転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。   作:Othuyeg

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大変お持たせいたしました。この活動報告の後、高熱を出してブッ倒れてました。


記録10 日本支部へ

 「何だったんだ、あいつら……。強かったけど、突然逃げ出して……」

 「戦闘中に撤退命令でも下ったんだろうさ。そうでなければ敵前逃亡など、特にガイバーを相手にして逃げるなど許されるわけがない」

 

 ゼルブブスとパナダインを退けたあと、俺たちは彼らの不可解な行動に疑念を抱いていた。

 

 「まあ、なんにせよ一先ず脅威は去ったわけだから、君も帰って休むと良い。またいずれ、出会うことになるだろうからな」

 「あっ、ちょっと……!」

 

 ガイバーⅢは、俺に一方的に告げて去っていった。彼も大概謎が多い人物だな……とため息を吐き、殖装を解いて荷物を回収すると、携帯がピリリと鳴った。

 

 「ん? いったい誰から……?」

 

 怪訝に思いながら電話に出た俺を待っていたのは、思わぬ通信相手だった。

 

 『晶君のお父さんから番号聞いたんだけど、晶君の電話で合ってる?!』

 「えっ、み、聖園さん!? 父さんから聞いたって、一体何が……」

 

 最近話題の人物からの突然の電話に困惑する俺。だが、その直後に続いたセリフは、その困惑を吹き飛ばすのに足る恐ろしい言葉だった。

 

 『瑞紀ちゃんと哲郎先輩がどこにもいないって! 晶君何か知らない!?』

 「!?」

 

 ――は? 一瞬、思考がフリーズした。瑞紀と哲郎さんがいなくなった? どういうことだ、いったい……まさか。

 

 『晶君? 2人が何かに巻き込まれてるかもしれないの! 何か知ってたら――』

 「心当たりがあります。聖園さんは、2人のご両親に伝えておいてください。『俺が心当たりを探ってる』って」

 『えっ? うん、でもどうするつもり――』

 

 ――ピッ。聖園さんの電話を最後まで聞かずに切る。安心させるために心当たりがあるなんて言ってしまったが、実際どこに攫われたかなんて見当がつかない。クロノスの基地なんて、一つも……。

 

 「お困りの様子だね」

 「!?」

 

 頭を抱える俺に、背後から声がかけられる。誰だ――!? 咄嗟に振り向くと、そこにいたのはサングラスを掛けた成年男性だった。

 

 「おっと、怪しい者じゃない……と言ったら逆に怪しいか。俺は村上征樹。君たちと同じ、クロノスに敵対する者だ」

 

 

 


 

 

 

 くそっ、アホか俺は! 晶の戦闘を眺めるのに(かま)けて2人をみすみす攫わせるなんて! こうなったら俺だけじゃどうにもならない。おそらく、主人公陣営で日本支部の場所を知ってるのは顎人と村上さんだけだ。顎人はまさか俺みたいなのに後を尾けさせるほど迂闊じゃないだろうし、頼れるのは村上さんしかいない。

 俺が頼みの綱とばかりに村上さんの反応を追うと、どうやら晶に接触するつもりであるらしいことが分かった。お願いだ、間に合ってくれ! 俺はそう願いながら、二人のいる場所に走った。

 

 「さあ、乗ってくれ。クロノス日本支部まで送ろう。俺はまだクロノスに、特に最高幹部の連中に存在がバレるわけにはいかないから、あまり表立っての協力は難しいかもしれないが……」

 「送ってくれるだけでもありがたいです。僕だけでは瑞紀と哲郎さんの居場所を掴めませんでしたから」

 

 居た! どうやら村上さんの車で日本支部まで向かうらしい。俺はその後ろを全力で飛んで追いかけた。焦りのあまり、認識阻害が緩くなっていることにも気がつかず。

 

 

 


 

 

 

 ……後ろを尾けてるやつがいるな。何者だ? 敵意は感じないが……。

 

 「? どうしたんですか、村上さん?」

 「……後を尾けてるやつがいる。生身だな……。敵意は感じないが、上手く隠しているだけかもしれないし、少し脅かしておこうか」

 

 俺は晶君にそう告げ、短機関銃を取り出す。5年前、アリゾナでエインジェル博士に渡されたものだ。

 

 「え、な、なんですかそれ……?」

 「これは『Gladius Spiritualis』というものだ。所有者の生体エネルギーを増幅、変換し、レーザーとして照射することのできる銃だそうだ」

 

