仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

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第33話 安全装置

 

 

ニューヨークの空は、未だ裂けたままだった。

 

スターク・タワーの屋上から伸びる、青白い光の柱。

 

その先に開いた巨大なゲートから、チタウリの飛行艇が次々と地球側へ降下している。

 

ディケイドは、アギトトルネイダーの上に立っていた。

 

ビルの谷間を滑るように飛びながら、迫ってきたチタウリ兵へライドブッカーを振るう。

 

「はあっ!」

 

マゼンタの刃が、飛びかかってきた兵士を斬り払った。

 

すぐにライドブッカーをガンモードへ切り替える。

 

引き金を連続して引いた。

 

放たれた光弾が飛行艇の装甲を貫き、エンジン部へ命中する。

 

飛行艇は激しく火を噴きながらビルの外壁を掠め、そのまま空中で爆発した。

 

ドォン!

 

爆風を避けるように、アギトトルネイダーが大きく旋回する。

 

『蓮くん!』

 

AZKiの声が、トルネイダーから響いた。

 

『このままじゃ、きりがないよ!』

 

「分かってる!」

 

ディケイドは新たに降下してくる飛行艇へ銃口を向ける。

 

一機を撃ち抜いた直後、その後方からさらに三機が姿を現した。

 

『やっぱり、あの穴を何とかしないと駄目なんじゃない?』

 

ディケイドは上空のゲートを見上げた。

 

チタウリの数は、まるで減っていない。

 

倒しても。

 

撃ち落としても。

 

向こう側から、次の部隊が現れる。

 

このまま戦い続ければ、いずれこちらが先に消耗する。

 

空中の防衛線が崩れれば、地上で市民を守っている仲間たちまで包囲される。

 

「……やっぱり、それしかないな」

 

蓮は短く息を吐いた。

 

「AZKi、スターク・タワーの屋上へ!」

 

『分かった!』

 

アギトトルネイダーが機首を上げた。

 

一気に上昇し、青い光を放ち続けるスターク・タワーへ向かう。

 

それを阻止しようと、複数のチタウリ飛行艇が進路へ割り込んだ。

 

「邪魔!」

 

ディケイドは正面から迫った一機へ飛び移る。

 

ライドブッカーを振り抜き、操縦していたチタウリ兵を斬り飛ばした。

 

そのまま機体を蹴って跳躍する。

 

別の飛行艇の上へ着地し、銃口を足元へ向けた。

 

ドンッ!

 

至近距離から放たれた光弾が、機体内部を貫通する。

 

ディケイドは爆発寸前に飛び離れ、再びアギトトルネイダーへ着地した。

 

最後に残った飛行艇が横から突撃してくる。

 

「そこをどいて!」

 

AZKiの声と同時に、アギトトルネイダーが鋭く機体を傾けた。

 

敵の突進を紙一重で回避する。

 

すれ違う瞬間、ディケイドが飛行艇へ蹴りを叩き込んだ。

 

チタウリの機体は進路を大きく逸らし、そのまま別の飛行艇へ衝突する。

 

二機は絡み合うように落下し、空中で爆発した。

 

「屋上が見えた!」

 

アギトトルネイダーは青い光の柱へ接近し、スターク・タワーの屋上へ降下した。

 

 

ディケイドがトルネイダーから飛び降りる。

 

ブーツが屋上の床へ触れた瞬間、周囲の空気が激しく震えた。

 

同時に、アギトトルネイダーの全身が黄金色の光へ包まれる。

 

飛行形態が解け、光の中から仮面ライダーアギトとなったAZKiが姿を現した。

 

アギトは僅かによろめいたものの、すぐに体勢を立て直す。

 

屋上の中央。

 

そこには、巨大な機械装置が設置されていた。

 

複雑に組み上げられた金属製のフレーム。

 

幾つもの制御装置。

 

その中心へ固定されている、四次元キューブ。

 

キューブから放出される青いエネルギーは、凄まじい勢いで上空へ伸びている。

 

近づくだけで、全身の装甲が振動した。

 

空気が焼ける。

 

皮膚の内側まで痺れるような、圧倒的なエネルギー。

 

キューブの周囲には、目には見えにくい青い膜が展開されていた。

 

アイアンマンのリパルサーすら跳ね返した、強力な防御障壁。

 

ディケイドはライドブッカーを強く握る。

 

「あれを壊す」

 

アギトは四次元キューブを見据えたまま頷いた。

 

「うん」

 

「一度で決めるよ」

 

