仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人― 作:十六夜 蓮
ニューヨークの空は、未だ裂けたままだった。
スターク・タワーの屋上から伸びる、青白い光の柱。
その先に開いた巨大なゲートから、チタウリの飛行艇が次々と地球側へ降下している。
ディケイドは、アギトトルネイダーの上に立っていた。
ビルの谷間を滑るように飛びながら、迫ってきたチタウリ兵へライドブッカーを振るう。
「はあっ!」
マゼンタの刃が、飛びかかってきた兵士を斬り払った。
すぐにライドブッカーをガンモードへ切り替える。
引き金を連続して引いた。
放たれた光弾が飛行艇の装甲を貫き、エンジン部へ命中する。
飛行艇は激しく火を噴きながらビルの外壁を掠め、そのまま空中で爆発した。
ドォン!
爆風を避けるように、アギトトルネイダーが大きく旋回する。
『蓮くん!』
AZKiの声が、トルネイダーから響いた。
『このままじゃ、きりがないよ!』
「分かってる!」
ディケイドは新たに降下してくる飛行艇へ銃口を向ける。
一機を撃ち抜いた直後、その後方からさらに三機が姿を現した。
『やっぱり、あの穴を何とかしないと駄目なんじゃない?』
ディケイドは上空のゲートを見上げた。
チタウリの数は、まるで減っていない。
倒しても。
撃ち落としても。
向こう側から、次の部隊が現れる。
このまま戦い続ければ、いずれこちらが先に消耗する。
空中の防衛線が崩れれば、地上で市民を守っている仲間たちまで包囲される。
「……やっぱり、それしかないな」
蓮は短く息を吐いた。
「AZKi、スターク・タワーの屋上へ!」
『分かった!』
アギトトルネイダーが機首を上げた。
一気に上昇し、青い光を放ち続けるスターク・タワーへ向かう。
それを阻止しようと、複数のチタウリ飛行艇が進路へ割り込んだ。
「邪魔!」
ディケイドは正面から迫った一機へ飛び移る。
ライドブッカーを振り抜き、操縦していたチタウリ兵を斬り飛ばした。
そのまま機体を蹴って跳躍する。
別の飛行艇の上へ着地し、銃口を足元へ向けた。
ドンッ!
至近距離から放たれた光弾が、機体内部を貫通する。
ディケイドは爆発寸前に飛び離れ、再びアギトトルネイダーへ着地した。
最後に残った飛行艇が横から突撃してくる。
「そこをどいて!」
AZKiの声と同時に、アギトトルネイダーが鋭く機体を傾けた。
敵の突進を紙一重で回避する。
すれ違う瞬間、ディケイドが飛行艇へ蹴りを叩き込んだ。
チタウリの機体は進路を大きく逸らし、そのまま別の飛行艇へ衝突する。
二機は絡み合うように落下し、空中で爆発した。
「屋上が見えた!」
アギトトルネイダーは青い光の柱へ接近し、スターク・タワーの屋上へ降下した。
◇
ディケイドがトルネイダーから飛び降りる。
ブーツが屋上の床へ触れた瞬間、周囲の空気が激しく震えた。
同時に、アギトトルネイダーの全身が黄金色の光へ包まれる。
飛行形態が解け、光の中から仮面ライダーアギトとなったAZKiが姿を現した。
アギトは僅かによろめいたものの、すぐに体勢を立て直す。
屋上の中央。
そこには、巨大な機械装置が設置されていた。
複雑に組み上げられた金属製のフレーム。
幾つもの制御装置。
その中心へ固定されている、四次元キューブ。
キューブから放出される青いエネルギーは、凄まじい勢いで上空へ伸びている。
近づくだけで、全身の装甲が振動した。
空気が焼ける。
皮膚の内側まで痺れるような、圧倒的なエネルギー。
キューブの周囲には、目には見えにくい青い膜が展開されていた。
アイアンマンのリパルサーすら跳ね返した、強力な防御障壁。
ディケイドはライドブッカーを強く握る。
「あれを壊す」