 ご丁寧に説明書まで付いていたから、使い熟すのもオーバーホールするのも楽だった。こんなオーバーテクノロジーの産物でありながら、通常の9mmパラベラム弾も発射できる優れもの。調べたところ、外見はランチェスター短機関銃という実在の銃器を参考にしているようだった。

 

 「えっ、そ、そんなの人に向けて気軽に撃っていいんですか!?」

 「生身で追跡してきている以上、どの道普通の人間じゃなくて何かしらの調整体だ。9mmパラベラムはどうせ効かないだろうし、レーザーも出力を絞れば大したダメージは受けないさ」

 

 俺はそう言って、背後に向けてノールックでトリガーを引く。細い桃色の光線が放たれ、おそらくは追跡者の足元を焼いた。

 

 「ウワッ!? エッ、アっ、きゃーっ!?」

 

 ノイズの混じったような声と共に、金属質の衝突音が聞こえた。転んだみたいだが……ふむ? 随分と特殊な調整体らしいな?

 

 「……あれ?」

 「どうした? 晶君」

 「いや、さっきの声、なんか聞き覚えがあるような……」

 

 晶君に聞き覚えのある声? こんな特徴的な声、そうそう居ないと思うが……。

 

 「もしかして、『パテル』とかいうヤツかい?」

 「あっ、多分それです。女性っぽい声でしたし」

 

 ふむ……。女性の調整体というのは珍しいな。クロノスは女性の獣化兵(ゾアノイド)を作ることに消極的だからな。だが、クロノスでないとするなら何者だ……?

 

 「そうか、なら少し話してみることにしようか」

 「えっ?」

 

 俺はブレーキを踏み、RX-7カブリオレをアイドリングさせる。

 

 「……エッ?」

 「お前は『パテル』と名乗っている調整体で合ってるか?」

 

 猛スピードで追いかけてきていたそいつに問いかける。何らかの方法で身体的特徴を隠蔽しているらしく、至近距離で見ても女性的な体格の人影にしか見えなかったが、こちらの声は届いているらしく、動揺した様子を見せた。

 

 「エッ? ウ、ウン。ソウダヨ。私ガ『パテル』」

 「そうか。単刀直入に聞くがお前はクロノスに敵対する存在で間違いないな?」

 「エ、ウン、ソウダケド……」

 

 困惑した様子だが、返答は確かだった。しかし、思念波によって回答を強制できている感覚は無いな。やはりクロノスの調整体ではないのか。

 

 「ということは、お前もクロノス日本支部を探しているんだな?」

 「ウ、ウン……」

 「ほう? であればなぜ俺を追ってきたのかな。隣にガイバーⅠである晶君を乗せているからと言って、俺の向かう先がクロノス日本支部でない可能性は考えなかったか?」

 「……アッ!?」

 

 今気付いた、って声だな……。さっきからこいつ、なんとなく間抜けな雰囲気が漂ってて気が抜けるんだよな。間違いなく何か、俺の知らない情報源を持っていることは間違いないし、その点で怪しさは感じるが……。いったんは信じてもいいか。

 

 「フフ、イジメるのはこの辺にしておこうか。付いてきたまえ。案内役になろう」

 「アッ、ハイ……」

 

 「お話は終わりましたか?」と尋ねてくる晶君に俺は(しか)と頷くと、再度車を発進させる。日本支部までの最短ルートを、今度は後ろに『パテル』を引き連れて。

 

 

 


 

 

 

 《ダメです、止まりません! このままではすぐにでも日本支部に……ぐあっ?!》

 「やはり来たな……。総員、配置につけ。ガイバーどもを迎え撃つ。顎人、お前は早いうちに逃げろ。もうこの日本支部に重要なデータは無い」

 「承知しました」

 

 巻島顎人は内心で(ほぞ)を噛んだ。エンザイムのデータはできれば破壊しておきたかったのだが、それはもはや叶わないだろう。日本支部から遺跡基地(レリックス・ポイント)に移送されたであろうデータの幾つかには、顎人が知っておきたかった情報や、破壊しておきたかった情報がある。

 

 (予定が狂ったな……だが仕方ない。ギュオーはガイバーⅠをこの日本支部諸共処分しようと考えているようだし、ここは……)

 「殖装ッ」

 

 監視カメラに映らず、人気のない通路を探し、そこで静かにガイバーⅢへと殖装する顎人。彼もまた、己の野望のために動き始めるのだった。




ちなみにガチで今後のストックは0なのでまた同じような期間開くかもしれません。
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