ディケイドはライドブッカーから、一枚のカードを引き抜いた。

 

「一気にいこう」

 

カードをディケイドライバーへ挿入する。

 

《FINAL ATTACK RIDE》

 

バックルを閉じた。

 

《D-D-D-DECADE》

 

ディケイドと装置の間へ、巨大なカードが何枚も出現した。

 

マゼンタの光を放つカードが、四次元キューブまで一直線に並んでいく。

 

それは必殺の一撃を増幅するための、光の道。

 

隣に立つアギトも、ゆっくりと構えを取った。

 

頭部にあるクロスホーンが大きく展開する。

 

アギトの足元へ、黄金色の紋章が浮かび上がった。

 

紋章が回転を始める。

 

黄金の力が渦を巻き、両脚へ集まっていく。

 

周囲の空気が震え、屋上に積もっていた細かな瓦礫が僅かに浮かび上がった。

 

ディケイドは横目でアギトを見る。

 

「AZKi、いける?」

 

アギトは迷わず答えた。

 

「もちろん」

 

「じゃあ、合わせる!」

 

二人は同時に屋上を蹴った。

 

ディケイドが、光のカードを潜り抜ける。

 

一枚。

 

二枚。

 

三枚。

 

通過するたびに、右脚へ集まるエネルギーが増大していく。

 

アギトも黄金の紋章を両足へ纏い、空中で姿勢を整えた。

 

マゼンタの光。

 

黄金の光。

 

二つの必殺キックが、四次元キューブを中心とした装置へ向かう。

 

「はああああっ!」

 

「やああああっ!」

 

二人の蹴りが、防御障壁へ同時に直撃した。

 

ドゴォォォォン!

 

凄まじい轟音が、スターク・タワー全体を揺らした。

 

マゼンタと黄金のエネルギーが、青い障壁へ食い込む。

 

障壁の表面へ、無数の波紋が広がった。

 

「っ……!」

 

ディケイドはさらに力を込める。

 

「破れろ……!」

 

アギトも全身のエネルギーを右脚へ集中させた。

 

「あと少し……!」

 

しかし。

 

障壁は破れなかった。

 

四次元キューブから新たなエネルギーが溢れ、二人のライダーキックを押し返していく。

 

「弾かれる……!」

 

次の瞬間。

 

青い障壁が、蓄積した力を一気に解放した。

 

ドォン!

 

凄まじい反発力が、ディケイドとアギトを吹き飛ばす。

 

二人は屋上の床へ叩きつけられ、そのまま何度も転がった。

 

ディケイドはライドブッカーを床へ突き立て、辛うじて体を止める。

 

アギトも片膝をつきながら、どうにか姿勢を立て直した。

 

「くっ……!」

 

ディケイドは装置を睨みつける。

 

「ライダー二人分の必殺キックでも駄目なのか……!」

 

アギトも荒い呼吸を整えながら立ち上がった。

 

「バリアが強すぎる……」

 

二人の攻撃を受けても、装置は全く損傷していない。

 

青い光は変わらず空へ伸び続け、ゲートも閉じる気配を見せなかった。

 

その時だった。

 

装置の近くから、小さな呻き声が聞こえた。

 

「う……」

 

ディケイドが即座に振り返る。

 

「博士!」

 

屋上の床には、セルヴィグ博士が倒れていた。

 

先ほどアイアンマンが放った攻撃と、装置の反射エネルギーによって吹き飛ばされていたのだ。

 

セルヴィグは額を押さえながら、ゆっくりと上半身を起こす。

 

その目には、先ほどまであった不自然な青い光が残っていない。

 

ロキによる精神支配が、解け始めている。

 

「私は……」

 

セルヴィグは周囲を見回した。

 

「何を……」

 

ディケイドは警戒を解かないまま、ゆっくりと博士へ近づいた。

 

「セルヴィグ博士」

 

声をかける。

 

「僕の声が聞こえますか?」

 

セルヴィグはディケイドを見た。

 

続いて、自分が作り上げた装置へ視線を移す。

 

空へ伸びる青い光。

 

上空に開いた巨大なゲート。

 

その向こうから降り続ける、異星人の軍勢。

 

セルヴィグの顔が、絶望に染まった。

 

「開いてしまった……」

 

アギトも近づく。

 

「博士」

 

四次元キューブを見ながら尋ねた。

 

「止める方法はないんですか?」

 

セルヴィグは苦しそうに息を吐いた。

 

自分の頭の中に残っている設計図と、ロキの支配下で行った作業を思い返す。

 

