仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

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第34話 穴を閉じる時

 

 

ニューヨークの戦場は、限界へ近づいていた。

 

地上では、チタウリの残存部隊がなおも押し寄せている。

 

空では、スターク・タワー上空のゲートから、新たな飛行艇が次々と現れていた。

 

ビルの外壁は崩れ落ち。

 

道路は瓦礫で埋まり。

 

街の至るところから炎と黒煙が上がっている。

 

アベンジャーズと仮面ライダーたちは戦い続けていたが、誰もが確実に消耗していた。

 

交差点の一角。

 

仮面ライダービルドとなったこよりは、瓦礫の上へ片膝をついていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

ラビットタンクフォームの装甲は、チタウリとの激戦によって傷だらけになっている。

 

「さすがに……数が多すぎる……」

 

その隣で、仮面ライダー響鬼となったあやめが、音撃棒を肩へ担いだ。

 

「こより」

 

響鬼は周囲を警戒しながら、こよりへ顔を向ける。

 

「疲れた?」

 

こよりは顔を上げた。

 

装甲の奥で、無理やり笑みを浮かべる。

 

「まだいけるよ……!」

 

両膝へ手をつき、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ホロライブの頭脳担当が、ここでへばるわけにはいかないからね!」

 

そう言い切ったものの、足元は僅かにふらついている。

 

響鬼は小さく笑った。

 

「無理はしちゃ駄目だよ」

 

こよりの肩へ軽く手を置く。

 

「倒れたら、蓮に怒られる余」

 

「それは困る……!」

 

こよりは慌てて姿勢を正した。

 

その時。

 

通信回線へ、AZKiの声が入った。

 

『こちらAZKi!』

 

スターク・タワー屋上。

 

仮面ライダーアギトとなったAZKiは、四次元キューブを守る青い障壁を見つめていた。

 

隣には、ペントハウスからロキの杖を回収してきたディケイドが立っている。

 

『ロキの杖を確保! ゲートを閉じられます!』

 

地上でチタウリの光弾を盾に受けていたスティーブが、すぐに答えた。

 

「やれ!」

 

ディケイドはロキの杖を握り直す。

 

「了解!」

 

四次元キューブへ向かって踏み出そうとした。

 

しかし、その直後。

 

アイアンマンの切迫した声が、通信へ割り込んだ。

 

『待て!』

 

ディケイドの足が止まる。

 

地上のスティーブも顔を上げた。

 

「スターク?」

 

『ミサイルが来る』

 

その言葉に、通信を聞いていた全員が動きを止めかけた。

 

『着弾まで、一分もない』

 

戦場の空気が、一瞬だけ凍りついた。

 

ミサイル。

 

この状況で、ニューヨークへ向けて発射された兵器。

 

それが何を意味するのか。

 

誰もが、すぐに理解した。

 

スターク・タワーの屋上で、ディケイドは拳を握る。

 

「ミサイルって……」

 

最悪の可能性が頭をよぎる。

 

「まさか、核か!?」

 

飛行を続けるアイアンマンから、すぐに返事が来た。

 

『恐らくな』

 

トニーの声は、普段のように軽く聞こえた。

 

だが、そこにいつもの冗談を楽しむ余裕はない。

 

『評議会の連中は、ニューヨークごとチタウリを消すつもりらしい』

 

「ふざけるな……!」

 

ディケイドは屋上の縁から街を見下ろす。

 

まだ、数え切れないほどの市民が避難を続けている。

 

アベンジャーズも。

 

ホロライブの仲間たちも。

 

この街で戦っている。

 

核ミサイルが着弾すれば、チタウリだけでは済まない。

 

街も。

 

人々も。

 

仲間たちも。

 

すべてが消える。

 

『ミサイルを確認しました』

 

ジャーヴィスの声が、トニーへ進路情報を伝える。

 

『ニューヨークへ向けて、一直線に飛来しています』

 

