかし、怪物も女性も、そのままガラスの中へ消えてしまった。

 

一瞬の静寂。

 

路地には、何も残されていなかった。

 

普通の人間ならば、目の前で起きたことを理解できず、その場に立ち尽くしていただろう。

 

だが、紫咲蓮は違った。

 

蓮が腰へ手を当てる。

 

空間が歪み、銀色のベルト――ディケイドライバーが出現し、その腰へ装着された。

 

「ミラーワールド……!」

 

蓮はライドブッカーを手に取り、そこから一枚のカードを引き抜く。

 

赤紫色の複眼。

 

白と黒の装甲。

 

世界を渡る仮面ライダー。

 

蓮はカードを正面に構えた。

 

「変身」

 

カードをディケイドライバーへ挿入する。

 

《KAMEN RIDE》

 

蓮はバックルを両手で押し込んだ。

 

《DECADE》

 

幾重ものカード状の影が蓮の体を通過し、装甲へと変わっていく。

 

次の瞬間、そこに立っていたのは、紫咲蓮ではなかった。

 

仮面ライダーディケイド。

 

世界の破壊者と呼ばれる仮面ライダーだった。

 

ディケイドはビルのガラス面を見つめる。

 

そこには、変身した自分の姿が映っている。

 

だが、その奥には、もう一つの世界が広がっていた。

 

「間に合え……!」

 

ディケイドはガラス面へ飛び込んだ。

 

視界が反転する。

 

音が消えた。

 

空気が変わった。

 

目に映る街並みは、先ほどまでいた東京と同じでありながら、そのすべてが左右反転している。

 

ミラーワールド。

 

鏡の中に存在する、もう一つの世界。

 

生身の人間が長く留まることのできない危険な場所だ。

 

ディケイドは周囲を見回した。

 

「あの女性はどこだ……?」

 

その時、遠くから悲鳴が響いた。

 

「助けてえええっ!」

 

ディケイドは声の聞こえた方向へ走り出す。

 

路地を抜け、反転した街の中を駆ける。

 

ビルの壁面。

 

車の窓。

 

割れたガラス。

 

あらゆる反射物が、不気味な光を放っていた。

 

そして、交差点の中央。

 

女性が地面に倒れていた。

 

その前には、二体のミラーモンスターがいる。

 

一体が女性の腕を掴み、もう一体が獲物を前にした獣のように口を開けていた。

 

「させるか!」

 

ディケイドはライドブッカーを銃形態へ変形させ、走りながら引き金を引いた。

 

銃声がミラーワールドに響く。

 

放たれた光弾が、モンスターの背中へ命中した。

 

「ギャアッ!」

 

怪物が振り返る。

 

ディケイドはその勢いのまま跳び上がり、片方のモンスターの顔面へ蹴りを叩き込んだ。

 

吹き飛ばされたモンスターが、地面を転がる。

 

もう一体が腕を振るった。

 

ディケイドは身を低くして攻撃を避け、そのまま女性の前へ滑り込む。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「な、何……? ここ、どこなの……!?」

 

女性は恐怖で震えていた。

 

無理もない。

 

普通の人間が突然ミラーワールドへ引き込まれれば、状況を理解できるはずがない。

 

ディケイドは女性の手を掴んだ。

 

「説明は後です。こっちへ!」

 

「えっ……!」

 

ディケイドは女性を立ち上がらせると、近くにあるガラス張りのビルへ向かって走り出した。

 

背後では、二体のモンスターが唸り声を上げながら追ってきている。

 

ミラーワールドへ引き込まれた生身の人間は、長く留まれば存在そのものが崩壊し、やがて消滅してしまう。

 

一刻の猶予もなかった。

 

ディケイドはガラス面の前で立ち止まる。

 

「ここから帰れます!」

 

「で、でも……!」

 

「大丈夫。僕を信じて!」

 

ディケイドは女性の背中を押した。

 

女性の体がガラス面へ触れる。

 

水面のような波紋が広がり、彼女の姿が向こう側へ吸い込まれていった。

 

直後、現実世界の路地へ女性が転がり出る。

 

それを確認したディケイドは、小さく息を吐いた。

 

「よし……」

 

だが、安心している暇はなかった。

 

背後から、二体のモンスターが迫っている。

 

