転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。   作:Othuyeg

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原作者様は「ガイバーのキャラデザは生物(クリーチャー)であって怪物(フリークス)ではない」とおっしゃられていますが、作者はミカは怪物(フリークス)側の存在だと思って書いています。

あと、今回少し長いです。


記録7 2人のガイバーと1人の怪獣(フリークス)

 さて。遠くの方で俺のプログラムが発動した感覚があったから、ユニットは無事起動したらしい。あとは殖装したのがリスカーであることを……いや、この際ギュオー以外なら誰でもいい。とにかくギュオーでないことを祈るしかない。我ながらガバチャー具合が凄まじいな。まあ、タイミング的に極東総司令であるギュオーはまだ日本支部には現れていないだろうし、おそらくリスカーが殖装したと見ていいだろう。

 

 「うっ、ぐ、がぁぁぁぁあっ……!! た、たす」

 

 今俺は、まだユニットを探している獣化兵(ゾアノイド)を襲って『捕食』していた※1。数ヶ月控えていた『食い溜め』と兼ねて、獣化兵の遺伝子形質(マトリクス)を入手して性能を強化するためだ。特に、ヴァモアの生体レーザー砲の形質は牽制用の遠距離攻撃としてそこそこ有用で満足感が大きかった。

 

 「……ふぅ」

 

 この肉体、意外と燃費が悪いのだ。いや、少数の獣化兵で数ヶ月分の空腹を満たせる時点でどこが燃費悪いんだって話に聞こえるかもしれないが、待ってほしい。この体は強殖細胞を用いて作られているヒト基軸型多生物融合兵器であり、アプトムのように個体進化の能力を持っている非常にハイスペックな兵器なのだ。特に、強殖細胞を使われているというのが重要で、これはつまりガイバーのように異次元――すなわち殖装空間――からエネルギーを抽出する能力を少なからず持っていると言うことでもある。それがありながら肉体エネルギーを数ヶ月で使い果たすというのは、はっきり言って星間戦争の兵器としては高燃費と言わざるを得ないだろう。

 殖装空間から抽出されるガイバーのエネルギーも、無限とは言えない。継続的な出力は十分だが、瞬間出力には最大スループットが存在するのであるからして、その許容量(キャパシティ)を超えれば当然肉体側(こちら)のエネルギーが消耗していくことになる。それと同じ話だ。

 特に俺の場合、肉体に占める強殖細胞の割合が大きくないため、最大スループットは通常形態のガイバーのそれよりもやや少ない。

 

 反面、重力制御能力はガイバーのそれよりも高く設定されており、確証はないがギガンティックのそれよりも高く、ギガンティックXDよりは大幅に劣ると言ったところだろうか。短期決戦仕様だな。

 

 「さて、と。また明日はミステリアス美少女優等生の仮面を被らなきゃいけないからな。……お行儀の悪い食事はここまでにしよっか☆」

 

 俺はヘイローの認識阻害能力を強め、ゆったりと空を飛んでセーフハウスに戻ることにした。

 

 

 


 

 

 

 翌日、放課後。リスカーは数人の獣化兵を連れて、成沢高校の敷地にやってきていた。

 晶と哲郎が「よお、未花さんどうした?」「もう帰りましたよ」「マジか、ちょっと話してみたかったんだけどな」などとやりあっている間に、リスカーは獣化兵たちを忍び込ませ、ガイバーⅠとの接触準備を整え始める。

 

 「手筈は先刻説明した通りだ。抜かるな!」

 「はっ」

 

 リスカーの合図を受けた獣化兵は、用務員のフリをして素早く校舎内に潜り込み、哲郎を捕えに動く。

 

 「う、お、わぁっ!? ゾ、ゾアノイド……ッ!?」

 

 薄暗い校舎内に、異形の咆哮とガラスの砕けるけたたましい音が響き渡る。

 

 「哲郎さん!? くっ、ガイバー!」

 

 突如として現れた用務員姿の獣化兵たちに襲われた哲郎を守るため、深町晶は強殖装甲を展開し、ガイバーⅠとなって死闘を繰り広げていた。だが、未だ自身の力に振り回されている晶の動きは単調であり、実戦経験の欠如を如実に物語っている。