アイアンマンは全速力で空を飛んでいた。

 

高層ビルの間を抜け、ニューヨークへ迫る一発のミサイルを追う。

 

ミサイルの後方から、白い噴射煙が長く伸びている。

 

追いつけなければ、街が消える。

 

止められなければ。

 

仲間も、市民も、何もかもが終わる。

 

「スターク、やめろ!」

 

スティーブの声が通信へ響く。

 

トニーが何をしようとしているのか。

 

その進路を見ただけで、理解してしまった。

 

アイアンマンは迫るミサイルとの距離を縮めながら答える。

 

『キャプテン』

 

僅かに上空を見た。

 

スターク・タワーの上には、宇宙へ繋がる巨大なゲートが開いている。

 

『ちょうどいい捨て場所がある』

 

「戻れなくなるぞ!」

 

『先のことは、入ってから考える』

 

「トニー!」

 

ディケイドも通信へ叫んだ。

 

「別の方法を探します! だから――」

 

『時間切れだ、蓮』

 

アイアンマンは、ついにミサイルへ追いついた。

 

両手で胴体を掴む。

 

急激な加速とミサイルの推力が、マーク7の全身へ凄まじい負荷をかけた。

 

装甲から火花が散る。

 

警告音が、トニーの視界へ次々と表示された。

 

『構造負荷、限界値へ接近』

 

『推進システムへ異常』

 

『生命維持装置の継続を推奨します』

 

「全部却下だ」

 

トニーはスラスターの出力を最大まで引き上げた。

 

ミサイルの進路を、少しずつ上へ向けていく。

 

スターク・タワーへ到達する寸前。

 

アイアンマンは、ミサイルを抱えたまま急上昇した。

 

「トニー!」

 

ディケイドの声がニューヨークの空へ響く。

 

アイアンマンはスターク・タワーから伸びる青い光の柱に沿い、一直線に上空へ向かっていった。

 

 

スターク・タワー屋上。

 

ディケイドとアギトは、四次元キューブの装置の前へ立っていた。

 

セルヴィグ博士も青ざめた顔で、上空へ向かっていくアイアンマンを見つめている。

 

アギトとなったAZKiが、通信へ向かって叫んだ。

 

「トニーさん!」

 

アイアンマンはミサイルを抱えたまま、ゲートへ近づいていく。

 

「絶対に戻ってきて!」

 

その声がトニーへ届いているのか。

 

返事はなかった。

 

アイアンマンは青い光の中へ入り、ニューヨーク上空のゲートを通過した。

 

 

青白い光を抜ける。

 

地球の空を越える。

 

その先に広がっていたのは、星の光さえ薄い暗黒の空間だった。

 

巨大なチタウリの母艦。

 

その周囲へ展開された、無数の異星艦隊。

 

地球侵略を指揮していた敵の中枢が、ゲートの向こう側へ存在していた。

 

トニーは薄れ始めた意識の中で、母艦を見つめた。

 

スーツの推進力が低下する。

 

酸素も残り少ない。

 

それでも、両手を離さない。

 

ミサイルを、チタウリ母艦の中心へ向ける。

 

十分に接近したところで。

 

トニーはミサイルから手を放した。

 

白い軌跡を描きながら、核ミサイルが母艦へ向かっていく。

 

「……じゃあな」

 

その声は。

 

誰にも聞こえないほど、小さかった。

 

スーツの推進力が失われる。

 

トニーの体は宇宙空間で反転し、そのままゲートの方角へ落ち始めた。

 

直後。

 

核ミサイルが、チタウリ母艦へ到達した。

 

――閃光。

 

暗い宇宙の中で、巨大なオレンジ色の光が広がり始める。

 

爆発が母艦を内部から呑み込み、その周囲へいた艦隊へも連鎖していった。

 

 

ニューヨーク。

 

ゲートの向こう側で、オレンジ色の光が膨れ上がる。

 

