仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

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第17話 世界の破壊者と雷神

 

 

ソーの瞳が、怒りに染まる。

 

ムジョルニアを握る右腕へ、青白い雷が走った。

 

「そこを退け」

 

低く、腹の底まで響くような声。

 

単なる脅しではない。

 

目の前に立つ雷神は、本気で邪魔をする者を吹き飛ばすつもりだった。

 

ディケイドはライドブッカーをソードモードへ変形させ、正面に構える。

 

「退きません。まずは話を聞いてください」

 

「話は後だ。ロキを渡せ」

 

「だから、そのロキについて僕たちも――」

 

蓮が言い終えるよりも早く、ソーはムジョルニアを投げ放った。

 

雷を纏ったハンマーが唸りを上げ、一直線にディケイドへ迫る。

 

「っ……!」

 

ディケイドは反射的にライドブッカーを横へ構え、盾のようにして受け止めた。

 

防げる。

 

そう思った瞬間、両腕へ想像を遥かに超える衝撃が襲いかかった。

 

「ぐあっ!?」

 

ディケイドの体が、軽々と宙へ弾き飛ばされる。

 

背中から太い木の幹を突き破り、そのまま地面へ叩きつけられた。

 

土と枯れ葉が激しく舞い上がる。

 

「くっ……!」

 

ディケイドはライドブッカーを支えに、どうにか立ち上がった。

 

攻撃を受け止めた両腕が、激しく痺れている。

 

「あのハンマー……強すぎるだろ……!」

 

ムジョルニアは空中で大きな弧を描き、ソーの手元へ戻っていく。

 

ソーは飛来したハンマーを、当然のように片手で受け止めた。

 

その横からアイアンマンが飛び上がり、両手のリパルサーを放つ。

 

「おいおい。僕を吹き飛ばすだけじゃ飽き足らず、仮面ライダー君までホームランか?」

 

ソーはムジョルニアを振るい、リパルサー光線を弾き飛ばした。

 

「鉄の男、黙っていろ!」

 

「鉄じゃない。金とチタンの合金だ」

 

アイアンマンは空中で姿勢を整える。

 

「細かいが、重要な違いだぞ」

 

トニーが軽口を叩いている間に、ディケイドはライドブッカーから新たなカードを引き抜いた。

 

「力で押し切られるなら……!」

 

カードをディケイドライバーへ挿入する。

 

《KAMEN RIDE》

 

《HIBIKI》

 

ディケイドの装甲が消え、新たな姿へ変化した。

 

紫を基調とした肉体。

 

額から伸びる二本の角。

 

鍛え抜かれた鬼の力を宿す仮面ライダー。

 

仮面ライダー響鬼。

 

響鬼となった蓮は、両手へ音撃棒・烈火を構えた。

 

さらに一枚のカードを取り出す。

 

《ATTACK RIDE》

 

《ONGEKIBOU REKKA》

 

二本の音撃棒へ、赤い炎が燃え上がる。

 

蓮は勢いよく地面を蹴った。

 

「はあっ!」

 

炎を纏った音撃棒を、ソーへ向かって振り下ろす。

 

ソーはムジョルニアを掲げ、攻撃を受け止めた。

 

重い衝撃が周囲の空気を震わせる。

 

だが、それは単なる打撃ではなかった。

 

音撃。

 

音と炎による衝撃が、ムジョルニアを通してソーの腕から全身へ伝わっていく。

 

「ぬっ……!」

 

ソーの表情が僅かに歪んだ。

 

蓮はその隙を見逃さない。

 

もう一本の音撃棒を横薙ぎに振るい、ソーの脇腹へ叩き込む。

 

火花と炎が激しく弾けた。

 

ソーは数歩後退しながら、響鬼の姿をした蓮を睨む。

 

「貴様……話に聞くディケイドだな」

 

蓮は少しだけ首を傾げた。

 

「僕を知っているとは、光栄ですね」

 

