仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

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第3話 俺、参上……できない?

 

紫咲蓮は、マネージャー室のデスクでパソコンを開いていた。

 

画面に映っているのは、紫咲シオンの配信画面だ。

 

今日のシオンは、いつものように雑談配信をしていた。

 

ゲームの話をしていたかと思えば、突然コンビニの新作スイーツの話になり、そこからなぜか宇宙人の話へ飛び、最終的には「シオンちゃんが本気を出せば、ハーバードどころか宇宙大学も余裕」と言い始めている。

 

蓮は片手でマウスを動かしながら、もう片方の手でこめかみを押さえた。

 

「……にしても、この姉は話が飛ぶな」

 

コメント欄は大いに盛り上がっていた。

 

『また話飛んだw』

 

『今、何の話してたっけ?』

 

『シオンちゃん天才だからな』

 

『宇宙大学って何?』

 

シオンは画面の向こうで、得意げに笑っている。

 

『つまりね、シオンちゃんレベルになると、話題もワールドワイドってわけ!』

 

「いや、ワールドワイドじゃなくて迷子なんだよな……」

 

蓮は小さく呟いた。

 

マネージャーとしては、配信中に事故が起きないよう見守る必要がある。

 

姉として見れば危なっかしい。

 

弟として見れば、いつものことだった。

 

そんな穏やかな時間が、これからも続く。

 

蓮は、どこかでそう思っていた。

 

だが突然、マネージャー室の扉が勢いよく開いた。

 

「避難してください!」

 

警備員が、息を切らしながら飛び込んでくる。

 

室内にいたマネージャーたちが、一斉に振り返った。

 

「どうしました!?」

 

「エントランスに不審者がいます! ものすごく強くて……危険です!」

 

「不審者?」

 

「警察には連絡したんですか!?」

 

「現在、通報中です! ですが、あれは普通じゃありません!」

 

警備員の顔は青ざめていた。

 

ただの迷惑客ではない。

 

ただの暴漢でもない。

 

蓮はその表情を見た瞬間、嫌な予感を覚えた。

 

「……まさか」

 

次の瞬間、建物全体が大きく揺れた。

 

ドゴォンッ!

 

遠くで、何かが壊れる音が響く。

 

悲鳴。

 

怒号。

 

廊下を走る足音。

 

マネージャーたちは、一斉に椅子から立ち上がった。

 

「今日来ているタレントを避難させて!」

 

「配信部屋に向かいます!」

 

「スタッフは非常口を確認してください!」

 

蓮もすぐに立ち上がり、シオンのいる配信部屋へ向かった。

 

廊下では、社員たちが慌ただしく動いている。

 

普段なら静かなスタジオエリアも、今は混乱に包まれていた。

 

蓮は走りながら、スマートフォンでシオンの配信を確認する。

 

配信は、まだ続いていた。

 

『え? なんか揺れた? 地震?』

 

画面の向こうで、シオンが不安そうに周囲を見回している。

 

「シオン……!」

 

蓮は配信部屋の扉を開けた。

 

「シオン!」

 

「あ、蓮! 今、なんかすごい音しなかった!?」

 

「配信を切って。すぐに避難するよ」

 

「え、何? 本当にやばいやつ?」

 

蓮が答えるよりも早く、廊下の壁が爆発した。

 

ドガァァァンッ!

 

コンクリートの破片と粉塵が飛び散り、廊下にいたスタッフたちが悲鳴を上げる。

 

破壊された壁の向こうから、砂のような体を持つ怪人が姿を現した。

 

上半身と下半身が不自然に繋がった、異形の存在。

 

赤く光る目。

 

体の至るところから、絶えず砂が零れ落ちている。

 

怪人は低い声で告げた。

 

「紫咲シオンはどこだ」

 

シオンの顔から、一瞬で血の気が引いた。

 

「……え?」

 

蓮は一歩前へ出た。

 

シオンを背中に庇うようにして、怪人の前へ立ちはだかる。

 

「知っていると言ったら?」

 

怪人の赤い目が、蓮を睨みつける。

 

「連れていく」

 

「本人の許可もなく?」

 

「契約者の望みだ」

 

「……契約者?」

 

蓮の目が細くなった。

 

その言葉で、怪人の正体に気づく。

 

願いを叶える。

 

契約者。

 

そして、砂のような体。

 

「イマジンか」

 

怪人は答えず、拳を振り上げた。

 

「どけ!」

 

怪人の拳が蓮へ迫る。

 

しかし、蓮は体をひねって攻撃を避けた。

 

そのまま怪人の腕を掴み、突進の勢いを利用して壁へ叩きつける。

 

ドンッ!

