仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

36 / 40
第36話 最後の一撃

 

 

巨大なアナザー1号が、ニューヨークの大通りで咆哮した。

 

「グオオオオオオオッ!」

 

歪められた、始まりの仮面ライダー。

 

ビルの影すら飲み込む巨体を黒く濁った装甲が覆い、赤い複眼が眼前に並ぶ戦士たちを見下ろしている。

 

全身から放たれる黒いエネルギーが大気を震わせた。

 

道路へ亀裂が走る。

 

瓦礫が宙へ浮かび、周囲のビルに残っていた窓ガラスが次々と砕け散った。

 

それでも。

 

もう、誰一人として退かなかった。

 

仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームとなった紫咲蓮。

 

仮面ライダーグランドジオウとなった、ときのそら。

 

その周囲には、最強の力を纏った平成仮面ライダーたちが並んでいる。

 

クウガ。

 

アギト。

 

龍騎。

 

ファイズ。

 

ブレイド。

 

響鬼。

 

カブト。

 

電王。

 

キバ。

 

ダブル。

 

オーズ。

 

フォーゼ。

 

ウィザード。

 

鎧武。

 

ドライブ。

 

ゴースト。

 

エグゼイド。

 

ビルド。

 

そして、ディケイドとジオウ。

 

平成という時代を駆け抜けた二十人の仮面ライダーが、ニューヨークの街へ集結していた。

 

グランドジオウとなったそらが、一歩前へ出る。

 

黄金の装甲が、戦場に残る炎を反射して輝いた。

 

「一気に決めよう」

 

その静かな声に。

 

すべての仮面ライダーが頷いた。

 

そらはジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチへ手を添える。

 

二つのウォッチのボタンを押した。

 

《フィニッシュタイム!》

 

《グランドジオウ!》

 

荘厳な音声が、ニューヨークの大通りへ響き渡る。

 

そらはジクウドライバーを回転させた。

 

《オールトゥエンティー!》

 

《タイムブレーク!》

 

黄金の光が、グランドジオウを中心として大通り全体へ広がった。

 

その瞬間。

 

平成仮面ライダーたちの足元へ、それぞれの歴史を示す紋章と年号が浮かび上がった。

 

――2000。

 

仮面ライダークウガ。

 

ライジングアルティメットとなったミオの全身へ、黒と金の闘気が集中する。

 

「これが、最後の一撃……!」

 

ミオは地面を蹴り、空へ飛び上がった。

 

――2001。

 

仮面ライダーアギト。

 

シャイニングフォームとなったAZKiが、眩い黄金の光を纏う。

 

「みんなの未来は、ここで終わらせない!」

 

クウガへ続き、高く跳躍した。

 

――2002。

 

仮面ライダー龍騎。

 

サバイブの力を纏ったメルが、ドラグランザーと共に炎の中を駆ける。

 

――2003。

 

仮面ライダーファイズ。

 

ブラスターフォームとなったあくあの全身を、赤いフォトンブラッドが激しく流れた。

 

――2004。

 

仮面ライダーブレイド。

 

キングフォームとなったポルカの装甲へ刻まれたアンデッドの紋章が、一斉に輝く。

 

――2005。

 

仮面ライダー響鬼。

 

装甲響鬼となったあやめが、清めの音を全身へ宿した。

 

――2006。

 

仮面ライダーカブト。

 

ハイパーフォームとなったぼたんが、時間を超える力を右脚へ集中させる。

 

――2007。

 

仮面ライダー電王。

 

超クライマックスフォームとなったスバルへ、すべてのイマジンの力が重なった。

 

――2008。

 

仮面ライダーキバ。

 

エンペラーフォームとなったトワが、黄金の魔皇力を解き放つ。

 

さらに。

 

ディケイド。

 

ダブル。

 

オーズ。

 

フォーゼ。

 

ウィザード。

 

鎧武。

 

ドライブ。

 

ゴースト。

 

エグゼイド。

 

ビルド。

 

それぞれの背後へ、そのライダーが歩んだ時代を示す巨大な光の数字が浮かび上がった。

 

平成仮面ライダーたちが、次々と空へ飛び上がっていく。

 

アナザー1号は、それを迎撃するように巨大な腕を振り上げた。

 

黒いエネルギーが渦を巻き、空を覆うほどの衝撃波となって放たれる。

 

だが。

 

最初に突入したクウガは、一切速度を緩めなかった。

 

「はあああああっ!」

 

ライジングアルティメットの右脚が、黒い衝撃波を正面から突き破る。

 

ミオのライダーキックが、アナザー1号の胸部へ叩き込まれた。

 

ドゴォォン!

