仮面ライダーディケイド×ホロライブ×MCU ―世界を繋ぐ仮面の旅人―   作:十六夜 蓮

39 / 40
第39話 それはフラグです

 

 

アベンジャーズ・タワー。

 

ニューヨーク決戦以降、スターク・タワーから名前を変えた巨大なビル。

 

その一角には、カバー株式会社の臨時事務所が置かれていた。

 

表向きは、海外長期滞在中のホロライブを支える運営拠点。

 

しかし、その実態は。

 

仮面ライダーの力を持つホロライブメンバーたちの待機所。

 

ライダーシステムを安全に扱うための訓練所。

 

そして、スターク社が誇る高性能な通信回線を利用した、配信環境完備の仮住まいでもあった。

 

そんな臨時事務所の自動ドアが開く。

 

「ねぇ……疲れたぁ……」

 

ロボ子さんが、ぐったりとした声を漏らしながら中へ入ってきた。

 

肩は大きく落ち、足取りも重い。

 

その後ろから、モココも少し疲れた様子で続く。

 

「トラックを止めるだけかと思ったら、普通に怪人が出てきた……」

 

ソファへ座っていたスバルが、二人の声に反応して顔を上げた。

 

「おかえり」

 

床へ置いていた飲み物を手に取る。

 

「二人とも大丈夫だった?」

 

ロボ子さんは、気の抜けた様子で手をひらひらと振った。

 

「怪我はないよ」

 

近くの椅子へ腰を下ろす。

 

「でも、トライドロンで追跡するのって、思ってたより神経を使うんだよねぇ」

 

ゲーム機を操作していたシオンが、一時停止して顔を上げた。

 

「いや」

 

真顔で告げる。

 

「トライドロンに乗ってる時点で、普通じゃないから」

 

ロボ子さんは、少しだけ頬を膨らませた。

 

「シオンちゃんには言われたくないなぁ」

 

「何で?」

 

「ウィザードになって、ニューヨークの空で火とか出してたじゃん」

 

シオンは即座に答えた。

 

「それはそれ」

 

一度頷く。

 

「これはこれ」

 

「出た。便利な言葉」

 

モココは苦笑しながら、空いていたソファへ座った。

 

その横では。

 

蓮がタブレットを片手に、回収された物品の一覧を確認していた。

 

ガイアメモリ。

 

ゾディアーツスイッチ。

 

どちらもケース単位で押収されている。

 

それらは間もなく、スターク社とS.H.I.E.L.D.が共同管理する保管施設へ移送される予定だった。

 

一つでも悪用されれば、人間を怪人へ変えてしまう危険な物品。

 

まして、今回回収された量が世界へ流通すれば。

 

ニューヨーク決戦とは異なる、新たな大規模災害へ発展する可能性がある。

 

しかし。

 

もっとも大きな問題は、怪人化アイテムそのものではなかった。

 

誰が、これほど大量に集めたのか。

 

何の目的で運んでいたのか。

 

そして。

 

それらを、どこへ届けようとしていたのか。

 

ロボ子さんは椅子の背もたれへ体を預けると、フワワへ顔を向けた。

 

「ねぇ、フワワ」

 

「なぁに?」

 

「星の本棚を使って、あのメモリとスイッチの出所を調べられないかな?」

 

フワワは、少し考えるように首を傾げた。

 

「検索すること自体はできると思うけど……」

 

顎へ手を添える。

 

「もっとキーワードが必要だよね」

 

蓮はタブレットから顔を上げた。

 

「そうですね」

 

ホワイトボードへ目を向ける。

 

「今の情報だけだと、絞り込むには少し足りない」

 

モココが不満そうに頬を膨らませた。

 

「でも、サドラーって名前は出たよ?」

 

「それはかなり大きな情報です」

 

蓮は頷いた。

 

「ただ、サドラーという名前とガイアメモリだけでは、まだ候補の棚が三つ分残ってる」

 

「三つも?」

 

「人物名なのか、組織名なのか、それともコードネームなのか。それすら分かっていないからね」

 

フワワも蓮の説明へ同意する。

 

「星の本棚の中でも、同じ言葉に繋がる情報が多すぎるんだよね」

 

「例えば、人の名字かもしれないし」

 

「何かの作戦名や、企業の名前かもしれない」

 

モココはソファへ深く座り込んだ。

 

「せっかく名前を聞き出したのにぃ……」

 

「でも、前進はしてるよ」

 

フワワが優しく励ます。

 

「もう少しキーワードが増えれば、かなり絞り込めると思う」

 

室内の壁際には、大きなホワイトボードが設置されていた。

 

そこへ、蓮がこれまでに判明した情報を書き出している。

 

サドラー。

 

ガイアメモリ。

 

ゾディアーツスイッチ。

 

アナザー1号。

 

輸送トラック。

 

ニューヨーク。

 

こよりはホワイトボードの前へ立ち、腕を組んでいた。

 

「やっぱり」

 

並んだ単語を一つずつ見ていく。

 