アギトは息を呑んだ。

 

「トニーさん……!」

 

地上にいるスティーブが、苦しそうに空を見上げていた。

 

だが、これ以上ゲートを開き続けるわけにはいかない。

 

核爆発のエネルギーが地球側へ到達する可能性がある。

 

新たな敵が現れる可能性も残っている。

 

スティーブは拳を握り締め、通信へ命じた。

 

「閉じろ!」

 

ディケイドは一瞬だけ、ゲートを見上げた。

 

アイアンマンは、まだ帰ってきていない。

 

ここで閉じれば。

 

トニーを宇宙へ置き去りにすることになる。

 

「蓮くん……」

 

アギトが不安そうにディケイドを見る。

 

ディケイドは奥歯を噛み締めた。

 

それでも。

 

これ以上、迷う時間はなかった。

 

「……ごめん、スタークさん」

 

ディケイドはロキの杖を両手で握り、四次元キューブへ向かって歩く。

 

セルヴィグ博士の言った通り。

 

杖の先端は、装置を守る青い障壁に弾かれなかった。

 

同質のエネルギーが反応し、障壁の表面へ小さな穴が開く。

 

ディケイドは杖を、その奥へ押し込んだ。

 

「これで……!」

 

杖の先端が、四次元キューブへ触れる。

 

凄まじい青い稲妻が、ディケイドの全身を駆け抜けた。

 

「ぐっ……!」

 

装甲から火花が散る。

 

それでも杖を離さない。

 

さらに力を込め、先端をキューブへ突き立てる。

 

「閉じろおおおおっ!」

 

青い光の柱が、大きく揺らいだ。

 

空へ伸びていたエネルギーが不安定になり、少しずつ途切れ始める。

 

ニューヨーク上空のゲートが、ゆっくりと収縮していく。

 

青い穴の縁が狭まり始めた。

 

その向こう側では、核爆発のオレンジ色の光が巨大な波のように広がっている。

 

そして。

 

その光の手前に、小さな影が現れた。

 

推進力を失い。

 

全身から光を消し。

 

地球へ向かって落下してくる、赤と金の人影。

 

アギトが叫んだ。

 

「戻ってきた!」

 

アイアンマン。

 

意識を失ったトニーは、重力へ引かれるようにゲートへ向かって落下している。

 

「スタークさん!」

 

ディケイドは杖を握りながら、上空を見上げた。

 

ゲートは、すでに人一人が通れるほどの大きさまで閉じかけている。

 

アイアンマンの体が、最後の瞬間に青い穴へ滑り込んだ。

 

直後。

 

ゲートが完全に閉じた。

 

青い光が消滅する。

 

ニューヨークの空へ開いていた巨大な傷が、跡形もなく消え去った。

 

四次元キューブから伸びていた光の柱も途絶える。

 

キューブは装置の中で、静かな青い光を放つだけの状態へ戻った。

 

チタウリの増援が止まる。

 

それだけではなかった。

 

地上で戦っていたチタウリ兵たちが、突然動きを止めた。

 

武器を構えたまま硬直し。

 

飛行艇は次々と推進力を失う。

 

糸を切られた人形のように、チタウリの軍勢が一斉に崩れ落ちていった。

 

母艦の破壊によって、軍勢を繋いでいた制御機能が失われたのだ。

 

「止まった……」

 

ビルドとなったこよりが、周囲で倒れていくチタウリ兵を見回す。

 

響鬼も音撃棒を下ろした。

 

「終わった、のか……?」

 

しかし。

 

戦場にいる全員の視線は、地上ではなく空へ向けられていた。

 

アイアンマンが落下している。

 

スーツからは、推進光が完全に消えていた。

 

腕も脚も動かない。

 

トニーは意識を失ったまま、地上へ向かって落ち続けている。

 

「トニーさん!」

 

スターク・タワーの屋上から、ディケイドが身を乗り出す。

 