 

巨大な怪物の体が揺れる。

 

黒い装甲へ、最初の亀裂が走った。

 

続いて。

 

シャイニングアギトとなったAZKiが、黄金の軌跡を描きながら飛び込む。

 

「やああああっ!」

 

二撃目。

 

アギトのキックが、クウガによって生まれた亀裂へ直撃した。

 

ドォン!

 

胸部の装甲が、さらに大きく砕ける。

 

龍騎サバイブがドラグランザーの炎を纏い、アナザー1号の肩へ蹴りを叩き込んだ。

 

ファイズ・ブラスターフォームが赤い光となって突き抜ける。

 

ブレイド・キングフォームの重い一撃が、歪んだ装甲を切り裂くように炸裂した。

 

装甲響鬼の蹴りと共に、清めの音が巨体の内側へ響き渡る。

 

ハイパーカブトが通常の時間では捉えられない速度で飛び込み、胸部へ蹴りを撃ち込んだ。

 

超クライマックスフォームの電王が、すべてのイマジンの力を右脚へ集める。

 

「俺たちの必殺技――」

 

モモタロスの声。

 

ウラタロスの声。

 

キンタロスの声。

 

リュウタロスの声。

 

ジークの声。

 

そして、スバルの声が重なった。

 

「クライマックスバージョン!」

 

電王のキックが、アナザー1号の顔面へ炸裂する。

 

「グオオオオッ!?」

 

エンペラーキバとなったトワは、黄金の翼を思わせる魔皇力を広げた。

 

「これで終わりだよ!」

 

エンペラームーンブレイクが、巨大な胸部へ深く突き刺さる。

 

一撃ごとに。

 

アナザー1号の装甲が砕けていく。

 

一撃ごとに。

 

全身を包んでいた黒いエネルギーが吹き飛ばされる。

 

一撃ごとに。

 

歪められた始まりの歴史が、怪物の肉体から剥がれ落ちていった。

 

「まだまだぁ!」

 

電王となったスバルが、空中で叫ぶ。

 

「最後まで一気にいくぞ!」

 

ポルカもキングフォームの重い装甲を輝かせる。

 

「座長も続くよ!」

 

みこは極アームズの武器を周囲へ展開した。

 

「全部まとめて、燃やし尽くすにぇ!」

 

ジーニアスフォームとなったこよりが、アナザー1号の損傷状況を確認する。

 

複眼の内側へ、無数の数式が表示された。

 

「エネルギー集中点、胸部中央!」

 

全員へ分析結果を送る。

 

「データ上も、ここが決め時です!」

 

サイクロンジョーカーエクストリームとなったWが、プリズムの光を纏って飛び込む。

 

フワワとモココ、二人の声が重なる。

 

「「これで決める!」」

 

エクストリームのキックが胸部へ命中する。

 

プトティラコンボとなったまつりも、紫色の冷気を右脚へ集めた。

 

破壊衝動に呑まれることなく。

 

自分の意思で、その力を解き放つ。

 

「今度は、まつりが使う番!」

 

紫色の翼を広げ、アナザー1号の胸部を凍結させながら蹴り抜いた。

 

コズミックステイツとなったフレアの周囲へ、宇宙の力が集まる。

 

「みんなの絆で――」

 

青い光となって飛び込む。

 

「宇宙キター!」

 

コズミックの一撃が、凍結した胸部を砕いた。

 

インフィニティースタイルとなったシオンは、無限の魔力を右脚へ集中させる。

 

「蓮たちに迷惑をかけた分――」

 

空中で何度も加速する。

 

「まとめて返してあげる!」

 

輝くキックが、アナザー1号の中心へ突き刺さった。

 

極アームズとなったみこ。

 

タイプトライドロンとなったロボ子さん。

 

ムゲン魂となったちょこ。

 

ムテキゲーマーとなったおかゆ。

 

ジーニアスフォームとなったこより。

 

それぞれが眩い光の軌跡を描き、巨大な怪物へ必殺の蹴りを撃ち込んでいく。

 