「一つの勢力が、複数の怪人化アイテムを集めていると考えるべきだよね」

 

蓮も頷いた。

 

「その可能性が高い」

 

「ガイアメモリとゾディアーツスイッチは、本来ならまったく別系統の技術です」

 

こよりはペンを手に取り、二つの単語を線で結ぶ。

 

「製造方法も、使用方法も、怪人化する原理も違う」

 

「それなのに、同じトラックで大量に輸送されていた」

 

さらに、サドラーという単語へ線を伸ばした。

 

「誰かが意図的に集めているとしか考えられません」

 

ソファへ寝転んでいたおかゆが、眠そうな声で言った。

 

「ゲームで例えると」

 

片手を上げる。

 

「別作品の強化アイテムをまとめて、闇市へ流そうとしてる感じ?」

 

「大体そんな感じです」

 

こよりは振り返る。

 

「しかも、初心者装備を数個売る程度ではありません」

 

ホワイトボードへ書かれた押収数を指さす。

 

「大量のプレイヤーを、一気に怪人へ変えられる規模です」

 

みこが、自分の膝を抱えながら顔を青ざめさせた。

 

「それ、絶対にやばいやつにぇ……」

 

「確実にやばいです」

 

こよりは真剣な表情で答えた。

 

「一般人へ渡れば、本人の意思に関係なく暴走する可能性もあります」

 

「あんなのが街中に何十体も出たら……」

 

フレアは険しい表情で呟く。

 

「ニューヨーク決戦の後なのに、また街が壊れちゃう」

 

室内の空気が、少しだけ重くなる。

 

そんな中。

 

シオンが、ふと思い出したようにテレビへ顔を向けた。

 

「事件といえばさ」

 

「ん?」

 

「さっきからニュースで流れてる、あの映像」

 

テレビを指さす。

 

「あれ、何だったんだろうね」

 

室内の大型テレビでは、ニュース番組が放送されていた。

 

画面へ映し出されているのは。

 

炎上する施設。

 

大きく崩れた建物。

 

空へ伸びる黒煙。

 

そして、空軍基地と思われる場所で救助活動を続ける兵士たち。

 

画面下には、大きく赤い文字が表示されている。

 

――テロ速報。

 

AZKiが静かに答える。

 

「マンダリンというテロリストでしょ?」

 

フレアもテレビへ目を向け、眉をひそめた。

 

「アメリカのニュース、ずっとその話をしてるよね」

 

画面の中で。

 

キャスターが緊迫した声で原稿を読み上げている。

 

『先ほど、アメリカ国内の空軍関連施設が攻撃を受けました』

 

『犯行声明を発表したのは、マンダリンを名乗るテロリスト集団と見られています』

 

映像が切り替わる。

 

薄暗い部屋。

 

壁へ飾られた旗。

 

両手の指へ幾つもの指輪を装着した、一人の男。

 

男はカメラを見つめながら、低い声で演説を続けている。

 

映像の途中には。

 

破壊される施設。

 

逃げる人々。

 

爆発によって吹き飛ぶ車両。

 

挑発するような犯行声明と、実際の被害映像が交互に映し出されていた。

 

みこは膝を抱えたまま、小さく呟いた。

 

「怖いね……」

 

蓮はその言葉を聞き。

 

反射的に、心の中で答えてしまった。

 

――いや、平成仮面ライダーがこの部屋に集まっている方が怖いと思う。

 

クウガからジオウまで。

 

平成を代表する仮面ライダーの力が、ほぼすべてアベンジャーズ・タワーへ集まっている。

 

しかも。

 

彼女たちはニューヨーク決戦で、すでに最強フォームまで経験していた。

 

グランドジオウ。

 

ディケイド・コンプリートフォーム。

 

ライジングアルティメット。

 

シャイニングフォーム。

 

龍騎サバイブ。

 

ファイズ・ブラスターフォーム。

 

ブレイド・キングフォーム。

 

装甲響鬼。

 

ハイパーカブト。

 

電王超クライマックスフォーム。

 

キバ・エンペラーフォーム。

 

サイクロンジョーカーエクストリーム。

 

プトティラコンボ。

 

コズミックステイツ。

 

インフィニティースタイル。

 

極アームズ。

 

タイプトライドロン。

 

ムゲン魂。

 

ムテキゲーマー。

 

ビルドジーニアス。

 

アベンジャーズ・タワーの一室に。

 

地球規模どころか。

 

世界そのものを揺るがしかねない力が、日常会話をしながら集まっている。

 

テロリストが危険なのは間違いない。

 

しかし、冷静に考えれば。

 

この臨時事務所の方が、世界最大級の危険物保管庫だった。

 

蓮は、その考えを口に出さなかった。

 

今ここで口にすれば。

 

シオンから。

 

「じゃあ、何でシオンたちに渡したの?」

 

と詰められる未来が、簡単に想像できたからだ。

 

そらはテレビの映像を見つめながら尋ねた。

 