「このままじゃ墜落する!」

 

その時。

 

ニューヨークの空へ、激しいロケットの噴射音が響いた。

 

白い仮面ライダーが、真下から一直線に上昇してくる。

 

仮面ライダーフォーゼ、ロケットステイツ。

 

「間に合えええええっ!」

 

フレアは両腕のロケットモジュールを最大出力で噴射した。

 

落下してくるアイアンマンとの距離を、一気に縮める。

 

「届いて!」

 

両腕を広げた。

 

フレアは空中で、トニーの体を受け止める。

 

「よし――」

 

その瞬間。

 

想像を超える重量が、フォーゼの両腕へかかった。

 

「重っ!?」

 

マーク7の装甲を含めたトニーの重量。

 

そこへ落下の勢いまで加わっている。

 

ロケットモジュールの推力をもってしても、完全には止められなかった。

 

「うそ……!」

 

フォーゼの上昇が止まる。

 

「止まらない!」

 

二人は一緒に落下し始めた。

 

「フレア!」

 

ディケイドが叫ぶ。

 

地上から、巨大な緑色の影が跳び上がった。

 

ハルク。

 

「グオオオッ!」

 

道路を蹴り砕き。

 

ビルの外壁へ飛びつき。

 

さらに壁を踏み台にして、高く跳躍する。

 

ハルクは落下してくるフォーゼとアイアンマンを、巨大な両腕でまとめて受け止めた。

 

「グオッ!」

 

三人分の重量と落下の衝撃が、ハルクの体へ直撃する。

 

それでも、二人を離さない。

 

ハルクは近くのビルへ片手を突き立てた。

 

巨大な指が外壁を砕く。

 

壁面を削りながら、落下速度を少しずつ殺していった。

 

ガラスが割れる。

 

コンクリートが砕ける。

 

壁に長い爪痕を残しながらも、ハルクは二人を抱えたまま地上へ近づいていく。

 

最後に、道路へ両足で着地した。

 

ズドォォォン!

 

アスファルトへ巨大な亀裂が走った。

 

周囲へ土煙が広がる。

 

ハルクの腕の中で、フォーゼの変身が解除された。

 

フレアは荒い息を吐きながら、ハルクを見上げる。

 

「た、助かった……」

 

ハルクは鼻を鳴らすと、アイアンマンの体を道路へそっと下ろした。

 

スティーブが真っ先に駆け寄る。

 

「スターク!」

 

ナターシャとバートンも、その後へ続いた。

 

スターク・タワーの屋上にいたディケイドも、すぐに灰色のオーロラカーテンを展開する。

 

光の幕を潜り、地上へ移動した。

 

「スタークさん!」

 

アイアンマンの傍へ膝をつく。

 

マーク7のフェイスプレートが、自動的に開いた。

 

その中で。

 

トニーは目を閉じていた。

 

呼びかけても反応がない。

 

「トニー?」

 

ナターシャが脈を確認しようとする。

 

一瞬。

 

誰も声を出せなかった。

 

ハルクは、倒れているトニーの顔を覗き込んだ。

 

じっと見つめる。

 

そして。

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

至近距離から、凄まじい咆哮を浴びせた。

 

「うわっ!?」

 

トニーの体が大きく跳ねる。

 

目を見開き、慌てて周囲を見回した。

 

「何だ……!?」

 

荒い息を吐く。

 

「何が起きた……?」

 

周囲から、一斉に安堵の息が漏れた。

 

スティーブも僅かに肩の力を抜く。

 

蓮は思わず両膝へ手をついた。

 

「よかった……」

 

トニーは隣にいるハルクへ視線を向けた。

 

かすれた声で言う。

 

「次は……」

 

一度咳き込む。

 

「もう少し静かな起こし方を希望する……」

 

ハルクは満足そうに鼻を鳴らした。

 

スティーブは小さく笑い、空を見上げる。

 