「にぇえええええっ!」

 

「高速処理、開始!」

 

「患者さんには、ちょっと強い治療かな?」

 

「これでゲームクリアだねぇ」

 

「計算上、勝率は百パーセントです!」

 

連続する衝撃。

 

ニューヨークの大通りに、巨大な光の柱が立ち上がった。

 

アナザー1号の巨体が、何度も後方へ揺れる。

 

「グ……オオオ……!」

 

胸部の装甲は完全に崩壊していた。

 

全身へ無数の亀裂が走っている。

 

それでもなお、アナザー1号は倒れなかった。

 

黒いエネルギーを胸部へ集め、最後の抵抗を試みる。

 

「グオオオオオオオッ!」

 

濁った光が、平成ライダーたちを呑み込もうと広がった。

 

その時。

 

ディケイド・コンプリートフォームとなった蓮が、一歩前へ出た。

 

「そらさん!」

 

グランドジオウも、強く頷く。

 

「うん!」

 

二人は同時に地面を蹴った。

 

ディケイドの胸部へ並ぶライダーカードが、一斉に光を放つ。

 

クウガからキバまで。

 

九人の最強フォームの力が、蓮の右脚へ集まっていく。

 

グランドジオウの黄金の装甲も輝いた。

 

全身に刻まれた平成ライダーのレリーフから、二十の時代を繋ぐ力が溢れ出す。

 

二人の背後へ。

 

平成仮面ライダーたちの幻影が、一斉に並んだ。

 

蓮は空中でアナザー1号を見据える。

 

「仮面ライダーの歴史は――」

 

黒いエネルギーの中へ突入する。

 

「お前なんかに歪めさせない!」

 

グランドジオウとなったそらも、右脚へ黄金の光を纏った。

 

「みんなが守ってきた歴史を――」

 

その声には。

 

普段の穏やかさとは違う、強い意志が宿っていた。

 

「未来へ繋げる!」

 

ディケイドとグランドジオウ。

 

二つのライダーキックが、黒い光を突き破った。

 

「これで――」

 

そらが叫ぶ。

 

「終わり!」

 

二人の蹴りが、アナザー1号の胸部中央へ同時に突き刺さる。

 

ドゴォォォォォォン!!

 

マゼンタと黄金の光が爆発した。

 

アナザー1号の巨体が、大きく仰け反る。

 

完全に破壊された胸部へ、巨大な穴が開いた。

 

そこから黒い霧と無数の火花が噴き出す。

 

全身へ走っていた亀裂が、一気に広がっていった。

 

「グオオオオオオオオッ!?」

 

アナザー1号は空を仰いだ。

 

その歪んだ口から、最後の叫びが放たれる。

 

「サドラー様ァァァァァッ!!」

 

次の瞬間。

 

ドォォォォォォン!

 

アナザー1号の巨体が爆発した。

 

凄まじい爆風が、ニューヨークの大通りを駆け抜ける。

 

炎。

 

黒煙。

 

砕けた装甲の破片。

 

そのすべてが空高く舞い上がった。

 

だが。

 

平成仮面ライダーたちは、一人も倒れなかった。

 

互いを庇い。

 

衝撃へ耐え。

 

最後まで、その場に立ち続けていた。

 

 

やがて、爆発の光が収まった。

 

黒煙が風に流され、少しずつ晴れていく。

 

そこに、アナザー1号の姿はもうなかった。

 

残っているのは。

 

大きく陥没した道路。

 

崩れたビルの外壁。

 

そして、平成仮面ライダーたちが戦った痕跡だけだった。

 

暫くの間。

 

誰も言葉を発しなかった。

 

本当に終わったのか。

 

新たな敵は現れないのか。

 

誰もが警戒したまま、周囲を見回している。

 

しかし。

 

空は静かなままだった。

 

ゲートはない。

 

チタウリもいない。

 

アナザー1号の気配も、完全に消えている。

 

「……終わった」

 

ディケイドとなった蓮が、小さく呟いた。

 

コンプリートフォームの装甲が光へ変わる。

 

白とマゼンタの鎧が消え、紫咲蓮の姿へ戻った。

 

それを合図にしたように。

 

ホロライブのメンバーたちも、次々と変身を解除していく。

 

最強フォームの力を使い切った反動は大きかった。

 

変身が解けた瞬間。

 