アギトは四次元キューブを見据えたまま頷いた。
「うん」
「一度で決めるよ」
ディケイドはライドブッカーから、一枚のカードを引き抜いた。
「一気にいこう」
カードをディケイドライバーへ挿入する。
《FINAL ATTACK RIDE》
バックルを閉じた。
《D-D-D-DECADE》
ディケイドと装置の間へ、巨大なカードが何枚も出現した。
マゼンタの光を放つカードが、四次元キューブまで一直線に並んでいく。
それは必殺の一撃を増幅するための、光の道。
隣に立つアギトも、ゆっくりと構えを取った。
頭部にあるクロスホーンが大きく展開する。
アギトの足元へ、黄金色の紋章が浮かび上がった。
紋章が回転を始める。
黄金の力が渦を巻き、両脚へ集まっていく。
周囲の空気が震え、屋上に積もっていた細かな瓦礫が僅かに浮かび上がった。
ディケイドは横目でアギトを見る。
「AZKi、いける?」
アギトは迷わず答えた。
「もちろん」
「じゃあ、合わせる!」
二人は同時に屋上を蹴った。
ディケイドが、光のカードを潜り抜ける。
一枚。
二枚。
三枚。
通過するたびに、右脚へ集まるエネルギーが増大していく。
アギトも黄金の紋章を両足へ纏い、空中で姿勢を整えた。
マゼンタの光。
黄金の光。
二つの必殺キックが、四次元キューブを中心とした装置へ向かう。
「はああああっ!」
「やああああっ!」
二人の蹴りが、防御障壁へ同時に直撃した。
ドゴォォォォン!
凄まじい轟音が、スターク・タワー全体を揺らした。
マゼンタと黄金のエネルギーが、青い障壁へ食い込む。
障壁の表面へ、無数の波紋が広がった。
「っ……!」
ディケイドはさらに力を込める。
「破れろ……!」
アギトも全身のエネルギーを右脚へ集中させた。
「あと少し……!」
しかし。
障壁は破れなかった。
四次元キューブから新たなエネルギーが溢れ、二人のライダーキックを押し返していく。
「弾かれる……!」
次の瞬間。
青い障壁が、蓄積した力を一気に解放した。
ドォン!
凄まじい反発力が、ディケイドとアギトを吹き飛ばす。
二人は屋上の床へ叩きつけられ、そのまま何度も転がった。
ディケイドはライドブッカーを床へ突き立て、辛うじて体を止める。
アギトも片膝をつきながら、どうにか姿勢を立て直した。
「くっ……!」
ディケイドは装置を睨みつける。
「ライダー二人分の必殺キックでも駄目なのか……!」
アギトも荒い呼吸を整えながら立ち上がった。
「バリアが強すぎる……」
二人の攻撃を受けても、装置は全く損傷していない。
青い光は変わらず空へ伸び続け、ゲートも閉じる気配を見せなかった。
その時だった。
装置の近くから、小さな呻き声が聞こえた。
「う……」
ディケイドが即座に振り返る。
「博士!」
屋上の床には、セルヴィグ博士が倒れていた。
先ほどアイアンマンが放った攻撃と、装置の反射エネルギーによって吹き飛ばされていたのだ。
セルヴィグは額を押さえながら、ゆっくりと上半身を起こす。
その目には、先ほどまであった不自然な青い光が残っていない。
ロキによる精神支配が、解け始めている。
「私は……」
セルヴィグは周囲を見回した。
「何を……」
ディケイドは警戒を解かないまま、ゆっくりと博士へ近づいた。
「セルヴィグ博士」
声をかける。
「僕の声が聞こえますか?」
セルヴィグはディケイドを見た。
続いて、自分が作り上げた装置へ視線を移す。
空へ伸びる青い光。
上空に開いた巨大なゲート。
その向こうから降り続ける、異星人の軍勢。
セルヴィグの顔が、絶望に染まった。
「開いてしまった……」
アギトも近づく。
「博士」
四次元キューブを見ながら尋ねた。
「止める方法はないんですか?」
セルヴィグは苦しそうに息を吐いた。