ゲートは閉じている。

 

空は煙と炎によって汚れていた。

 

それでも、あの青い穴はもう存在しない。

 

チタウリの増援も来ない。

 

ニューヨークの戦いは、確実に終わりへ向かっていた。

 

 

暫くして。

 

スターク・タワー、ペントハウス。

 

ロキは瓦礫の中で目を覚ました。

 

ハルクによって何度も床へ叩きつけられた体が、激しい痛みを訴えている。

 

「う……」

 

呻き声を漏らしながら、ゆっくりと上半身を起こす。

 

頭を押さえる。

 

そして。

 

目の前の光景を見て、完全に動きを止めた。

 

そこには、アベンジャーズが並んでいた。

 

盾を構えるキャプテン・アメリカ。

 

修復前の傷だらけの装甲を纏うアイアンマン。

 

ムジョルニアを握るソー。

 

拳を構えたハルク。

 

二丁の拳銃を向けるブラック・ウィドウ。

 

弓へ矢を番えたホークアイ。

 

さらに、その横には。

 

ホロライブの仮面ライダーたちが並んでいた。

 

仮面ライダーディケイド――紫咲蓮。

 

仮面ライダーウィザード――紫咲シオン。

 

仮面ライダー電王――大空スバル。

 

仮面ライダーカブト――獅白ぼたん。

 

仮面ライダーキバ――常闇トワ。

 

仮面ライダーファイズ――湊あくあ。

 

仮面ライダーブレイド――尾丸ポルカ。

 

仮面ライダービルド――博衣こより。

 

仮面ライダーオーズ――夏色まつり。

 

仮面ライダーフォーゼ――不知火フレア。

 

仮面ライダー響鬼――百鬼あやめ。

 

仮面ライダー鎧武――さくらみこ。

 

仮面ライダーエグゼイド――猫又おかゆ。

 

仮面ライダーアギト――AZKi。

 

仮面ライダークウガ――大神ミオ。

 

さらに後方には、戦闘を終えたホロライブの仲間たちも控えている。

 

ロキは、完全に包囲されていた。

 

バートンが弓を引く。

 

矢の先端を、ロキの額へ向けた。

 

「動くな」

 

ソーもムジョルニアを握り締める。

 

「ロキ」

 

その声には、激しい怒りが込められていた。

 

ディケイドとなった蓮は、ライドブッカーを手に一歩前へ出る。

 

「終わりだ」

 

ロキは、ゆっくりと周囲を見回した。

 

勝ち目はない。

 

逃げ道もない。

 

ゲートは閉じた。

 

チタウリの軍勢は沈黙した。

 

四次元キューブも杖も、すでに奪われている。

 

暫くの間、重い沈黙が流れた。

 

やがて。

 

ロキはゆっくりと両手を上げた。

 

「……あがいても無駄なら」

 

少しだけ顔を引きつらせながら口を開く。

 

「酒をもらおうか」

 

トニーが眉を上げた。

 

「僕の酒を?」

 

ロキが僅かに頷こうとする。

 

しかし、ディケイドが横から告げた。

 

「反省してからにしてください」

 

「酒を飲むのに反省が必要なのか?」

 

ウィザードとなったシオンも、腕を組んでロキを睨む。

 

「蓮たちに、どれだけ迷惑をかけたと思ってるの?」

 

「君たちのことは、ほとんど知らなかったのだが」

 

「知らなかったら迷惑をかけていいわけ!?」

 

ロキは少しだけ目を逸らした。

 

その時。

 

ハルクが、一歩前へ出た。

 

ロキは即座に両手をさらに高く上げる。

 

「待て」

 

声へ僅かな焦りが混ざる。

 

「もう暴力は十分だ」

 

ハルクは何も答えない。

 

ただ、低く唸った。

 

「グルルルル……」

 

ロキは完全に口を閉じた。

 