何人ものメンバーが、その場へ崩れるように座り込んだ。

 

「……そら先輩」

 

スバルが道路へ両手をつきながら、震えた声を漏らす。

 

「強すぎない?」

 

ポルカも瓦礫へ腰を下ろし、そらを見上げた。

 

「いや、最後のあれ何?」

 

両手を大きく広げる。

 

「全平成ライダーキック? 座長、舞台演出でもあんな派手なの見たことないんだけど!」

 

こよりは荒い呼吸を整えながら、自分が記録した戦闘データを確認しようとした。

 

しかし、疲労で腕が上がらない。

 

「理論上は、歴代ライダーの力を一つへ統合した攻撃だと思いますけど……」

 

そらへ顔を向ける。

 

「実際に見ると、ちょっと意味が分からない威力ですね……」

 

グランドジオウの変身を解除したそらは、少し困ったように自分の両手を見つめていた。

 

「私も……」

 

首を傾げる。

 

「なんだか行ける気がして、やってみたらできちゃった」

 

シオンが即座に口を挟んだ。

 

「その『なんだか行ける気がした』で巨大怪人を倒すの、そら先輩すぎる」

 

「そうかな?」

 

「そうです」

 

「そら先輩以外が言ったら、絶対に止めてます」

 

まつりは、大の字に近い姿勢で道路へ座り込んでいた。

 

「いやぁ……」

 

そのまま後ろへ倒れそうになる。

 

「さすがに疲れた……」

 

フレアも、ロケットステイツを使い続けた両腕を回していた。

 

「空を飛んで」

 

指を一本立てる。

 

「リヴァイアサンと戦って」

 

もう一本。

 

「落ちてきたアイアンマンを受け止めて」

 

さらに一本。

 

「最後に巨大なアナザーライダー」

 

疲れ切った表情でため息をつく。

 

「一日が濃すぎるよ」

 

トワも道路の縁へ座り込んだ。

 

「今日だけで、何回死ぬと思ったか分からないんだけど……」

 

ぼたんは比較的平然としていたが、それでも近くの壁へ背中を預けている。

 

「まあ、勝てたからよし」

 

あくあは道路へ座り込み、完全に脱力していた。

 

「あてぃし……」

 

自分の両脚を見る。

 

「明日、筋肉痛で動けないかも……」

 

「あくあは明日だけで済むの?」

 

スバルが尋ねる。

 

「三日くらいかも……」

 

「現実的になった」

 

シオンは、ふと先ほどのアナザー1号の言葉を思い出した。

 

「そういえば」

 

仲間たちへ顔を向ける。

 

「あの怪物、最後に『サドラー様』って叫んでたよね」

 

まつりが顔だけをシオンへ向けた。

 

「断末魔じゃない?」

 

「いや、絶対に誰かの名前だったでしょ」

 

こよりも、疲れた頭を動かしながら考える。

 

「サドラー……」

 

何とか立ち上がり、顎へ手を添えた。

 

「人名、あるいは何らかの組織で使われている名称の可能性があります」

 

「アナザー1号を作った存在か」

 

蓮が静かに言う。

 

「あるいは、その背後にいる黒幕……」

 

蓮は心の中で、その名前を繰り返した。

 

サドラー。

 

聞き覚えはない。

 

ロキでもない。

 

チタウリでもない。

 

S.H.I.E.L.D.でも、アスガルドでもない。

 

今回の戦いとは異なる何かが。

 

世界の混乱へ乗じ、アナザーライダーを送り込んだ。

 

アナザー1号が最後まで、その名へ助けを求めたということは。

 

偶然ではない。

 

蓮は眉をひそめた。

 

「……嫌な名前が出てきたな」

 

シオンが横から蓮を見る。

 

「また面倒事?」

 

蓮は少しだけ考えた。

 

それから、疲れ切った笑みを浮かべる。

 

「多分ね」

 

道路へ座り込んだ。

 

「でも、今は考えたくない」

 

シオンも蓮の隣へ座る。

 

「珍しく同意」

 

ニューヨークの空は、少しずつ晴れ始めていた。

 

スターク・タワー上空に開いていたゲートは、もう存在しない。

 

チタウリの軍勢は沈黙し。

 

巨大なアナザーライダーも倒された。

 

街は大きな傷を負った。

 

幾つもの建物が崩れ。

 

道路は破壊され。

 