自分の頭の中に残っている設計図と、ロキの支配下で行った作業を思い返す。
やがて、震える声で答えた。
「ロキの杖だ」
ディケイドの複眼が、セルヴィグへ向けられる。
「杖?」
「あの杖のエネルギーなら……」
セルヴィグは装置を指さした。
「キューブが生み出した防御障壁を突破できる」
「どうしてですか?」
アギトが尋ねる。
「杖に収められた力は、キューブと極めて近い性質を持っている」
セルヴィグは額を押さえながら続けた。
「同質のエネルギーであれば、外側から力ずくで破壊するのではなく、障壁そのものを通過できるはずだ」
ディケイドは四次元キューブを見た。
先ほどの必殺キックでも傷一つつかなかった防御障壁。
正面から破壊するのではない。
同じ性質を持つ力で、内側へ干渉する必要がある。
セルヴィグは、震える両手を見下ろした。
「キューブそのものは、悪ではない」
苦しそうに言葉を絞り出す。
「悪いのは……私だ」
「違う」
ディケイドは即座に否定した。
「あなたはロキに操られていた」
セルヴィグはゆっくりと首を横に振った。
「いや……」
その瞳には、深い後悔が浮かんでいた。
「自覚はあった」
ディケイドとアギトが息を呑む。
セルヴィグは、装置を見つめたまま話し続ける。
「完全に意識を失っていたわけではない」
「ロキの命令も、自分が何を作っているのかも分かっていた」
「それでも、止められなかった」
両手を強く握る。
「知識への欲望」
「未知の宇宙へ触れたいという願い」
「自分なら制御できるという傲慢さ」
「そして、ロキへの恐怖」
セルヴィグは苦しそうに目を閉じた。
「杖に触れられたことで、私の中にあったすべての弱さが膨れ上がった」
ディケイドは静かに博士の言葉を聞いていた。
「だから……」
セルヴィグは再び目を開く。
「せめてもの抵抗として、装置へ安全装置を組み込んだ」
アギトは四次元キューブを守る障壁を見る。
「それが、ロキの杖?」
セルヴィグは頷いた。
「あの杖があれば、キューブのエネルギー場を中和できる」
「杖の先端を障壁の内側へ入れ、キューブへ干渉するんだ」
「そうすれば、ゲートを閉じられる」
ディケイドはすぐに通信回線を開いた。
「トニー、聞こえる?」
数秒の雑音。
上空では、アイアンマンが飛行艇の群れを相手に戦い続けている。
『聞こえている』
爆発音とリパルサーの発射音が通信へ混ざった。
『今度は何だ?』
「ロキの杖が必要です」
『杖?』
トニーは飛行艇を一機撃ち抜きながら答える。
『最後に見たのは、僕のペントハウスだ』
一瞬だけ間を置く。
『ロキに窓から投げ捨てられる前にな』
「ペントハウスの中に残ってる?」
『恐らくな。あの後、あいつは屋上へ移動した』
「了解」
ディケイドは通信を切った。
屋上の縁まで歩き、下を覗き込む。
スターク・タワー上層部のペントハウス。
そこは先ほどまで、トニーとロキが対峙していた場所。
破壊された窓。
倒れた家具。
そして、そのどこかにロキの杖が落ちている。
アギトがディケイドの隣へ並んだ。
「取りに行く?」
ディケイドは頷く。
「うん」
しかし、すぐに屋上へ固定された四次元キューブを振り返る。
セルヴィグ博士を一人で残すわけにはいかない。
チタウリ兵が屋上へ降下してくる可能性もある。
さらに、杖を手に入れた後。
強力な防御障壁へ近づき、キューブへ直接干渉しなければならない。
「AZKiは博士を守って」
「蓮くんは?」
ディケイドはライドブッカーから、一枚のカードを引き抜いた。
カードの表面へ描かれている戦士を見つめる。
「僕は杖を取りに行く」
アギトは一瞬だけカードを見た。
「その力を使うの?」
「杖を探して、ここまで運ぶなら――」
ディケイドはカードをディケイドライバーの前へ構えた。
「使う時だな」