スティーブは盾を下ろさないまま告げる。

 

「ロキを拘束する」

 

「了解」

 

ナターシャが素早くロキへ近づいた。

 

抵抗する隙を与えず、両腕へ特殊拘束具を取りつける。

 

ソーは、その様子を黙って見ていた。

 

弟へ向けられた瞳に浮かぶのは。

 

怒り。

 

失望。

 

そして、深い悲しみ。

 

ロキは、その視線から逃げるように俯いた。

 

ディケイドは、破壊された窓の外へ目を向ける。

 

傷ついたニューヨーク。

 

崩れた建物。

 

煙を上げる街。

 

それでも。

 

人々は生きている。

 

空に開いていたゲートは閉じた。

 

異星人による侵略は止まった。

 

蓮はディケイドの変身を解除した。

 

深く息を吐く。

 

「終わった……のかな」

 

トニーは床へ座り込んだまま、疲れ切った声で答える。

 

「終わったなら、まずはシャワーと食事だ」

 

スティーブが真面目な顔で言う。

 

「その前に、負傷者の確認と後始末が必要だ」

 

トニーは露骨に顔をしかめた。

 

「君、本当に真面目だな」

 

こよりも変身を解除し、小さく右手を上げる。

 

「その前に、医療チェックも必要です」

 

トニーが嫌そうにこよりを見る。

 

「僕も?」

 

「当然です!」

 

こよりはトニーを指さした。

 

「スタークさん、ついさっき宇宙へ行ったんですよ!?」

 

「ほんの少しだ」

 

「滞在時間の問題じゃありません!」

 

「ピンクの科学者まで真面目側か」

 

「科学的に必要な検査です!」

 

シオンもウィザードの変身を解除すると、蓮の袖を掴んだ。

 

「蓮」

 

「なに?」

 

シオンは笑っていなかった。

 

「日本へ帰ったら、全部説明だからね」

 

蓮は僅かに目を逸らす。

 

「……何を?」

 

「ライダーベルトを、シオンたちに黙って配ってたこと」

 

「自衛のためで――」

 

「全部、説明」

 

「……はい」

 

スバルが隣で笑った。

 

「これは逃げられないな」

 

電王の中から、モモタロスの声が響く。

 

「説教か! 面白そうだな! 俺も聞いてやるぜ!」

 

シオンは即答した。

 

「赤鬼は黙ってて」

 

「誰が赤鬼だ! 俺はモモタロスだ!」

 

「だいたい赤鬼でしょ」

 

「全然違ぇよ!」

 

そのやり取りに。

 

張り詰め続けていた空気が、僅かに緩んだ。

 

小さな笑い声が、傷ついたペントハウスへ広がる。

 

ニューヨークの戦いは終わった。

 

だが。

 

紫咲蓮とホロライブの仮面ライダーたちにとって。

 

これは、終わりではなく始まりでもあった。

 

世界はもう、彼女たちの力を知ってしまった。

 

S.H.I.E.L.D.も。

 

アベンジャーズも。

 

ニューヨークで救われた多くの人々も。

 

そして。

 

ゲートの向こうに存在する宇宙の勢力もまた。

 

地球に仮面ライダーがいることを知った。

 

蓮は静かに空を見上げる。

 

青い穴は、もう存在しない。

 

その向こうから来た敵も、今は消えた。

 

けれど。

 

世界同士の境界は、確実に揺らぎ始めている。

 

いつかまた、新たな敵が現れる。

 

その時は――。

 

蓮は周囲にいる仲間たちを見回した。

 

シオン。

 

スバル。

 

ぼたん。

 

トワ。

 

あくあ。

 

ポルカ。

 

こより。

 

まつり。

 

フレア。

 

あやめ。

 

みこ。

 

おかゆ。

 

AZKi。

 

ミオ。

 

そして、アベンジャーズ。

 

蓮は小さく笑った。

 

もう、一人ではない。

 

 

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