言葉と同時に間合いを詰め、ソーの胸部へ蹴りを放つ。

 

ソーは腕で受け止めたが、その巨体が僅かに揺れた。

 

上空を飛ぶアイアンマンが尋ねる。

 

「ディケイドが何だ? そんなに有名人なのか?」

 

ソーはムジョルニアを構えたまま答える。

 

「仮面ライダーディケイド」

 

その目は、蓮の姿を見定めていた。

 

「世界を渡り、数多の戦士の力を操る者」

 

蓮は内心で驚いた。

 

まさか、アスガルドにまでディケイドの存在が知られているとは思わなかった。

 

ソーはさらに続ける。

 

「世界の破壊者とも呼ばれている」

 

アイアンマンの視線が、響鬼へ向けられた。

 

「世界の破壊者?」

 

トニーの声に、僅かな驚きが混ざる。

 

「肩書きが物騒すぎないか?」

 

蓮は軽く肩をすくめた。

 

「まあ、以前からそう呼ばれているだけですよ」

 

「今は違うのか?」

 

「今は、ホロライブのマネージャーです」

 

「情報量が多すぎる」

 

トニーが呆れたように言った。

 

蓮は新たなカードを取り出しながら、ソーへ語りかける。

 

「ソー。あなたが僕のことを知っているなら、話は早い」

 

「何?」

 

「僕は、あなたの敵ではありません」

 

「ならば、ロキを渡せ」

 

「それはできません」

 

「ならば敵だ」

 

「短絡的すぎます!」

 

蓮はカードをディケイドライバーへ挿入した。

 

《KAMEN RIDE》

 

《KABUTO》

 

紫色の鬼の姿が消え、赤と銀を基調とした装甲へ変化する。

 

仮面ライダーカブト。

 

ソーは目の前で繰り返される変身を見て、眉をひそめた。

 

「貴様、あと幾つの姿を残している?」

 

カブトとなった蓮は、一瞬考え込んだ。

 

「えっと……平成ライダーだけでも……」

 

頭の中で数えようとしたものの、途中で諦める。

 

「忘れました」

 

「忘れるほどあるのか!?」

 

アイアンマンが思わず声を上げた。

 

「僕としては、そこを詳しく調べたいな」

 

「調べさせませんよ」

 

蓮は次のカードを引き抜いた。

 

《ATTACK RIDE》

 

《CLOCK UP》

 

音声が響いた瞬間、世界の速度が変わった。

 

宙を舞う火花。

 

風に流される枯れ葉。

 

空中に浮かぶアイアンマン。

 

そのすべてが、静止したかのように遅くなる。

 

ムジョルニアを構えたソーの動きも、僅かに見えるほど遅くなっていた。

 

蓮は地面を蹴り、ソーの懐へ一気に踏み込む。

 

一撃目。

 

腹部へ拳を叩き込む。

 

二撃目。

 

膝裏へ蹴りを入れ、体勢を崩す。

 

三撃目。

 

ムジョルニアを握る腕を弾き、攻撃の軌道を逸らす。

 

四撃目。

 

ソーの胸部へ、強烈な回し蹴りを叩き込んだ。

 

《CLOCK OVER》

 

世界が本来の速度へ戻る。

 

次の瞬間、ソーの体へ連続した衝撃が一斉に襲いかかった。

 

「ぐおっ!」

 

雷神の巨体が大きく吹き飛び、岩場へ叩きつけられる。

 

衝突した岩が砕け、地面が大きく揺れた。

 

空中で停止していたアイアンマンが、感心したように言う。

 

「今の動きはまったく見えなかった」

 

蓮はソーから目を離さず答える。

 

「クロックアップです」

 

「後でスロー再生して見せてくれ」

 

「スタークさん。今は戦闘中ですよ」

 

「だからこそ解析したいんだ」

 

「ベルトもクロックアップも解析禁止です」

 

