仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

16 / 40
第16話 雷神襲来

 

 

ロキを拘束したクインジェットは、夜空を切り裂くように飛行していた。

 

機内には、重苦しい緊張感が漂っている。

 

ロキは両手を拘束され、座席へ座らされていた。

 

だが、その表情に焦りはない。

 

むしろ、自分こそが勝者であるかのように、口元へ薄い笑みを浮かべている。

 

蓮は機内の壁へ背中を預け、その顔をじっと見つめていた。

 

「……簡単すぎる」

 

小さく呟く。

 

キャプテン・アメリカ――スティーブ・ロジャースも、同じようにロキへ警戒の視線を向けていた。

 

「僕もそう思う」

 

スティーブは静かに続ける。

 

「彼は降伏したというより、捕まるために姿を現したように見えた」

 

「ですよね」

 

蓮は腕を組んだ。

 

「ドイツであれだけ堂々と姿を見せて、大勢の人を集めて、わざと目立つように暴れた」

 

座席に座るロキを見る。

 

「それなのに、僕たちに囲まれた途端、あっさり降参した。絶対に何か企んでる」

 

ロキは何も答えなかった。

 

ただ、口元の笑みを僅かに深めただけだった。

 

その沈黙が、余計に不気味だった。

 

そこへ、アイアンマン――トニー・スタークが軽い調子で口を挟んだ。

 

「それか、キャプテンが年齢の割に動けたことに驚いたんじゃないか?」

 

スティーブは真顔でトニーを見る。

 

「僕は、まだ十分に動ける」

 

「それは見れば分かるさ」

 

トニーは悪びれる様子もなく続ける。

 

「氷漬け保存は、アンチエイジングとしてなかなか優秀らしい」

 

「スターク」

 

操縦席近くにいたナターシャが、低い声で注意する。

 

トニーは肩をすくめた。

 

「はいはい。空気を読む努力はしている」

 

「努力不足ですね」

 

蓮が思わず口にすると、トニーはすぐに彼へ顔を向けた。

 

「おっと。君が紫咲蓮か」

 

蓮は軽く会釈し、右手を差し出す。

 

「紫咲蓮です」

 

トニーもその手を握った。

 

「トニー・スターク。天才、億万長者――」

 

「プレイボーイ、慈善家でしたっけ」

 

蓮が先に続けると、トニーは満足そうに笑った。

 

「よく分かってるじゃないか」

 

「資料に書いてありました」

 

「僕も君の資料には目を通した」

 

トニーの視線が、蓮の腰に装着されたディケイドライバーへ向けられる。

 

「日本で活動している仮面ライダー。しかも、複数の仮面ライダーの力を自由に使えるらしいな」

 

その瞳に、科学者としての好奇心が宿る。

 

「ぜひ、そのベルトを詳しく調べたい」

 

蓮は即座に一歩後ろへ下がった。

 

「嫌です」

 

「断るのが早いな」

 

「スタークさんへ渡したら、絶対に分解するでしょう」

 

「分解ではない。解析だ」

 

「分解する人は、みんなそう言います」

 

「信用がないな」

 

「初対面で、人のベルトを調べたいと言い出す人を信用する方が難しいですよ」

 

トニーは怒るどころか、面白そうに笑った。

 

その会話の間も、クインジェットはヘリキャリアを目指して飛行を続けていた。

 

だが、その時だった。

 

ゴロゴロゴロ……。

 

夜空に、低い雷鳴が響いた。

 

クインジェットの機体が僅かに揺れる。

 

蓮は反射的に窓の外へ顔を向けた。

 

黒い雲。

 

激しく走る稲妻。

 

先ほどまで穏やかだった夜空が、突然荒れ始めている。

 

「……雷?」

 

ナターシャが操縦席へ視線を向ける。

 

「急激に天候が変化している」

 

蓮はガラス越しに空を見つめていたが、ふとロキの様子に気づいた。

 

ロキもまた、窓の外へ目を向けている。

 

その表情は、先ほどまでの余裕に満ちたものとは僅かに違っていた。

 

嫌悪。

 

苛立ち。

 

そして、隠しきれない警戒。

 

トニーもその変化へ気づき、軽い口調で尋ねた。

 

「どうした? 雷が怖いのか?」

 

ロキは静かに答える。

 

「雷そのものではない」

 

「なら、何が怖い?」

 

ロキの視線が、夜空を走る稲妻へ向けられる。

 

「雷の後に来る男が、嫌いなだけだ」

 

その直後。

 

ドンッ!