ディケイドはゆっくりと振り返った。

 

「さてと……」

 

ライドブッカーから、新たなカードを引き抜く。

 

そこに描かれていたのは、赤い龍の力を宿す仮面ライダー。

 

「ミラーワールドなら、こいつだな」

 

ディケイドはカードをドライバーへ挿入した。

 

《KAMEN RIDE》

 

バックルを押し込む。

 

《RYUKI》

 

ディケイドの姿が変わっていく。

 

黒と赤の装甲。

 

銀色の仮面。

 

龍の紋章を宿した戦士。

 

仮面ライダー龍騎。

 

ミラーワールドを戦場とする仮面ライダーの姿だった。

 

二体のモンスターが、左右から襲いかかる。

 

龍騎となった蓮は、正面から繰り出された一撃を紙一重で避け、怪物の腕を掴んで引き寄せた。

 

「はっ!」

 

腹部へ膝蹴りを叩き込む。

 

よろめいたモンスターの顎へ、続けて拳を打ち込んだ。

 

もう一体が、背後から腕を振るう。

 

龍騎は振り返ることなく身を屈め、攻撃を避けた。

 

そのまま足払いをかけ、モンスターを地面へ転倒させる。

 

「グオオオオッ!」

 

二体のモンスターは、怒り狂ったように唸り声を上げた。

 

龍騎はライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

 

「焼き加減はレアか、ミディアム……」

 

カードをディケイドライバーへ挿入した。

 

《ATTACK RIDE》

 

「それとも、ウェルダン?」

 

《STRIKE VENT》

 

空間を引き裂くように、龍の咆哮が響き渡った。

 

炎を纏う赤い龍――ドラグレッダーが、ミラーワールドの空を旋回する。

 

龍騎の右腕へ、ドラグクローが装着された。

 

二体のモンスターは、本能的に危険を感じたのだろう。

 

龍騎へ背を向け、その場から逃げ出そうとする。

 

「遅い」

 

龍騎は右腕を構えた。

 

ドラグレッダーが咆哮し、その口腔へ炎を集める。

 

龍騎のドラグクローから放たれる炎。

 

そして、ドラグレッダーが吐き出した火球。

 

二つの炎が一直線に重なり、逃げるモンスターたちを飲み込んだ。

 

爆炎が、ミラーワールドの街を赤く照らす。

 

二体のモンスターは断末魔を上げる間もなく爆散した。

 

火の粉が周囲を舞う。

 

龍騎はしばらくその場に立ち、ほかに敵がいないことを確認した。

 

「ふぅ……」

 

だが、次の瞬間。

 

右手の先端が、砂のように崩れ始めた。

 

「……時間切れか」

 

ミラーワールドに留まれる時間は、仮面ライダーであっても無限ではない。

 

龍騎の装甲の端が、細かな粒子となって散っていく。

 

蓮は近くのガラス面へ視線を向けた。

 

「長居は危険だな」

 

龍騎はガラス面へ向かって走り、そのまま飛び込んだ。

 

視界が再び反転する。

 

音が戻る。

 

空気が戻る。

 

現実世界の路地へ、仮面ライダー龍騎の姿をした蓮が転がり出た。

 

先ほどの女性は、震えながらも無事だった。

 

「よかった……」

 

蓮は変身を解除した。

 

装甲が消え、そこには紫咲蓮の姿が戻る。

 

女性は蓮を見上げ、震える声で尋ねた。

 

「あ、あなたは……?」

 

蓮は一瞬だけ答えに迷った。

 

だが、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。

 

「ただのマネージャーです」

 

その時、蓮のスマートフォンが震えた。

 

画面には、シオンからのメッセージが表示されている。

 

『蓮、どこ行ったの!? 先生来ちゃったんだけど!?』

 

蓮は思わず固まった。

 

「……やば」

 

世界を跨いで怪物を倒した直後だというのに、今の蓮にとって一番恐ろしいのは、ミラーモンスターではなかった。

 

姉である紫咲シオンに怒られることだった。




第1話をお読みいただき、ありがとうございます。

本作では、MCUの物語を中心に、仮面ライダーシリーズやホロライブのキャラクターたちが関わっていきます。

感想や誤字報告などをいただけましたら、今後の励みになります。
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