 

壁に大きなひびが入った。

 

「シオン、逃げろ!」

 

「で、でも、蓮が!」

 

「いいから!」

 

蓮の鋭い声に、シオンはびくりと肩を震わせた。

 

普段の蓮は、滅多に大声を出さない。

 

だからこそ、その一言には逆らえなかった。

 

シオンは唇を噛み、スタッフに手を引かれながら走り出す。

 

怪人は、逃げるシオンを追おうとした。

 

「逃がすか!」

 

「お前の相手は僕だ」

 

蓮が再び、その進路へ立ちはだかる。

 

怪人は苛立ったように唸った。

 

「人間の分際で、何ができる」

 

蓮は懐から、ディケイドライバーを取り出した。

 

その瞬間、怪人の動きが止まる。

 

「お前……まさか……」

 

蓮は腰にドライバーを装着した。

 

ライドブッカーから一枚のカードを引き抜き、静かに正面へ構える。

 

「変身」

 

《KAMEN RIDE》

 

カードをディケイドライバーへ挿入する。

 

《DECADE》

 

幾重ものカード状の影が蓮の体を通過し、黒とマゼンタの装甲が形成されていく。

 

仮面ライダーディケイド。

 

廊下に残っていたスタッフたちは、目の前で起きた光景に言葉を失っていた。

 

「仮面……ライダー……?」

 

「本物……なのか?」

 

ディケイドは、イマジンを見据える。

 

「お前、イマジンだろ。どんな奴と契約したんだ?」

 

怪人の赤い目が、激しく光った。

 

「俺たちイマジンの仇……!」

 

「話す気はないか」

 

次の瞬間、イマジンが突進してきた。

 

ディケイドも真正面から受け止める。

 

二人の体が、廊下の床を削りながら激しく押し合った。

 

「ぐっ……!」

 

イマジンの力は強い。

 

単純な腕力だけならば、人間を遥かに超えている。

 

だが、ディケイドも押し負けない。

 

「ここで暴れられると……困るんだよ!」

 

ディケイドは、イマジンの腹部へ膝を叩き込んだ。

 

イマジンがよろめく。

 

しかし、その腕がディケイドの肩を掴んだ。

 

「なら、外で死ね!」

 

イマジンはディケイドを掴んだまま、外壁へ突っ込んだ。

 

ドゴォォォンッ!

 

カバー株式会社のビルの壁が崩れ、二つの影が外へ飛び出す。

 

空中へ投げ出されるディケイド。

 

そのままイマジンと取っ組み合いになりながら、地上へ落下していく。

 

「うおおおっ!」

 

地面へ叩きつけられる直前、ディケイドは空中で体勢を変えた。

 

イマジンを下にして、落下の衝撃を受けさせる。

 

ドンッ!

 

地面が割れ、大量の砂埃が舞った。

 

周囲を歩いていた人々が悲鳴を上げ、我先にと逃げ出していく。

 

ディケイドは立ち上がりながら、ライドブッカーを剣形態へ変形させた。

 

「事務所を壊した分、請求してやりたいな……!」

 

ライドブッカーからカードを一枚取り出し、ディケイドライバーへ挿入する。

 

《ATTACK RIDE》

 

《SLASH》

 

ライドブッカーの刃に、眩いエネルギーが走った。

 

ディケイドは一気に踏み込み、イマジンへ斬りかかる。

 

一撃。

 

二撃。

 

三撃。

 

光を帯びた斬撃が、イマジンの体を次々と切り裂いた。

 

「ぐああっ!」

 

イマジンが大きく後退する。

 

ディケイドはその隙を逃さず、腹部へ強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

イマジンの体が、車道の方角へ吹き飛ばされる。

 

「イマジンなら……こいつだな」

 

ディケイドはライドブッカーから、新たなカードを取り出した。

 

そこに描かれているのは、時を超える列車のライダー。

 

仮面ライダー電王。

 