やがて、震える声で答えた。

 

「ロキの杖だ」

 

ディケイドの複眼が、セルヴィグへ向けられる。

 

「杖?」

 

「あの杖のエネルギーなら……」

 

セルヴィグは装置を指さした。

 

「キューブが生み出した防御障壁を突破できる」

 

「どうしてですか?」

 

アギトが尋ねる。

 

「杖に収められた力は、キューブと極めて近い性質を持っている」

 

セルヴィグは額を押さえながら続けた。

 

「同質のエネルギーであれば、外側から力ずくで破壊するのではなく、障壁そのものを通過できるはずだ」

 

ディケイドは四次元キューブを見た。

 

先ほどの必殺キックでも傷一つつかなかった防御障壁。

 

正面から破壊するのではない。

 

同じ性質を持つ力で、内側へ干渉する必要がある。

 

セルヴィグは、震える両手を見下ろした。

 

「キューブそのものは、悪ではない」

 

苦しそうに言葉を絞り出す。

 

「悪いのは……私だ」

 

「違う」

 

ディケイドは即座に否定した。

 

「あなたはロキに操られていた」

 

セルヴィグはゆっくりと首を横に振った。

 

「いや……」

 

その瞳には、深い後悔が浮かんでいた。

 

「自覚はあった」

 

ディケイドとアギトが息を呑む。

 

セルヴィグは、装置を見つめたまま話し続ける。

 

「完全に意識を失っていたわけではない」

 

「ロキの命令も、自分が何を作っているのかも分かっていた」

 

「それでも、止められなかった」

 

両手を強く握る。

 

「知識への欲望」

 

「未知の宇宙へ触れたいという願い」

 

「自分なら制御できるという傲慢さ」

 

「そして、ロキへの恐怖」

 

セルヴィグは苦しそうに目を閉じた。

 

「杖に触れられたことで、私の中にあったすべての弱さが膨れ上がった」

 

ディケイドは静かに博士の言葉を聞いていた。

 

「だから……」

 

セルヴィグは再び目を開く。

 

「せめてもの抵抗として、装置へ安全装置を組み込んだ」

 

アギトは四次元キューブを守る障壁を見る。

 

「それが、ロキの杖?」

 

セルヴィグは頷いた。

 

「あの杖があれば、キューブのエネルギー場を中和できる」

 

「杖の先端を障壁の内側へ入れ、キューブへ干渉するんだ」

 

「そうすれば、ゲートを閉じられる」

 

ディケイドはすぐに通信回線を開いた。

 

「トニー、聞こえる?」

 

数秒の雑音。

 

上空では、アイアンマンが飛行艇の群れを相手に戦い続けている。

 

『聞こえている』

 

爆発音とリパルサーの発射音が通信へ混ざった。

 

『今度は何だ?』

 

「ロキの杖が必要です」

 

『杖?』

 

トニーは飛行艇を一機撃ち抜きながら答える。

 

『最後に見たのは、僕のペントハウスだ』

 

一瞬だけ間を置く。

 

『ロキに窓から投げ捨てられる前にな』

 

「ペントハウスの中に残ってる?」

 

『恐らくな。あの後、あいつは屋上へ移動した』

 

「了解」

 

ディケイドは通信を切った。

 

屋上の縁まで歩き、下を覗き込む。

 

スターク・タワー上層部のペントハウス。

 

そこは先ほどまで、トニーとロキが対峙していた場所。

 

破壊された窓。

 

倒れた家具。

 

そして、そのどこかにロキの杖が落ちている。

 

アギトがディケイドの隣へ並んだ。

 

「取りに行く?」

 

ディケイドは頷く。

 

「うん」

 

しかし、すぐに屋上へ固定された四次元キューブを振り返る。

 

セルヴィグ博士を一人で残すわけにはいかない。

 

チタウリ兵が屋上へ降下してくる可能性もある。

 

さらに、杖を手に入れた後。

 

強力な防御障壁へ近づき、キューブへ直接干渉しなければならない。

 

「AZKiは博士を守って」

 

「蓮くんは?」

 

ディケイドはライドブッカーから、一枚のカードを引き抜いた。

 

カードの表面へ描かれている戦士を見つめる。

 

「僕は杖を取りに行く」

 

アギトは一瞬だけカードを見た。

 

「その力を使うの?」

 

「杖を探して、ここまで運ぶなら――」

 

ディケイドはカードをディケイドライバーの前へ構えた。

 

「使う時だな」

 

 

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