 

クインジェットの上部へ、何かが勢いよく落下した。

 

機体全体が激しく揺れる。

 

「何だ!?」

 

スティーブが即座に立ち上がった。

 

トニーの表情からも軽さが消える。

 

ヘルメットが展開され、アイアンマンのマスクが閉じた。

 

「どうやら、お客さんらしい」

 

蓮もライドブッカーへ手を伸ばした。

 

機体の天井から、重い足音が響いてくる。

 

金属製の外装を、一歩ずつ踏みしめるような音。

 

ナターシャが操縦席から声を上げた。

 

「機体の上に人影!」

 

「人影?」

 

蓮が眉をひそめた瞬間、後部ハッチが外側から強引にこじ開けられた。

 

激しい風が、一気に機内へ流れ込む。

 

開かれたハッチの向こうに、一人の大男が立っていた。

 

風になびく赤いマント。

 

銀色の鎧。

 

長い金髪。

 

そして、右手に握られた巨大なハンマー。

 

雷神ソー。

 

ソーは一切の迷いなく機内へ踏み込むと、アイアンマンへ向かってムジョルニアを振るった。

 

「ぐおっ!」

 

アイアンマンはまともに一撃を受け、機内の壁へ吹き飛ばされた。

 

鋼鉄の装甲が壁へ叩きつけられ、激しい金属音が響く。

 

「痛っ……! 初対面の挨拶がそれか!」

 

ソーはトニーの抗議へ答えなかった。

 

その視線は、拘束されているロキだけへ向けられている。

 

「ロキ」

 

ロキは、ため息をつくように笑った。

 

「兄上」

 

ソーはロキの体を掴むと、そのまま開かれたハッチへ向かった。

 

「待て!」

 

スティーブが叫ぶ。

 

しかし、ソーはロキを抱えたままクインジェットから飛び降りた。

 

二人の姿は、一瞬で夜空へ消えていく。

 

スティーブはハッチへ駆け寄った。

 

「あれは味方なのか?」

 

アイアンマンは壁から立ち上がりながら答える。

 

「味方なら、僕をハンマーで殴らないだろう」

 

そう言うと、アイアンマンは何の躊躇もなくハッチから飛び出した。

 

足裏のジェットブーツが点火し、夜空へ飛び去っていく。

 

蓮もすぐにハッチへ向かった。

 

その行動に気づいたスティーブが目を見開く。

 

「おい!」

 

蓮は振り返らない。

 

「僕も行きます!」

 

「パラシュートは!?」

 

蓮は答える代わりに、そのまま夜空へ飛び出した。

 

ナターシャが開いたハッチを見ながら、冷静に言う。

 

「彼、パラシュートを着けていないわよ」

 

スティーブは一瞬、言葉を失った。

 

「……彼も、そういうタイプなのか」

 

ナターシャは小さく肩をすくめた。

 

「今日は、そういう人ばかりね」

 

 

夜空。

 

蓮の体が、激しい風を切り裂きながら落下していく。

 

眼下には広大な森が広がっていた。

 

さらにその下方では、ソーの赤いマントと、アイアンマンのジェット噴射が見える。

 

蓮は自由落下を続けながら、ディケイドライバーを腰へ装着した。

 

「空中戦なら……!」

 

ライドブッカーから一枚のカードを引き抜く。

 

「変身!」

 

カードをドライバーへ挿入した。

 

《KAMEN RIDE》

 

《DECADE》

 

幾重ものカード状の影が蓮の体を通過し、黒とマゼンタの装甲を形成する。

 

仮面ライダーディケイド。

 

変身を完了させた蓮は、続けて新たなカードを取り出した。

 

《KAMEN RIDE》

 

《BLADE》

 

ディケイドの姿が変化する。

 

青と銀を基調とした装甲。

 

醒剣ブレイラウザーを持つ、仮面ライダーブレイド。

 

さらに、もう一枚のカードをディケイドライバーへ挿入した。

 

《FORM RIDE》

 

《BLADE JACK》

 

ブレイドの背中に、黄金色の翼が展開された。

 

仮面ライダーブレイド、ジャックフォーム。

 

「よし……!」

 

蓮は大きく翼を広げ、落下速度を制御した。

 

強風を受けながら滑空し、地上で輝くリパルサーと雷の光を追いかける。

 

 

すでに森の中では、ソーとアイアンマンが激しく衝突していた。

 

夜空を雷光が走り、リパルサーの閃光が木々を照らす。

 

アイアンマンが空中から両手を突き出し、リパルサー光線を放った。

 

ソーはムジョルニアを正面へ構え、光線を受け止める。

 

そのまま地面を蹴って飛び上がると、アイアンマンへ強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「ぐあっ!」

 

アイアンマンは地上へ吹き飛ばされ、何本もの木をなぎ倒していく。

 

「うわ……派手にやってるな!」

 

蓮は翼を畳みながら森へ降下し、二人から少し離れた地面へ着地した。

 

その近くにある岩場では、ロキが腰かけるようにして戦いを眺めていた。

 

まるで、自分とは何の関係もない芝居を楽しんでいるかのように。

 

蓮は一瞬、ロキへ視線を向ける。

 

「……これも、計算のうちなのか?」

 