「攻撃されたのは、空軍基地なんだよね?」

 

蓮は我に返り、頷いた。

 

「そうみたいですね」

 

「大丈夫なのかな……」

 

蓮はニュース画面へ目を向ける。

 

「まあ」

 

少し考える。

 

「大統領も、ローディさんが装着しているアイアン・パトリオットで対抗すると発表していましたし」

 

スバルが首を傾げた。

 

「アイアン・パトリオットって」

 

手で赤、白、青の配色を表現しようとする。

 

「ウォーマシンの色を変えたやつ?」

 

「かなり大雑把に言えば、そう」

 

蓮は苦笑する。

 

「ただ、外見だけじゃなく、政府向けに調整された装備もあるはずです」

 

「ローディさんは正規の軍人ですし、スーツの性能も相当高い」

 

ニュースに映るアイアン・パトリオットの映像を見る。

 

「マンダリンが相手なら、政府も黙ってはいないでしょう」

 

トワは腕を組んだ。

 

「でも」

 

窓の外へ広がるニューヨークの街を見る。

 

「ニューヨーク決戦の後だと、どんな事件でも裏に何かいるんじゃないかって思っちゃうよね」

 

「それは分かる」

 

ぼたんも窓の外を見ながら答える。

 

「宇宙人」

 

指を一本立てる。

 

「アナザーライダー」

 

もう一本。

 

「ドーパントと、ゾディアーツスイッチの輸送」

 

さらに一本立てた。

 

「次はテロリストかぁ」

 

小さく笑う。

 

「忙しいね」

 

スバルが即座に突っ込んだ。

 

「忙しいで済ませていい内容じゃないんだよなぁ!」

 

「でも、事実でしょ?」

 

「そうだけど!」

 

スバルは頭を抱えた。

 

蓮はテレビへ映るマンダリンの姿を見ながら、落ち着いた声で言った。

 

「でも」

 

全員へ聞こえるように続ける。

 

「アメリカには、キャプテンやトニーがいる」

 

「ローディさんもいる」

 

そして、室内にいるホロライブのメンバーたちを見回した。

 

「僕たちもいる」

 

テレビの向こうで、マンダリンの犯行声明が続いている。

 

蓮は僅かに笑った。

 

「これだけ戦力が揃っていれば」

 

何気なく言った。

 

「そう簡単には、こっちへ攻撃してこないんじゃないかな」

 

室内が、静まり返った。

 

誰も返事をしない。

 

先ほどまでニュースの音や会話で賑やかだった臨時事務所へ。

 

妙な沈黙が訪れた。

 

蓮は周囲を見回す。

 

「……何?」

 

スバルが、ゆっくりと蓮へ顔を向けた。

 

「いや……」

 

その目には、少しだけ怯えたような色が浮かんでいる。

 

「何か今の台詞」

 

一度言葉を区切る。

 

「ものすっごいフラグに聞こえたんだけど」

 

「気のせいじゃない?」

 

「気のせいじゃないと思う」

 

シオンも、まったく同じ目で蓮を見ていた。

 

「蓮」

 

「何?」

 

「それ、絶対に言っちゃ駄目なやつ」

 

「何で?」

 

「『これだけ強い人がいるから敵は来ない』とか」

 

シオンは指を立てる。

 

「そういうことを言った直後に、もっと強い敵が来るんだよ」

 

「そんな物語みたいな――」

 

「蓮がそれ言う?」

 

「……」

 

蓮は何も言えなくなった。

 

まつりもソファから上半身を起こす。

 

「蓮くん」

 

真剣な顔で告げる。

 

「そういうことを言うと、だいたいすぐ何か起きるよ」

 

ポルカも深く頷いた。

 

「物語的には完全に次回予告の台詞だね」

 

両手で四角を作り、見えない画面を表現する。

 

「『だが、その油断を嘲笑うかのように、新たな敵が動き始めていた――』みたいな」

 

「やめてよ!」

 

蓮は慌てて周囲を見る。

 

「みんなして、不吉なことを言わないで!」

 

おかゆがソファへ寝転んだまま、小さく笑う。

 

「最初にフラグを立てたのは蓮くんだけどねぇ」

 

「立ててない!」

 

「立てたにぇ」

 

みこも真顔で頷く。

 

「完全に立ってたにぇ」

 

こよりはホワイトボードへ、新たな文字を書き加えた。

 

紫咲蓮の発言。

 

攻撃される可能性。

 

「何で捜査項目に追加するの!?」

 

「念のためです!」

 

「科学者がフラグを根拠にしないで!」

 

室内に笑い声が広がった。

 

誰も、本気で何かが起きると思っていたわけではない。

 

ニューヨーク決戦は終わった。

 

新たに見つかった怪人化アイテムも回収された。

 

アベンジャーズと平成仮面ライダーが揃うこの場所を、正面から襲う者など。

 

普通に考えれば、いるはずがなかった。

 

少なくとも。

 

この時の蓮たちは、そう思っていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。