 

 その未熟な戦いぶりを、黄色の強殖装甲に身を包んだリスカーが逆側の校舎の屋上から冷徹に見下ろしていた。

 

 「ふっ……やはり素人だな。宝の持ち腐れ、とはこのことか。あの程度私ならば5秒と経たず制圧できるものを」

 

 同じ強殖装甲、同じ兵装。だが確かに異なるのは、正規の兵隊としての訓練と経験。オズワルド・A・リスカーは超獣化兵(ハイパーゾアノイド)への調整を約束されたエリートであり、片や深町晶は一介の高校生。その戦闘力の差は歴然である。勝ちを確信したリスカーはフッと冷笑を浮かべると、いよいよ自らの手でガイバーⅠを回収すべく、高周波ソードを伸長させ跳躍の姿勢に入った。

 

 ――まさに、その瞬間。

 

 ――ッッッッッ!!!

 

 「なっ、ごあぁっっ!?」

 

 ガイバーの超感覚も、それを捉えるには遅かった。上空から飛来した『それ』は、ただ純粋な超質量としての暴力だった。重力制御によって極限まで圧縮・加速された極小の石塊(いしくれ)の集合体。(つぶて)と侮るなかれ、()()の撃ち放つそれはまさに『極小隕石』の様相を呈する致命の弾丸だ。

 

 「なっ、なんだ!? 校庭の方に何かが叩きつけられたぞ!」

 「哲郎さん、あれは……! ガイバーです!」

 

 驚愕する哲郎に、ヘッドセンサーで叩きつけられた物体を走査した晶が答える。「なんだって!?」と驚愕する哲郎を抱えて、晶は校庭へ飛び出した。

 

 一方でリスカーは、まだ何が起きたのかを把握できていなかった。よろめきながら立ち上がり、周囲を探って状況を把握しようとする。

 ……そして、見つけた。ガイバーⅠでも、瀬川哲郎でもない、圧倒的に異質な反応を。

 

 「……出てきたまえ。私を校庭に叩き落したのは君だな?」

 「ゴ名答! アナタヲ撃チ落トシタノハ私ダヨ☆」

 

 土煙の奥から、その一言と共に人影が現れる。揺らめく陽炎のような、人型の光の塊のようなそれは、ガイバーの超感覚を(もっ)てしても、「おそらく人型の調整体である」と言うことまでしかわからなかった。

 だが少なくとも、ノイズが混ざったような、あるいは口部振動球(バイブレーション・グロウヴ)特有の発声の癖のような、奇妙な響きを伴って発されたその声は、どうやら女性のものであるらしい、ということをリスカーは察した。

 

 「女性の調整体……しかも、ガイバーの出力に匹敵する能力を持っているだと? あり得ん、何者だ」

 「答エル義理ハナイカナ。デモ、流石がいばーッテ感ジ? 今ノ一撃ヲ受ケテ平然ト立チ上ガルナンテネ」

 「フン……口の減らない奴め」

 

 リスカーは鋭い呼気と共に両肘の高周波ソードを最大まで伸長させた。超振動する刃が空気を切り裂き、キィンと不快な金属音を周囲に撒き散らす。

 それに対応するように、人影は黒い曲刀らしきものを水平に構えた。

 

 「君が何者かは分からないが、仕事の邪魔をするというなら……死んでもらう!」

 「アハッ! ヤッテミナヨ、デキルモノナラネ!!」

 

 リスカーと人影がぶつかり合う。高周波武器同士が打ち合うチリチリとした高音が辺りに響き、刃が小さく火花を散らす。

 

 「な、なぁ、晶。あいつは……一体、何と戦ってんだ?」

 「……わかりません。獣化兵でないのは確かだと思いますが、ヘッド・センサーでサーチしても、全然情報が掴めなくて……」

 

 恐る恐ると言った様子の哲郎の問いに、晶は(かぶり)を振る。晶のセンサーでも、相手の反応がノイズ混じりで読み取れない。

 