「君、本当に守りが固いな」

 

「あなたが油断できないだけです」

 

カブトは岩場へ目を向ける。

 

砕けた岩を押し退け、ソーがゆっくりと立ち上がった。

 

傷らしい傷は見当たらない。

 

だが、先ほどまでの激しい怒りは僅かに薄れていた。

 

代わりに、その瞳には警戒と興味が宿っている。

 

「なるほど……」

 

ソーはムジョルニアを握り直した。

 

「ただの地球の戦士ではないようだな」

 

「ですから、最初から話を聞いてほしいと言ってるんです」

 

蓮は変身を解除しないまま、構えを僅かに下げた。

 

「僕たちもロキを追っています」

 

ソーは黙っている。

 

「彼はS.H.I.E.L.D.から四次元キューブを盗みました。何を企んでいるのか、僕たちも調べている」

 

「四次元キューブ……」

 

ソーの表情が僅かに険しくなる。

 

蓮は一歩だけ前へ出た。

 

「あなたがロキをアスガルドへ連れ帰りたい気持ちは分かります」

 

ソーの握るムジョルニアへ視線を向ける。

 

「弟なんですよね」

 

ソーの目が僅かに揺れた。

 

「……あやつは、俺の弟だ」

 

「だったら、なおさら僕たちと争っている場合ではありません」

 

蓮は森の奥へ目を向ける。

 

岩場では、ロキが逃げようともせず、静かにこちらを眺めていた。

 

まるで、自分のために兄と英雄たちが争う様子を楽しんでいるかのように。

 

「ロキは、僕たちへ捕まることを選びました」

 

「何?」

 

「ドイツでわざと目立つように行動して、囲まれた途端に降伏した」

 

蓮はロキを見つめたまま続ける。

 

「そして今、あなたが現れることも予想していたように見えます」

 

ソーも、ゆっくりとロキへ視線を向けた。

 

ロキは薄い笑みを浮かべる。

 

「兄上は、昔から分かりやすいからな」

 

ソーの拳へ力が入った。

 

ムジョルニアを包む雷が強まる。

 

蓮はすぐに声を上げた。

 

「挑発に乗らないでください」

 

ソーは鋭い目で蓮を睨んだ。

 

「貴様に何が分かる」

 

「分かりませんよ」

 

蓮は正直に答える。

 

「アスガルドの事情も、あなたたち兄弟に何があったのかも、僕には分かりません」

 

それでも、静かに言葉を続けた。

 

「でも、家族を心配する気持ちなら、少しは分かります」

 

ソーの表情が僅かに変わる。

 

「僕にも姉がいます」

 

蓮の脳裏へ、シオンの姿が浮かんだ。

 

「今日、その姉が怪人に狙われました。連れ去られて、過去まで壊されかけた」

 

カブトの拳を、ゆっくりと握る。

 

「だから僕は、姉や仲間を守るために、今ここにいます」

 

少し離れた場所から、アイアンマンが小さく呟く。

 

「急に重い話になったな」

 

蓮はトニーの言葉を無視した。

 

「家族を守りたいのなら、怒りだけで行動しないでください」

 

ソーを真っすぐ見据える。

 

「ロキが本当に何を企んでいるのか、一緒に調べましょう」

 

ソーは長い間、蓮を見つめていた。

 

森の上空では、低い雷鳴が響き続けている。

 

しかし、その音は先ほどまでよりも僅かに穏やかになっていた。

 

そこへ、クインジェットのエンジン音が近づいてくる。

 

機体は木々の上で高度を下げ、後部ハッチを開いた。

 

「そこまでだ!」

 

クインジェットから、スティーブが盾を構えたまま飛び降りる。

 

地面へ着地すると、ソー、カブト、アイアンマンの間へ入った。

 

「全員、武器を下ろせ」

 

アイアンマンは空中で両手を広げた。

 

「僕は最初から、比較的冷静だった」

 