だが、今はロキよりも、ソーとアイアンマンの争いを止める方が先だった。

 

蓮はブレイド・ジャックフォームのまま、二人の間へ飛び込む。

 

「二人とも、落ち着いてください!」

 

アイアンマンが倒れた木々の中から起き上がり、蓮へ顔を向けた。

 

「おっ。パラシュートなしで飛び降りた仮面ライダー君」

 

マスク越しに、楽しそうな声が響く。

 

「いいね。なかなか派手だ」

 

「褒めている場合ですか!」

 

ソーは蓮へ鋭い視線を向ける。

 

「退け。これはアスガルドの問題だ」

 

蓮は一度変身を解除した。

 

黄金の翼と青い装甲が光となって消え、紫咲蓮の姿へ戻る。

 

戦う意思がないことを示すため、ライドブッカーから手を離し、両手を軽く広げた。

 

「ソー。ロキを連れていくつもりなら、少し落ち着いてください」

 

ソーの目が細くなる。

 

「貴様、俺を知っているのか?」

 

「資料で少しだけ」

 

蓮は岩場に座るロキを一度見た。

 

「あなたがロキの兄で、彼を止めるために地球へ来たことも」

 

「ならば、邪魔をするな」

 

「邪魔をしたいわけではありません」

 

蓮はソーへ一歩近づく。

 

「僕たちもロキを確保する必要があります。盗まれた四次元キューブも、取り戻さなければならない」

 

「ロキはアスガルドへ連れ帰る」

 

「ですから、まず話し合いを――」

 

「話など、ロキには通じん」

 

ソーの声には、強い怒りが滲んでいた。

 

弟への苛立ち。

 

裏切られたことへの失望。

 

そして、それでも捨てきることのできない情。

 

蓮は、その複雑な感情を僅かに感じ取った。

 

「それでも、戦う相手を間違えないでください」

 

蓮はソーが握るムジョルニアへ目を向けた。

 

「ソーも、一度そのハンマーを置いてください」

 

その瞬間、周囲の空気が変わった。

 

ソーの表情が、一気に険しくなる。

 

「……この俺に、ムジョルニアを置けと言うのか?」

 

蓮は内心で、まずいと思った。

 

言い方を間違えた。

 

ムジョルニアは、ソーにとって単なる武器ではない。

 

雷神としての力。

 

戦士としての誇り。

 

自分自身を象徴する存在に近いのだろう。

 

横から、アイアンマンが口を挟む。

 

「無理だな。こいつはハンマーマニアだから」

 

ソーの視線が、ゆっくりとアイアンマンへ向けられた。

 

「今、何と言った?」

 

「ハンマー愛好家?」

 

トニーは挑発するように両手を広げる。

 

「それとも、ハンマー依存症の方が好みか?」

 

次の瞬間、ソーがムジョルニアを振り抜いた。

 

アイアンマンも反応した。

 

だが、完全に回避するには間に合わない。

 

「ぐはっ!」

 

アイアンマンは再び吹き飛ばされ、背中から岩場へ激突した。

 

蓮は思わず頭を抱えた。

 

「どうして挑発するんですか!」

 

アイアンマンは崩れた岩の中から立ち上がる。

 

「会話を円滑にするためだ」

 

「完全に火へ油を注いでます!」

 

ソーは蓮へ向き直った。

 

「貴様も俺の邪魔をするなら、容赦はしない」

 

蓮は深く息を吐いた。

 

「……やっぱり、話し合いは無理か」

 

少し離れた場所で、ロキが楽しそうに笑い声を漏らした。

 

「いいぞ、兄上。その調子だ」

 

蓮はロキを睨みつける。

 

「完全に面白がってるな……」

 

その時、森の上空からクインジェットのエンジン音が近づいてきた。

 

スティーブを乗せた機体が、戦闘地点へ向けて降下している。

 

しかし、クインジェットの到着を待つ余裕はなかった。

 

ソーとアイアンマンは、すでに再び激突しようとしている。

 

ソーの全身へ雷が集まる。

 

アイアンマンの胸部にあるアーク・リアクターが、強い光を放ち始める。

 

蓮は再びディケイドライバーを腰へ装着した。

 

「仕方ない」

 

ライドブッカーから一枚のカードを引き抜く。

 

「二人まとめて止める」

 

カードをディケイドライバーへ挿入した。

 

《KAMEN RIDE》

 

「変身!」

 

《DECADE》

 

幾重ものカードの影が蓮の体を通過する。

 

黒とマゼンタの装甲が形成され、仮面ライダーディケイドが再び森の中へ立った。

 

ディケイドはライドブッカーをソードモードへ変形させ、ソーとアイアンマンの間へ踏み出す。

 

雷神。

 

鋼鉄の男。

 

その争いを止めるために。

 

世界の破壊者が、二人の英雄の間へ割って入った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。