 「くっ……なんだこの剣技は! 私の高周波ソードと互角だと……!?」

 「アハハッ☆ 最初ノ勢イハドウシタノ!? 防戦一方ジャン、ネッ!!」

 「ッ、ぐおぉっっ!?」

 

 人影の左フックがリスカーの腹部を打ち抜く。捻じ込まれた拳はリスカーの体を空き缶のように吹き飛ばし、校舎の壁面に叩き付けた。

 

 「くっ……なんなんだ、お前は一体……!」

 

 リスカーは脇腹を抑えてよろよろと立ち上がる。あり得ないことだ。そう、あり得ないことのはずだった。ガイバーⅡとなった自分をこうも圧倒する存在が居ることなど、決して。だが、現実はどうだ。目の前の、こんなふざけた態度の、正体を頑なに隠そうとする卑怯者などに、自分は圧倒されている。

 

 「クソ……なめる、なぁぁっ!!」

 

 リスカーは考える。胸部粒子砲(メガスマッシャー)だ。あれを放つ隙さえあれば、こんなふざけた輩など跡形もなく消し飛ばせるだろう。だが、その隙をどう作る? ふざけてこそいるが相手は手練れ。今だって、どこにそんなものをしまっていたのか、槍、短剣、刀など、様々な武器を振り回して迫ってくる。距離を離そうにも、ジャパニーズシュリケンのような刃物が飛んできてチャージの隙を与えてはくれない。低出力のプレッシャーカノンやヘッドビームの連射で応戦するほかない。

 

 「ホラホラ☆ マダマダ行クヨ!」

 「ぐ、くぅっ……!」

 

 人影は右手の槍で二連突きを放つ。リスカーがそれを掌と高周波ソードで逸らすと、今度は左からの薙ぎ払いと踏み込み突きに繋げる。リスカーはたまらず重力制御で空に逃げるが、帯電高周波ウィングの射出で体勢を崩される。体勢を整えようとプレッシャーカノンで牽制しながら着地するリスカーを、左袈裟、一文字、袈裟と繋ぐ三連続の斬撃が追撃する。

 

 「このっ……! いい加減にしたまえ!!」

 「ヤダ☆」

 

 人影とリスカーは、対峙したまま硬直する。膠着状態……と言うよりは、人影側がリスカーの撤退を待っているかのようだった。

 しかし、苦しい防戦の只中で、ふとリスカーは気付く。こうして睨み合う度に、この人影の息は上がっている。どうやら、長期戦ではこちらに分があるらしい。しめた、これは彼女の明確な弱点だ。

 だが……と、リスカーは人影の背後を見遣る。彼は決して本来の目的を見失ったわけではなかった。ただ、ガイバーを一撃のもとに叩き伏せる目の前の脅威を排除しなければ、目的を達成することはできないと思っただけ。だからこそ、このように長期戦を行うことは彼としても本意ではなかった。なぜなら、こうして戦闘を見せているだけで、ガイバーⅠはこれを見稽古として成長し、いずれ手の付けられない怪物に成長してしまうから。そもそも、彼が巻島玄蔵の制止を振り切ってガイバーⅠを捕らえに来たのも、戦力を逐次投入し(いたずら)に戦闘経験を積ませてしまうより、今ここで最も勝ち目のある自分が出るのが合理的と言う判断だったからだ。

 

 ――ならば。

 

 リスカーは策を講じた。胸部に格納されたレンズパーツにエネルギーを急速充填し、人影に飛びかかる。人影は身構えるが、リスカーの狙いはそこではない。

 彼は人影の目の前で飛び上がり、彼女の背後に回りながらグミ撃ちのようにプレッシャーカノンを連発すると、空中で体を翻して片肺でのメガスマッシャーを放つ。反動で大きく距離を離しながら着地し、最短で、最速で、真っ直ぐ、一直線に、全力の疾走でガイバーⅠに突撃した。

 

 「っっ!?!?」

 「おおぉぉぉっっ! 隙だらけだ、ショウ君!」

 

 取った! リスカーは確信した。チャージ時間も短く、片肺でのスマッシャーだったが、直撃した感覚があった。死んではいないにせよ、もうやつは戦闘続行不可能だろう。このままガイバーⅠの頭部制御球(コントロールメタル)を奪い取ってしまえば、私の勝ち――。

 そう考えた、その瞬間。

 

 「甘いよ」

 「――ッ!?」

 

 彼らの目の前に、薄桃色の髪がたなびいた。

 

 「『Fulgur――」

 

 マズい。避け――。リスカーが重力制御球(グラビティコントローラー)をフル稼働させて退避しようとするが、時すでに遅し。

 

 「――Nigrum』!!」

 

 ――ヷヂヂィィッッ!!