蓮が即座に反論する。

 

「一番挑発していたのは、スタークさんです」

 

「会話を盛り上げていただけだ」

 

「盛り上がりすぎて、森が壊れてます」

 

スティーブは呆れたように息を吐き、ソーへ視線を向けた。

 

「君がソーか」

 

ソーもスティーブを見る。

 

「貴様は何者だ?」

 

「スティーブ・ロジャース」

 

盾を僅かに下げながら続ける。

 

「ロキは、現在我々の管理下にある。彼を連れていきたいのなら、まず話をするべきだ」

 

ソーはしばらく沈黙した。

 

スティーブ。

 

蓮。

 

アイアンマン。

 

そして、離れた岩場で笑みを浮かべるロキ。

 

全員を順番に見た後、ムジョルニアをゆっくりと下ろす。

 

「……分かった」

 

蓮はようやく、安堵の息を吐いた。

 

「助かった……」

 

しかし、その瞬間。

 

アイアンマンが小声で呟いた。

 

「やっぱり、ハンマーは置かないんだな」

 

ソーの眉がぴくりと動いた。

 

蓮が勢いよく振り返る。

 

「スタークさん!」

 

ソーが一歩前へ踏み出す。

 

「鉄の男」

 

「待って、待ってください!」

 

蓮はカブトの姿のまま、慌てて二人の間へ割って入った。

 

「今、ようやく話がまとまりかけたところなんです!」

 

スティーブも盾を構え直し、深くため息をつく。

 

「君たちは、本当に協調性がないな」

 

アイアンマンが悪びれる様子もなく答える。

 

「僕は、元々チームワーク向きじゃない」

 

蓮は即答した。

 

「知ってます」

 

少し離れた岩場では、ロキが楽しそうに笑っていた。

 

「なかなかの見物だな」

 

蓮はロキを鋭く睨む。

 

「笑っていられるのも今のうちですよ」

 

「ほう?」

 

「あなたには、聞きたいことが山ほどあります」

 

ロキは余裕の笑みを崩さない。

 

「答えるかどうかは、また別の話だ」

 

「でしょうね」

 

蓮はディケイドライバーへ手を伸ばし、変身を解除した。

 

カブトの装甲が光となって消え、紫咲蓮の姿へ戻る。

 

それから、ロキ、ソー、アイアンマン、スティーブを順番に見た。

 

「とりあえず、ヘリキャリアへ戻りましょう」

 

トニーが地面へ降り立つ。

 

「戻ったら、すぐに尋問か?」

 

「その前に、状況整理とブリーフィングです」

 

「真面目だな」

 

「僕の本職はマネージャーですから」

 

蓮はライドブッカーを腰へ戻す。

 

「スケジュール管理には、かなりうるさいですよ」

 

スティーブが頷いた。

 

「いい判断だ」

 

ソーはロキの前まで歩き、弟を睨みつける。

 

「ロキ。お前は俺と共に来い」

 

ロキは薄く笑った。

 

「兄上が、そう望むのなら」

 

蓮は、その従順すぎる態度へ再び違和感を覚えた。

 

ロキは逃げようとしない。

 

抵抗もしない。

 

すべてが、自分の思惑通りに進んでいるかのように振る舞っている。

 

誰かが動くことを待っているのか。

 

何かが揃うことを望んでいるのか。

 

あるいは、この場にいる全員がヘリキャリアへ集まることこそが、ロキの狙いなのか。

 

蓮は夜空を見上げた。

 

厚い雲の向こうには、ヘリキャリアが待っている。

 

そして明日には、シオンをはじめとしたホロライブの面々も、S.H.I.E.L.D.の管理下へ移送される。

 

「……急がないと」

 

蓮は誰にも聞こえないほどの声で呟いた。

 

森に響いていた雷鳴は、次第に遠ざかっていく。

 

だが、本当の嵐は――。

 

まだ、始まってすらいなかった。

 

 

 

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