「力を借りるよ」

 

カードをディケイドライバーへ挿入する。

 

《KAMEN RIDE》

 

《DEN-O》

 

ディケイドの装甲が変化した。

 

赤を基調とした装甲。

 

桃のような形をした複眼。

 

仮面ライダー電王、ソードフォーム。

 

電王となった蓮は、ライドブッカーを構え直す。

 

「手始めに、これだ」

 

カードを一枚引き抜き、ディケイドライバーへ挿入した。

 

《ATTACK RIDE》

 

《ORE, SANJOU》

 

電王はゆっくりと右手を上げ、指を立てる。

 

そして、妙に決まったポーズで叫んだ。

 

「俺、参上!」

 

沈黙。

 

何も起こらない。

 

イマジンは、困惑したように首を傾げた。

 

「……それがどうした」

 

電王も、一瞬だけ固まった。

 

「……え?」

 

イマジンは、さらに困惑した顔をする。

 

「いや、だから何だ。何かが起きるのか?」

 

電王は、そっと手元のカードへ視線を落とした。

 

「……いや、たぶん決め台詞だけだ」

 

「決め台詞?」

 

「たぶん」

 

自分で答えていて、悲しくなってきた。

 

――なんだ、このカード。

 

ディケイドのアタックライドは、本来なら変身した仮面ライダーの技や能力を再現するものだ。

 

だが、電王のカードに限っては、どうにも様子がおかしい。

 

いや、原因には心当たりがあった。

 

「あの阿呆どもめ……」

 

電王の力に深く関わる、個性豊かなイマジンたちの顔が脳裏をよぎる。

 

蓮は気を取り直し、次のカードを引き抜いた。

 

「じゃあ、こいつだ」

 

《ATTACK RIDE》

 

《KOTAE WA KIITENAI》

 

電王の装甲が変化する。

 

赤いソードフォームから、紫色を基調としたガンフォームへ。

 

電王ガンフォームとなった蓮は、なぜかその場で体を小刻みに揺らし始めた。

 

リズムを取るように、自然と足が動く。

 

「……え、ちょっと待って」

 

体が勝手に踊り始める。

 

軽快なステップを踏みながら、電王ガンフォームは武器を構えた。

 

そして、勢いよく言い放つ。

 

「答えは聞いてない!」

 

イマジンは、完全に困惑していた。

 

「俺、何か質問したか?」

 

「僕も知らない!」

 

蓮は思わず叫んだ。

 

変身している本人が、一番混乱していた。

 

イマジンはしばらく黙っていたが、やがて苛立ったように拳を握りしめる。

 

「何か意味があるのか?」

 

「僕に聞くな!」

 

「お前の技だろうが!」

 

「僕が一番聞きたい!」

 

ガンフォームのまま、蓮はライドブッカーを開いた。

 

中には、まだ電王系のアタックライドカードが残っている。

 

二枚のカードを取り出す。

 

一枚には、こう書かれていた。

 

《BOKU NI TSURARETE MIRU?》

 

もう一枚には――。

 

蓮はそのカードを見て、一瞬だけ悩んだ。

 

《NAKERUDE》

 

「……どっちだ」

 

どちらも嫌な予感しかしない。

 

僕に釣られてみる?

 

泣けるで。

 

効果が技なのか、ただの決め台詞なのか。

 

もはや判別できなかった。

 

「いや、でも今の状況なら……」

 

蓮が迷った、その瞬間だった。

 

イマジンが腕を振り上げる。

 

「死ね!」

 

砂によって形成された刃のような斬撃が、電王へ向かって飛んできた。

 

「しまっ――!」

 

判断が遅れた。

 

回避が間に合わない。

 

斬撃が、電王の胸部を直撃した。

 

激しい火花が散り、蓮の体が大きく吹き飛ばされる。

 

「ぐあっ!」

 

アスファルトの上を転がり、背中からビルの壁へ叩きつけられた。

 

手にしていた二枚のカードが、宙へ舞う。

 

そのうちの一枚が、ひらひらと落ちてきた。

 

蓮の目の前へ落ちたカードには、こう書かれている。

 

《NAKERUDE》

 

泣けるで。

 

蓮はその文字を見つめ、思わず呟いた。

 

「……本当に泣けてきた」

 

 




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