至るところから煙が上がっている。

 

それでも。

 

人々は生きていた。

 

遠くでは、スティーブたちが市民の救助を続けている。

 

トニーはスターク・タワーの上から空を見上げていた。

 

ソーは拘束されたロキを監視し。

 

ハルクは少し不機嫌そうな顔で、瓦礫の山へ座っている。

 

そして。

 

ホロライブのメンバーたちは、完全に限界へ達していた。

 

道路の端。

 

崩れた建物の前。

 

瓦礫の上。

 

誰もが思い思いの場所へ座り込み、動けなくなっている。

 

「それにしても……」

 

スバルが青空を見上げた。

 

「これ、今日一日で起きたことなんだよな?」

 

ミオが苦笑する。

 

「朝起きた時は、まさかニューヨークで仮面ライダーになるなんて思わなかったよ」

 

AZKiも小さく頷いた。

 

「私は、途中で乗り物に変形したしね」

 

「それは本当にごめんなさい」

 

蓮は即座に頭を下げた。

 

AZKiは少しだけ笑った。

 

「次からは、先に説明してね」

 

「はい……」

 

シオンが腕を組み、蓮を睨む。

 

「次から?」

 

「え?」

 

「またやるつもりなの?」

 

「必要な状況になれば……」

 

「蓮?」

 

シオンの声が一段低くなる。

 

蓮はすぐに目を逸らした。

 

「すみません」

 

そのやり取りに。

 

疲れ切った仲間たちから、小さな笑い声が上がった。

 

戦いの直後とは思えないほど、力の抜けた笑いだった。

 

蓮は、周囲をゆっくりと見回す。

 

ボロボロになった仲間たち。

 

それでも。

 

誰も逃げなかった。

 

誰も諦めなかった。

 

誰一人として、誰かを見捨てなかった。

 

蓮は小さく息を吐いた。

 

「明日は休みにしよう」

 

全員の動きが、一瞬だけ止まった。

 

何人もの視線が、蓮へ集中する。

 

そして。

 

シオンが真っ先に叫んだ。

 

「当たり前でしょ!!」

 

スバルも続く。

 

「むしろ、一日で足りる!?」

 

こよりが小さく手を上げた。

 

「休む前に、医療チェックは必要です!」

 

さらに指を立てる。

 

「全員の身体検査と、使用したライダーシステムの安全確認もします!」

 

まつりは道路へ倒れ込む。

 

「まつり、明日は寝る……」

 

目を閉じた。

 

「絶対に一日中寝る……」

 

ぼたんが横から尋ねる。

 

「ゲームも休むの?」

 

まつりは目を閉じたまま答えた。

 

「ゲームは別腹」

 

「元気じゃん」

 

トワが呆れたように言う。

 

「いや、本当に休もうよ」

 

蓮は小さく笑った。

 

「分かった」

 

全員を見回す。

 

「明日は全員休み」

 

指を折りながら続ける。

 

「配信も、レッスンも、収録も、会議もなし」

 

シオンが疑うような目で蓮を見る。

 

「本当に?」

 

「本当に」

 

蓮は胸を張った。

 

「マネージャー権限で休みにします」

 

「じゃあ」

 

シオンは蓮を指さした。

 

「蓮も休みね」

 

蓮は一瞬、言葉を止めた。

 

「僕は後処理と報告書が――」

 

シオンの目が鋭くなる。

 

「蓮も」

 

一言ずつ、強調して告げる。

 

「休み」

 

蓮は苦笑し、両手を上げた。

 

「……はい」

 

その言葉に。

 

ホロライブのメンバーたちから、小さな歓声が上がった。

 

ニューヨークの街には、未だ煙が残っている。

 

後始末は山ほどある。

 

S.H.I.E.L.D.へ説明しなければならないこと。

 

世界へ隠せなくなったこと。

 

仮面ライダーの力を得た彼女たちが、これから向き合わなければならない問題。

 

そして。

 

サドラーという、謎の名。

 

解決していないことは、数え切れないほど残されていた。

 

それでも、今だけは。

 

世界を守るために戦い抜いた彼女たちへ、休息が必要だった。

 

蓮はゆっくりと空を見上げる。

 

青いゲートは、もうない。

 

そこに広がっていたのは。

 

戦いの後に訪れた、どこまでも澄んだ青空だけだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。