転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。 作:Othuyeg
「何だったんだ、あいつら……。強かったけど、突然逃げ出して……」
「戦闘中に撤退命令でも下ったんだろうさ。そうでなければ敵前逃亡など、特にガイバーを相手にして逃げるなど許されるわけがない」
ゼルブブスとパナダインを退けたあと、俺たちは彼らの不可解な行動に疑念を抱いていた。
「まあ、なんにせよ一先ず脅威は去ったわけだから、君も帰って休むと良い。またいずれ、出会うことになるだろうからな」
「あっ、ちょっと……!」
ガイバーⅢは、俺に一方的に告げて去っていった。彼も大概謎が多い人物だな……とため息を吐き、殖装を解いて荷物を回収すると、携帯がピリリと鳴った。
「ん? いったい誰から……聖園さん!?」
何故番号を知っているのか、何故今電話をかけてきたのかなど、疑問はたくさん浮かぶが、とにかく電話に出よう。
……そう思って電話を取った俺は、信じられない知らせを聞いた。
『晶君のお父さんから番号聞いたんだけど、晶君の電話で合ってる?!』
「あ、え、はい……。いったいどうしたんですか?」
『瑞紀ちゃんと哲郎先輩がどこにもいないって! 晶君何か知らない!?』
――は? 一瞬、思考がフリーズした。瑞紀と哲郎さんがいなくなった? どういうことだ、いったい……まさか。
『晶君? 2人が何かに巻き込まれてるかもしれないの! 何か知ってたら――』
「心当たりがあります。聖園さんは、2人のご両親に伝えておいてください。『俺が心当たりを探ってる』って」
『えっ? うん、でもどうするつもり――』
――ピッ。聖園さんの電話を最後まで聞かずに切る。安心させるために心当たりがあるなんて言ってしまったが、実際どこに攫われたかなんて見当がつかない。クロノスの基地なんて、一つも……。
「お困りの様子だね」
「!?」
頭を抱える俺に、背後から声がかけられる。誰だ――!? 咄嗟に振り向くと、そこにいたのはサングラスを掛けた成年男性だった。
「おっと、怪しい者じゃない……と言ったら逆に怪しいか。俺は村上征樹。君たちと同じ、クロノスに敵対する者だ」
くそっ、アホか俺は! 晶の戦闘を眺めるのに
俺が頼みの綱とばかりに村上さんの反応を追うと、どうやら晶に接触するつもりであるらしいことが分かった。お願いだ、間に合ってくれ! 俺はそう願いながら、二人のいる場所に走った。
「さあ、乗ってくれ。クロノス日本支部まで送ろう。俺はまだクロノスに、特に最高幹部の連中に存在がバレるわけにはいかないから、あまり表立っての協力は難しいかもしれないが……」
「送ってくれるだけでもありがたいです。僕だけでは瑞紀と哲郎さんの居場所を掴めませんでしたから」
居た! どうやら村上さんの車で日本支部まで向かうらしい。俺はその後ろを全力で飛んで追いかけた。焦りのあまり、認識阻害が緩くなっていることにも気がつかず。
……後ろを尾けてるやつがいるな。何者だ? 敵意は感じないが……。
「? どうしたんですか、村上さん?」
「……後を尾けてるやつがいる。生身だな……。敵意は感じないが、上手く隠しているだけかもしれないし、少し脅かしておこうか」
俺は晶君にそう告げ、短機関銃を取り出す。5年前、アリゾナでエインジェル博士に渡されたものだ。
「え、な、なんですかそれ……?」
「これは『Gladius Spiritualis』というものだ。所有者の生体エネルギーを増幅、変換し、レーザーとして照射することのできる銃だそうだ」
ご丁寧に説明書まで付いていたから、使い熟すのもオーバーホールするのも楽だった。こんなオーバーテクノロジーの産物でありながら、通常の9mmパラベラム弾も発射できる優れもの。調べたところ、外見はランチェスター短機関銃という実在の銃器を参考にしているようだった。
「えっ、そ、そんなの人に向けて気軽に撃っていいんですか!?」
「生身で追跡してきている以上、どの道普通の人間じゃなくて何かしらの調整体だ。9mmパラベラムはどうせ効かないだろうし、レーザーも出力を絞れば大したダメージは受けないさ」
俺はそう言って、背後に向けてノールックでトリガーを引く。細い桃色の光線が放たれ、おそらくは追跡者の足元を焼いた。
「ウワッ!? エッ、アっ、きゃーっ!?」
ノイズの混じったような声と共に、金属質の衝突音が聞こえた。転んだみたいだが……ふむ? 随分と特殊な調整体らしいな?
「……あれ?」
「どうした? 晶君」
「いや、さっきの声、なんか聞き覚えがあるような……」
晶君に聞き覚えのある声? こんな特徴的な声、そうそう居ないと思うが……。
「もしかして、『パテル』とかいうヤツかい?」
「あっ、多分それです。女性っぽい声でしたし」
ふむ……。女性の調整体というのは珍しいな。クロノスは女性の
「そうか、なら少し話してみることにしようか」
「えっ?」
俺はブレーキを踏み、RX-7カブリオレをアイドリングさせる。
「……エッ?」
「お前は『パテル』と名乗っている調整体で合ってるか?」
猛スピードで追いかけてきていたそいつに問いかける。何らかの方法で身体的特徴を隠蔽しているらしく、至近距離で見ても女性的な体格の人影にしか見えなかったが、こちらの声は届いているらしく、動揺した様子を見せた。
「エッ? ウ、ウン。ソウダヨ。私ガ『パテル』」
「そうか。単刀直入に聞くがお前はクロノスに敵対する存在で間違いないな?」
「エ、ウン、ソウダケド……」
困惑した様子だが、返答は確かだった。しかし、思念波によって回答を強制できている感覚は無いな。やはりクロノスの調整体ではないのか。
「ということは、お前もクロノス日本支部を探しているんだな?」
「ウ、ウン……」
「ほう? であればなぜ俺を追ってきたのかな。隣にガイバーⅠである晶君を乗せているからと言って、俺の向かう先がクロノス日本支部でない可能性は考えなかったか?」
「……アッ!?」
今気付いた、って声だな……。さっきからこいつ、なんとなく間抜けな雰囲気が漂ってて気が抜けるんだよな。間違いなく何か、俺の知らない情報源を持っていることは間違いないし、その点で怪しさは感じるが……。いったんは信じてもいいか。
「フフ、イジメるのはこの辺にしておこうか。付いてきたまえ。案内役になろう」
「アッ、ハイ……」
「お話は終わりましたか?」と尋ねてくる晶君に俺は
《ダメです、止まりません! このままではすぐにでも日本支部に……ぐあっ?!》
「やはり来たな……。総員、配置につけ。ガイバーどもを迎え撃つ。顎人、お前は早いうちに逃げろ。もうこの日本支部に重要なデータは無い」
「承知しました」
巻島顎人は内心で
(予定が狂ったな……だが仕方ない。ギュオーはガイバーⅠをこの日本支部諸共処分しようと考えているようだし、ここは……)
「殖装ッ」
監視カメラに映らず、人気のない通路を探し、そこで静かにガイバーⅢへと殖装する顎人。彼もまた、己の野望のために動き始めるのだった。
ちなみにガチで今後のストックは0なのでまた同じような期間開くかもしれません。