転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。   作:Othuyeg

4 / 10
山村教授の反乱については原作であらすじみたいな内容しか明かされてないのでほぼオリジナルです。


記録4 造反

 「こっ、これは……何だ? どういう、ことだ……!?」

 「……」

 

 クロノスの科学力に混乱しきりの彼に、俺は目を逸らした。この先に待ち構える数奇で過酷な運命を考えれば、心苦しくないわけがない。だが、きっと必要なことだ。彼が居なければ、リムーバーを起動したギュオーによってガイバーたちは殖装能力を失い、アルカンフェルですら手の付けられない怪物が生まれてしまう。

 俺がそんなことを自分に言い聞かせている間に、ある人物が村上さんに話しかける。

 

 「……村上君」

 「あ、あなたは……! 山村教授!? なぜこんな場所に……?!」

 

 山村晋一郎教授。村上さんの大学の恩師であり、クロノスのブレインの一人。そしてこの後、試作獣神将(プロト・ゾアロード)4人を連れてクロノスに反旗を翻す、物語の影の功労者だ。

 村上さんは山村教授に説明を求めるが、彼は沈痛な面持ちで獣神将(ゾアロード)のことを解説するのみだった。

 

 「……再会の挨拶は終わりましたか? 時間は有限です。この後の為にも、少し計画を急いだほうがよろしいのでは」

 

 罪悪感を押し殺し、努めて冷たい声で彼らに急かす。ごめん、村上さん。ここに来ちまった以上あんたの人権は無いも同然なんだ。恩師との奇妙な再会に困惑した様子の彼を置いて、あれよあれよという間に話が進んでいく。

 

 「くそっ、獣神将(ゾアロード)って何なんだ! 『調整』って、俺に何をする気なんだ!?」

 「暴れないでください。どうか地球の今後のためにご協力を」

 

 村上さんは意味がわからないと暴れるが、彼1人が暴れたところで何が起きるわけもなく。獣神将(ゾアロード)の調整実験は、恙無(つつがな)く進行していくのだった。

 

 ――そして、その日が訪れる。

 

 

 


 

 

 

 ――ヴィーッ!! ヴィーッ!!

 

 「非常事態! 非常事態! プロフェッサー・ヤマムラが試作獣神将(プロト・ゾアロード)4体を連れ造反を決行! 支部に増援を要請し、直ちに鎮圧せよ!」

 「何故彼が造反を!? えぇい、とにかく教授を狙って試作体(モルモット)どもを足止めしろ!」

 

 赤く点滅する警報灯の下、基地内は阿鼻叫喚の地獄と化していた。

 俺――村上征樹は、自らの身体に起きている信じがたい変容と、眼の前で繰り広げられる惨劇に、ただ息を呑むことしかできなかった。

 恩師である山村教授が企てた、決死の造反劇。その真の目的は、『ユニット・G(ガイバー)』の秘密を知るリヒャルト・ギュオーを、獣神将(ゾアロード)への調整中に暗殺することだった。

 しかし、その計画は絶望的な形で打ち砕かれた。

 

 「馬鹿な……他の十二神将が、なぜここに……!」

 

 山村教授の悲鳴が、今も耳にこびりついている。ギュオー暗殺のために教授が連れ出した試作獣神将(プロト・ゾアロード)たちのうち、俺を除いた3人は、駆けつけた正規の神将たちの圧倒的な力の前に、追い詰められ、文字通り赤子のように引き裂かれ、調整体処理槽へと葬られていった。

 教授自身もまた、その絶望的な力の差の前に致命傷を負い、血の海に沈んだ。

 

 「逃げろ、村上君……! 君、だけでも……!」

 

 恩師の最期の叫びだけが、俺をこの無残な敗戦の場から走らせていた。

 追手となる獣化兵(ゾアノイド)たちの咆哮が迫る中、崩れゆく通路を駆け抜けようとしたその時だった。

 

 「……!」

 

 爆炎と土煙の中から、小柄な人影がふらりと現れた。

 見間違えるはずもない。俺の調整実験において、常に冷徹な目でデータを記録していた若き天才研究者、ミカ・エインジェル博士だ。

 

 (追手か……!?)

 

 俺は咄嗟に身構えた。まだこの力の使い方も完全には分からない。……だが、死にゆく恩師から様々なものを託された命だ、そう易々と明け渡すわけにはいかない。俺は右手にバリヤーのエネルギーを集める。

 ――しかし。彼女は、俺に向かって敵意を向けることはなかった。それどころか、炎に照らされたその横顔には、普段の無機質な仮面からは想像もつかない、どこか安堵したような……あるいは微かな哀愁のようなものが一瞬だけ浮かんだように見えた。

 彼女は無言のまま距離を詰めると、俺の胸にドンッと何かを押し付けてきた。

 

 「これは……?」

 

 手渡されたのは、いかにも高価そうなアタッシュケース。そして、鈍い黒の外観に、金色の意匠が彫り込まれ、桃色の葉脈のような光が銃身全体に張り巡らされた、見慣れない形状の短機関銃だった。ひんやりとした金属の感触とは違う、まるで生き物のような異様な重圧を放つ銃。

 

 「エインジェル博士、あなたは一体……」

 「行きなさい。それを持って」

 

 俺が問いかけようとした瞬間、彼女はクルリと背を向けた。

 その手には、いつの間にか俺に渡したものと同じような無骨な銃が握られていた。彼女は迷うことなく、調整室の心臓部――彼女自身の研究データを含む、全ての記録が保存されているサーバーに向けて銃口を向ける。

 

 ――ドドドドドドドドッッ!!

 ――ギャギャギャリャララララッ!!

 

 放たれたのは通常の銃弾などではなかった。着弾と同時に激しい連鎖爆発を引き起こす未知の榴弾が、そして不快な音を立てて金属を貫通する徹甲弾が、分厚い防弾壁もろともサーバー群を木っ端微塵に粉砕していく。

 凄まじい爆炎が巻き起こり、アリゾナ支部に残されていた『エインジェル博士』の痕跡は、俺の調整記録もろとも物理的に完全に隠滅された。

 

 ……爆風から顔を庇い、再び目を開けた時、そこにはもう彼女の姿はなかった。

 彼女はクロノスの忠実な研究員ではなかったのか? 自らの功績たるデータを全て灰に帰し、俺に武器を与えて姿を消した目的は?

 手の中のアタッシュケースと銃に視線を落とす。彼女が無言で何を託したのか、今は分からない。

 

 「……行くしかない」

 

 命を散らした恩師たちの遺志を無駄にしないため。そして、自分をこんな怪物に変えた組織の狂気を暴くため。

 俺は手渡された謎の銃とアタッシュケースをしっかりと懐に抱え込むと、未だ上を下への大騒ぎをしているアリゾナ本部を背に、ただ一人孤独な逃避行へと走り出した。




本作においては、村上征樹が死亡したと勘違いされていた理由のひとつを「彼が逃げ込んだと思しき部屋の設備が何らかの理由で大爆発を起こしたから」ということにしています。
不確定要素まみれなのに「最後に見た場所とかなり近い位置の部屋が爆発したので、やつはそこに逃げ込んで自爆したんだと思います」とか報告した獣化兵(ゾアノイド)は、生きてるの判明した時に大目玉食らってそうですね。
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