 

 蒼い火花が弾けた。彼女の拳が纏う超重力が周囲の空間を圧潰させ、圧縮空気の解放が暴風を生み出す。高電圧はプラズマを発生させ、腹部の装甲を熔解させる。

 

 「ぐあぁぁぁぁあっ!?」

 

 リスカーが吹き飛ぶ。正面突破はダメ、小手先の策も通じない。こうなればもう撤退するほかないが、それを選ぶのはリスカーのエリートとしてのプライドが許さなかった。

 

 「く、そ……! まだだ、何としても……何としてもガイバーⅠを……!」

 

 ――ピピピピッ。ピピピピッ。

 

 半ばヤケクソになりながら奮起するリスカーに、突如通信が入った。何事かと思いつつも、目の前の強敵を見遣る。人影は既に探知妨害を張り直しているが、特に動く様子はない。通信の時間くらい与えようということか? 完全に舐められている。敵に見逃されて悠長に通信を行うという状況も、リスカーのプライドを傷つけた。

 

 「……こちらオズワルド・リスカー。何事だ」

 《リ、リスカー監察官! これ以上の戦闘はお控えください! これ以上は、こちらの情報操作を以てしても完全には隠蔽しきれません!》

 「……チッ」

 

 リスカーは小さく舌打ちをする。隠蔽工作をし切れない日本支部の能力不足についてではない。一瞬、ほんの一瞬だけ、その報告が「ここから撤退する口実になる」と考えてしまった自分にだ。それはつまり、自分は目の前の敵に精神的に敗北したのだと認めたのと同じことだった。

 

 「仕方ない、口惜しいところだがここはいったんお開きにしようか」

 「オ、退イテクレルノ? 助カルナ☆」

 「……口の減らない化け物(フリークス)め……だが、最後に聞かせてもらおう。貴様、名前を何という」

 

 リスカーが人影に問うと、人影はピクリと体を反応させ、そして暫し逡巡する様子を見せた。

 リスカーは小さくため息をつく。当然か、ここまで徹底して姿を隠しているのだ。わざわざ名前を答えるわけが――。

 

 「『ぱてる』。私ヲ呼ビタケレバ、ソウ呼ブトイイヨ」

 

 ……答えるのか。リスカーは気が抜けて膝を屈しそうになった。だが、間違いなく偽名ではある。それに、『パテル』とはラテン語で父を意味する言葉。向こうがどう思っているかは知らないが、彼にとっては不遜に感じる偽名であった。

 

 「『パテル』……父を名乗るとは傲岸不遜な。我ら地球人類の父とは即ちクロノス総帥たるアルカンフェルを措いて他にいるわけがない。

 ……だが、覚えておこう。『パテル』とやら、そしてガイバーⅠ、ショウ・フカマチ君。お前たちは、必ずやこの私が倒し、クロノスに連れていく」

 「くっ、俺たちはクロノスの思い通りになんてならないぞ!」

 「ふっ、さてな。そこの『パテル』とかいうのはともかく、キミに負けるつもりは毛頭ないぞ、ショウ君」

 

 リスカーはそう言い残すと、重力制御球を稼働させて夜の闇の中に消えていった。

※1
「お礼をする」と言っていた工作員は普通に「お礼」を渡してくれたので普通に帰した。居なくなったら怪しまれるから変なことしてきても食うつもりはなかったが




※『Fulgur Nigrum』ラテン語で『黒い閃光』。つまり2話で確認した黒閃っぽい現象に名前をつけた技。


「2匹目の蝉」様から応援を頂きましたので、作品リンクを掲載させていただきます。
Kivotos with the Lostbelt
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